浩太と敬が彼女連れで家に泊まりに来た件について(前篇)
今回は宿泊回の前篇です
遊達はどうしてこうなった?というところから入ります
浩太と敬から家に泊まりに行くという旨の電話を貰い、俺は快く────ではないが、一応は了承した。浩太は付き合ったその日に、敬は付き合って1か月経たないうちに彼女連れて外泊するなんて手が早いな。っとそれはさっきまでの話だ。現在、俺を含めた男性陣は困っている
「おい、遊」
「何だ?浩太?」
「どうして俺達は縛られてるんだ?」
俺と浩太の会話からもお解かり頂けるとは思うが、俺と浩太、敬の3人は現在椅子に縛られている。で、敬は早川に誘惑されていてそれどころじゃないわけだが……別に羨ましいとは思わない
「ちょ、ちょっと!望海ちゃん!?」
「ん~?どうしたの?敬?」
敬のやつが向こうでアタフタしている。普段の俺達なら面白がっているところだが、今の俺達の状況では敬を笑うなんて不可能だ
「遊、どうしてこうなったんだろうな?」
浩太は遠い目をして俺に尋ねてくる。どうしてこうなったか?だって?あれは遡る事数分前────
「ん?誰か来たみたいだな」
インターホンが鳴り、訪問者が来たという事を知らされる。帰宅途中で浩太と敬から今晩泊めてくれと連絡があったからそのどちらかだとは思う。
「お兄ちゃん、私出ようか?」
遊華が客を出迎える事を買って出ようとしてくれるが、俺の友人だ。俺が出た方がいいだろう。
「いや、俺の友人だろうから俺が出るよ」
「うん、わかった」
「ありがとな、遊華」
俺は遊華の頭を優しく撫でる。俺はここまで気を使える妹兼彼女を持って幸せだ。
「えへへ~」
撫でられた遊華は子供のみたいな笑顔だ。うん、可愛い。っともう少しこの笑顔を堪能したいが、客人を待たせるわけにはいかない。名残惜しいが、さっさと客人を迎えに行こう
「ちょっと行って来るな」
「うん、待ってる」
遊華は仕事に向かう夫を送り出す妻みたいに俺を送り出してくれた
「あんな感じか……」
部屋を出た俺は将来遊華と結婚したらさっきみたいになるのかな……なんて考えながら玄関に向かう
「はーい、どなたー」
玄関の扉を開け、客人を確認する。浩太と敬から連絡があったし、どっちかで間違いないだろうとは思う。泥棒でインターホンを鳴らす奴なんてまずいないだろうし
「よう!遊!」
「こんにちわ、遊君」
訪問者は浩太と明美さんだった。それにしても、明美さんはキャラ変わり過ぎじゃないですかね?俺が喫茶店から出て浩太が告白してから時間はそんなに経ってないのにヤンキーから一変し、香月と同じクールなお姉さんに変わるだなんて……
「い、いらっしゃい。浩太、明美さん」
明美さんの変わり様に顔が引きつりそうなのをグッと堪え、2人を家に入れる。どうやったらこんな短時間でキャラが変わるのか教えてほしいものだ
「邪魔するぜ!」
「こら!浩太!ちゃんとお邪魔しますって言わないとダメでしょ?」
「ご、ごめん、明美」
「謝るなら私じゃなくて遊君でしょ?」
「わ、悪いな。遊」
いやいや、キャラ変わり過ぎだから!さっきまでのヤンキーの明美さんはどこ行ったの?
「い、いや、いいんですよ?浩太は元気な方が浩太らしいですし」
キャラの変化に激しく突っ込みたいのを堪えつつも2人をリビングに通す。どうして明美さんのキャラが変わったのか後で浩太に聞いてみよう
「あ、明美。いらっしゃい」
リビングに入ると香月がお茶と茶菓子を用意していた。あれ?さっきまで部屋にいなかったよね?どこ行ってたの?
「お邪魔するわね。香月」
「あ、キャラ戻したんだね」
戻すって何?どういうこと?俺はサッパリわからないよ……
「浩太、キャラ戻すって何?」
「ん?ああ、明美さんって元々根暗少女だったらしくてな。それで苛められてたみたいなんだ」
「へぇ~、それで?」
「それで、中学2年生の頃くらいかな?その辺りで当時流行ったヤンキーが主役のドラマに憧れてヤンキーになったらしい」
「ほうほう」
「だけど、1度定着したキャラってのは簡単に変えられない。ヤンキーキャラを変えられなくなった明美さんはそのまま高校に入学し、今に至るってわけ」
「なるほど」
この時代で明美さんがヤンキーにだった理由はよくわかった。それにしても、浩太はどうやって明美さんの心を開かせたんだ?
「あ、あと、これ差し入れな」
浩太から渡されたのはスーパーの袋だ。来る途中にでも買ってきたのだろう
「お、サンキュー。でも、どうして肉なんだ?」
差し入れに文句を言う気はないが、彼女と泊まりに来るのに買ってきたのが肉って……
「最初は明美さんが肉じゃない方がいいんじゃないか?って言ったんだが、俺は未来で遊がしてきた事を知ってるし?遊の親父さんやお袋さんがいても遊が晩飯作るのかな?と思ってな。遊の性格じゃ大人数の時は鍋か焼肉、よくてカレーにしそうだし?」
コイツ、俺の事をよくわかってらっしゃる。そうだよ!その通りだよ!いちいち何が食いたい?って聞くのがめんどくさいんだよ!文句あっか?
「俺の事を理解してくれていて何よりだよ」
「おう!ところで親父さんとお袋さんは?」
「あー……それはあと一組のカップルが来たらまとめて説明するわ」
「あと一組のカップル?」
浩太は頭に?マークを浮かべている。そう言えば、敬から連絡もらったって言うの忘れてたな。
「ん?来たみたいだな」
噂をすれば影。インターホンが鳴り、もう一組のカップル────敬と早川が来たみたいだ
「ちょっと出てくるわ」
「お、おう!わかった」
浩太と女性陣を残し、俺は玄関へと向かう。多分、敬と早川だ
「こんにちわ、遊」
「おっす、藤堂」
ドアを開けた先には予想通り敬と早川がいた。この2人も浩太達と同様にスーパーの袋を持っている
「いらっしゃい。敬、早川」
浩太達と同じく敬と早川をリビングに通す。一応はこれで全員揃ったわけだが……
「あれ?浩太?」
「え?敬?」
互いの事を知らなかったのか、敬と浩太は目を丸くしている。まぁ、泊まりに来る事を知ってるのは俺と遊華と香月ぐらいだし……
「言うの忘れていたが、浩太の後に敬からも泊めてくれって電話があったんだよ」
泊めるのは俺だから言う必要はないだろうとは思うが、言っとかないとな。互いにいつまでたっても帰らない事に違和感を持つだろうし
「そ、そうだったの?」
「そ、そうだったのか……」
浩太と敬は驚いてはいないものの目を丸くして互いを見ていた。何だ?お前ら、彼女持ちの癖にそういう趣味もあったのか?
「まぁ、そういう事だからよろしく」
浩太も敬もどうして家に泊まりに来たのかは知らない。泊まりに来る理由は親と喧嘩して家出したくらいしか思い浮かばない。
「ところで遊、お父さんとお母さんはどうしたの?あいさつくらいしておきたいんだけど?」
そうか、浩太もだが、敬も知らなかったんだっけ?今話してもいいが、それには美月がいない。あれ?そう言えば美月はどうした?
「なぁ、香月」
「ん?何?遊」
「美月はどうした?」
「生徒会の仕事だよ」
あ、そうか、それで朝からいなかったのか。しかし、美月が生徒会か……役職はなんだろう?
『ただいま~』
ちょうどいいタイミングで美月が帰ってきた。美月も帰ってきたし、そろそろ説明するかな
「遊ちゃん、玄関に靴いっぱいあったけど、お客さんでも来てるの?」
制服姿で美月がリビングに入ってきた。美月だけだったな。今日の事知らないのは
「俺の友達とその彼女が泊まりに来ているんだ。ホラ」
俺は浩太達のいる方を指差した。いや、別に指差す必要はないけど、何となく……な?
「そうだったんだ~」
美月は疑いもせずに俺の言った事に納得してくれた。美月さんマジ天使。あ、遊華と香月が可愛くないわけじゃないぞ?未来であった時もそうだが、美月って人を癒す力というか、オーラがあるから……表の顔は……
「それより遊!親父さん達がいない説明をしてくれ!」
浩太が痺れを切らしたように説明しろと言ってきたが、コイツはもう少し落ち着くって事を覚えた方がいいと思うぞ?
「あれ?お兄ちゃん、まだ説明してなかったの?」
どっから話を聞いていたかわからないが、遊華がリビングに入ってきた
「いや、全員揃ってからと思ってな。これから説明するところだ」
「頑張れ!お兄ちゃん!」
遊華から応援のエールをもらった俺は今の状況を簡単に説明した。親父達が香月達と入れ替わりで家を出て香月達の家に住む事、それが一昨日急に親父から話が合った事、現在はこの家には俺達しかいない事の全てをな
「大変そうだね、遊」
「まぁな。父さんも大胆な事をしたもんだと思っている」
「まぁ、あれだ。頑張れ、遊」
「ありがとな」
説明が終わった後、敬と浩太に励まされながらも俺はこの家で遊華達と仲良くやっていこうと決意した
「それでだ、遊」
「何だ?浩太?」
俺と浩太、敬がこれからの事について話し合っている間に仲良くなった女性陣。それで時は現在に戻るわけだが、未だに俺達がどうして椅子に縛られているのか理解できない
「どうして俺達は椅子に縛られているんだ?」
「わからないが、多分、遊華のヤンデレが伝染ったんだろうな」
椅子に縛られてる理由は理解できないが、考えられる原因は遊華のヤンデレが香月達に伝染った。こんなところだろう
「遊華ちゃんのヤンデレってそんなにひどいのか?」
「未来に飛ばされた話したろ?」
「ああ……」
「未来での遊華はもっとひどかったぞ?いろんな意味で」
敬を助ける気が起きない俺と浩太はどうしてこうなったかを考え、その原因が遊華のヤンデレが伝染ったという結論に至った。別に疲れはしないが、唐突なのは勘弁してほしい。そう思った
今回は宿泊回の前篇でした
縛られた理由は次回!!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました