【美優ヤンデレ編3】俺が美優と一緒に早退する件について
今回は美優と一緒に早退する話です
今回は美優達が朝いなかった理由も明らかに。その理由とは
では、どうぞ
昼間とはいえ、野外で寝る事って無謀だと思う。俺は今日ほど屋上で寝た事を後悔した事はない。そして、今日に限って携帯のバッテリーは美優の鬼のようなヤンデレメールによって少なくなっている。まだ昼休みだというのに残り10%だ。特に連絡を取るような相手もいないからそれは別にいいんだけど。おっと、話が逸れたな。俺、藤堂遊は今、昼間とはいえ屋上で寝た事を後悔している。
「はっくしょん!寒ッ!」
昼間とはいえ季節は秋だ。一見暖かいように思えるが、実際は暖かくはない。そりゃ、あと少し数か月で冬だしな。それはいいとして、視線を感じるのは気のせいだろうか?そう思い、俺は入口の方に目をやった。
「………………」
「………………」
気のせいじゃなかった。完全に目が濁り切った美優がいたわ。感じる視線の正体って美優だったのか……
「み、美優、いたなら声くらい掛けてくれ……」
俺が女で美優が男だったらストーカーと間違われても文句は言えないし、それに、美優は未来でもこの時代でもストーカー被害に遭っている。そんな美優がストーカーの真似事だなんて……
「…………」
入口から俺を見ていた美優は目が合った瞬間、無言で近づいてきた。そして────────────
「な、何だよ……」
俺の目の前に立った。
「遊くん、どうしてメール返してくれなかったの……?」
「え……?」
美優の悲しそうな声は昼間の騒がしい時間帯で校舎全体が賑わっているにも関わらず、ハッキリと聞こえた
「“え……?”じゃなくて、私はどうしてメールを返してくれなかったの?って聞いてるんだよ?」
「どうしても何も授業中だったし……」
「遊くんは授業と私、どっちが大事なの?」
美優は寄りにもよって社会人のカップルがほぼ必ずと言っていいほどするベタな質問をしてきた。社会人の場合は『仕事と私、どっちが大事なの?』だけど、ハッキリ言って大事なのは仕事だ。仕事をしなきゃ生活していけないからな。それと同じで学生にとって彼女と授業なら授業の方が大事だ。将来の事を考えるとな。しかしだ。ヤンデレにそんな将来の事とかは通用しないだろう。つまり、授業と答えるのはいい手とは言えない
「そ、そりゃ、授業と美優を比べると美優の方が大事だぞ?」
ヤンデレにこの返しが有効なのかどうかは知らない。だが、どう答えてもこの先の展開は俺がスタンガンか何かで意識を刈り取られ、どこかに運ばれる。そういう展開になるんだ。だったら授業と答えても美優と答えても同じ事だ
「だったら!!だったらどうしてメールすぐに返信してくれないの!?遊くんは授業よりも私が大事なんだよね!?だったらメールの返信くらいすぐできるよね!?」
ここが屋上でしかも昼時で助かった。この季節に屋上に来ようなんて物好きはそうはいないだろうし、それに、昼時という事で俺達の話に耳を傾けている奴なんてそうはいない。美優がどれだけ叫ぼうと関係ない
「俺も授業中だったが、美優だって授業中だと思って休み時間に返信しようと思ってたんだよ」
嘘は吐いてない。授業中に返信したら迷惑かなと思っていたのは本当だ。
「でもッ!授業中でも私は返信してほしかった!遊くんとお話したかった!」
いやいや、授業中に携帯弄ってたら先生に目付けられるって!そもそも、美優は何て言って学校に入ったんだよ!俺の居場所がわかったのは……お守りのお蔭か
「いやいや、授業中に携帯なんて弄ってたら先生に目を付けられるし、それにだ。美優は何て言って自分の学校を抜け出して何て言って俺の学校に入ったんだよ?」
学校を抜け出すにしても口実が必要だし、俺の今いる学校に入るのにも口実が必要だ。問題はその口実だけどな!
「そんなの具合悪いからって言って早退して忘れ物を届けに来たって言えば簡単なんだよッ!」
なるほど、具合が悪いと言って中学を早退し、忘れ物を届けに来たと言って高校に入ったのか。それなら双方の先生も咎める事はしないだろうな
「美優が中学を抜け出し、高校に侵入できた口実は理解した4.が、俺の居場所はどうやって知った?俺は今日、浩太と敬と一言だって話してないし、ここにいる事は誰にも言ってないぞ?」
そう。お守りに隠しカメラと盗聴器を仕掛けてない限り俺の居場所を特定するのは無理だ
「遊くんが首から下げてるお守りには隠しカメラと盗聴器、それに、発信機が入ってるから居場所を特定するなんてわけないよ。それより、話を逸らさないでくれるかな?私はどうしてメールの返信をすぐにくれなかったかって聞いてるんだけど?」
お、覚えていやがった……メールの返信がすぐにできなかったのは授業中だったから。普通ならこの一言で済むんだが、相手はヤンデレで授業よりもお前が大事だって言ってしまった手前、今更答えようがない
「授業中で美優に迷惑が掛かると思ったから返信しなかったんだよ。俺だって美優とずっと話していたいが、愛する人の学びの機会を奪ってまで独占しようとは思わない」
結局授業中だったの一点張りになってしまうが、それ以外に思いつかないのもまた事実だ。
「あ、愛する人……」
おっ!愛する人って言葉が効いたのか、美優の顔が真っ赤だ。このままいけば何とかなりそうだぞ
「ああ、世界で最も愛する人だ」
言い方が親父っぽくなってしまったような気がするが、こればかりは仕方ない。親子だし。とは言っても血は繋がってないがな
「私も遊くんを世界で一番愛しているよ」
「そうか。でも、メールすぐに返信できなくて悪かったな」
「いいよ、そんなの……」
メールの件が一段落したところでずっと気になっている事を聞くとしよう
「メールの事は置いといて、今日の朝は美優達いなかったけど、どこ行ってたんだ?」
形は違えど遊華達は朝からずっと俺の側にいた。しかし、美優だけは違った。朝から俺の側にいる事はなかった
「ん?遊くんが入院してた時に会った女性を探しに行ってたんだよ」
なんだろう?女性って書いて別の読み方をされた気がするんだけど?
「それって俺を兄と呼んだ女性の事か?」
「それ以外に何があるの?」
ありませんよね。それ以外に。っていうか、俺だってその女性の名前知らないのに会った事すらない美優が探し当てられるはずがないと思うんだ
「いや、他にないとは思うが、会った事すらない美優がどうやって探し当てるんだよ?」
「私1人で行くわけないよ。ちゃんと遊華ちゃん達も連れて行ったから」
「みんなが朝いなかったのはそれが理由か……」
遊華達が揃っていなかった理由は何となくだが検討は付いていた。1回目は俺1人で対面したが、2回目は美月も一緒だった。美月がいりゃ簡単に探し当てられるだろうよ!どうやってやるのかは知らないけどな!
「うん……だから、遊くんが危険な目に遭わないように隠しカメラと盗聴器、発信機付きのお守りを置いて行ったのに……遊くん気味悪がって持ってかないし」
当たり前だ。シャワー浴びる前はなくてシャワーの後にポッと出たお守りなんて気味悪すぎて持って行く気になるかっての!
「シャワーの後にいきなり現れたお守りなんて気悪くて持って行く気にならなかったんだよ」
誰だっていきなり現れた不気味なものなんて持って行く気にならないだろ?
「最初からリビングのテーブルの上に置いといたよ!遊くんが寝ぼけて見えなかっただけでしょ!?」
言われてみれば俺はあの時、寝ぼけていたような気もしなくはない。まぁ、美優からの贈り物を不気味と思ってしまった後ろめたさがあるから強く否定できない
「言われてみればそうかもしれない。悪かったな、美優」
「わかればよろしい!」
親父のドヤ顔には殺意しか沸かないけど、美優のドヤ顔は可愛いと思うのは性別の差なのか、それとも、人徳の差なのか……何はともあれスタンガンで気絶させられる展開は避けられたようでよかった
「で?美優はこれからどうするんだ?このまま帰るのか?」
美優は学校を早退した身だ。用事が済んだからと学校に戻るなんてわけにはいかないだろう。となると残る選択肢は家に帰るという選択しかないわけなんだが……
「うん!このまま家に帰るよ。ただし、遊くんと一緒にね!」
デスヨネー!今日は美優の日だからこうなりますよねー!で、俺は────────────
「玄関で待っててくれ」
当然、こう答えるしかないわけで……
「うん!」
その答えに美優が満面の笑みを浮かべる。彼氏が彼女の尻に敷かれるってこういう場面の事を言うって俺は学んだ
「なんて言い訳すっかなぁ……」
美優に玄関で待つように言った俺は教室へ荷物を取りに行く間で早退する言い訳を考えなきゃいけなくなった
「無難に体調不良にしとくか……」
俺は3日前、椅子で殴られて病院に運ばれた。一昨日は退院って事で学校を休み、昨日は大事を取って休んだ。で、今日は出てきたんだが、具合が悪くなった。そう言う事で早退しよう。
「まぁ、学校側からしてみれば病み上がりだし、咎められる事もないか」
学校からしてみれば俺は病み上がりだ。俺が早退したところで特に違和感はないだろう。ただ、俺の出席日数が……そんなに危なくなかったわ。欠席とかしてないし
「彼女のお願いじゃなかったら絶対に聞き入れなかっただろうなぁ……」
彼女の頼みじゃなければ迷わず断っていたところだが、彼女の頼みじゃ仕方ないし、そもそも、俺の失言が招いた事でもある。
「ごちゃごちゃ言ってても仕方ない。さっさと教室に戻るか」
俺は教室に戻り、荷物をまとめ、近くにいたクラスメイト(男子)に早退する旨を先生に伝えてもらうように頼み、玄関へ向かった
「遊くん!おっそい!」
玄関では美優がリスのように頬を膨らませて待っていた。遅いと言われてもそんなに時間経ってないだろ?精々5分くらいだろ?
「悪かったよ。さて、帰るか」
「うん!」
俺の腕に抱き着いてくる美優を見ると再開した時の事を思い出す。最初は警戒心バリバリだった美優。そんな美優が嬉しそうに抱き着いてくる。人間変われば変わるものだな
なんて思っていた時期が俺にもありました。家に帰って来た途端、寝室に連れ込まれ、いきなり押し倒されるとは思わなかった……
「美優?」
「何?遊くん?」
「どうして俺は押し倒されているのでしょうか?」
「どうしてって2人きりになったら押し倒すのが普通じゃないの?」
どうして彼氏と2人きり=押し倒すっていう公式が出るんだよ……もっと他にあるだろ?
「俺に聞かれても困るんだけど?男と女じゃ恋愛に対する価値観とか違うし」
男女じゃ価値観が違うから2人きりになったら押し倒すのが普通って言うのは理解できない
「そうなの?私達の中じゃ遊くんと2人きりになったら押し倒すのが当たり前なんだけどなぁ……」
私達と言うのは聞くまでもなく遊華達の事なんだろうなぁ……っていうか、俺と2人きりになったら押し倒すのって遊華達の中じゃ普通の事だったんだ……
「美優達の普通がそうなら別にいいんだけどよ……」
「じゃあ、いいじゃん!遊くん!やっと2人きりになれたね!」
「そうだな」
「で、今は遊華ちゃん達もいない……」
「学校に行ってるんだから当たり前だろ」
「ふ……ふふふふ……遊くんと私しかこの家にいない……」
なんだか美優の様子がおかしいぞ?どうしたんだ?
「そ、そりゃ、そうだろ。それより、美優どうした?なんか変だぞ?」
美優の様子はマイルドに例えるのであればホラー映画とかで狂ってしまった人のようだ
「だって、やっと遊くんと2人きりになれたんだよ?この時をずっとずっとずーっと待ってたんだから!私が遊くんを独占できるこの瞬間を!遊くんが私だけを見てくれるこの時を!遊華ちゃんでも香月さんでも美月さんでも由紀ちゃんでもない!この私だけを遊くんが見てくれる!私だけが遊くんを独り占めできる!遊くんが私だけを愛してくれる!こんな嬉しい事があるのに普通でなんかいられないよ!」
美優の目はいつものヤンデレモード以上に濁っていた。光がないのはお約束だ
「いっ……!」
俺の肩に痛みが走る。美優が掴んでいた力を強めた事はすぐにわかった。が、それ以上に美優がこんなに力持ちだって知らなかったぞ……
「あぁぁ……遊くん……痛がっている顔もカッコいい……いつも冷静な遊くんが痛みに悶える表情をしている……遊くんのこんな表情を出せるのは私だけ……」
俺が見た事ない美優の恍惚とした表情。いつもはそんな表情を見せないのに今日に限ってどうしたんだ?
「み、美優、痛いんだけど?」
「痛い?でもその痛みによって遊くんは私を感じられるでしょ?私のものだって実感できるでしょ?ねぇ?遊くん?いつもはちゃんと言えない事も多いから言うけど、遊くん愛してるよ。初めてあった時からずっと」
初めてあった時……遊華が美優と由紀を家に連れてきた時か。でも、あの時は警戒心丸出しだっただろ?
「初めてあった時って俺は警戒されているのかと思ったんだけどな」
由紀もいたから一概には言えないが、あの時は警戒されていると思っていた
「そんな事ないよ。私は遊くんに一目惚れしたし。それにあの時もそうだけど、すぐにでも遊くんを私のものにしたかった。遊華ちゃん達の手前そういうわけにもいかなかったけどね。でも、今の私は遊くんの恋人……遊くんに私を刻み込む事ができる……ふ、ふふふふふふふふふふふふふふふ……遊くん……遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くん遊くんアイシテルヨ」
俺の中でのヤンデレランキング第1位が美優に決定した瞬間だった。っていうか、よくもまぁ、息継ぎ無しで俺の名前を連呼できたものだと感心してしまう自分がいる
今回は美優と一緒に早退する話でした
遊華から始まったヤンデレ編ですが、なんだかんだで美優が1番狂っているように思う今日この頃。さすがに今回は最後の美優のセリフだけで1000文字を超える事はありませんでしたが、それでも900文字は超えました。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました