【美優ヤンデレ編1】朝起きたら誰もいなかった件について
今回は美優ヤンデレ編の第一弾です
正直、美優編が1番狂っていると思っている
では、どうぞ
昨日は変な日だった。2人きりだったってのもあってか由紀はナース服で半日を過ごすし、昼はエビ天とイカ天オンリーのメニューだった。で、このエビ天イカ天オンリーメニューが昼だけだと思っていた俺は夜になり、自分がどれだけバカだったのか気づいたね。夜も同じメニューになるとは思わなかったよ……まぁ、昨日の話はこれくらいにして、遊華、香月、美月、由紀ときたら残るは美優しかいない。今日はどんな1日になるのやら……
「……………………普通だ」
遊華の時は両手に手錠が掛けられていた。香月の時は俺が起きた時には食事が用意されていた。美月の時には俺が入院していたという事もあってか特に何かあったわけではなかった。それでも俺を兄と呼ぶ女に出くわした事はあったけど。で、由紀の時はシャワー上がりの由紀と遭遇した。ダブってない限りじゃ今日は美優の日だと思う。が、美月や由紀の時と同様にこれと言って変わった事がない。ま、何もないのなら別にいいか。
「遊華の時のインパクトが強すぎてそれが普通だと思ってたが、本来は香月や美月、由紀の時と同様にこれが普通なんだよな……」
起きた瞬間、両手の自由が利かなない事が普通だと思っていた俺だが、本来は何もないのが普通だ。
「さて、いつまでも寝ていたら遅刻しちまうし起きるか」
俺が起きて遊華達の朝飯を作る。これが俺にとっての日常だ。
「あれ?誰もいない?何でだ?」
起きた時に美優達がいなかったのは誰かが俺の代わりに朝飯を作り、その他の奴らは各々学校に行く準備をしている。俺はそう思っていた。しかし、リビングに入ると誰もいない。珍しい事もあるもんだ
「遊華達は先に行ったのか?そういえば今、何時だ?」
そう思って壁に掛けてある時計で時間を確認したところ時刻は現在6時50分。時間的には今から朝飯を食い、シャワーを浴びて登校しても十分に間に合う時間だ。だと言うのに俺の彼女達は全員揃っていない。どうして?
「まだ7時にもなってないのに全員いない……部活か?」
遊華達が部活動に入っているだなんて話は聞いた事がない。それを理解しているうえで部活の線で考えてみたが、その考えはすぐに却下した。文化部に入っているんじゃないかという事もありうるが、文化部で7時前に登校するだなんて事を俺は聞いた事がない。そういうのは大抵が運動部だ。
「部活じゃないとしたら生徒会か?まぁ、それならありうるが……生徒会の仕事だったとして、こんな時間に登校するか?」
生徒会ならば何かの活動で早朝の登校はない話じゃない。が、7時前に登校する活動って何だ?
「生徒会だとしてもこんな朝早くに登校するだなんて聞いた事がない。うん、生徒会じゃなさそうだな」
生徒会の活動という線も消えた。じゃあ、どうして美優達はいない?
「っと、そんな事考える前にシャワーでも浴びるか」
考えても仕方のない事は考えない事にして俺はシャワーを浴びる為にバスルームに向かった。
「気になる……」
シャワー浴びる前は考えても仕方名のない事は考えないようにしようとした。しかし、気になるものは気になる。いつもなら俺よりも遅く起きる美優達が今日に限ってどうして俺よりも早く起き、家を出たのか。部活動に入っているわけでもないのに。もちろん、俺1人でそんな事を考えても答えは出ないなんて事も解っている。解っていても考えてしまう
「学校に行けば香月と美月に会えるだろうし、あった時にでも聞くか」
1人で考えても仕方ないので学校で香月か美月に会っていなかった理由を聞く。美優、由紀、遊華は中学生だから学校が違う。香月と美月ならば学年は違うが、学校は同じだ。美優達よりはエンカウント率が高いはず。
「さっさと上がって朝飯にしよう」
俺はシャワーから上がり、身体と頭を拭いた後、着替えてリビングへと行った。が、そこで奇妙な事が起こった。
「お守り?シャワーの前にはこんなものなかったよな?」
シャワーを浴びる前にはなかったお守りが置いてあった。家はからくり屋敷じゃない。家具だってどこにでもある家具だ。当たり前だが、物を隠せる仕掛けなんてない。だというのに、シャワーを浴びる前にはなかったはずのお守りが置いてあった。
「泥棒……じゃないよな?」
泥棒は物を盗みはするが、物を置いていくなんて事はしない。見られてくない書類の類なら話は別だが、泥棒がそんなのを持っているだなんて刑事ドラマの見過ぎだろう。
「泥棒が物を置いてくわけないか。でも、一体このお守りは誰が……ん?何だこの紙?」
お守りの横に置いてあった二つ折りの紙。シャワーを浴びる前にはなかったお守り、その横に置いてある二つ折りの紙を見ているとシチュエーションは違うものの本当の母からの手紙を見つけた時の状況と酷似している部分がある。
「気味悪いが……開けなきゃいけないんだよな……この紙」
本当の母からの手紙もそうだが、突如として現れる俺に宛てたであろう手紙というのは君が悪い。郵便や朝、学校に行って下駄箱に入ってる手紙とはわけが違う。本当の母の手紙は学校に誰もいないであろう時に誰かが侵入して職員室の机に置いたであろうものだった。
「えー、“貴方に危険が及ばない事を祈ります”か……俺の事を心配してくれるのは嬉しいんだけど、差出人くらい書いといてくれたらいいのに……」
差出人不明の手紙にトラウマなんてない。が、差出人不明というのは気味が悪い
「学校で見つけたのであればいざ知らず、ここに置いてあったって事は明らかに俺宛て……で、いいんだよな?」
学校で見つけた場合は勘違いって可能性もある。しかし、見つけたのは家で家全体を確認したわけじゃないが、おそらくは俺1人だけ。そんな状況で他の奴に宛てたものと間違えるはずがない
しばらく考えた結果、俺はテーブルに置かれているお守りは持って行かない事にした。差出人不明の手紙と共に置いてあったお守りなんて気味が悪い
「お守りを持って行けとは書いてなかったし、別に持ってかなくたって大丈夫だろって事で」
家の戸締りをし、学校へ行こうとした。その時────────────
「ん?着信?メールか?しかし、一体誰から?」
ポケットに入れてある携帯が震えた。着信の長さからしてメールだろう。だが、一体誰から?
「ん?美優?買っておいてほしいものでもあるのか?」
携帯を確認したところ、着信は美優からでメールだった。買っておいてほしいものでもあるのか?例えば、お菓子とか。
『どうしてお守りを持って行かないの?』
美優からのメールは題名がなく、本文にお守りの件について書かれていただけで傍から見れば普通のメールに見えないくもない。が、俺が起きた時にはいなかった美優がどうしてお守りの存在とそれを持って行かなかった事を知っている?
「どうしてって、シャワーから出ていきなり現れたお守りなんて不審過ぎるからだっと」
俺は正直に自分の思っている事をメールに書き、それを美優に返信した。それで納得してくれればいいが、多分、納得はしないだろう。
「やっぱり……」
美優からの返信には『不審だからって理由でお守りを置いて行かないで。ちゃんと持って行って』と書かれており、どっからどう見ても納得はしてなかった。
「はぁ……ヤンデレと口論したところで拗れるだけか……」
ヤンデレと口論するだけ時間の無駄だ。いや、長期戦になれば俺が不利になる。根拠はない。強いて言うなら俺の経験がそう言っている。と、言う事で俺は家に戻り、リビングのテーブルにあるお守りをズボンのポケットに突っ込んだ
「これで美優も文句は言うまい」
美優はお守りを持って行けとは言ったが、入れる場所の指定はしてない。俺がお守りをどこに入れようと自由なのだ
「ん?また着信?今度は何だ?」
美優に言われた通り、お守りは持った。ズボンのポケットに入れてるから文句はないはず。そう思って携帯を取り出し、メール画面を開いた
『ズボンのポケットじゃなくて紐があるんだからちゃんと首から下げて』
メールにはそう書かれていた。確かにお守りには紐が付いていた。しかし、どうして美優は俺がお守りをズボンのポケットに入れた事を知っているんだ?
「ヤンデレだから俺の行動を把握していてもおかしくないか」
何回か言っているが、慣れって恐ろしいもので、美優が俺の行動を知っていてもヤンデレだからである程度はやり過ごせる。それを変だと思わない。自分の恋人は病んでるのが当たり前だと思い始めているのかもしれない
「首から下げないとまた文句言われるだろうし、仕方ないか」
時々本屋でバカとは喧嘩するな的な題名の本が売っている事がある。確かにその通りだと思う。しかし、俺は新たにヤンデレとは口論するなと言いたい。絶対に長期戦になって拗れるから!それはさて置き、俺は美優が俺の行動を把握している事に何の疑問も抱く事なく登校した。ちなみに、お守りは他人から見えないようにTシャツの下に隠した
学校に到着し、教室に入った俺はいつも通り浩太と敬に声を──────掛けられなかった。
「浩太も敬もいるのに声を掛けられない……。今日に限って……」
浩太と敬にも調子のいい時と悪い時がある。当然、俺と話したくない時だってある。しかし、俺が教室に入った時にはすでに浩太も敬もいた。
「朝起きたら美優達はいなかったし、浩太と敬とは連絡を取ってなかったから喧嘩を売るような事なんてした覚えがない。どうなっているんだ?」
美優達がいないのはともかく、浩太と敬に関して言えば俺から声を掛けたわけではないので現状では何とも言えない状態ではある。何とも言えない状態ではあるのだが、差出人不明の手紙とお守りの件がある。今の俺は些細な事でもおかしいと思ってしまう
「と、藤堂君、おはよう……」
「え?あ、ああ、おはよう」
浩太と敬が声を掛けてこなかった代わりにクラスメイトの女子が声を掛けてきた。珍しい事もあるもんだ
「にゅ、入院したって聞いたけど、怪我はもういいの?」
「ああ、医者からは特に目立った異常はないって言われたし、昨日1日休んだから何ともない」
「そ、そう、よかった……」
「心配してくれてありがとな」
「う、ううん!クラスメイトを心配するのは当たり前だよ!わ、私、もう行くね!」
「あ、ああ……」
俺が浩太と敬が声を掛けてこなかった代わりにクラスメイトの女子に話しかけられ、2~3言話すなんてまだ始まったばかりだが今日は本当に珍しい事が多い。そんな事を考えているとズボンのポケットに入れてある携帯が震えた。
「今度は誰からだ?」
登校前に美優からメールが2回あった。美優からメールしてくる事自体が珍しいのに今日に限ってメールが多い。そんなに俺に用事があるのか?
「美優から?今度こそ買い置きの注文か?」
登校前のメールはお守りを持って行けって内容とお守りを首から下げろという内容だった。今度こそお守りの件以外のメールであると信じたい
『どうして他の女と喋ってるの?遊くん、浮気するの?あ、でも、さっきの子は私達より可愛くなかったね!』
どこで見てるんだよ……。どうして俺がクラスメイトの女子と話したの知ってるんだよ……
「はぁ……どうして俺の状況を知ってるんだよ……」
ボヤいていると再び美優から着信が入った。今度は何だ?
『遊くんの事なら何でも知ってるよ。どう?嬉しいでしょ?』
ここまでされると逆に怖いんですけど……
「嬉しいとかそれ以前に常に監視されているようで怖いんだが……」
今まではやって精々監禁くらいだし、遊華が似たような事をしたような気もするが、それだって俺の行動に対していちいちメールをしてくるような事はなかった。なんて思っているとまた着信が入る
『怖い?遊くん今、怖いって言った?私の愛のどこが怖いの?答えて!ねぇ!答えてよ!答えろ!!!!』
俺の独り言までバッチリ聞かれてたようで、メールの文面から狂気を感じる。
「はぁ……」
溜息しか出ない。ヤンデレなのはもう慣れた。が、さすがに文面から狂気を感じるメールを貰ったのは初めてだ。こんな時、どういった対応をしたらいいんだ?そんな事を考えてたらまた着信が
『溜息吐いた……遊くんにとって私って要らない子?私と遊くんって相思相愛だと思ってたのにそう思ってたのは私だけだったんだね……そうだよね……メールも返してくれないし……私なんて要らないよね……私は遊くん愛してるのに遊くんは愛してくれない……嫌になっちゃうな……私は遊くが愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて堪らないのに遊くんはそうじゃなかったんだね……』
悪いとは思ったが、俺はこのメールを見た瞬間、携帯をズボンのポケットに入れた。
今回は美優ヤンデレ編の第一弾でした
最後の美優からのメールだけでまさかの1000文字越え・・・・。そろそろパターンを変えようかと思ってはいるんですが、肝心なところにまだ到達してないのでこのままでいきます
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました