【由紀ヤンデレ編1】由紀が俺の失言でパニックになった件について
今回は由紀が遊の失言でパニックになる話です
遊は注意するつもりで言った事ですが、由紀は違ったようです
では、どうぞ
昨日、俺は未来から帰ってきた後、美月の計らいで夕飯は遊華達と一緒だった。その夕飯の前に帰ってきた遊華達に泣きながら抱き着かれた挙句、揉みくちゃにされたのは言うまでもない。そんな事があったからなのか、遊亜からされた話を俺も美月も切り出せなかった。問題が起こるのは高2に進級した後だから別に今、話さなくてもいい。それよりも今日の担当は誰かを考えた方が無難だ。遊華、香月、美月ときたら残るは2人。由紀と美優だ。
「…………………おかしい」
今日は起床からおかしい。何がおかしいって朝飯が用意されてない。いつも俺が作っているから起きてすぐに朝飯が用意されている方がおかしいのだが、そうじゃない。美月の時は入院していたから仕方ないとして、遊華、香月の時は起きたらすぐに朝飯が用意されていた。それが今日は用意されていなかったのがおかしいのだ。
「ま、まあ、これが普段の生活なんだよな。俺がみんなの朝食を作る。うん、それが俺の日常だ」
今日のヤンデレ担当の事は一先ず頭の片隅に置いといて、俺は朝飯を作るため、寝ている遊華達を起こさないようにベッドから出てキッチンへと向かう
「これが普通の生活なんだよな……」
用意されていて当たり前、奢られて当たり前だという認識を遊華達に持たせたくはないが、奢るのはともかく、この家の家事は基本的に俺がほとんどやっている。それを考えると起きた時に朝飯が用意されていて当たり前だと思う
「あれ?遊さん早いですね」
リビングに行くとシャワーを浴びていたのか由紀がバスタオルで頭を拭きながら牛乳を飲んでいた。
「ああ、昨日はグッスリだったからか早く目が覚めてな」
「そうですか。昨日は睡眠薬を盛らなかったですから遊さんがこの時間に目覚めるのも納得がいきます」
「…………」
慣れたくはない。慣れたくはないけど、睡眠薬を盛られた事に対し、恐怖心が全く沸かない現状にただ無言になる程度になってきているのは慣れと言わざる得ない。しかし、睡眠薬を服用しすぎると死に至ると言うのを聞いた事がある
「どうしました?」
首を傾げ、キョトンとする由紀から悪意は感じない。もちろん、狂気もだ。だが、さっきも言った通り睡眠薬を服用しすぎると死に至る可能性がある。ここは釘でもさしておくとするか
「あ、いや、何でもない。が、これだけは言っておく」
「?はい」
「俺が長生きするために睡眠薬を盛るのは控えるように。じゃないと俺、本当に死んじゃうかもしれないから」
「遊さんが死ぬ……?」
俺が死ぬと聞いた由紀の顔から血の気が引いた。やりすぎたか?
「あ、あくまでも睡眠薬を服用しすぎるとって話だぞ?」
俺は慌てて取り繕う。
「遊さんが死ぬ……嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
取り繕ったが時すでに遅し。由紀は俺が死ぬと聞いた途端に発狂してしまった。俺はほんの少し気を付けてほしかっただけで発狂させるつもりはなかった。しかし、この有様だ
「お、落ち着け!俺は由紀達を置いて死ぬわけないから!」
「嫌……遊さんが死ぬなんて嫌ぁぁぁぁ!!」
落ち着くように言ってはみたものの由紀は狂ったように叫ぶ。完全にやりすぎた……
「落ち着け!俺は死んだりしない!ずっと由紀の側にいる!」
俺は由紀を思いっきり抱きしめた。遊華達が起きてくる可能性を考えなかったわけじゃない。朝から叫んでいたら誰だって何事かと起きてくる。が、今はそんな事関係ない
「ほ、本当ですか?」
「ああ、俺は由紀達を置いて死んだりしない」
「で、でも、さっき本当に死ぬって……」
落ち着きを取り戻してくれたのはいいとして、由紀は俺が本当に死ぬってところはバッチリ聞いてたみたいだが、その前の睡眠薬を服用しすぎるとって部分は聞いてなかったみたいだ
「それは睡眠薬を服用しすぎるとって話だ。よくいるだろ?睡眠薬を一瓶飲んで自殺する奴。あれと一緒だ」
「そ、そうですか……」
パッと見は落ち着いているように見えるが、精神的にはまだ不安定みたいだな
「ごめんな。俺の失言で不安にさせて」
「そう思うならもっとキツく抱きしめてください……私が壊れるくらい……」
「ああ。わかった」
俺は由紀の要望通りキツく抱きしめる。発言には気をつけていたつもりだった。しかしだ、俺の失言で由紀を……好きな人を不安にさせてしまった……俺は大バカ野郎だ
「遊さん、冗談でも死ぬだなんて言わないでください……」
「ごめん……」
「私は遊さんがいないとダメなんです……」
こんな時、俺は何て言うべきかわからなかった。少なくとも突き放すべきじゃない。俺はそう思う
「ああ。俺も由紀達がいないとダメだ」
自分の彼女を重いとは思わない。っていうか、重いのは遊華で嫌と言うほど知っている
「遊さん……」
「由紀……」
俺達はそっと唇を重ねる。由紀とキスしたのっていつ振りだろうか?そんな事を考えながら
「遊さんとキスするだなんていつ振りでしょう……」
「さぁ?いつ振りだろうな?こんな時に他の女の名前を出すのは無粋だが、俺は遊華と最後にキスしたのがいつかすら覚えてない」
「遊華でさえそれなんです。私と最後にキスした日なんて覚えてませんよね……」
俺の腕の中でションボリする由紀。遊華の名前を出したのはやっぱマズいよな?
「別に由紀に魅力がないとかじゃないからな?」
「ふふっ、知ってますよ」
俺を見上げ、柔らかな笑みを浮かべる由紀を見ているとどっちが年上か判らなくなる。未来じゃ重婚が認められている。前に親父から聞いた話だ。それに、実際に俺は由紀達と結婚している。その証拠に由紀達との間に子供がいたしな
「由紀は他の女の名前を出しても何も言わないのな」
「ええ、遊華達なら許します。ですが、遊華達以外の女の名前を出したら……」
「だ、出したら?」
「遊さんは私達のものだって証を付けます♪それも、一生消えないね」
笑顔でとんでもない事を言ってのける由紀の目は濁っていた。それもドロドロに
「大丈夫だよ。俺に由紀達以外に親しい女子なんていないから」
俺に由紀達以外に親しい女子なんていない。一昔前の俺なら多分、嘆いていたかもしれない。しかし、今の俺は由紀達がいる。俺の両手はものの見事に塞がっている。浮気しろって方が無理だ
「望海さんと明美さんは違うのですか?」
由紀さん?浩太と敬の彼女を親しい女子とカウントしますか?いや、女子なのには変わりないけど、友達の彼女ですよ?カウントしなくていいんじゃないんですかね?
「女子なのには変わりないけど、早川と明美さんは敬と浩太の彼女だ。友達の彼女を親しい女子にカウントするのはナシだろ?」
女子にカウントしないとバレた時に怒られる。それは間違いないんだが、それでも、敬と浩太の彼女を親しい女子にカウントするのはどうかと思う
「そうですね。さすがに親友の彼女を親しい女子にカウントするのは間違ってますね」
「だろ?それに、由紀もそうだが、あの2人も負けず劣らずのヤンデレだ。早川は敬、明美さんは浩太以外見てないって」
何をどうしたら周囲にヤンデレが集まるのかは知らないが、少なくとも大元は遊華だと思う。そして、そんなヤンデレ遊華を育てたのは母さんだ
「そうなんですか?」
「ああ。由紀もだけどよ、遊華のヤンデレ英才教育が行き届いているみたいで何よりだよ」
「当たり前ですよ。遊華は私に人を好きになる喜びを教えてくれたのですから」
しばらく抱き合った後、俺達は朝飯の用意を初めた。ちなみに、遊華達が起きてきたのは朝飯の用意が全て終わった後になってだった。俺の失言が原因とはいえ、由紀が発狂し、叫んでた時に寝ていたのは素直にすごいと思った
「さて、これからどうしたものか……」
「そうですね、どうしましょうか?」
俺は一昨日、先輩に椅子で殴られ病院に運ばれた。そして、昨日退院した。つまり、大事を取って今日は欠席するか、それとも、学校へ行くかの二択だ。さて、どうしよう……俺が休むと由紀も休むと言い出すだろう。だが、学校に行くと由紀といる時間が減る。ある意味で究極の二択だ
「俺が休むって言うと由紀も休むだろ?」
「当たり前です」
「でも、俺が学校へ行くと由紀と一緒にいる時間が減るだろ?」
「そうですね」
「どうしたらいいんだよ……」
「悩ましいですね」
本当なら学校へ行くべきだと思う。俺の出席日数的にも由紀の成績的にも。だが、恋人との時間を優先させるのであれば休みたい。こんな時に自分が学生だという事を心の底から恨めしい。
「俺の出席日数には余裕があるし、俺は休むが、由紀はどうする?」
俺は欠席が少ない方だ。少しばかり欠席したところで問題はない。問題は由紀だ。遊華や美優もそうだが、由紀は中3だ。これから受験だってある。受験生は少しでも学校に行った方がいいに決まっている
「休みます」
俺の悩みを余所に由紀は休むと言い出した。できれば学校に行ってほしいんだがな……
「何の躊躇いもなく休むって言ってるけど、今年受験生なんだから少しでも学校に行った方がいいんじゃないのか?」
俺も1年前は受験生だったから知っているが、受験には成績はもちろん、欠席日数も含まれる。由紀と知り合ってから欠席してるところなんて見た事ないが、できれば欠席は少ない方がいいと思う
「遊さんには言ってませんでしたが、私も遊華も美優もすでに推薦を貰ってます。ですから、多少なら欠席しても大丈夫なんです」
意外だ。由紀も遊華も美優も推薦ですでに進学先が決定しているだなんて……いや、考えてみれば由紀達が焦って勉強している姿なんて見た事なかった。
「へ、へぇ~、そうなんだ……ところで、由紀達の進学先の学校って……」
推薦で進学先が決まっているのはいいとして、問題はその学校の名前だ。推薦でって事はさぞかし有名な高校なんだろうな?
「遊さんの通う学校ですよ。私も、遊華も、美優もね」
由紀の進学先を聞いた瞬間、俺は開いた口が塞がらなかった。俺の通う高校は別に頭がいい学校じゃない。どこにでもあるような平凡な高校だ。推薦を取ってまで入るような学校じゃない。それがどうして推薦を取ってまで……
今回は由紀が遊の失言でパニックになる話でした
遊は注意する意味で言ったのですが、由紀はそれを本気でとらえてしまったようです
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました