【美月ヤンデレ編6】俺と美月が未来に飛ばされた件について
今回は遊と美月が未来に飛ばされる話です
遊亜がしたい話って何でしょう?
では、どうぞ
俺と美月は罰ゲームの最中に寝てしまったらしい。俺達はふと気が付き、時間を確認したら4時を回ったいた。それにしても、偶然なのか、それとも、美月が先に目を覚ましたはいいけど、俺が起きるまで待っていたのかは知らないけど、2人同時に目覚める事になろうとは……
「4時か……遊華達が帰ってくるまでにあと1時間といったところだが、美月、今日の晩御飯は何がいい?」
遊華達は大食いと言うわけじゃない。しかし、学校から帰ってきて飯が用意されてないというのはさすがにキツイだろう
「私は何でもいいけど、遊は退院したばかりだし、私が用意するわ」
確かに俺は退院したばかりだが、別にこれと言って調子が悪いわけじゃない。が、それを口に出して言ったところで美月の事だから絶対安静とか言い出すに決まっている。だからといって甘えっぱなしというわけにもいかないのは確かだ。美月と口論にならず、それでいて飯を用意する方法なんて1つしかあるまい
「いや、俺が用意する。と言いたいところだが、2人で用意しないか?」
俺は考える男だ。俺がやる、私がやると言い続けたところで時間の無駄になるのは火を見るよりも明らかだ。ならば2人で用意した方がいいに決まっている
「え?」
「ほら、美月は退院したばかりの俺が1人でキッチンに立つのが心配だろうし、俺としては美月1人に用意させるのは何だか心苦しい。じゃあ、2人で用意したら美月は俺が倒れないか見張ってられるし、いいかなと思ったんだがダメか?」
「遊、いつもは1人でやろうとするのに今日は2人でやろうだなんて熱でもあるの?」
美月、お前が俺を普段どんな目で見ているかよくわかったよ。いや、未来の美月は仕事をしていて家事をするのが基本、俺1人だったからそれが当たり前になっていて仕方のない事と言えばそれまでなんだけど
「別に熱なんてない。ただ、2人でキッチンに立つのもいいかと思っただけだ。それに、俺は台所番じゃないから誰かが台所に入ってきても文句は言わないし」
「そう。それなら2人でやりましょうか」
俺達は2人で笑いあった後、キッチンに向かうべく寝室のドアを開けた。
「よぉ、親父」
「やっほ~、お父さん、お母さん」
「「…………」」
俺の生活している部屋は寝室のドアを開けるとリビングに繋がり、そのまま行けばキッチンだ。広い部屋ではあるが、元は親父が母さんから逃げ延びるために作った部屋だ。1つの家族が生活するには若干狭くはある。しかし、彼女5人に俺が生活するにはちょうどいい広さだ。それはいいとして、どうして現代にいないはずの遊亜と遊月がいるんだ?
「おい、親父!返事くらいしろ」
「お母さんもだよ!」
「「…………」」
美月はどう思っているのか知らないが、俺は今、開いた口が塞がらない。いないはずの遊亜と遊月が目の前るんだからな
「美月母さんはともかく、親父は慣れろよな……」
俺に悪態を付く遊亜にいつもならツッコむところだが、今の俺はそんな余裕なんて皆無だ
「俺は1人で未来に飛ばされるのはいいとして、美月と一緒に未来に飛ばされたんだ。戸惑うなって方が無理だろ」
俺は戸惑いの中、何とかふてぶてしい態度の遊亜にツッコみを入れる。しかし、どうして俺だけじゃなく、美月も一緒なんだよ
「戸惑うのも理解できないわけじゃない。まぁ、今回は美月母さんにも聞いてほしい事があったから一緒に来てもらったんだよ」
「私にも?何かしら?」
遊亜が話したい事で俺と美月が関係している事って何だ?
「お母さん、お父さんが入院している時に行った売店で会った人、覚えてるよね?」
「え、ええ、遊を兄と呼んだあの人よね?よく覚えているわ」
俺はてっきり遊亜から俺を兄呼ばわりした女性の話が出てくるのかと思っていた。だが、その話を出してきたのは意外な事に遊月だった。未来の俺は自分の身にあった事を遊亜にだけ話しているものだとばかり思ってたんだけどな
「お母さんとお父さんはその女性女性ついてどう思った?」
俺を兄呼ばわりしてきた女性についてどう思ったか?俺個人としては変な奴程度にしか思ってない。美月はどう思っているんだ?
「そうね。男の人をいきなり兄呼ばわりするなんて危ない人だと思ったわ」
「俺も美月とほぼ同じだ。いきなり兄呼ばわりするだなんて変な奴か危ない奴のどっちかだと思った。それがどうかしたのか?」
俺と美月の意見は同じ。病院という場所で男性をいきなり兄呼ばわり。どう考えたって変な奴か危ない奴。もしくはそういう病気を持った奴。思い浮かべる印象としてはこんなもんだ
「遊亜……」
「ああ。こりゃ本格的にヤバイ展開になりそうだな」
遊亜と遊月は深刻な顔をして何かを相談しているようだ。そのところどころで『早めに呼んでよかった』とか『呼んだのが美月母さんでよかった』とか言ってる。一体何なんだ?
「なぁ、俺達にも解るように説明してくれないか?」
「そうね。2人だけで話を進めないでもらえるかしら?」
遊亜と遊月からしてみれば過去の話でも俺と美月からしてみれば未来の話だ。それに、遊亜と遊月が俺達を呼んだのには理由があるはずだ
「悪い悪い、事態が思ったより深刻化しているみたいだったからつい話し込んでしまった」
「ご、ごめんね、お父さん、お母さん……」
深刻化?どういう事だ?
「遊亜、事態が深刻化しているとはどういう事だ?俺達にこれから何が起こるんだ?」
高2に進級した時、本当の母が俺を迎えに来るのは夏休みの手紙で知っている。俺だけじゃなく、遊華達もだ。が、俺が謎の女性に兄呼ばわりされた事は現時点で知っているのは当事者である俺を除けば香月と美月のみ。とてもじゃないが、深刻な事態になっているとは思えない
「高2に進級した時、親父の本当の母親が迎えに来る。それは確かだ。その前に親父を兄と呼んだ謎の女性の事で問題があるんだよ」
そう語る遊亜の表情は真剣だ。どうやら本当に深刻な事らしい
「問題?何だよ?その問題って。高2に進級する前に遊華達と別れるとかか?」
遊亜と遊月がいて遊華達と別れるって事はあり得ないと思いつつも俺は1つの可能性として聞いてみた。遊亜と遊月がいるんだ。多少の困難があっただろうけど子を成し、結婚しているから問題はないと思う。しかし、不安要素はないに越したことはない
「俺と遊月姉さんがいる時点で親父達が困難ごときで別れるわけないだろ。それ以上の問題があるんだよ」
俺達が別れる以上の問題?俺からしてみれば美月達と別れるってのが最大の問題なんだけど?
「それ以上の問題って何だよ?俺からしてみれば美月達と別れるってのが最大の問題なんだが?」
「はぁ……遊月姉さん、後は頼んだ」
「ええぇ~!?私にも無理だよぉ~!」
深いため息を吐き、後の話を遊月に任せようとする遊亜とそれを拒否する遊月を見ていると深刻な問題が発生しているとは思えない
「大丈夫だって。教えた通りに話せば何も問題ないから!」
「で、でもぉ~……」
本格的に半べそを掻いている遊月を見ていると本当に遊亜の姉か疑わしくなる。本当は遊亜が兄で遊月が妹なんじゃないか?
「あなたたち、いい加減にしなさい。話があって呼んだのでしょ?」
遊亜と遊月の言い争いを怒鳴るでもなく落ち着いた口調で止める美月。落ち着いていはいるが、発せられているオーラは冷たかった。俺に向けられた時には凍死しそうなくらい
「「ごめんさない」」
凍死しそうなくらい冷たいオーラに充てられたのか、遊亜と遊月は委縮してしまった。うん、気持ちは解るぞ。俺は絶対に充てられたくないけどな
「それで?遊を兄呼ばわりした女性が今後私達にどんな影響を与えるのかしら?」
言い争いが止み、美月は冷たいオーラを引っ込めるかと思ったが、そうじゃなく、その冷たいオーラを発したまま遊亜と遊月を問いただし始めた
「は、はい、親父を兄と呼んだ女性は親父達が高2に進級した時に親父を洗脳しようとします」
「は?洗脳?SFやファンタジーじゃあるまいし、洗脳なんてできるはずないだろ?」
本当はSFやファンタジーじゃなくても人を洗脳する事は出来る。例えば日頃の愚痴だって繰り返し同じ人間に話すと聞かされた方も聞かせた人と同じように感じるって何かの本で読んだことがある
「SFやファンタジーじゃなくてもできるからネットや本に情報が載るんだよ。親父って意外とバカなのな」
クッ、バカにしやがって……大体、洗脳だなんてバカみたいな事を言った遊亜が悪いんだろーが
「うるさい。遊亜が最初に洗脳とか言い出すから悪いんだろ」
催眠術や洗脳を信じてないわけじゃない。しかし、俺を兄呼ばわりしてきた女性は危ない奴か変な奴だとは思ったが、催眠術とか洗脳とは無縁そうだった。そんな奴がとても大それた行動に出るとは思えない
「言い方が悪かった。正確には親父達の関係を壊そうとする」
「おい、洗脳どこ行った?」
洗脳って言うから何かと思えば俺達の関係を壊そうとするとか、そんなの結婚し遊亜達が生まれる過程でいくらでもある話じゃないか
「洗脳の事は忘れてくれて構わない」
遊亜って案外無責任なのか?
「わ、わかった。それで?その女性がどんな事をして俺達の関係を壊そうとするんだ?って言うか、そもそもあの女性は何者なんだよ?」
俺を兄呼ばわりするって事は俺よりも年下であるのは間違いなさそうだが、俺より年上で実はお兄ちゃんに憧れているだなんて人は世の中にはたくさんいる。一概に年下とは言い切れない
「それは高2に進級すればすぐに解る。とにかく、親父、これだけは言っとくぞ」
「何だよ?」
「アンタの本当の母ってのはヤバイ奴だ。自分の思い通りにするためなら何だってする。それくらいヤバイ奴だ。だから、気を付けろ」
「お、おう……」
会った事すらない人間に警戒しろと言われても無理な話だ。それでも、聞いておいて損はない。
「それもう1つ」
「何だよ?」
「親父、未来関係の本や資料は絶対に見つからないようにしろ。本当の母にそれを知られたら俺達は生まれなくなるかもしれないからな」
「了解」
未来関係の本や資料を見つからないようにしろと言った遊亜の表情は今まで以上に真剣だった。それくらい本当の母は自己中心的な奴だって事だ。そして、俺を兄呼ばわりした女性は俺達の関係を平然と壊そうとする。つまり、俺や美月達が傷つこうがお構いなしのヤバイ奴だって事か……
「さて、美月母さんも聞いてたな?」
「ええ、遊の隣にいて聞こえないわけないじゃない」
「本当は香月母さんも呼んで話をしたかったけど、今回は美月母さんの日って事で一緒に呼ばせてもらった。さっき話した通り親父を兄呼ばわりした女性と親父の本当の母はヤバイ奴だ。この事は遊華母さん達にも言っておいてほしい。俺からは以上だ。遊月姉さんは何か言いたい事あるか?」
まるで今回を最後に2度と会う事はないと言わんばかりの遊亜。俺はまだ父親になるって事がどんな事かは知らない。それでも息子に会えないってのは寂しいものだ。そう感じている自分がいる
「わ、私はお父さんとお母さん達ならどんな困難も乗り越えられると信じているから言う事は何もないけど、強いて言うなら、お父さん、お母さん、ちゃんと結婚して私達を生んでね!って事くらいかな」
「だ、そうだ。親父、美月母さん」
「「…………」
遊亜の忠告と遊月からの励ましの言葉に言葉が出てこない俺と美月。本当の母問題が解決したら俺はもう未来に飛ばされる事も、遊亜に会う事もないんだろうな……
「ここで黙られても困るんだが……まぁ、いい。親父、美月母さん。そろそろ時間だ。元の時代に帰れ」
自分から呼んどいて今度は帰れか……我が息子ながら勝手な奴だな
「遊亜、遊月、俺達は必ずお前達が生まれてくる未来にする」
「私も遊を絶対に離さないわ」
ドアを潜る前、遊亜と遊月に俺は遊亜達が生まれてくる未来にする事、美月は俺を絶対に離さない事を宣言した。それは同時に自分自身にも言い聞かせた。絶対に守る為に
「ああ!」
「うん!」
俺達は遊亜と遊月の笑顔に見送られながら元の時代へと戻った。結局、俺を兄呼ばわりした女性の正体は不明のままで俺はともかく、美月が呼ばれた理由もただ聞いてほしい事があったから。遊亜はそう言ってたが、俺は前に遊亜と話した事を忘れてはいない。俺は高2進級したら失踪するって話をな。多分、遊亜は俺の性格を見越して美月も呼んだ。俺はそう解釈している。
今回は遊と美月が未来に飛ばされる話でした
遊亜の話でわかったのは遊の本当の母がヤバイ奴だって事と病院で遊をお兄ちゃんと呼んだ女性がヤバイ奴だって事でした。遊亜は必要最低限のヒントしか与えないようです
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました