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【美月ヤンデレ編3】俺がめでたく退院した件について

今回は遊が退院した話です

検査結果は果たしてどんな結果だったのでしょうか?

では、どうぞ

 人生の中でドキドキする瞬間っていろいろあると思う。例えば、愛の告白をする時、誰だって考えるのは『フラれたらどうしよう?』って考える。それを言うなら結婚のプロポーズも同じ事が言える。後は片思いの相手と一緒にいる時とかもドキドキすると思うけど、それは今の話とは別な気がするからいいとして、採用か不採用かを待っている間は悶々と過ごし、期日が近づくにつれてドキドキするものだと思う。病院関係で言うと医者から病名を聞く時とか、癌なんかの検査結果を聞く瞬間とかはドキドキすると思う。俺も今、どんな検査結果なのかドキドキしながらレントゲンの待ち合い室にいる


「え~、藤堂さんの検査結果ですが、どこも異常が見当たりませんでした。後は診察を受けてから帰宅して頂いて結構ですよ」


 検査結果を聞くまでは結構ドキドキするが、結果を聞いて異常がないのなら一気に身体の力が抜ける。これで異常が見つかったら絶望してたところだ


「そ、そうですか……。ありがとうございました」


 検査が終わってハイ、帰宅ってわけじゃなく、医者と今後どうするかを話し合う必要がある。どこにも異常がないのに大事を取って入院するか、異常がないなら通院するのか、それとも通院しなくてもいいのか。俺としては通院するくらいなら入院って言われた方がこの上なく楽なんだけど、そこは病院のベッド事情とかいろいろあると思うので一概には言えない


「どこにも異常なくてよかったわね」


 診察室に戻る途中、美月と手を繋ぎながら歩いていた。病院はデートする場所じゃないってのは俺が1番よく知っている。それに、美月の方から俺の手を握ってきた。俺は悪くない


「そうだな。これで頭蓋骨にヒビでも入ってたら入院期間が延びてたかもな」


 された事がされた事だからありえない事じゃない。もし、そうなったら入院期間が延びてたところだし、それに、今日は美月かもしれないが、明日は誰になるのか皆目見当もつかないので入院が延びるよりは通院を言い渡された方が気持ち的には楽だ


「もしそうだとしたら私は遊を殴った先輩を殺しに行くわよ?もちろん、社会的にも物理的にもね」

「俺の事を思ってくれるのは嬉しいが、物騒な事を言うのもするのも止めてくれ」


 自分のため故の行動だから強く言えない。しかし、物騒な事はしないでほしい。特に、物理的に相手を殺すのだけは止めてほしい。


「遊が望まないのなら私はしないけど、香月や遊華ちゃん達はどうかしらね?」

「香月や遊華達だって俺が止めろって言えば止めてくれるさ」

「そうかしら?私がそうだから言わせてもらうけど、何物にも代えがたい遊が傷つけられたとなるとその相手を物理的に殺しに行くわよ?遊が望んでないからしないだけでね」

「そ、それはありがとな」


 この時、俺は自分が傷つく方法はもちろん、自分の事を大切にしよう。心のそこからそう思った。何せ美月の目が今まで以上に濁っていたからな。


「病室に戻って来たはいいけど、この後はどうしたらいいのかしら?」

「そうだな、とりあえず看護師にでも聞いてみるか」


 未来で入院した時は倒れて運び込まれたところは同じだった。しかし、特にこれと言った検査をすることなく、1日入院した程度で済んだ。が、それは倒れた原因が経過した時間に対し、身体が追い付かなかったからだ。今回は椅子で殴られ、その結果、意識を失って倒れて運び込まれた。原因が明らかにハッキリしている以上、診察は必要だろう


「それもそうね。病院でわからない事がある時は病院に勤めている人に聞くのが1番いいでしょうし」

「じゃあ、早速ナースコールで聞いてみるか」


 俺はベッドの脇にあるナースコールのスイッチを押し、対応してくれたナースに検査が終わった事、診察して帰宅していいという許可を得た事を伝え、その上でどうしたらいいかを聞いたらナースからは『すぐに1階の脳外科に来てください』と言われた。どうして脳外科?と思ったが、あえて触れない事にした


「とりあえず脳外科に行きましょう」

「そうだな」


 俺と美月は看護師に言われた通り脳外科に向かう事にした。意識を失って倒れたから別に内科でもいいとは思う。あるいは整形外科?まぁ、細かい事を言ったらキリがない。それに、俺は椅子で殴られたとは言ったが、頭を殴られた覚えはない。椅子で殴られ倒れた時に頭を打ったとは思うけど


「遊、椅子で殴られたって聞いてるのだけど、具体的にはどこを殴られたのかしら?」


 脳外科に向かう道中で美月にふとこんな事を聞かれた。椅子でどこを殴られたかか……あれ?どこを殴られたっけ?


「あー、どこを殴られたかまでは覚えてないけど、頭だけは守らないとと思って咄嗟に腕でガードしたっけ?」

「覚えてないとは言うけど、遊は殴られた後で意識が朦朧としたって事は頭を殴られたんじゃないの?遊、貴方は自分がどこを殴られたかすら覚えてないくらい物忘れが激しくなったのかしら?そうだとしたら殴られた事の弊害ね」


 言いたい事はいろいろある。しかし、あの時の俺はクラスの連中を巻き込まないようにって必死だったんだ。何せ暴走した人間は怖いからな。


「そうは言ってもな、あの時の俺はクラスの連中を巻き込まないようにって必死だったんだよ。決して物忘れが激しくなったわけじゃない」

「はぁ、もういいわ」


 美月はこめかみを抑えて溜息を吐いた。もしかして呆れられた?


「え?何?俺って呆れられてる?」

「呆れてるって言えばそうね。自分の思いが叶わないからって暴力を振るってまで香月を手に入れようとした先輩に呆れているわね。心配しなくても私が遊に呆れるだなんて事はないわ」

「そ、そうか……」


 愛されてるとは思う。しかし、慣れているとはいえ愛が重すぎるのはさすがにどうかと思う。口に出して言う事はしないがな


「遊が自分を犠牲にしてまで誰かを守るだなんて今に始まった事じゃないでしょ?未来じゃ美優ちゃんを体張って助けたみたいだし」

「そ、その時はそうした方が効率がよかったからしただけだよ」


 クールな美月に慣れているとはいえ、やっぱり調子が狂う。


「そう。その事に関しては散々注意されたみたいだから言わないわ。それに、もう終わった事だしね」

「そうしてくれると助かる」


 こんな感じの話をしながら俺達は脳外科に向かった。病室を出てエレベーターに乗った時も歩いてる時もそうだが、美月と話しているとつい時間を忘れがちになる。遊華達とは別の居心地の良さを感じてしまう。おっと、そんな事を考えてる場合じゃないな。もう脳外科の前だ


「入院が長引かなければいいわね」


 美月、検査で異常が見られなかったんだ。ここに来てそんな不吉な事を言わないでくれ


「検査結果で異常は確認されなかったんだ。入院が長引くだなんて事はないだろ」

「そうだといいけど、心配なのよ……」


 心配してくれるのは有難い。だがな、美月。それは病室にいる時に言ってほしかったぞ……


「心配してくれんのは有難いけど、心配ばかりして悪い方に考えすぎるのはよくないぞ」

「でも……」

「検査の結果は異常なしだったんだ、平気だよ」

「そうかしら……」


 俺は美月の頭を撫でながらどうにか前向きな考えになるようにして見たが、不安は拭いきれなかったようで、俺が呼ばれ、診察が終わるまで美月の表情は暗かった。ついでに言っとくと俺が呼ばれた時、美月も一緒に来たし、医者からは『特に異常は見られなかったので帰宅して構いませんよ。ですが、何かあったらすぐに来てくださいね』との事で俺は無事、家に帰れるみたいだ


「入院が長引かなくてよかったぁ~」

「そうね」


 病院前で身体を伸ばし、思いっきり深呼吸する。気分的には刑務所から出所した囚人の気分だ。実際は1日入院してただけなんだが、例え1日だけとはいえ、違う環境で過ごすというのは疲れるものだ。病室が1人部屋だとしてもな。


「それにしても、病室が1人部屋でも慣れないと疲れるものだな」


 未来で入院した時も美月達……正確には美月、香月、遊華の3人が一緒にいてくれた。今と違うといえば遊華、由紀、美優が年下だって事と由紀と美優がいなかった事くらいだが、由紀達とはそんなに交流なかったしなぁ……


「初めての入院じゃないのに疲れる事もあるのね」

「意外か?」


 隣りにいる美月にこんな事を言われたが、この言い方だと俺がしょっちゅう入院してるみたいじゃないか……


「そうではないし、最初に飛ばされた未来の事は行ってないから何とも言えないけれど、少なくとも私は遊が最初に飛ばされた未来は高確率で入院していると思っていたわ」


 美月さん?それはしょっちゅう入院してるって言ってるのと大差ないぞ?


「最初に飛ばされた未来で入院したのは全身に激痛が走り、ぶっ倒れた時の1回だけだぞ?」


 生放送にいきなり出演させられた事が2回、ヤンデレとなった遊華達に遭遇したのは……数えるのは止そう。指がいくらあっても足りない。で、入院したのは1回だけ。後にも先にも入院したのは激痛でぶっ倒れた時の1回だけだ


「本当かしら?」

「本当だよ。こんな事で嘘なんて吐くか。それより、早く帰ろうぜ」

「そうね」


 俺と美月は家への帰路に就いた。病院前でいつまでも喋っていても仕方ないってのもあるが、それ以上に家の事が気になる。遊華達を信じてないわけじゃないが、家事は基本的に俺がやっている。どこに何があるかを把握しきれてない遊華達がちゃんと家事ができているかどうかは別だ


「不安だ……」

「何が不安なのかしら?」

「遊華達は俺がいない間、ちゃんと家事ができてるかとか、飯は自分達で作って食べたのかとかだ」


 家へ向かい歩いている途中、独り言のつもりで言った事がバッチリ美月に聞かれていたらしく、隠しきれないと思った俺は不安に思っていた事を喋った。


「私もだけど、いつも遊が家事してる姿を見ていたからどこに何があるかは把握しているし、何より遊華ちゃん達はもう幼い子供じゃないわ。料理の1つや2つくらいできるわ」


 確かに俺も美月達も幼い子供じゃない。料理の1つや2つできるだろう。それを踏まえて言いたい事が1つある。見てるくらいならたまには手伝ってくれ……


「そうだな。遊華達だって料理の1つや2つできるよな!」

「ええ」


 料理に関しては特に心配してない。香月も含めてな。問題は俺が家に帰ってからだが、遊華達にもみくちゃにされないかが果てしなく不安だ。今は平日の昼だから遊華達は学校だが、帰ってきた時に何をされるか……




今回は遊が退院した話でした

検査結果に問題がなくて何よりでした。が、家の事が気がかりな遊。専業主夫に近い事をしている遊にとってはそれが1番の不安要素みたいです

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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