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【美月ヤンデレ編1】売店に行ったら俺を兄呼ばわりしてきた女性にまた声を掛けれた件について

今回から美月ヤンデレ編スタートです

香月の時に続き、遊を兄呼ばわりする女性登場です

では、どうぞ

 入院とは検査や問診、後は見舞いの為に客が来た時以外は退屈だと思う。それが例え1日であろうと1か月であろうと退屈なのには変わりない。俺には香月と美月がいるから退屈でもないけどな。そう、一緒に過ごしてくれる人や娯楽があれば退屈でもないが、それがない時はものすごく退屈なのだ。


「美月、香月はどうした?」

「香月ちゃんなら学校だよ?それに、香月ちゃんから聞いてると思うけど、今日は私の日だよ?香月ちゃんがいないのは当たり前でしょ~?」

「そうだったな」


 俺は香月から聞いている。何事もなく家に帰っていたら美月が乱入してくる事なく1日を香月と過ごす。しかし、俺は昨日、学校で倒れ、病院に担ぎ込まれた。それはいいが、検査の為、1日入院を余儀なくされた。日をまたぐため、美月が乱入してくるのは当たり前の事だって事を香月から聞いている。


「でしょ?さて、世間話はこれくらいにして、遊ちゃん」

「何だ?」

「心配したわ」


 一瞬にして美月の雰囲気がいつもの癒し系からクール系に変化した。それに伴って口調も変わっている。


「ごめん……」


 香月には椅子で殴った先輩が悪いと言ったが、そもそも俺が先輩を煽るような事を言わなかったら殴られる事もなかった。その代わり先輩が教室で喚き続けるという無関係な人達にとっては迷惑極まりない事にはなっていたと思う


「私は遊に謝れだなんて一言も言ってないわ」

「でも、心配掛けたし謝るくらいさせてくれ」


 美月から謝れとは言われてない。しかし、心配掛けて悪いと思っているのは事実だ。言われてなくても謝るくらいさせてくれ


「遊がそうしたいならそうしなさい。私は止めないわ。でも、1つ教えてもらえないかしら?」

「何をだ?」

「美優のストーカーの時もそうだけど、遊はどうして自分を犠牲にするような真似を平然とできるのかしら?周りの事を考えてないの?」


 俺は自分を犠牲にしたつもりはない。だが、見ている方からすれば自分を犠牲にしている。そう思われている


「周りの事はちゃんと考えているし、自分を犠牲にしているつもりはない。ただ、浩太や敬はともかく、美月達は女の子だ。万が一の事があって一生消えない傷ができたら困るだろ?特に顔に残った傷は目立つし」


 聞いた話で申し訳ないが、傷が残った時、慰謝料の額がデカいのは女という話を聞いた事がある。男でも傷が残ったら慰謝料が発生するが、どうも男女じゃ男より女の方が慰謝料の額がデカいらしい。それを考えると美月達が動くより俺が動いた方がその後のケアが楽だ。ただ、それだけ


「遊が私達の事を考えてくれるのは嬉しいけど、私達が遊の傷つく姿を見て何も思わないとでも思っているのかしら?ねぇ、どうして私達が遊の身体に自分の名前を彫らないか知ってる?」


 遊華の時に俺は身体に名前を彫られてもいいと一瞬だが、思った。しかし、遊華はそれをしなかった。ヤンデレなんだから自分のものだって証を永遠に消えない形で残そうと思えばできたはずなのに


「美月達が俺の傷つく姿を見て心痛めるって話は何度もされて耳にタコだ。名前を彫らない理由までは知らない」


 俺って奴はいつまで経っても学習しない。俺が美月達の立場なら好きな人が傷つくなら力づくでも止める。名前を彫らない理由は知らない。ヤンデレならそうしてもおかしくないのにそれをしないのは俺だって前から疑問に思っていた


「遊が学習能力がないのは今更だからいいとして、私達が遊の身体に名前を彫らないのは遊を傷つけてまで私達のものだという証を刻みたくないからよ」


 俺の学習能力がないって部分は必要ですかね?俺の事を思っていてくれるのは嬉しいけど、前半はいならくない?


「前半の辛辣な意見は俺の自業自得だから言われても仕方ないとして、後半は彼氏として嬉しいぞ」

「そう。学習能力がないのは持って生まれたものもあるから仕方ないとして、私達は遊が傷ついてまで守ってもらおうだなんてこと望んでない事は覚えておいて」

「はい」


 今までクールな美月も天然な美月も何だかんだで俺を甘えさせてくれていた。が、今回は俺を見る視線はとても冷たいものだった。うん、これは本気で怒らせたらヤバいやつだ


「さて、お説教はこれくらいにして、遊、暇だわ」

「いや、そんな事言われましても……」


 朝飯はとうの昔に済ませた。検査は10時からだと看護師さんに伝えられた。だが、今は午前9時で検査まで後1時間ある。やる事のない美月は暇なのだ。俺も同じだけどな


「何か暇を潰せるものはないものかしら?」


 美月は暇を潰せるものを探すが、ここは病院だ。娯楽の類は全くない。あって売店くらいだ


「暇なら学校行けよ。っていうか、今日は美月の日なのはいいとして、どうして美月は学校に行ってないんだよ?」


 美月の日なのはいいとして、美月が学校に行かず、俺と一緒にいる意味が理解できない。


「今日は私の日なのよ?せっかく1日遊を独占できるのにどうして学校に行かなければいけないのかしら?遊は私と一緒にいたくないの?もし、そうなら……ワカッテイルワヨネ?」


 美月は遊華達同様に光のない目で俺を見る。遊華や香月もそうだが、光がないだけじゃなく、光がなく、ドロッとした目をしている。


「別に美月と一緒にいたくないとか、楽しくないって言ってない。ただ、美月は1年後には受験だから出席日数とか平気かなと思っただけだ」


 俺は高1だし、今まで授業をサボった事も欠席、遅刻をした事はない。しかし、美月の状況を俺は全く知らない。


「別に平気よ。私、授業をサボった事も欠席、遅刻、早退もした事ないから。欠席について言うなら今日が初めてね」

「そ、それは悪かったな。美月の無遅刻無欠席の記録を壊して」

「別に気にしてないわ。無遅刻無欠席なら進学先の学校でもできるけど、遊の付き添いは今しかできないのだから」


 俺の付き添いこそこれからの長い人生の中でたくさんできると思うのだが、それは気のせいだろうか?


「俺の付き添いが今しかできないってところにはあえて触れないでおくとして、俺も暇だし、売店にでも行ってみるか?」


 売店に行っても暇を潰せるものがあるとは思えない。ただ、病室にいるよりはマシだ


「そうね。このままここにいても仕方ないし、行ってみましょうか?」


 美月がアッサリ了承してくれたところで俺達は売店に行く事にした。


「それにしても高1の間に2回も入院する事になるとは思わなかった……」


 エレベーターで1階に来た俺は売店に行く途中に入院した回数を数えてゲンナリしていた。まさか、高1の間に2回も入院する事になるとは思わなかった


「2回?遊、貴方は無茶して入院するのが2回目だと言うの?」


 心外だ。入院するのが2回目だって言っただけでどうして無茶した事が前提なんだよ


「1回目は未来に飛ばされた時に倒れたて入院したんだよ。入院した原因だって未来に飛ばされた反動だ。無茶はしていない」


 いきなり10年後の未来に行ったんだ。精神はいいとして、身体が急激な変化に耐えられるとは限らない。まぁ、未来に飛ばされるだなんて空想上の出来事だと思っていた俺はそんなに重く考えてはいなかった。それこそ、成長した遊華を見ても10年後にはボン、キュッ、ボンになるんだなぁくらいしか思ってなかったし。それが激痛が走って倒れた事で少しだけ考えを改め、浩太から新聞や資料を貰って本格的に重く捉えたと言った感じだ


「そう。でも、今回は無茶したって認めるのね?」


 無茶はしてないと思う。うん、ただ、ストーカーを煽りはした


「こ、これを無茶と言うのか?ストーカーを煽りはしたけど」


 入院も2回目だが、ストーカーを煽ったのも2回目だ。1回目は未来で美優のストーカーを、2回目は教室で香月のストーカーをだ。


「はぁ、まったく、貴方は……これは本格的に躾が必要かしら?」


 ちょっと?美月さん?呆れた顔で溜息は止めてくれない?それと、俺は犬や猫じゃないからね?躾ける必要皆無だからね?


「俺は犬や猫じゃないから躾の必要なくない?」

「学習するだけ犬や猫の方がマシよ。貴方はそれよりも質が悪いもの」


 俺、犬や猫以下っすか……美月が本当に俺を異性として好きなのかを若干疑いたくなりつつも売店に着いた。


「あれ?お兄ちゃん、どったの?こんなところで」


 売店には昨日、俺を兄呼ばわりした女性がいた。昨日は1人だったからいいものの、今日は美月が隣りにいるんだぞ?そんな状態で俺をお兄ちゃんだなんて呼ぶなよ……


「お兄ちゃん?遊、これはどういう事かしら?」


 病室にいた時と同じで俺を見つめる美月の目から光が消え、ドロッとした目になった。


「あ、いや、昨日もそうだったんだが、この人が勝手に俺を兄と呼んでいるだけだ」


 目の前の女性っていうか、俺は女性に自分を兄と呼ばせる趣味はない。だから、どういう事だと聞かれても困る


「それならそれでいいのよ?それより、遊、病室に戻りましょうか?お話する事ができたから」

「はい……」


 歳の差なんて関係あるか。凍てつくような視線を向けられたら誰だって逆らえないだろ?そんな逆らえない俺を引きずって病室へと戻る美月。遠くから『お兄ちゃん!またねー!』って声が聞こえるがそれに構っている暇も余裕もない。だって、彼女が怖いし


「さて、遊、何があったか聞いてもいいかしら?」


 病室に戻るなり俺はベッドの上で正座させられるのかと思っていた。しかし、実際はベッドに2人で寄り添うように座っている。


「何があったかと言われても俺だって整理できてないんだ。昨日、飲み物を買いに行った時に初めてあったんだが、その時もお兄ちゃんと呼ばれた。香月には話したんだが、俺はあの人と全く接点ないから兄と呼ばれる理由が理解できない」


 義理とはいえ、俺の妹は遊華だけだ。それに俺に遊華以外の妹がいるだなんて話を聞いた事なんて……あったな。本当の母を名乗る女の手紙に


「そう?でも、貴方の本当のお母さんを名乗る人の手紙には妹がいるって書いてあったじゃない」


 何で美月はそんな事を覚えているんだ?いや、俺も今の今まで忘れてたのに


「そうでした。ところで、どうして美月はそんな事を覚えてるんだ?」

「本当のお母さんが現れた日が遊と一緒にいられる最後の日になるかもしれないじゃない。遊は2年に進級した時に考えればいいって言ってたし、私達から離れる気はないとも言ってたじゃない?」

「ああ」

「でも、遊がいくら離れる気はないって言っても私は……いや、私達は本当に遊が離れて行かないか不安なのよ。その不安要素を持った人間からの手紙の内容を覚えているのは当たり前の事よ」


 物心つかないうちに子供を施設に放り込むような人間を俺は母とは思わないし、一緒に暮らしたいとは思わない。しかし、それは俺個人の意見だ。大人の事情は別だ。まぁ、俺が大人しく従うはずないけど


「美月達が不安に感じるのは仕方のない事だが、俺からしてみれば物心つかないうちに子供を施設に放り込むような人間を母とは思わない。それに、一緒に暮らしたいとも思わないし、仮に一緒に暮らしたとしても平穏な生活が送れるとは思えない」

「どうしてかしら?人間性はともかくとして、お金持ちの家で暮らした方が遊にとって楽な生活ができると思うのだけど?」


 確かに、美月の言う通り金持ちの家で暮らした方が楽な生活ができるのかもしれない。しかし、俺がグレない保証はない。グレて不良化し、飲酒、喫煙を始めとした非行行為をしないとは言い切れない


「人の心の問題は金じゃ解決しないんだよ。本当の母と暮らしたとして、俺がグレないって保証はないしな」

「そうなの?」

「ああ、どれだけ金があっても恋人達と離れてできた心の穴は埋められないんだよ」

「そ、そう……」


 美月は顔を赤くして俯いた。そんな美月を年上だが、可愛いと思ってしまった。


「香月とも言ってたが、あの女性は何者なんだろう?」

「そうね。さすがに初対面の男性を兄と呼ぶのはおかしいわね」


 香月との話し合いで忘れようって結論が出たにも関わらず、今日また出会うとは思わなかった。そして、更に謎が深まった。

今回から美月ヤンデレ編スタートしました

入院しているので1度会った人に偶然会うっていうのはない話じゃありませんが、あまりにもエンカウント率が高いような気がします

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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