表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/165

【香月ヤンデレ編6】俺が見知らぬ女性に兄と呼ばれた件について

今回は遊が見知らぬ女性から兄呼ばわりされる話です

見知らぬ女性から兄呼ばわり……それが人違いなのか、ガチなのか?

では、どうぞ

 香月、美月と共に夕飯を済ませた後、3人でゲームをしたり、飽きたら読書したりと入院中の身でありながらも自由に過ごした。途中、看護師さんが体温を計りに来たが、俺は大きな病気じゃないし、バカみたいに騒いでなかったので注意される事もなかった。そんなこんなで就寝時間。香月と美月は早々に寝てしまったが、俺はなかなか寝付けず、喉も渇いたので自販機の自販機がある談話スペースまで来ていた


「俺と同じで寝つけない人っているんだな」


 自販機で飲み物を買おうとしたら先客がいた。それも、女の子だ。だから何だというわけじゃないけどな


「声掛けてたら香月達に殺されるな。うわっ、想像したくねぇ……」


 看護師や入院患者をナンパする趣味を俺は持ち合わせていないが、ナンパ目的で声掛けたら俺は香月達に殺される。肉体的にではなく、精神的に。そんな場面を想像したら寒気がした


「あれ?お兄ちゃん?」


 飲み物を買い終えた女性は振り向きざまに俺を『お兄ちゃん』と呼んできた。当然の事ながら俺はこの女性を知らないし、それに、俺の身近な人達の中で俺を『お兄ちゃん』と呼ぶのは遊華しかいない。まぁ、義理とはいえ妹だから当然っちゃ当然なんだけど。


「人違いじゃないですか?俺は貴女の兄ではありませんよ?」


 本当は『いきなり何だ?俺はアンタの兄じゃないぞ』と言いたかったが、ここで見知らぬ女性に喧嘩を吹っかけても意味はないので人違いだって事を指摘し、兄ではない事を言う。


「そっか。まぁ、私のお兄ちゃんかどうかは後々わかる事だからいっか。じゃあね、お兄ちゃん!」

「だから、俺は貴女の兄じゃ──────」


 俺が兄じゃないと言い終える前に女性はとっとと自分の病室があるであろう方向へと歩いて行った。


「さっきの人は何だったんだ?いきなり人を兄呼ばわりとか……」


 俺は先程の女性の事を考えながら自販機に金を入れ、オレンジジュースを購入する。マジで何だったんだ?


「俺を兄呼ばわりしたところから考えるに年下だろうなぁ……」


 病室に戻る途中、俺はさっきの女性が言ってた『後々わかる事』っていう言葉が気になっていた。何が後々わかるんだ?年齢か?俺の進学先か?あの女性が言わんとしている事がわからない。


「本当の母問題、遊華達のストーカー問題に加えて今度は謎の女性から兄呼ばわり問題か……」


 本当の母問題は夏休み、遊華達のストーカー問題は今日。そして、新たに謎の女性からの兄呼ばわり問題。できれば兄呼ばわり問題は女性が寝ぼけてました。で済めばいいんだが、あの様子じゃ寝ぼけてたわけじゃなさそうだし、勘違いでもないだろう。


「病室にいる香月達には絶対にバレないようにしないといけないな」


 病室にいる香月達には絶対にバレないようにしようと決心を固め、俺は自分の病室のドアを開ける。


「た、ただいま~」


 病室のドアを開け、控えめなあいさつをする。別に浮気しているわけでも何でもないが、香月達は寝ているんだ。起こさないようにするのは当たり前だろう


「おかえり、遊」

「何だ、起きてたのか。香月」

「うん。目が覚めたら遊がいなくてビックリした。どこに行ってたの?」

「喉が渇いたから飲み物を買いに行ってたんだよ」


 俺はベッドに入りながらそう答えた。飲み物を買いに行ったついでに見知らぬ女性に兄呼ばわりされたけどな


「そう……でも、それならそうと一言くらい言って行ってほしかったな」

「悪かった。今度からは一声掛ける」

「うん」


 寝ている人間に何かを言って通じるわけがない。そう思いつつも一声掛ける事を約束する。じゃないと香月が引き下がろうとしなさそうだし


「なぁ、香月」

「ん?何?」

「香月は知らない奴にいきなり姉呼ばわりされたらどうする?」

「え?いきなりどうしたの?」


 香月の言う事は尤もだ。恋人が『知らない奴にいきなり姉呼ばわりされたらどうする?』だなんて言い出したら反応に困る


「いや、さっき飲み物を買いに行った時にな、見知らぬ女性に兄呼ばわりされたんだよ」

「ふ~ん、それで?」


 俺を見る香月の目は『知らない女性に自分を兄と呼ばせるとか、いい度胸だな』とでも言いたげだが、俺は見知らぬ女性に自分を兄扱いさせる趣味はない


「それで、俺は人違いを指摘して兄という部分はバッチリ否定したんだが、その女性は『後々わかる事』って言い残して去って行ったんだよ。どう思う?」

「う~ん、私はその女性(ひと)に直接会ったわけじゃないから何とも言えない。ただ1つ言えるのは要注意って事くらいかな?」

「だよなぁ……」


 香月に相談してみたはいいものの何も浮かばず終い。まぁ、時が来ればわかるって事で


「それにしても、遊は変わったね」

「変わった?俺が?いきなり何だよ……」


 唐突に変わったと言われても俺はどこがどう変わったかがよくわからない。身長が伸びたか?それとも、髪の毛が伸びたか?


「今までだったら私に対してもそうだけど、他の誰にも遊はものを相談しなかったでしょ?だけど、今はそれができてる。遊、変わったね」

「そんなんじゃない。ただ、恋人に隠し事をするのに気が引けるだけだ」


 俺は変わってない。ただ、恋人に隠し事をするのに対し気が引けるだけなのと、俺の隠し事はどうせバレる。それだったらバレる前に相談した方がいいと学習しただけで変わってない


「遊がそう言うなら私は何もいわないよ。でも、遊が自販機の前で会ったって言う女性の『お兄ちゃん』っていうのは気になるね」

「だろ?どうして俺が見知らぬ女性にいきなり兄呼ばわりされなきゃいけないのやら……」

「その女性のお兄さんと遊が似ていたから?」

「それだったら人違いだって言った時に否定しないはずだろ?」

「だよね……」


 俺と香月は女性の発言について考えるも答えは出てこない。むしろ謎が深まるばかりだ。


「考えても仕方のない事は考えないようにして、寝るとしますか」

「そうだね。考えても仕方のない事は考えないようにしようよ。それより、遊には他に考える事があるでしょ?」

「他に考える事?何かあったっけ?」


 今の俺に考える事なんてあったか?


「私の事だよ」

「香月の事?」

「うん。私、起きた時に遊がいなくてすごく不安だったんだよ?そんな私にお詫びの1つくらいあってもいいんじゃないの?」


 病室の暗さのせいで香月の目から光が消えたように見えるのではなく、本当に香月の目から光が消えている。


「ご、ごめん……俺の配慮が足らなかった」


 出歩く時、寝ている人間に声を掛けて出歩く奴はまずいないだろう。しかし、起きた時に寝ているはずの奴がいない恐怖は理解できないわけじゃない


「うん。それで?遊は私の不安を解消する為に何をしてくれるのかな?」


 か、考えてなかった……香月の不安を解消するにはどうしたらいい?よく入院患者とかを励ます為に手を握るといいだなんて話を聞いた事がある。どうでもいい無駄知識だが。


「香月、俺のベッドに来ないか?」


 幸いな事に俺を挟んで入り口側に香月、窓側に美月という構図だ。それに、この病室のベッドはどういうわけか大人2人が一緒に寝られるだけのスペースがある。香月1人くらいなら問題ない


「うん!」


 香月は嬉しそうに俺のベッドに入ってきた。いつもは大人っぽく、俺の彼女達の中じゃ比較的常識人な香月にも可愛い部分がある。今みたいに俺に甘えて来たりするところとか


「俺にはこうする事しかできないが、これで勘弁してくれ」

「遊に抱きしめられていると安心するからこれがいい」


 俺と香月は抱きしめあう形で寝る事になった。だが、遊華達もそうだけど、俺の彼女達は抱きしめられるのが好きらしい


「香月といると安心する」

「え?」

「あ、いや、何でもない」


 どうやら俺は思っていた事が口に出ていたみたいだ。香月といると安心するのは事実だからいいけどな。別に遊華達といると安心しないってわけじゃない。ただ、香月は大人っぽいから俺も安心して甘えられるだけで


「さっき言った事もう1回言って」

「忘れてくれ」

「嫌。もう1回言って」


 普段は大人っぽいクセに急にワガママになるのはズルいと思う。こういうのをギャップ萌えっていうんだろうな


「言わなきゃダメか?」

「うん、ダメ」

「言う方としてはものすごく恥ずかしいんだけど?」

「言ってくれないの?」


 上目遣いで見つめないで!俺はそういうのに弱いんだから!


「か、香月といると安心する……」

「どうして?」

「俺の押しつけかもしれないけど、香月って大人っぽいし、なんて言うか、母性を感じるから」

「それって私が老けてるって言いたいの?」

「い、いや、そんな事はないぞ?ただ、香月は俺の彼女達の中で1番年上だからそう感じているだけだ」


 遊華達といて安心しないとか、甘えたくならないとかじゃない。ただ、香月は俺の彼女達の中で1番年上だから安心して甘えたくなるってだけで


「ふふっ、遊も狼狽える事あるんだ」


 香月、絶対にわかっていて言ってるだろ?俺だって感情を持った人間なんだぞ?


「俺も人間だからな。動揺もするし、狼狽えもする」

「そうだね。でも、いつも冷静な遊が狼狽えるだなんて珍しいよ」


 俺はいつも冷静ってわけじゃない。冷静に見せているだけで内心では狼狽えたり動揺もする


「香月達が不安にように冷静でいようとしているだけだ」

「そっか。でも、無理に冷静でいようとしなくていいんだよ?不安や悩みがあるなら相談してほしい。さっきみたいにね。何でも自分ひとりで解決しようとしないで」

「ああ、わかった」


 新たな問題というか、謎が発生したが、それはそれでよかった気がする。俺は自分の恋人達に甘えていいんだという事を再認識した。遊華達からは耳にタコができるほど言われているが、それを行動に移す事は簡単な事じゃない。遊華達を信じてないわけじゃないが、それとこれとは話が別だ



今回は遊が見知らぬ女性から兄呼ばわりされる話でした

この女性の正体は結局わからず終いでした。この女性の正体はいつわかるんでしょう?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ