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【香月ヤンデレ編4】香月の暴走を全力で止めた件について

今回は香月の暴走を止める遊の話です

遊は香月の暴走を止める事ができるのか?

では、どうぞ

「許さない……遊を傷つける奴や遊い危害を加えようとする奴は許さない……」

「ひぃぃぃぃぃ!!」


 目に光が宿ってないであろう香月とそれに怯える先輩。そんな光景を見ているせいなのか、さっきまで悲鳴を上げていたクラスメイトは借りてきた猫みたいに大人しい。クラスメイトの中では俺が椅子で殴られた事よりも香月の豹変の方が衝撃的らしい


「や、止めろ……」


 俺はここまで暴走した香月を初めて見た。未来でもこんな暴走した事はなかったぞ?


「遊……今、遊を傷つけた奴を消してあげるからね?」


 振り返った香月はドロッと濁った目で俺に微笑んだ。それを見たクラスメイト達は借りてきた猫のように大人しかったのが今度は次々に悲鳴を上げた。いや、違うか。よく聞いてみると『こ、こんなの香月お姉さまじゃない……』『あぁ、いつもの凛々しいお姿も素敵だけど、これはこれはこれでアリだな』という緊張感の欠片もない声だった。俺はヤンデレ香月を見てそんな能天気な感想が言えるお前達が羨ましいよ


「止めろ、止めてくれ、香月……」

「どうして?遊を傷つけた奴なんて許す価値も生きてる価値もないでしょ?」

「香月……」


 その目に日頃見た事のない香月がいる。こんな時じゃなきゃ戸惑っていたところだが、今は戸惑ってる場合じゃない。暴走した香月をどうやって止めるかだ


「遊は私の全てを受け入れてくれた……人を傷つけてまで好きな人と結ばれようとしたお前とは違う……お前は私にとって要らない私には遊さえいれば他に何も要らない。だから……死ね」

「ひぃぃぃぃぃぃ!!」


 教室内に香月の無機質な声が響く。その様子を戸惑いながらも見つめるクラスメイトとどうやったら止まるかを模索する俺。そして……


「遊、何とかして香月さんを止めないと……」


 俺の恋人事情を知っている敬がどうにかして香月を止めるように言ってくる。しかし、香月の恋人の俺でさえ香月を止める上手い方法が見つからない


「わかっている……」


 止めなきゃいけないのはわかっている。だが、その止め方がわからない。香月がこうなったのは間違いなく俺が椅子で殴られたからだ。


「力ずくになるが、やってみるか……」


 香月がこれで止まるかどうかは一か八かの賭けになるが、何もしないよりはマシだ


「遊、何か思いついたの?」

「ああ。一か八かの賭けになるが、コレに賭けるしかない」

「そう……遊の親友である僕は無茶する遊を止めなきゃいけないんだろうけど、今回ばかりは止めないよ。行ってらっしゃい」

「そう言ってもらえると助かる」


 肩を貸してくれていた敬の元を離れ俺は香月方へ歩き出した。


「止めろ香月。俺は香月が他人を傷つけるところなんて見たくない」


 俺は努めて普段通りの声で香月に話し掛ける


「止めないでよ、遊。コイツは遊を傷つけた。遊を傷つけた奴は絶対に許せない」


 確かにこの先輩は俺を椅子で殴った。人を椅子で殴るとどんな事が起こるかなんて小学生でも予想できる。しかし、この先輩は頭に血が上ってそんな事なんて考えてなかったといったところだ


「それでも、俺がこの先輩に仕返しするならまだしも香月がこんな奴の為に手を汚す必要なんてない。だから、止めろ」

「嫌だよ。私の大切な人を傷つけておいて許せるはずないでしょ?」

「だとしても、コイツにはこれから学校側の処分が待ってる。人に怪我させたんだ。よくて停学、最悪の場合は退学だ。どちらにしろコイツと関わる事はない。だから止めろ」


 俺はこの学校の校則なんてよくわからない。普通に学校生活を送っていたら無縁とは言わないが、あんまり関わる事がないからだ。しかし、今回、俺の目の前で怯えている先輩は頭に血が上り、結果、俺を椅子で殴るという暴挙に出た。だからといって香月が何かする必要はないんだけどな


「嫌」

「止めろ。香月」

「嫌!!私のせいでこうなったんだよ!?私さえちゃんとしていれば遊が椅子で殴られる事もなかった……私のせいで遊は痛い思いをした!!それなのに……それなのに遊はコイツを許すの!?コイツに仕返ししたくないの!?」


 教室内に香月の悲痛な叫びだけが響く。香月は自分のせいで俺が椅子で殴られたと言っているが、それは違う。椅子で殴られたのは先輩に忍耐力がなかったから。ただ、それだけの話だ


「香月……」


 俺は自分を責める香月を後ろからそっと抱きしめる


「離して……離してよ!!遊!!」

「ダメだ。離したら香月は先輩をどうするつもりだ?」

「殺す!!」

「じゃあ、離すわけにはいかないな」


 離したら香月は先輩を殺しはしないけど、危害を加えるのは確かだ。そんな香月を離すわけにはいかない


「遊!!」

「落ち着け。俺は香月のせいで傷ついたとは思ってない。だから、香月は何も気にしなくていい。それでも自分を責めるというならずっと俺の側にいてくれ。それだけで俺は満足だから」

「遊……」


 心なしか泣きそうになる香月。だが、香月が暴走しただけで俺のクラスはパニックだ。主に香月に憧れていたであろう連中達のせいで


「香月、保健室に連れて行ってくれないか?血は出てないが、万が一って事もあるからな」

「うん……」

「そんなわけで敬、後頼んだ」


 俺は敬に後を任せる事にした。普段の敬を見ていると若干不安は残るが、俺の恋人事情を知っているのは敬しかいない。早川もいるが、ものを頼める間柄じゃないからな。敬に任せておいた方が得策というものだ


「了解。それより、早く保健室に行った方がいいと思うよ?」

「ああ、そうする」


 俺は香月の肩を借り、教室から出た。後の事は敬と教師達に任せればいい。それよりも俺は香月のケアをしなきゃいけないからな


「遊、大丈夫?」

「大丈夫だよ。未来じゃ俺の子供がいるんだ。つまり、俺はこんなところでは死なない」

「でも……」

「大丈夫だって」


 泣きそうになる香月を励ましながらも俺は何とか保健室に着いた。しかし────────


「不在みたいだね」

「そうみたいだな」


 保健室のドアには『不在』の札が掛かっていた。


「職員室に誰かいないか探してくるから遊はここで待ってて」

「了解」


 香月は職員室へと駆け出し、俺は保健室の前で待つ事にした


「まさか、こんな時に限って保健の先生が不在とは……」


 こう言ったらなんだが、どうでもいい時にはいて、必要な時にはいない。八つ当たりするわけじゃいが、本当に間が悪い。あれ?何か視界がぼやけてきたな……


「こ、こんな時に……」


 ここで俺の意識は途切れた




 保健室の先生が不在だったので私は遊を保健室の前に残し、職員室へ向かって走っている


「遊、大丈夫だよね……?」


 遊本人は大丈夫だと言ってたけど、私は不安で仕方なかった。遊は意外と強がるところがあるし


「早く戻らないとね」


 私は一刻も早く遊の元へ戻る為、走るスピードを上げた。


「し、失礼します……!」


 職員室に着いた私はノックもせずに駆け込んだ


「ど、どうした?小山。そんなに慌てて」

「ゆ、遊……いえ、1年の藤堂君が椅子で殴られて保健室に連れて行ったんですが、保健室の先生が不在だったので……」


 私は誰に殴られたかはあえて言わず、遊が椅子で殴られたという事と保健室の先生が不在だと言う事を伝えた


「そういえば、さっき1年女子が大慌てで来たな。騒ぎの原因はそれか……それより、藤堂が大変だったな。俺が一緒に行こう。保健室の前だったな」

「はい!」


 私は先生と2人で保健室の前まで急いだ。遊、大丈夫かな……?


「ゆ、遊……?」


 保健室の前に着いた私が見たもの、それは遊が倒れているところだった


「おい!藤堂!しっかりしろ!!」


 一緒にいた先生が遊に慌てて駆け寄る。しかし、遊が返事をする事はなかった。


「わ、私のせいだ……私のせいで遊が……」


 私のせいで遊が椅子で殴られ、その結果、遊が倒れてしまった。私の頭の中を絶望が支配した。その後、先生方が救急車を呼び、遊は病院に運ばれた。私は一緒に救急車に乗せられたけど、そこまでの記憶は一切ない。




「ここは……痛って……」


 俺は気が付くとベッドにいた。そして、腕には点滴。つまり、俺は病院に運ばれたという事か……


「椅子で殴れたくらいで大げさな……ん?香月?」


 上半身を起こすと香月が規則正しい寝息を立てて寝ていた。授業そっちのけで付き添って来たな?


「ゆ……う……」


 このまま起こすのも可哀そうだから寝かせておいてもいいだろう。自分がどうして病院に運ばれたかなんて香月が起きた時にでも聞けばいいしな。


「病院のベッドだってのはいいとして、俺がいない間の家事とかどうするんだよ……?」


 自分がどうして病院にいるかなんてのは大体の見当がつく。しかし、それ以上に心配なのは俺がいない間の家事だ。遊華達も幼い子供じゃないからある程度の炊事、洗濯はできると思うが、問題は炊事道具や洗剤の場所だ。後、家事の心配ばかりしていたが、親父達は俺が入院している事を知っているのか?


「病院にいるのになぜか心配事ばかり増えてしまっているような気がする」


 病院にいるのに心配事が増える俺はきっと専業主夫の才能があるんじゃいか?と思ってしまう。いや、専業主夫も悪くはないと思う。最初に飛ばされた未来じゃ半分、専業主夫みたいなものだったし。しかし、妹達の将来養てもらうって考えたらたまらなく憂鬱だ。主に男としての尊厳的な意味で


「とりあえず、香月が目覚めるのを待つしかないか」


 学校の事、どうして俺が病院にいるのか、それを知っていて俺の側にいるのは現状、香月だけだ。


「ゆ、ゆう……?」

「おう、おはよう。香月」


 寝ぼけ目で俺を見つめる香月。とても学校で物騒な事を言ってた人間と同一人物とは思えない


「遊!!」

「うおっ!?か、香月!?」


 いきなり勢いよく抱き着いてきた香月を何とか受け止めた。が、香月は小刻みに震えている


「怖かった……遊がこのまま目を覚まさなかったらどうしようって思った……」

「ごめんな。香月」


 俺のこの言葉をキッカケに香月は声を押し殺して泣き始めた。相当心配を掛けたみたいだな。今はこうしておいてやろう。そして、落ち着いたら俺が倒れた後の事を聞こう。まぁ、香月が覚えていたらな。

今回は香月の暴走を止める遊の話でした

遊は香月の暴走を止める事はできましたが、最後の最後で倒れてしまいました。次回はどうなるのでしょうか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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