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【香月ヤンデレ編3】俺が先輩に椅子で殴られた件について

今回は遊が椅子で殴られる話です

椅子で殴られた後、遊はどうなるのか

では、どうぞ

 事件は唐突に起きる。ニュースやドラマでこんな事を言ってる人がいると思う。実際、俺もそう思う。HR、午前の授業を乗りきり、昼休みになった今、俺は事件は唐突に起きるという言葉のありがたみを痛感していた。それもこれも朝、絡まれた先輩のせいだ。


「いい加減にしてもらえませんかね……」




 本来なら俺は他の生徒と同じように購買に行って昼飯を食べていたはずだが、昨日に引き続き今日もそんな平穏な昼休みは訪れなかった。そもそもの始まりは昼休みが始まってからすぐだった───────────


「ようやく終わった……」


 HR前に絡んできた先輩のせいで俺はドッと疲れ、その疲れが癒えぬままHRが始まり、そして、授業開始となった。俺は授業中に居眠りをするタイプじゃないし、彼女達がヤンデレなせいもあって極力授業中の居眠りはしないように心がけていた。しかしだ。今回ばかりはさすがにキツイ。まぁ、そんな感じで疲労と戦いながら午前の授業を受けた。そして、4時間目の授業が終わり、昼休みとなった今、俺はやっと解放された。


「お疲れ様、遊」

「ああ、疲れたよ。敬」


 いつもなら暑苦しいキャラでお馴染みの浩太がここで声を掛けてくるはずだが、今回は敬だった。浩太のヤツ風邪か?


「浩太はどうした?」

「浩太なら授業が終わったと同時に出て行ったけど」

「そうか」


 まぁ、表じゃ熱血少年を演じている浩太の事だから昼飯を買いに購買へダッシュしたと言った感じか


「うん。昼休みに明美さんから屋上に来るように言われたって言って出て行ったよ」

「ふ~ん」


 明美さんが浩太を昼休みに呼び出す事自体珍しい。今まではそんな事なかったのに


「興味なさそうだね、遊」

「まぁな。他人の恋愛事情に口挟むほど俺はお節介でもなければバカでもない」


 浩太と敬の恋愛に協力したのは未来でコイツ等に彼女がいたからだ。敬の彼女は同じクラスだし、浩太の彼女は香月の友達。会おうと思えば会えないわけじゃない。特に敬の方は高1で付き合い始めたっていう本人からの言質も取れていたしな


「そう。まぁ、遊は──────────」

「藤堂って奴はいるか!!!!」


 敬の言葉を怒鳴り声が遮った。言われなくても俺は知っている。大体この後碌な事が起きないと言う事を


「遊、あれって……」

「ああ、香月のストーカーだな」


 教室の入り口を見てみると今朝絡んできた先輩がいた。香月に拒絶されたクセにまだ諦めてないのかよ……


「どうするの?遊」

「別にこのまま放置でもいいが、クラスメイトに迷惑は掛けられないし、それに、大事になれば教師が飛んでくるだろ?まぁ、それまで粘ってみるわ」

「わかったよ。だけど、無茶はダメだよ?」

「へいへい」


 敬に無茶禁止令を出された俺は入り口まで行った。


「お前のせいで小山さんに嫌われたじゃないか!!」


 俺はまだ何も言ってないのに開口一番が俺への恨み事だった。本当に勘弁してほしい


「先輩が香月先輩に嫌われたのまで俺は責任持てないんですけど……?」


 俺のせいで香月に嫌われたんじゃなくてこの先輩の人間性に問題があったから香月に嫌われたんじゃないかと思う


「黙れ!!お前さえ……お前さえいなければ今頃俺は小山さんと恋人になってたはずなんだよ!!」


 いやいや、本当に好き同士だったら俺がいなくても香月と恋人になれたと思うのは俺だけだろうか?


「そうですか。話はそれだけなら俺は失礼します」


 これ以上、先輩の妄言に付き合っていたら俺の貴重な昼休みが終わってしまう。悪いけどここで話を切り上げさせてもらおう


「待て!!お前は俺の香月を奪ったんだ!1発殴らせろ!!」

「はぁ……」




 そんなやり取りがあって、今に至る。本当にいい加減にしてほしい


「先輩に向かって何だその口の利き方は!!お前、人の恋人を奪っといて悪いと思わないのか!!」


 俺は1度拒絶されたのにどうして恋人を名乗れるのかが不思議だ


「貴方は先輩かもしれませんが、俺には1度拒絶されたのにどうして恋人を名乗れるか理解できないんですけど?」


 今朝のアレは照れ隠しとかそんなのじゃなく、心からの拒絶だった。それがどうして昼休みになった途端に恋人を名乗れるんだ?


「アレは小山さんが俺の愛情を試しただけだ!俺が本当に小山さんを愛しているかどうかをな!!」

「そうですか。それで、香月先輩が貴方の愛情を試すのと先輩が俺の教室に怒鳴り込んでくるのと何の関係があるんですか?」


 悪いが、この先輩より俺の方が香月の事を知っている自信がある。香月は人の愛情を試すような奴じゃない。コイツがしているのは単なる腹いせだ。香月に拒絶されたのを俺のせいにしているだけだ


「お前をボコボコにすれば小山さんは喜んでくれる!俺を見てくれる!」

「それはないですね。香月先輩は好きな人の愛を試すような人じゃないですし。それより、ここで騒いでいていいんですか?こんなにギャラリーがいるんですから貴方が俺を殴った事をここにいる誰かが先生に言ったら貴方は停学程度にはなると思いますけど?」


 当たり前の事だけど、今は昼休みでここは教室だ。教室に入ってきた時からそうだけど、かなり目立っている。怒鳴り込んできたら目立たないわけがない。まぁ、俺を指名してきたから他の奴は自分には関係ないといった感じになるのは仕方ない。しかし、それが暴力に発展するとなれば話は別だ。一部の女子が少し怯えている


「黙れ!お前は大人しく俺に殴られてればいいんだよ!!」


 何という横暴な理論だ。最初に飛ばされた未来で出会ったストーカーやこの時代で遭遇したストーカーよりも質が悪い。どちらも美優のだけど。別に俺が殴られただけでコイツがこの教室からいなくなってくれれば何でもいいか。それに、無意味に人を傷つけるような奴を香月が────いや、女性が好きになるはずない


「別に殴ってくれて構いませんよ?それで貴方が満足するならね」


 とは言ったものの俺だって大人しく殴られる気はない


「おう!望み通り殴ってやるよ!!」


 先輩は俺を殴る為に向かって来た。しかし──────────


「なっ!避けるな!!」


 俺は先輩が向かってくるのをヒラリと躱す。そのはずみで先輩は派手な音を立てながら盛大に転んでしまった


「俺は殴ってくれて構いませんとは言いましたが、避けないとは一言も言ってないですよ?」

「くっ……!屁理屈を!」


 地べたに這いつくばりながら俺を睨む先輩。確かに俺の言っている事は屁理屈かもしれない。だが、俺だって痛いのは嫌だし、俺に何かあったら遊華達がどんな行動に出るかわかったものじゃない


「屁理屈かもしれないですけど、俺にだって大切な人達がいるんですよ。その人達の為にもアンタに簡単に殴られるわけにはいかないんでね」

「うるさい!!お前を殴って小山さんを俺のものにするんだよ!!」


 さっきと同じようにバカの一つ覚えのように俺に向かってくる先輩。香月の事といい、俺が避けた事といい、学習しない人だ


「先輩、暴力を振るう男を女性は好きにはなりませんよ」


 俺は先程と同じように向かってくるのをヒラリとかわす。美優のストーカー2人でももう少し学習するぞ


「黙れ!!お前に俺の何が解る!!」

「知らねえよ。アンタの事なんてな」


 俺はこの人の事なんて知らないし、知りたいとも思わない。


「頭に来た!!お前は絶対に許さねぇ!!」


 先輩は近くにあった椅子を持ち、俺に向かって来た。さっきまでは素手で俺が問題なく躱していたからクラスメイト達は怯えてはいても悲鳴を上げはしなかった。しかし、椅子を持った途端、クラスメイト達の様子が一変した。『ヤバい』って言っている人もいるし、悲鳴を上げている人もいる


「素手がダメなら今度は武器を持ちますか……」


 未来で出会った美優のストーカーもそうだ。自分の思い通りにならないと武器を持って強引に従わせようとする。これが思いが歪んだ方向に向かった結果か


「黙れ!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 椅子で俺を殴ろうとする先輩。ストーカーされている対象と場所が違うだけで未来での状況と被る。そういえば未来で遭遇した美優のストーカーもこんな感じだったっけ?


「人を傷つけて手に入るものに何の価値もない事を知るといい」


 素手の時は躱したが、今度は躱さない。俺が躱す事によって他の関係ない奴を傷つけるかもしれないし


「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 先輩は椅子を振り回しながら俺に向かって来た。遊華達とした約束を破る事になるが、今回ばかりは許してくれ


「がっ!い、痛ぇ……」

「遊!!」


 椅子で殴られたショックで俺は崩れ落ちる。敬の俺を呼ぶ声と周囲の悲鳴が聞こえる。ま、マジで痛ぇ……


「はぁ、はぁ、どうだ?これで小山さんは俺のものだ……」


 俺を殴り倒し満足気な顔をしている先輩。本当に香月が自分のものになると思っているならおめでたいと思う


「遊!!」


 朦朧とする意識の中で聞こえる香月の声。どうしてここにいるんだよ……


「香月……どう……して……」


 意識が朦朧としている中でどうしてと聞くのがやっとだった


「遊と一緒にお昼食べようと思って……それより、大丈夫!?」

「あ、ああ……俺はだ、大丈夫だ……心配するな……」

「で、でも……」


 不安そうに俺を見つめる香月。別に死ぬわけじゃないのに……


「小山さん!俺達の邪魔をする奴は俺が倒したよ!さぁ、俺と付き合ってくれ!!」


 こんな状況でも空気を読まない先輩。俺を殴り倒した事による満足感と香月と恋人になれるという思いで状況がわかってないらしい


「ねぇ、貴方が遊をこんな目に遭わせたの?」


 いつもの香月からは信じられないくらいの冷たい声


「そうだよ!俺達の仲を邪魔する奴を俺が倒したんだよ!!」


 そんな香月の様子が違うとは考えずに意気揚々と自慢気に語る先輩。香月のヤンデレスイッチがどこなのかは知らない。だが、今の状況は間違いなくヤバいものだと感じる


「そう……貴方が遊を傷つけたんだ……許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない遊を傷つける奴は絶対に許さない……貴方は遊を傷つけた!!絶対に許さない!!」

「こ、小山さん……?」


 香月の豹変ぶりにクラスメイトも俺を殴り倒した先輩も困惑している。普段はみんなのお姉さま的な存在の香月が激怒するところはさすがに想像ができなかったみたいだ。一緒に生活している俺でさえ困惑しているんだから無理もない


「今朝は穏便に済ませようと思ったけど、今回は別。遊を傷つけたお前は殺す!!」

「ひっ!!」


 香月の殺気に怯える先輩とクラスメイト達。こりゃ止めないとヤバいな


「何を怯えているの?遊は貴方が椅子を持ち出した時、同じくらい怖かったんだよ?そんな貴方に怯える資格なんてあるの?ねぇ、答えて……答えろ!!」


 本格的にヤバくなってきたぞ


「敬、肩を貸してくれ……」

「う、うん!!」


 遠くから眺めていた敬はすぐに俺の元へ駆け寄ってきて立たせてくれた。


「さて、暴走した香月を止めないとな」

「と、止めるって、無茶だよ!遊!」

「それでも俺が止めないといけないんだよ」


 怯える先輩の元へ殺気を放ちながらユラユラと近づいていく香月を俺が止めないで誰が止める?自意識過剰じゃないが、今の香月を止められるのは俺しかいない


「で、でも、遊、フラフラじゃないか!」

「そうだな。でも、俺達の事情を知っている敬なら解るだろ?香月を止められるのは俺しかいないって」

「そ、それはそうだけど……でも……」

「頼む」


 俺は普段、自分でできる事は自分でやる。しかし、本当にどうしようもない時、人に何かを頼む。今回みたいにな


「はぁ……わかったよ」


 敬は溜息を吐きつつも俺を香月の元へと連れて行ってくれた


「ありがとな、敬」

「貸し1つだよ」

「はいはい」


 俺は敬の肩を借り、香月の元へと辿り着いた


「香月、俺なら大丈夫だからその人を許してやってくれないか?」


 遊華の事もそうだが、大切な人が他人を傷つけるのを止める為なら香月との本当の関係がバレるのなんて安いものだ。さて、暴走した香月が止まるかどうか……





今回は遊が椅子で殴られる話でした

遊が椅子で殴られた後、香月が暴走しました。さて、遊は暴走香月をどうやって止めるのか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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