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【香月ヤンデレ編2】朝から意味不明な人に絡まれた件について

今回は遊以外で香月の恋人を名乗る人が登場する話です

香月の恋人なら美月はともかく、香月の両親の名前を知っていてもおかしくないと思いますが・・・・

では、どうぞ

「お前!小山さんの何なんだ!」


 校門を潜り、教室に向かう途中の廊下で面倒な奴に絡まれたと思う。それに、いきなり何だ?


「小山?俺は小山って人を知らないんだけど?」


 いきなり小山と言われましても誰ですか?としか言えない。小山……そんな名字の人が俺の知り合いにいたっけ?


「遊、小山って私の苗字なんだけど?」

「あ、そうだっけ?最近名前呼びだったから忘れてた」

「もうっ!」


 香月は頬を膨らませながらプイっとそっぽを向く。美月もそうだが、一月さん、羽月さんも名前で呼んでいるから忘れても仕方ないと思う。俺は悪くない


「イチャイチャしないで俺の話を聞け!お前!小山さんとどういう関係だ!」


 正直に恋人だと言いたいが、遊華の事や学校見学での由紀の事があるので正直に話すわけにはいかないし、最悪の場合、未来の事も話す事になる。しかし、俺は目の前にいる人をよく知らないし、未来でも関わった記憶はない。無難に親父の友達の娘だから親しいとでも言っておこうか


「どういう関係って俺と香月先輩の両親が仲良いので両親の友達の子供同士の関係ですけど、それが何か?」


 ヤンデレ彼女を紹介する時に紹介したいけど素直に紹介できない場合は知り合いとか友達だって言うのは避けましょうって前に読んだ本に書いてあったので俺はそれを真似みる事にした


「そんなんで納得できるわけないだろ!正直に話せ!!」


 正直に話してるんだが、コイツは人の話を聞いてないか、人の話を理解できない人間らしい。


「正直に話していますよ。そう言う貴方は香月先輩のなんなんですか?恋人ですか?」


 香月の恋人は俺、藤堂遊だ。しかし、この男子生徒がどんな回答をするのかが気になって聞いてみた。これで恋人って答えたら滑稽な事この上ない


「そうだ!俺は小山さんの恋人だ!」

「なっ!ちが──────」


 俺は男子生徒の恋人発言を否定しようとする香月の口を塞いだ。香月の否定したい気持ちは理解できるが、こういうタイプの人間はしつこい。ここで心をへし折っといた方がいいと思ったからだ


「そうですか。香月先輩の恋人なら当然、家に遊びに行った事があると思いますが、香月先輩の家族の名前とかわかりますか?」


 この男子生徒が香月の恋人でよく家に遊びに行く仲だとしたら当然、美月や羽月さん、一月さんと顔を合わせているはずだ。彼女の家族の名前くらい答えられるのが当たり前だ


「ああ!俺は小山さんの家に何回も行ってるからな!ご両親の名前なんてお手の物だ!それに、俺の1つ下の学年には美月って名前の妹がいる事も知っている!」

「そうですが」


 この学校に通っているのなら美月の事を知っていても不思議はない。そんな事は俺のクラスの人間に聞いても全員が答えられそうだし


「ああ!どうだ?お前は知ってたか?」


 妹である美月の事を知っていたくらいでドヤ顔をする男子生徒───いや、名も知らない先輩。知ってたも何も俺はその美月と同じ家に住んでるんだけど?


「知ってましたよ?さっきも言いましたが、俺の両親と香月先輩の両親は友達ですので家によく遊びに来ますので。その時に香月先輩と美月先輩も一緒に来るので。それで?先輩は香月先輩の彼氏なら香月先輩のご両親のお名前はご存じですよね?」

「ああ!知っているとも!母親が直子で父親が春彦だ!」

「「…………」」


 羽月さんの『は』一月さんの『い』すら出てこなかった。コイツはアレだ。ストーカーだ。しかも、自分が好きな異性の恋人だと思いこんでしまうタイプの


「どうだ?俺の完璧な答えに言葉も出ないだろ!」


 バカ言え。俺はお前の完璧な答えに言葉が出ないんじゃなくて、お前の的外れな答えに怒りを通り越して呆れて言葉が出ないだけなんだけど


「いや、貴方の答えに言葉が出ないんじゃなくて、貴方が質の悪いストーカーだって事がわかったから言葉が出ないんですよ」


 美優のストーカーを退治する時は相談されてから何らかの対策をしてからだった。しかし、今回のような場合、俺は何の対策もしてない。ぶっちゃけ、かなりヤバい


「俺は小山さんのストーカーじゃない!恋人だ!!そういうお前の方こそストーカーなんじゃないのか!!」


 まぁ、そうだな。香月本人が俺からストーカー被害に遭っていると一言言えば俺もストーカーの部類に入るとは思う。


「違うよ!遊はストーカーじゃないよ!!!!」


 香月の大きな声が廊下全体に響き渡る。否定してくれるのは嬉しいんだけど、何も大声で否定しなくても……


「こ、小山さん……?」


 香月が大声を出してビックリして戸惑っている様子の先輩。しかも、さっきの大声で他の生徒も教室から出てきている。遊華の騒動が終わったと思ったら今度は香月の騒動に巻き込まれるとは……


「貴方は私の恋人じゃない!!私は貴方の事なんて知らない!」

「そ、そんな……小山さん……」


 同じ学校、おそらくは同じ学年であろう人を知らないって言うのは変な感じだが、接点がゼロだったら仕方ない。膝から崩れてしまった先輩は若干可哀そうだとは思う


「もう私に近づかないで!!」


 崩れ落ちた後、下を向いたまま無言の先輩に香月は容赦ない拒絶の言葉を浴びせる。


「なんて言うか……同情しますよ。先輩」


 本音を言うと全く同情はしてない。しかし、コイツの心をへし折るには優しくするのも大切だ


「遊、そんな人に同情する事なんてないよ。行こう」

「あ、ああ」


 無言のままの先輩を放置し、俺は香月に手を引かれ、教室へと向かった。あれで心はへし折れたと思う。いくら何でも好きな人から拒絶されたら立ち直れないと思う。


「じゃあ、遊、またお昼休みにね」

「ああ」


 自分の教室に着いた俺は香月と別れ、自分の席に就く。


「朝から大変だったな。遊」


 席に就いた瞬間、浩太が俺の元へやって来た。本当に大変だった。昨日の遊華に続き、今度は名も知らない先輩に絡まれた。美優のストーカーよりも質が悪かったのは印象的だ


「見てたのか」

「香月さんがデカい声出してりゃ嫌でも目立つさ」

「だよな。昨日の遊華に続いて今回は香月だからな」


 ただでさえ遊華が昨日やらかしてくれたせいで気が重かった。それに追い打ちをかけるように香月に絡んできた先輩。先輩が知らなかったとはいえ、今回ばかりは恨むぞ


「そりゃご苦労。あ、遊華ちゃんで思い出したけど、クラスの連中は本当に約束を守ってるみたいで何よりだ」

「約束?」

「ああ、遊は知らなくていい約束だ」

「何だよ、気になるな」

「遊の性格上、俺がクラスの連中とした約束は知らない方がいい。本当の母の問題を抱えるお前にこれ以上の負担を強いるのは酷だからな」

「そ、そうか……」


 浩太がした約束で俺の負担を強いるものが気にはなったが、俺はあえて聞かない事にした。


「ああ、それより、今は遊華ちゃん達にちゃんと向き合ってやった方がいい」


 いつもなら気持ち悪いとさえ感じる浩太の気遣い。しかし、今回ばかりは甘えておいてもいいか。


「言われなくてもそうする。俺は何だかんだで遊華の事を見ていたようで全然見てなかったみたいだしな」

「そんな事はないと思うぞ?」


 浩太は気を使って否定してくれているんだと思う。しかし、俺が遊華達の事を見てなかったのは事実だと思う


「浩太、気を遣わなくてもいいんだ。俺は遊華達の事を見てなかったんだからな」

「あのなぁ……」


 浩太の心底呆れたような顔。いつも人前じゃ暑苦しい奴を演じ、裏じゃ文学少年の浩太でも呆れた顔するんだな


「何だよ?」

「お前は遊華ちゃん達の事を見てなかったって言ったが、実際は()()()()()()んじゃなくて遊華ちゃん達の事を()()()()()()()()だけなんじゃないのか?」

「そうかもな。俺は遊華達の事を見てなかったんじゃなくて知らなかっただけかもしれないな」

「立て続けに騒動に巻き込まれておかしくなったか……」


 俺の返事から何かを察した浩太がそう言った。おかしくなったは失礼じゃないか?一応、俺はまだまともなつもりなんだけど?いや、まだって言ってるって事はいつかおかしくなるのか


「おかしくなるかどうかは別として立て続けに騒動に巻き込まれて疲れてるのは確かだな」


 俺自身の問題なら自分で何とかする。しかし、どうにもならない事だってある


「お、おはよう、遊、浩太」

「おはよう、敬」

「なんか遊が疲れているように見えるのは気のせい?」

「いや、遊は疲れている」


 俺の代わりに敬にあいさつを返し、俺の現状を話す浩太。悪いな浩太。俺にはもう話す気力すら残ってないんだ


「そんな事があったんだ……」

「ああ。香月さんの声けっこう響いたぞ」


 さっきの騒動の話を聞いて苦笑いする敬と自分が恋人だと思い込んでいた先輩に飽きれたと言わんばかりの浩太。本来なら俺の役目だが、周りで見ていただけのギャラリーにも呆れられるって相当だぞ


「ま、まぁ、しょうがないよね……昨日の遊華ちゃんに続き今日は香月さんだもんね」


 同じクラスだから当たり前の事と言えば当たり前だが、敬は昨日の事を知っている。まぁ、敬は俺と遊華が実の兄妹じゃない事も知っているから別にいいんだけどな


「本当なら未来に飛ばされた事の方が重大な問題だと思うんだけど、遊にとってはそうじゃないみたいな」

「あ、あはは……」


 浩太の意見に苦笑いする敬。さて、そろそろ喋るか


「そりゃお前、未来に飛ばされた時は年と場所の確認をしてから対策を考えればいいけど、昨日とさっきの騒動はいきなり過ぎて俺自身がどうしていいかわからないんだよ」


 未来に飛ばされた時にも驚かなかったわけじゃない。電車に乗ったと思ったらいきなり駅の外にいたし、辺りを観察したらなんか知らない建物とかそこになかったはずの店とかあったし


「遊はアドリブに弱いんだったな」


 浩太よ、それを今になって思い出すなよ……泣きたくなるから


「それは言わない約束だろ?」


 特にそんな約束をした覚えはないが、何となく言わないといけないと思った。


「俺は遊とそんな約束をした覚えなんてない」


 俺のテンプレをアッサリスル―した浩太。そりゃそうだよな。そもそもしてない約束をしたとは言わないよな……こんな感じで俺達はHRまでの時間を過ごした。





今回は遊以外で香月の恋人を名乗る人物が登場する話でした

香月の両親の名前を間違えたのにそれでも恋人だと言える神経には感心しますが、それだけです

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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