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【遊華ヤンデレ編5】浩太が事後報告してきた件について

今回は確認と事後報告です

浩太の事後報告とは何か?

では、どうぞ

「お兄ちゃん……本当にいいの?」

「ああ。遊華を拒絶したのは小学生の頃の俺だったとしても拒絶したという事実には変わりないしな」


 俺はベッドに繋がれたままだが、俺の状況はどうでもいい。今、重要なのは小学生の頃の俺が遊華に酷い事を言って遊華が深く傷ついていたという事だ。


「で、でも、お兄ちゃんは身体に名前彫られるのとか嫌なんじゃないの?」


 身体に名前を彫るという事に対し、不安があるようだが、別に名前を彫らなくてもいいんだけど?


「本当は嫌だけど、俺の身体に名前を彫る事で遊華の心の傷が少しでもマシになるのなら俺は構わない」


 まぁ、傷にもよるが、身体に付いた傷はいずれなくなる。しかし、心の傷は簡単に消えるものじゃない。俺にとっては何気ない一言でも遊華にとっては深く傷つく事だってある。逆も然りだがな


「いいの?名前彫ったら永久に消えないかもしれないんだよ?」

「別に構わない。人に見えなきゃ何も問題ないし、見えないところに付いたら人前で肌を晒さなきゃいいだけの話だしな」


 俺が危惧していたのは名前を彫られた後、人前で肌を晒す事になった時にどうするかだ。むしろそれ以外の事は問題だとは感じてない


「お兄ちゃん!!本当にいいの!?」


 遊華は何を怒鳴っているんだ?俺がいいと言ったんだから構う事ないのに……


「いいよ。さっきも言ったけど、俺の身体に名前を彫る事で遊華の心の傷が癒えるのであればな」


 最初に飛ばされた未来でも考えなかったわけじゃない。俺が失踪したと聞かされ、遊華がヤンデレだとした時に遊華に寂しい思いをさせたんだから身体に名前を彫られるくらいはいい。そんな考えが俺の頭に一瞬だが浮かんだ。それが飛ばされた未来なのか、今になるのかの違いだ。トラウマか寂しさかなんて大した問題じゃないしな


「でもッ!でも……」


 遊華はどこか躊躇っているみたいだが、何を躊躇う必要がある?好きな人の身体に名前を彫って自分の所有物だという証を付ける。ヤンデレならこんな事くらいすぐに思いつくだろうに


「何を躊躇う必要がある?ヤンデレの遊華なら俺の身体に名前を彫って自分の所有物だって証を刻み込むくらいの考えなんてすぐに浮かぶだろ?」


 俺はドMじゃない。しかし、遊華の心の傷と俺の現状を打破するには遊華が俺の提案を飲むか拒否する方向に話を持って行く他ない。監禁されたなら身体はある程度自由に動かせるが、ベッドに拘束されたとあれば身体の自由が利かない上に何をするにも遊華が常に側にいなきゃいけない。遊華が中3で受験を控えている以上、俺の世話なんかに時間を割いてほしくない


「そ、それは……そうだけど……」

「だろ?だけど、どうして今までそれをしなかったのか?それは遊華自身が心のどこかで我慢してたからだ」

「…………」

「無言は肯定と受け取るぞ?」


 俺の仮説を否定もせずに黙ったままの遊華。浩太に言われるまで気が付かなかった俺も間抜けだが、本当にそうだとは思わなかった。これが俺の価値観を遊華に押し付けてきた結果か……


「…………」


 遊華は俺の仮定を否定も肯定もせず、ベッドに繋がれた両手、両足の手錠を外した


「…………何のつもりだ?」


 警戒しているわけじゃないが、俺の拘束をアッサリ解いたのはどこか引っかかる


「別に。ただ、もう我慢する必要なんてないのかなぁ~と思っただけだよ」


 我慢する必要がないという事と俺の拘束を解く事になんの繋がりがあるのかサッパリ理解できない。まぁ、ここは遊華の好きにさせるか


「俺としては両手、両足が自由になったから大助かりだからいいけどな」

「両手、両足の拘束を解いたけど、お兄ちゃんはまだ自由の身じゃないって事を理解してる?」

「ああ。それは痛いほど理解している。それでも、俺はこの場から逃げる気は全くしないし、別に遊華にだったら何をされても抵抗はしない」

「そう……じゃあ、お兄ちゃんの望み通り身体に名前彫るね?」

「好きにしろ」


 考えてみれば遊華……いや、遊華達がヤンデレだなんて事は俺の周囲では当たり前の事だ。しかし、今までは監禁や拘束されはしたが、俺の身体に直接何かをしてくるだなんて事は1度たりともなかった。まぁ、俺がそれを拒み続けてって事もあるけど


「じゃあ、キスマーク付けても文句言わない?」

「ああ」


 キスマークか……どっちも痕は残るが、名前を彫られるよりマシだ。時が経てば消えるものと時が経っても消えないものかという違いはあるがな


「人前でキスしても文句言わない?」

「…………」


 人前でキスするのは勘弁してほしい。恥ずかしすぎるし、後が面倒だ


「どうして黙るの?私になら何をされても文句ないんでしょ?」


 確かに、遊華に何をされても文句は言わないって言ったけどよぉ……さすがに人前でキスはちょっとなぁ~


「それはそうだが……さすがに人前でキスはちょっと……」


 痛みには耐えられる自信があるが、羞恥心には耐えられる自信がない


「何?文句あるの?ないよね?」


 光のない目で俺を見つめる遊華


「俺は痛みには耐えられるが、羞恥心には耐えられないんだ。だから、人前でキスは勘弁してくれ」

「へぇ~、私になら何をされてもいいっていうのは嘘だったんだ?」

「別に嘘じゃない。が、俺にだって羞恥心ってのはある。いくら遊華の事が好きだからと言っても羞恥心には勝てない。ただ、それだけだ」


 時々公共の面前でキスしているバカップルがいる。相手を好きだって事を何らかの形で表現するのはいい事だと思う。しかし、それを公共の面前でしていいわけじゃない。人によっては不快に思う人もいる。遊華の要求ってのは不快に思う人もいるかもしれない事を考慮してない


「お兄ちゃんは私と付き合ってるって周囲に知られるの恥ずかしいの?」

「恥ずかしくはないぞ」


 話が噛み合ってない気がする。しかし、今ここでそれを指摘したところで状況は何も変わらない


「じゃあ!!どうして素直にクラスの人に言わなかったの!?私と付き合ってるのがそんなに恥ずかしい事なの!?ねぇ、答えて!!答えろ!!」


 言葉が荒くなってくる遊華。一応、説明はしたが、本心じゃ納得してなかった。いや、納得しきれなかったといったところか


「遊華と付き合ってる事は恥ずかしい事じゃない」

「だったらッ!!」


 遊華と付き合ってる事は恥ずかしい事じゃない。俺は藤堂家の本当の息子じゃないから遊華と付き合っていても何も問題はない。対して親しくもない奴にそれを言う必要性も感じないが、やっぱりこういうのって遊華が無事に受験が終わった頃に話すべきなんじゃないかとも思う


「俺は藤堂家の本当の息子じゃない。遊華と付き合っていても何の問題もないし、遊華を彼女として周囲に言っても構わない。しかし、万が一それを周囲に言ってしつこく詮索されて変な噂が立った時、俺は遊華を守りきれる自信がないから言わないだけだ」


 遊華の受験が終わったらなんてのは俺にとって都合のいい言い訳でしかない。だから言わなかったが、俺が藤堂家の本当の息子じゃないって周囲が知った時、それだけで納得する奴ばかりじゃない。しつこく詮索する奴、邪推して余計な事を言いふらす奴だっているかもしれない。そうなった時に俺は遊華を守りきれる自信はない


「でも、私はお兄ちゃんの彼女として振る舞いたいよ……」


 そう言って遊華は泣き出してしまった。大切な彼女を泣かせたくなかったんだけどな……どうして上手くいかないかな……


「遊華……」


 俺は泣いている遊華を抱きしめる。こんな時、抱きしめるだけしかできない自分が恨めしい。


「お兄ちゃん……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 遊華は俺の腕の中で子供の様に泣きじゃくった。俺も俺で守りきれる自信がないとか言い訳ばかりしてないで腹決めるか。別に言いたい奴には言わせとけばいいしな


「落ち着いたか?」

「うん……でも、もうちょっとこのままがいい」


 遊華は泣き止んでもしっかりと俺に抱き着いたままで離れる気配はない。そういえば遊華を抱きしめたのなんていつ以来だ?最近は遊華を抱きしめる機会なんてなかったからなぁ……


「遊華……」

「お兄ちゃん……」


 俺と遊華は唇を重ねようとする。しかし、携帯の着信音によって俺と遊華の唇が重なる事はなかった


「お兄ちゃん……電話鳴ってるよ?」

「わかってるよ。遊華、俺の電話撮ってくれ」

「うん」


 遊華は綺麗に畳まれた俺の制服から携帯を取りだした


「サンキュ。ったく、誰だよ……」


 遊華とのキスを邪魔され、不機嫌気味ではあるが、電話を取る。くだらない用だったら即刻切ろう


「もしもし」

『よぉ、遊』


 電話の相手は浩太だった。キスの邪魔をされ、不機嫌だった俺は電話の相手が誰かを確認する事なく電話を取ったから出るまで相手が誰かは知らなかった


「何の用だ?」

『遊が早退した後の話でもしようと思って電話したんだが、お前、機嫌悪いな』

「当たり前だ。俺は今、遊華とキスしようとしてたところなんだぞ?」


 電話で浩太に遊華とキスしようとした事を言うとそれを横で聞いていた遊華が頬を赤く染めた。


『そうか。それは悪かったな。まぁ、事後報告だから遊は胡坐かいて遊華ちゃんを抱きながら聞いてくれ』


 どうして浩太は俺の体勢まで指定してくるんだろうか?寝室だから遊華を抱きしめるのはできるからいいけど


「わかった。それじゃあ、少し待ってくれ」

『了解』


 浩太を少し待たせ、俺はベッドに腰掛けた。そして、俺は遊華に膝の上に来るようにジェスチャーし、遊華は俺の膝の上に座った


「待たせた」

『別にいい。それで、事後報告なんだが、結果的に言うと遊と遊華ちゃんが本当の兄妹じゃない事はクラス全員にバレた。いや、俺がバラした』


 浩太はイタズラに人の秘密を言いふらすような奴じゃない。それは俺がよく知っている。が、それを言う意味がどこにあるんだ?


「そうか。だが、関係ないクラスの連中にそれを言う意味がどこにある?」

『俺だってそう思う。そう思うんだが、クラスの連中は言うまで俺を開放しそうになかったからな。仕方のない事だった。とはいえ、俺が自分の身を守る為に遊達を犠牲にしてしまった事は事実だ。お詫びと言ってはなんだが、俺から遊達の事に関して余計な詮索したり噂を立てたりしたら生まれてきた事を後悔させると言い聞かせておいた』

「お、おう……」


 浩太よ、お前は一体何をするつもりなんだ?


『用件はそれだけだ。じゃあな』

「あ、ああ」


 そう言って浩太は電話を切ってしまったが、俺は事後報告よりも生まれてきた事を後悔するほど浩太が何をするかの方が気になる


「お兄ちゃん、突然私を膝の上に乗せたりしてどうしたの?」


 電話が終わり、俺の膝の上にいた遊華がキョトンとした顔で聞いてきた。


「遊華を膝の上に乗せたのは浩太の指示だ。それより、遊華、嬉しい報告だ」

「ん?何?」

「明日から俺は遊華と付き合ってる事を隠さなくてもいいみたいだ」

「本当?」

「ああ」

「嬉しいッ!」


 俺に抱き着いてきた遊華は本当に嬉しそうだ。俺としても隠しておくのも嫌だったしいいとは思う。ただ、浩太が自分の身を守る為に俺達を犠牲にした事を除けば。まぁ、余計な噂を立てたり、詮索してきた奴には生まれてきた事を後悔する程の何かをするって言ってたからいいか。今は遊華を思いっきり甘えさせよう






今回は確認と事後報告でした

次で遊華ヤンデレ編ラストです

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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