勇者の話
ミラクルステッキ
とある鍛治職人が趣味半分、ネタ半分で作った杖。
可愛さがあり、魅了も付与されている。
リドル達が
廃城を離れて二日あたりが経とうとした頃、
彼は考えていた。
自分はどっちなのだろうと。
勇者には勇者という肩書きでプレッシャーに押され、
モンスターにはモンスターの思考がある。
合間見えない二つは果たして分かち合えるのだろうか?と。
真剣な顔をして素振りをしている勇者を
母は見ている。
近づこうともせず、声をかけるわけでもなく、
ただ、遠くでじっと...。
そんな日の夜。
母は勇者に尋ねた。
「あんた、悩みがあるんじゃないのかい?」
そんな母の言葉に
飯を食っていた勇者の箸はピタッと止まる。
「その悩みは、母さんに言えないことかい?」
勇者はゆっくりと箸を下ろしてしばらく考える。
「何か考えると、真剣に何かに打ち込むのはお父さんそっくりだねぇ....」
母はそう言うと遠くを眺める。
暫くの沈黙が続いた後、勇者は母に言う。
「オカンにとって、モンスターってなんだ?」
そんな言葉に、母は呆気に取られるが答える。
「モンスターは人々を脅かす存在だよ?
それを討伐して生活をしているのが母さん達であり、勇者なんじゃないのか?」
「うん、そうなんだけど、さ。
...話をしたんだ。モンスターと」
母は勇者を見る。
「話した?戦いもせず?....はああぁ....勇者が何を」
母は呆れた顔で頭を抱えてため息を吐いた。
そんな母に勇者はムッとして少しだけ声を荒らげる。
「いいから聞けって!最初に聞いてきたのはオカンだろ!?」
そんな勇者の態度を見て
母は目を大きくさせて驚いている。
「...そいつはさ、そのモンスターはさ、
静かに暮らしていたいって言ってたんだ。
仲間が傷つかない様に。誰にも邪魔されないように。
モンスターって言うカテゴリだけで狩られるのを心底嫌っていた」
そこまで聞いて母は聞く。
「....。あんたはどうしたらいいと思う?」
「わかっていたら苦労しないよ....」
項垂れて答える勇者に
母は笑って聞いてくる。
「違う違う。あんたはどうしたい?
カテゴリの中に勇者という職を持ったあんたなら?
確かに勇者は人の為にモンスターを討伐したり、
王の為に魔王を討ち取ったりする職さ。
でも、母さんが思う勇者っていうのはさ
『誰か』とその誰かを守る為の『剣』と『盾』になる事じゃないのか?
それが例えなんであろうと。例え世界の敵であろうと」
それを聞いた勇者は母に聞く。
「俺が敵に味方したら、世界中の敵になったらオカンはどうする?」
母は暫く考えた後に答える。
「どうだろうねぇ。ぶん殴るかもしれないし、味方するかもしれない。
でも、私はあんたの母親だ。
少なくとも、息子は信じてるさ」
その母の言葉に
勇者の明るく、自信と希望に満ちた表情になっていた。
そんな次の日、
勇者は朝早くに村を出ていった。
そんな勇者を母は、ただただ静かに見送るのである。
ふと、勇者は王城からの緊急依頼書を手に取ると、
ビリビリに破き、投げ捨てた。
「知らねえよ、こんなもん」
破かれた紙切れは風に乗り、遠くへと流れて行ったのであった。
みらくる☆すてっき☆彡
ミラクルステッキを元にイケイケ魔女が作った杖。
可愛さが格段に上がっており
魔力が大幅に上がる。
魅了確率も高い