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電撃使いのTSボクっ娘  作者: Xenon
第1章「幼なき決意」
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第7話「白魔五級はソロで勝てて一人前です」

一話を少し修正しました

第7話「白魔五級はソロで勝てて一人前です」

――――――――――――



 あー、うん。

 僕は実に馬鹿だった。

 何が馬鹿って、あれだよ、自分が使ったものの出自を聞かれた時の言い訳を前もって考えてないことだよ。

 うん。

 うん。

 ……うん。


「どうしたんだい、さっきからだんまりを決め込んで」


 ああ〜、この状況、どうしよう。


「あ、えー、と」


 どもる僕。見つめるお父さん。お父さんの顔はあくまで安らかだけど、もしこれがしかめっ面ならまるで僕が怒られているか注意を受けている場面にしか見えないだろう。

 僕は焦る。多分ここで正直に口走ったとしてお父さんはそれを信じないだろうし、仮に信じたらそれはそれで娘の皮を被った見知らぬ男、大変なことになる。


 兎にも角にも僕はこの状況をひっくり返す一手を見つけなければならない。


「『見知らぬ世界の記憶がある』」


「――――っ!?」


「ふーむ、その反応、図星かぁ」


 唐突な言葉に僕はどきりと跳ね上がり、それが余計にお父さんの発言に力を持たせる。


「なん、で」


 なんでわかった?


「たまに、ほんとぅにたまぁ〜に、断片的な異世界の記憶を持つ子がいるんだよ。まさか自分の娘がそうとは驚いたけどねぇ」


「そ、そう、なんだ……」


「そう、『異知の加護』だ。大事にしなよ」


「うん……」


 よかった。本当によかった。そうか、そんな加護として扱われるのか……。

 それに、『たまにいる』ってことは、僕と同じ境遇の人が他にもいるってことだよね。加護ってジャンル分けもされるくらいだし。同類がいることが分かってちょっと安心。


「しかし、これはお祝いだねぇ〜え」


 え?


「数百年規模の『加護持ち』が生まれたんだぁ、国に祝われてもおかしくないくらいだよ」


 ふぁっ!?数百年規模!?ってことは同類は生きてない!?国に祝われる!?


 ああ、もうなんか無茶苦茶だよ……。


「ああ、『加護持ち』ってことが分かったんだし、王様へ挨拶にも行かなくちゃねぇ。ま、君は結構内向的な方だしいぃ?別に義務でもないから謁見は後でもいいとは思うけどね?まあ、まずはお祝いだ。家でのパーティになるが、それでもいいかい?」


「あ、うん」


 なんか王様への謁見まであるらしいけどそれは先延ばしに。まだ心の準備ができてないから僕としてもありがたい。だって数百年に一人、みたいな頻度で異世界の知識を持った人間とか絶対根掘り葉掘り聞かれるじゃん?めんどくさい……。


 何はともあれ、パーティだ。

 最近はあの二人がいるのでパーティでも見知らぬ人に囲まれて退屈することがなくなった。パーティが楽しみですらある。






◆◆◆◆◆



 僕の『加護』のことを聞いたアルナとお母さんはそれはもう驚いていた。アルナなんて驚きすぎて声が「ひぇっ?」と裏返ったくらい。むしろお父さんが驚かなさすぎたんだと思う。


 そんでパーティ当日


 直近の町の人たちも集まった豪華なパーティが催された。とはいえ、踊ったり、高級なワインで洒落こむようなものじゃなくて、町の人たちや僕らでも楽しめるような、飲み食いする、いわば会食だ。壇上では飛び入りで様々なパフォーマンスが行われていて飽きない。料理も美味しくて、二人との会話も進んだ。ただ、驚いたのは、


「はぁ、あんたも『加護持ち』なの」


「しかも三人の中じゃ一番希少だね〜」


「ぬぐぐ……自慢できないじゃないの!」


 そう、二人とも『加護持ち』だったんだ!

 流石に数百年規模とかじゃなくて、毎年何人も確認されてるようなものだけどね。

てか僕の場合厳密には加護じゃないし。

 ちなみに、高飛車と呼ぶのもそろそろめんどくさくなってきたリンネは耐熱性能付与の『鳳凰の加護』、バルジは『剛体の加護』らしい。これは字の通りだね。あと、リンネが魔術を使った時に熱がったのは、単純に自分が制御できない範囲の技を使ったせいで加護をぶち抜いたらしい。馬鹿だ。


「なによー!まさか加護が効かないなんて思うわけないじゃない!」


 ――そんなこんなで昼に始まったパーティも気がつけば夕方。飲めや歌えやの素朴な宴もそろそろ終わりが近づいてきた。そんな中、館の扉を大きな音を立ててぎぎぃっと開けた者がいた。メイドだ。アルナじゃなくて、この館に勤めてる他の人でもない。


「何用だ!今は宴の最中だぞ!」


 声を荒げるは町長さん。どうやらそこのメイドさんのようだ。


「坊っちゃまが……坊っちゃまが『聖石のランプ』を割られました!」


「なにっ!」


 ざわざわと会場が騒がしくなる。どうやら大事のようだ。


「予備は!」


「設置しましたが溢れ出る瘴気が多すぎて『白魔』発生も時間の問題です!」


「息子は!」


「離れの地下室に三人つけて行ってもらいました!」


 と、その時


 ……ぁぉぉおおぉん……


「この声だと……もう五級か!?早すぎる!」


「暴れて他の聖石も割られたのかもしれません!」


 どよめく会場。

 この世界には『聖石』という、魔物の元となる瘴気を封じ込める結晶がある。これを置いておくだけで魔物の発生を防げる便利アイテムだ。

 ただ、聖石にも限界があって、封じ込められる以上の瘴気が入ると砕けてしまう。割れたり砕けたりすると中に溜まっていた瘴気が全て外に出てしまう。しかも溜まっていた量が多すぎると瘴気の濃度が高すぎて通常の魔物とは異なる『白魔』が発生する。

 白魔は魔物のジャンル。危険度が高い順から特級、一級、二級、……と分けられていき、七級まである。

 こいつらは周囲の瘴気を吸って成長していくので、今回みたいにたくさんの聖石が割れると一気に五級まで成長することもある。

他の生物や草木も取り込んで成長するので厄介だ。


「うぅーむ、これは困ったなぁ、しょうがない、さくっと行ってくるよ。エルーゼ、付いてきなさい。」


「え、あっはい!」


 僕はお父さんの手を握る。大きくて暖かい手だ。


 目的の場所へはすぐに着いた。暴れまわる白魔が目印になったから迷わず一直線に着いた。

 いざソイツと対峙すると、その大きさに驚いた。見た目は恐竜の顔が平べったい一つ目の怪獣、といった形なんだけど、体高だけで僕の三倍はあるだろう。まるで少し小さめのティラノサウルスだ。


 僕は正直、怖くて震えが止まらなかった。


 そんなヤツを、お父さんは、


「もし魔導の道に進むならこんなやつをたくさん倒さないといけないんだぞぉ、しっかりとぉ見ておけ」


 なんて微笑みながら、


 ひゅっ がきゃっっ!


 腕を一振りした氷の一撃で無に帰した。

たった一撃である。一般に、一人で倒せば十分に一人前と認められる強さの魔物を、捻り潰した。白魔は文字通りに四散した。


 お父さんはそのまま町長の息子さんとお付きのメイドを保護して速やかに会場へ歩き出した。僕は慌てて後を追った。



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