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電撃使いのTSボクっ娘  作者: Xenon
第1章「幼なき決意」
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第2話「激動?の乳児期」

第2話「激動?の乳児期」

――――――――――――



ぱちくり、ぱちくり。


 気がつけば僕はどこかわからないけど、立派な屋敷の中にいた。


 そのまま頭を回して辺りを見渡そうとするけど、上手く動けないや。

取り敢えず立ち上が――れない。

あ?なんで?


 少し落ち着いてみると、どうやら僕は四つん這いになっているらしかった。

座ろうとしても頭が重たくて上手く座れない。それに、なんか周囲の物が大きい気がする。いや、まてよ――僕は少し下を向いて自分の手を見る。そこには、ちっちゃな赤ん坊の手があった。


「あうあうあー(転生、確かに新しい命だけどまさかの赤ちゃんスタート)!?」


僕の悲痛?な泣き声が屋敷中に響き渡った。






◆◆◆◆◆



「――――っ!?」


ずっどん!


 数分後、僕のいる部屋のドアが勢いよく、それはそれは勢いよく放たれた。


 よく分からない言葉を叫びながらドアをぶち抜いたのは、慌てた様子のメイドさんだ。 どうやら先ほどの声を聞いて飛んできたらしい。


 背丈は小柄で見たところ150cmあるかどうかといったところだろう。目尻は僅かながら垂れ下がっていて優しげなイメージを漂わせるが、雰囲気にどこか芯のようなものも感じられるおかげで弱々しいといった印象は無い。髪もショートに整えられた栗色。

 いたって普通の、ファンタジーでない、前の世界にだっていそうな女の子だ――それだけならば。

 その前頭部には僕の目を引く、ふさふさとした耳が、ちょこんと生えていた。


「あうっあぁあああ(ネコ耳ktkr)!!」


 思わず叫んでしまった。

いや、これは叫ばずにはいられないよね。なんたって、ネコ耳だよ!ネコ耳!これぞ魔法と並ぶファンタジーの代名詞!これなくして異世界は語れないッ!

……と、思わず熱くなってしまった。失敬失敬。って、誰に言ってんだろ、僕。


 さて、ネコ耳メイドに目を戻すと彼女は――もう部屋にいなかった。






◆◆◆◆◆



 ――私、アルナは大急ぎで廊下を走っていた。先ほどお嬢様の大きな泣き声が聞こえたので慌てて部屋へ駆けつけた――その際、勢い余って蝶番を壊してしまったことは気にしないことにした――のだが、よく良く考えれば今はもう陽の六刻、お嬢様がお腹を空かせていてもおかしくない頃合だった。

 そう合点のいった私はすぐに踵を返し、今は厨房に向かっている。後ろからもう一度、泣き声が聞こえてくる。きっとお腹を空かせてしまっているのだろう。


「待っていて下さい、お嬢様――!」


私は駆ける、ミルクを求めて。






◆◆◆◆◆



「あぅ〜」


 僕はネコ耳の彼女がすぐに立ち去っていたことでショックを覚え、特に何をするわけでもなく四肢を放りだしだらけていた。

 いやまあ、ショックを覚えてなくたって何もすることはないんだけどね?

ああ〜、もっと愛でたかったな〜。

一瞬目に入ったと思ったらもう居ないんだもんなあ〜。


コッ、コッ、コッ。


「――――(ただいま戻りました、お嬢様)!」


近づいてくる足音と、本日二度目の落ち着いたトーンに振り返れば、――そこに女神がいた。……ああいや、勿論わかってるだろうけど僕を転生させた女神じゃない。貧相だけど比喩的な表現。


「――――(今、ミルクを飲ませてあげますからね)」


 そう言って(実際なんといったのかは僕にはわからないけどね!)彼女は僕を抱き抱える。

 おぅ。なんか小柄な女の人に抱っこされるのって、なんか、凄く恥ずかしい……。

 彼女はそのまま懐から哺乳瓶を取り出し僕の口へ――あれ、待てよ。ここで僕はふと自分の状態を思い返す。せいぜい五尺程度しかない小柄な少女に抱き抱えられ、哺乳瓶で食事を摂らされている。そう考えると、


「あぅあっ(これなんて羞恥プレイ)!?」


 いちどそういった考えに辿り着いてしまうと、もうそれを覆すのは困難だ。今目の前に差し出されている哺乳瓶に口をつけるのが憚られる。だが、もし赤子がミルクに頑として口をつけなければ、飲ませる側はどうするだろうか。――そう、彼女、ネコ耳を携えた給仕アルナは哺乳瓶の先を僕の口へ捩じ込んだ。


「――――っ!」


 口を塞がれ声が出せない。しっかりと抱き抱えられているため暴れようもない。あとは吸うだけでミルクが飲める、そんな状態で僕は――当然抵抗などできるはずもなくミルクを飲んだ。飲み干した。確かにお腹は空いていたのだ。悔しいが体中に染み渡った液体はとても甘美な味わいだった。


やっぱりメイドさんには勝てなかったよ……。


 僕がミルクを綺麗に平らげた後、彼女は速やかに出ていった。






◆◆◆◆◆



 と、まあ、この後もオムツ替えとか寝かしつけだとかで凄く羞恥心をくすぐられるイベントを起こしながら三年ぐらいたったんだけどある日、僕は今後の人生を決めるちょっぴし大切なイベントを迎えることになる。



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