第15話「異世界電磁放射強すぎじゃない?」
第15話「異世界電磁放射強すぎじゃない?」
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さて、前回「早くレールガンに代わるものを考えないと……」とかなんとかそんな感じのことを言った気がするけどそれについては実はもう半ばできているんだよなぁ……
お分かりの方もいるかもしれないけど、電気を利用して金属を飛ばす方法はなにもレールガンだけじゃない。
『コイルガン』
これがボクが出した結論だ。
とはいえ、さすがに巻いたコイルを生成するのは直線のレールを生成するより時間がかかってしまうし、魔力の消費も大きい。
そこでだ、レールガンは弾に電流が流れ電圧が通ることで飛ばしているけど、コイルガンは弾にかかる磁力で飛んでいる。
そして電気の魔法では任意の場所に放電できる。
つまり、つまりだ、『コイル状に巻いて放電』すれば飛ばせるんじゃないか。本来ならこんなことは不可能だけど魔法で放電してやれば雷のように枝分かれすることがなく綺麗に空気中へ電気を流すことができる。
そう思ったボクは一周回りまわって気がつけば再び校長室で事情聴取を受けていた……なんてことはさすがにない。ボクだって学習するよ。
ただ、まあ、
「うん、危うくまた準禁術指定されるとこだった……」
ボクは砕け散った破片、球体の弾がめりこんだ吸収壁の欠片をみてそう呟いた。
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前回弾がぶっ刺さった吸収壁。その弾が刺さった場所以外の部分を先生の許可を得て寮の自室へ持ち込んだのだ。もちろん先輩の許可ももらってある。というか先輩も喜んでいた。
まあ分厚い壁をそのまま置くわけにはいけないから今は薄い円形にカットされてダーツボードよろしく壁に掛けられている。なのであまり強い魔法は当てられない。
そしてダーツボードを作った上でまだ余った部分は大量にあったのでいくつかブロック状にして保管していたんだけど、今回はそれにコイルガンを打ち込むことにしたんだ。
さすがに自室で危険な魔法をぶっ放すわけにいかないけど他人に見られるわけにもいかないので修練場の隅でこそこそと実験だ。
ブロック自体そこまで大きいわけじゃないから今回は全力でぶっ放すわけにはいかない。寧ろやや弱めでいかなければ。ボクは小指の先ほどの鉄球を生成した。
なぜ球体なのかといえば、今回はレールで弾を挟み込むわけじゃなく、空に放った弾に合わせて電流を流すから弾の向きを無視できる球の方がなにかとやりやすいからだ。
出来上がった球体をコイントスでもするように弾き、空中へリリース。そのまま狙いをつけて弾と吸収壁片をつなぐようにコイル電流を流すっ!
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結果はご覧の通り吸収壁片を二つ打ち砕き三つめの壁片にめりこみ止まると、寧ろレールガンより効率がいいかもしれない。
なんでこうなったかは、多分、魔法のせいだ。本来ならコイルに電流を流して磁力を得るけど、コイル状の回路というのは抵抗が大きいのだ。けれど魔法だとそんなの関係なしにほぼ無抵抗で大電流を流せてしまう。その結果従来のコイルガンよりもずっと火力を出すことができ、レールガンを上回ったといえるんだろう。
ただし、欠点はある。これは今後の訓練次第で多少はましになるだろうけどそれでもレールガンと比べると精密さに欠ける。
理由は簡単、空中で動いている物体と目標物を一直線上に捉えて電流を流すのが単純に難しい。おまけに実戦だと目標物も動いているだろうから当てるのが大変そうだ。
とはいえ、うん、レールガン以上の威力をもつとかこれは学校にバレていたら秘匿魔法二号待った無しだな。え?バレなきゃいいのって?もちろん!
初夏の爽やかな風がボクの頰を撫でていった。
あれ、何故かコイルガンがレールガンを超えてしまった……(^^;