第11話「ポートの説明しとかないとね」
昼頃()
第11話「ポートの説明しとかないとね」
――――――――――――
ポート。それは魔力を体内から体外へ出力する、または外から中へ補給する時に通らせる門。つまり身体の内外をつなぐ港だ。当然港は大きければその分だけ一度に多量の荷物を行き来させることができる。
僕はこれまで自分の三つあるポートの内、一番小さなものしか使っていなかったから出力負けしていた。一に対して三、いや、四や五かもしれない――そんな圧倒的な出力差があれば技巧を凝らしても勝つのは難しい。ボクが勝てたのも、金属を飛ばすのが物理攻撃で、魔力同士でぶつかっていないからだ。きっと金属を飛ばす結論に至らなかったらボクはずっと最下位のままであっただろう。
それが今はどうだろうか。
あの日から大体一週間ほど経ったが、ボクはずっと大きなポートを使うようにしている。最初は普段と違うところで魔法を使っている、いつもは出ないところから力が漏れている。そんな感覚、違和感に襲われていたし、魔法が発動するまでが少しタイムラグのできたようにも感じた。きっとこの差が『ポートの慣れ』というものなんだろう。魔法を使うだけなら前の小さなポートの方が器用にこなせると思う。
でも、大きなポートに乗り換えるとやはり出力が違う。これまでの感覚で三を出すほどの力を加えると実際出てくる力は七くらいだろうか。それに、前は全力で五までしかポートに力を加えられなかったのが、今は大体十二くらいの力なら無理なく込められるし、この上限にはまだまだ余裕があることもなんとなく分かった。つまり現状だけでも僕の最大出力は五から八十四という、驚くべき比率で上がったんだ。
あのポートが解放された次の日の模擬戦では流石に大ポートを扱うのに慣れなくて途中から中ポートを使って金属を飛ばし始めたものの押しきられてしまった。
また、どうやら僕のたった一つの大ポートは一般的な大ポートよりもかなり大きめらしく、大ポートの基準にギリギリ届くぐらいのポート五つ分くらいあるそうだけど、それがどれだけすごいのかはよくわからなかった。ただ、小さい頃の診断でポートに恵まれないと思っていたのは間違いらしかった。
このことはかなり嬉しかった。
けど、ポートを解放された後に二つほど注意を受けた。
一つは大ポートの取り扱いについて。出力が大きくなったということはボクという魔力タンクから魔力が抜ける速さも跳ね上がったということ。だから魔力切れには気をつけなさい、だそうだ。
もう一つは僕がこれまで使っていた中ポートについてだ。曰く「ボロ雑巾かと思うくらいにズタズタよ」とのことで、これは多分魔術に魔力を乗せた時に過負荷がかかったことが原因だと思ったけれど、どうやらそれに加えて、系統の違う魔法を同じポートで使ったこともダメらしい。これからはメインの電気は大ポートで使って、サブの金属は中ポートと使い分けするようにと言われた。
なんにせよ、これで僕はようやくまともに戦えるようになった。
それに、二つ以上のポートを扱えるようになったということは、レールガンを魔法で放つことも可能になったということ。
だから僕は、学園の授業がない今日、修練場に来ていた。
「フン、今日はいったいどんな無様な姿を晒すつもりだ?」
おっと、案の定彼はいた。彼はその尊大な態度の割に勤勉である。
「やあ、おはよう。えっと……」
誰だっけ?
「……」
あ、思い出した!
「お、おはよう、ゲルド!」
「お前今絶対忘れてたろ……」
ゲルドが何か不満を呟いた気がするけど気にしない。
まぁそれは置いといて、
「あ、そうだ。今から新しい魔法を試すつもりなんだけど見てく?」
「ん?いったい何をするつもりだ?」
「前に見せた、レールガンを魔法でね」
そう、ボクはこの学園で一度だけレールガンを実際に見せたことがある。魔力を乗せてないこともあって流石に学園の大掛かりな防護結界を貫通することはなく安心したけど、それでも軽いヒビがはいり大目玉をもらったのは入学から一週間と経たない頃の話だ。
とはいえ、ここで無許可に魔力を込めたレールガンをぶっ放すのはどうなるかわからなくて怖いので担任の先生には話を通してある。
「だから特別実習室のカギを借りててね。そこなら結界も更に丈夫らしいし、多分大丈夫。見にくる?」
「フン、アレを魔力込みで放てばどうなるのか、興味はあった。いいだろう、見せてみろ」
おっ、素直だ。
「おっけー、じゃあ行こうか」
ボクは踵を返し、スタスタと歩き出す。
「おっ、けぇ?」
その後ろを、ボクが言った聞き慣れぬ言葉に疑問符を浮かべながらゲルドがついてくる。
いよいよ次話でぶっ放しますぞ