第10話「ボクはまだ本気出してなかっただけ」
ああ!本来投稿するべき話を忘れていた!すみません!
第10話「ボクはまだ本気出してなかっただけ」
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あの一線できっかけをつかんだあと、その次の次の試合でボクはようやく初めての勝利というものを手にした。
嬉しさをリンネと抱き合って分かち合って、高笑いしながら近づいてきたゲルドにも抱きついたら彼は頰から火を吹いてどこかへ駆け去ってしまった。なんでだろ?
そんなことがあって今日、入学から一ヶ月も経った頃になるかな。
健康診断。――それは通常、入学してほどなくあるものだろう。ボクもそう思っていた。この学園の年間予定を知るまでは――そう、健康診断の日が近づいていた。
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当日。
「エルーゼさんは後で保健室にて再検査を受けて下さい」
あぃええええ!?なんで!?
ボクだけ呼び出しをくらった。
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ボクはひとり保健室へと向かう。
部屋に着くとそこでは保健医だけじゃなくて他の先生もちらほらいた。あ、担任の姿も見える。でもみんな一様に重たい表情をしている。
「唐突に言いますと、レイキさんのポートは小さめのひとつ以外開いてすらいません」
……え?
「なので残りのポートを開く術を施させていただきます」
……ふぁ?
「ちょっっっと痛いかもしれないが我慢しろよ、レイキ」
いやそれ絶対痛いやつじゃないですかー!
なんて状況に心追いつかぬままツッコミを放ったボクは大の大人四人がかりで押さえつけられ、医師がよってくる。え?右手が光ってるんですがそれは、え、ちょ、それを近づけあだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!!
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ボクが目を覚ましたのは黄昏時、柔らかなベッドの上でのことだった。呼び出されたのは昼前だったので随分と長らく寝込んでしまったらしい。
「お、目が覚めたかい、よかったよかった」
そうよってきたのは保健担当、リリー先生だ。学園の性質上、学生と顔を合わすことが少なくなく、一部の学生からはリリーちゃんと呼ばれるくらい親しまれている。
「よし、ちょっと手を貸してね」
そう言い握った先から何か温かなものが流れ込んでくる。けど、少し不快な感じがした。いや、流れ込んでくるソレが嫌いなわけじゃないんだけど、もうソレはボクの中に入らない。そんな感覚だ。
「ん、今は魔力を流し込んでいるんだけどわかるかい」
「あ、はい」
そうか、魔力だったのか。
「うん、よかった。ポートが開いたことでちゃんと魔力を感じ取れてるみたいだね。次は、すごく小さめの魔法を使ってごらん?」
言葉通りに魔法を使おうとすると、おお、なんだこれ、何かスロットが三つくらいあってどのスロットを通して魔法を使うか聞かれるような感覚に陥る。これがポートなのかな?最初に診てもらったときに言われた通りに三つあるし。大きいのが一つと、それの半分くらいの小さいのが二つ。小さいポートの片方は随分と魔力を通しやすそうに感じる。
ふむふむ、これがポートが慣れてくるってことなのか。
僕は小さめの金属柱を手の平の上に生成する。
すごい、随分と魔力の流れが精細にわかる。
「うんうん、うまくいったようでよかった」
そういいエリー先生はにっこりとほほえんだ。