第1話「異世界転生のすゝめ」
投稿遅れてすみません。少々タイトルに悩んで失踪しておりましたァ!
……始めたからにはしっかりと完結まで続けますのでご安心を。
それでは、拙文では御座いますが楽しんでいただければ幸いです。
第1話「異世界転生のすゝめ」
――――――――――――
ぎゃぎゃっ!ききいぃぃぃい!!
強烈な衝撃が僕を襲った。
ドンッずざっざっ
痛い!いきなり痛いよ!
痛ああぁぁぁ……く、ない?
何で?
ふと僕は身体が倒れていることに気づき起き上がろうとした。
ぐっ。起き上がれない。
ぐっぐっ。起き上がらない。
ぐぐっぐっ。起き上がるそぶりすらない。
あっれぇ〜?力入んないや……。
これヤバいやつじゃない?
僕の何故か霞んでいた視界は、まるで最期の力を振り絞ったみたいに急激に鮮明になって、救急車とバンパーの少し凹んだ自動車を捉えた。まさか、
これ、僕、もしかして車に轢かれた?
それに、苦虫を噛み潰したような目でこちらを見る往来の人々も見える。
どうやら僕の体は自分の思っている以上に凄惨な状態みたいだ。
あと、さっきから寒気がする。それも、インフルエンザの時に感じるみたいな、どう足掻いても体の奥底からこみ上げてくる悪寒。
うーん、これは……僕、死ぬのかな?
車に撥ねられて死ぬとかなんてテンプレ。
齢16にして生涯を終えるのもテンプレの一種だった気がする。つまり僕の死に様はテンプレ一直線なわけか。笑えない。
とか何とか言ってる間にも寒気はマシマシ、動かない体に吐き気すらしてくる。
ああ〜、これ、ほんとにやばいやつじゃないですか。
きっと僕は苦痛で顔を歪めているのだろう。どうせ死ぬのであればせめてサクッと殺してほしいものだ。死ぬんなら、ね。
……でも、死ぬタイミングが悪すぎる。
なんでさ、なんでよりにもよって予約してたモノをコンビニに取りに行く最中に死ぬのさ!?未練たらたらだよ!
ああ!僕のツナちゃんフィギュアがあああああぁぁぁぁぁぁぉぅ……。
そんなしょうもない断末魔と引き換えに僕は意識を保てなくなった。
◆◆◆◆◆
「はい、という訳でアナタは死にました〜」
「唐突だね!?ここはどこ?君は誰?」
目が覚めたのはベージュ色の空間。辺りには何も無いみたいだ。これが天国というやつなんだろうか。
「そうだね〜、ここは天国って考えで大体合ってるよ〜」
まるで僕の考えを読んだみたいだ。
「まあ実際読んでるんですけどね」
読んでた。
「それで、話を戻すけど、君は誰なの?」
今、僕の目の前に立つのはいかにも「私が女神です」と言わんばかりのグラマラスな金髪美女だ。身にまとっているのはギリシャ風な白いキトンやヒマティオン。肌も白磁のように白く綺麗で、瞳は蒼い。陳腐な表現だけど、端的に言って美しかった。
どれだけ美しいかって、普段あまりこういうのに見とれたりしない僕の視線をここまで釘付けにするくらいだ。正直人間離れしてる。
「うん、だいたいあなたの想像で合ってるよ〜。私は女神で、君にある提案をしに来たんだ」
「提案って?」
何だろうか。……はっ!テンプレ続きのこの展開だとまさか、異世界転生のお誘いとかだったりして。
「そのまさかだよ〜。実は私の友人が本来死ぬべき人を生かしちゃってね。その代わりにアナタが偶然選ばれちゃったの。ごめんね〜」
わお、身代わりですか。
つまり「勝手な理由で殺しちゃったからせめて次の命ぐらいは良く取り計らってあげるよ」ってとこかな?
うーん、喜べるようで喜べないような……。
「正ぃ~解!いやぁ、察しがいいね。話がさくさく進んで助かるよ〜。うん、この転生に限ってアナタを好きな世界に飛ばしてあげます。希望とかあ「ファンタジー異世界でお願いします」……即答だね。まあいいけどさ」
前言撤回。正直身代わり死とかロクな死因じゃないなってのが本音だったけど夢にまで見た異世界生活をおくれるなら喜べます、嬉しいです。
もうクラスメートに会うことも出来ないって考えると少し寂しい気持ちもあるなんてことはない、どうせぼっちだったし。それに両親ももう、他界しちゃってるしね……。今は新生活へのドキドキでいっぱいだ。
さらばこの世よ、今まで育ててくれてありがとう!学校の成績は中くらいで、運動もダメ、なよなよしてて女顔で、コミュニケーションも苦手な僕だったけど……やめよう、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
「騒がしい頭だね。」
全部聞いてたの!?うわヤバい、恥ずかしい。もし生きてたら死因:恥ずか死 とかなってたかもしれないくらい恥ずかしいよ。え?これくらいで死ぬとかどんだけだよって?僕の豆腐メンタル舐めんな!
「う〜ん。うるさい、かな」
冷静に流された!
「まあそんなどうでもいいことは置いといて。転生内容を確認するよ。世界は魔法も剣もアリアリの中世ファンタジー。本来は平民スタートだけどオマケで貴族の子にしといたげるよ〜。それでい「是非お願いします」うんわかった。じゃあいくよ〜、それっ☆」
女神の手から温かな光が満ち溢れて僕を包む。次第に意識が遠くなってきて、僕は異世界へと誘われるのだろう。ああ、なんかふわふわしてきた。
「しっかし、こんな可愛い子ならきっと向こうでも立派な令嬢になるね!」
あれ、すごく不安。
まって、ボクオトコ。
けど、転生中だからなのか、僕の嘆きが伝わることはなく、そのまま僕の意識は緩やかに暗転した。