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ゴブリン退治のはずが蟻に集られた

 うっわぁぁぁぁ……


 え、なにあれ?


 キモ


「ギャギャッ!」「ゲハアハ」「ギィィ!ギャゥア!」「ギッギッギッ」


 子供よりちょっと大きな、くすんだ緑のてらてらした肌を持つ、なんかゾンビにも見える潰れたゴリラとか、般若面にゴリラ足して2で割ったような、そんな顔で、腰に汚い皮?布?をも巻き付け他だけの角の生えたのがいっぱいいる。なんか刃こぼれ酷い剣とか木の根っこみたいなの振り回しながら唾を飛ばしながら笑ってる


 奥の方じゃもうちょっとましな格好のゴブリンが固まってる。あ、あっちは狼に乗ってる奴らもいる。慎重に行かないと匂いでバレちゃうね


 しかしゴブリンって、もうちょっと愛嬌がある感じじゃなかったっけ……?え、これプレイヤーもなれるの?ビジュアルで1発NGなんだけど私


「本当に大量ですね……しかもまずいです。おそらく中位種も混ざってますね」


「中位種?」


「はい、あのボロボロの剣を持ったのはおそらくゴブリンリーダー、奥の下級冒険者程度の装備をしてるのはゴブリンファイターかソード、狼にまたがってるのはゴブリンライダーかテイマーですね。」


「見たまんまですね……でも、そんなに違うんですか?」


「リーダーまでならまだどうにかなるんですが……ファイターやライダーになると、今までのゴブリンとは全く別のモンスターだと考えた方がいいですね」


 なんでも、ゴブリンそのものは脅威度、危険度共に単体F、そして50を超えると一気にD、100を超えれば堂々のCと、数で危険の度合いが変わるタイプのモンスターであると。Eはぶっちゃけ中高生くらいの子でも素手で倒せるレベルなんだとか


 で、リーダーはひとつ上のE、なんでも、同族を若干強化する能力を持っていたり、剣とか武器をゴブリンよりうまく扱えるらしい。リーダー一体含まれた五体のゴブリンの群れは危険度、脅威度共にE、つまり小さな村くらいは潰すかもしれない戦闘力を得るらしい


 そしてファイターやソードとなるとこの危険度もDにまで引き上げられる。ファイター、ソードはランクE冒険者程度の実力を、ライダー、テイマーは脅威度こそEだが、危険度はDになるという。過去には上位種族に進化したゴブリンテイマーが数百の下級魔獣を引き連れ、大小とわず村落を滅ぼした、なんて記録も残っているらしい


 そして、一番の問題は《異常繁殖(スタンピード)》の可能性があること


 仮にそうだった場合、近くにもっと大きな巣や、下手をすればゴブリンの大集落があるかもしれないとのこと。その場合、100じゃ効かない数ゴブリンや、その上位種がうじゃうじゃいる可能性があるらしい


「ピートくんで薙ぎ払う?」


「う、うーん……多分厳しいですね……数では圧倒的に負けている上に、ゴブリンの上位種は危険度D……キングやクイーンともなれば危険度Cの中程度となりますからね……ピートくんも危険度、脅威度ではC程度ですが、アンデットとなり、その上コカゲさんの強化があるので上の下と言ったところだと思うんですが……仮に危険度Dのゴブリン種が30も居た場合、危険度はC、場合によってはBにすら届きかねませんからね」


「そんなにですか……」


 ピートくんとヴォルカくん、それとアンデットズに私じゃ、確かに戦力が心許ないかな……


「せめてランクDクラスの冒険者が10名は欲しいですね。これは生存確率をあげるためですね。特に今回は、非戦闘員もいますからね」


 うーむ……私が10人くらい必要なわけか……じゃあ、もっと強かったらもう少し少なくてもいい?


「うーん、ちょっと時間かかるかもですけど、仲間を呼んでみてもいいですか?ダメかもしれないんで、その時は一旦帰りますけど」


「え、あ、はい、戦力は多い方がいいですからね」


 ではでは、とちょっと断りを入れてねねにコールを送る


 プルルルル……プルル


『ん?どうしたコカゲ?』


「あ、今大丈夫?ちょっと困ったことがあってね」


『なに……?またなんかトラブル?運営め……』


「あ、そうじゃなくて、多分イベント絡み。めっちゃいっぱいゴブリンいる」


『お、まじで?どれくらい?』


「軽く100匹」


『……はぁ?』


「上位種、中位種混ざってる。ゴブリン以外のも混じってる」


『あー……わかった、わかった。すぐ行く。どこいんの?』


「私たちのギルド予定地。なんか、魔物よけの柵とロープ壊して陣地にしてる」


『なーるほどなぁ……わかった、メンバー全員で行く』


「急いでね」


 プツ


「来てくれるみたいですね。しばらくは距離を置いて待機しておきましょ」


 ヴォルカくんさえいれば接近には気づけるし、とりあえずは離れておけばどうにかなるはず


「わかりました、できるだけ距離をとってしばらく待機ですね。少し不安が残りますが……」


「一応、ピートくん出しておきますね。そうすれば弱っちいのはよって来ませんし」


 ピートくんとヴォルカくんさえいればどうにでもなるしね


 こっそりとピートくんを召喚して地面に潜ってもらう。いつ見てもすごい光景である


 さて、何も無ければいいんだけどね?




「コカゲさん、第2波来ます!」


「マジで!?ちょ、きっついんだけど!」


 はい、絶賛襲われ中です。ゴブリンじゃなく、虫系mob、鑑定できないけど、蟻だ。たくさんの蟻。30匹くらい倒したけど、巣穴が近いのか、なんかどんどん出てくる


「あーもうキリがない!」


「やべぇ、なんだこの数」「いやいや、それ以前になんであの嬢ちゃん文句言いながらも全部倒せてんだよ……」「気づいたら何匹か消えてるんだが……?それに何だあの穴……」


 杖を振るう。アーツとか使う暇無い。魔法も使う隙がない。ヴォルカくんが後ろに抜けそうな蟻を素早く倒し、ピートくんが背後からばりむしゃ、そしてレッサー・ブリトー・フレッシュゴーレムが離れたところで無双してる。ピートくんは強いけど、あからさまに出てきちゃうと強いのが寄って来かねないのでアサシンスタイル続行してもらう


 スケリトルズはとうの昔に蟻に集られて骨に戻ってしまった。


 この蟻たちは物理防御がそこそこ高く、魔法防御は高くない。


 しかし数が多く、脚も早い。高さが60センチほどのこの蟻は大人の男性が全速力で走るよりも早い速度でこちらに向かってくるのだ


 魔法を撃つ暇もない!


「前衛が足りない!」


 ヴォルカくんは後方を、ピートくんは奇襲、フレッシュゴーレムは、前で腕をブンブンしてる。あと一人前衛がいれば魔法攻撃に切り替えられるんだけどなぁ


 フレッシュゴーレムは恐ろしい……と言うよりおぞましいくらいに強かった


 自動修復、自動形成はMPを消費する。それも私の。ガンガンMPが減っていくが、そのお陰でフレッシュゴーレムは未だ形を保ち、蟻に集られてる


 蟻に柔らかな肉でできた腕を食いちぎられても、ちぎれた腕が粘土のようにこねられ、腕としてくっつくのだ


 そして、捕食形成、受肉修復の凶悪さ


 創造した時は気づかなかったが、このゴーレムには口がある。()()()()()()()()()()()()()()()


 一見とても軟らかそうだが……肉の圧力というか……()()が違うのか、蟻の胴や頭をぐしゃりと潰し、咀嚼している。そうすると、濁ったピンク色の体表に薄灰色の肌みたいなものがあらわれ、そこだけ他の部位よりも頑丈になっているのだ


 さらに、自動修復、自動形成の適応外なのか、一定の大きさよりも小さな肉塊はそのまま地面に落ちているが、咀嚼した蟻の肉で、欠損部位を()()()()()()()


 今の見た目は濁ったピンク色と薄灰色で、所々虫じみたテカリを帯びた異形である。ぶっちゃけやばい。あれ私が作ったとかちょっと信じたくない


 打撃に強い耐性を持つ蟻だけど、とにかく死なないフレッシュゴーレムに着実に潰されて行ってる。私は杖でどつき回してる


 蟻そのものは決して強くない。10匹くらいなら私一人でやれる。実際私だけで10匹以上は倒してる。


 でも数の暴力はやばい。じわじわとダメージが蓄積してきてる。ヴォルカくんもピートくんもダメージはないけど、私は残り7割くらいのHPしかない。MPは4割切ってるし、このままだとフレッシュゴーレムは素材に戻っちゃう。


 回復するために蟻を掴むんだけど、掴む場所をミスると思いっきり咬まれて目に見えてHPが減るし、こいつら酸を吐くのか装備の耐久値もゴリゴリ削れる。


 ジリ貧だ


 むしろ押されてる。そろそろヤバい


 隙があれば、せめてレッサーズを呼び出すんだけど……


「ゴブリンじゃなかったっけか?」


「えっ」


「《ホーリーボール》!」「行くよ〜《ストーンアロー》!」「《ウィンドカッター》!おらァ!」「吹き飛びぃ!《ファイヤーボール》!」「《トライピアーズ》!お姉ちゃん大丈夫!?」


「みんな!ナイスタイミング!」


 メンバー全員集合だよ!これで勝てる!


「まったく……ビッグアントの群れに遭遇とか運なさすぎでしょ」


「ビッグアントって言うんだこいつら……あ、この人たちはギルドからお金の計算とかしに来てくれた人達ね」


「呑気に紹介してる場合かよ……ってか、あのキモイの何……?コカゲの使役mob?」


「レッサー・ブリトー・フレッシュゴーレム、私のMPがある限りほぼ不死身のフレッシュゴーレム。蟻相手に1番頑張ってくれた子だよ」


「へぇ〜なんだか色々〜見た目ヤバいけど〜強いんだ〜」


 強いんです。まあ私たちなら倒せるだろうけど


「おい!これ近くに巣があるで!倒したそばから湧きよる!」


「うげ、厄介な……ブレア!バフ頼む!コーデリア、ホーネット!火で焼き尽くせ!」


「は、はい!」「わかりました!」「わかったで!」


「《エンチャント・マギアタック》!」


「《咆哮》!グルゥァアアアア!からの……《フレイムバーン》!」


「《ファイアバースト!》」


「私も!《ダークレイン》!あぁ!MP切れた!」


「MP管理大事だよ〜?《ロックボム》〜」


「オーバーキルすぎる……」


 ねねの一言の後、煙が晴れたあとには、大量の焦げた蟻の死骸と


 ミディアムに焼けたフレッシュゴーレムが残っていた……


「ふ、ふ、フレッシュゴーレムぅぅぅぅ!?」


「あ、やべ、今パーティじゃなかった……」




「うぅ……魔獣素材が……お肉が……」


 あのあと湧いてくるであろう蟻が来る前に巣穴を見つけ、入口からコーデリアとホーネットさんの火魔法での一方的な殲滅が行われた。と言っても、まだ若い巣みたいで、ほとんど残党がおらず、かろうじて焼け残ったクィーンビッグアントをさくっと倒して蟻は終了です。あ、私はマユナさんたちの護衛として残りましたよ?経験値は私の方が多く倒してるからいっぱい入ってるし


「戻ったぞー、しかしまだ若い巣で良かったよ。中規模になれば今の10倍くらい平気で蟻が集ってくるからな……」


「恐怖体験スレで書かれてたなぁ……どっかの大陸で昆虫系mobが異常発生して、何人ものプレイヤーが虫の波に呑まれて死亡したって言ってたわ。録画映像とか閲覧注意レベルやったわ……」


「見たんですね……わ、私はおっきい虫は苦手です……」


 虫の大群にたかられるのか……アンデットの群れに集られるのとどっちが怖いんだろうか……


「とりあえず、合流出来たし、ゴブリンのこと教えてくれる〜?」


「あ、うん」


 私はゴブリンのいる場所や、種族特徴など、マユナさんを交えて説明する。その間、ピートくんとヴォルカくんが近づくmobを根こそぎ狩ってくれて、地味に素材が増えた。美味しいけど所持品圧迫で持ちきれなくなりそうで怖い……


「ホブゴブとか厄介だなぁ……マジで100匹いんの?」


「目測だからもっと少ないかもだけど、ビッグアント70匹よりは数多いよ」


「やばいなぁ……ゴブリン系、5匹群れるだけで一気に強なるからなぁ」


「そんなにですか?」


 まだゴブリンと戦ったことないからさっぱりわかんない


「いやまあ雑魚なんは変わらへんねんけどな?2、3匹の時に比べて、連携っぽいのととかしてくるんよ。上位はもっと頭ええし、相当強なってるんとちゃうかなぁ」


「だな、ゴブリンリーダークラスならまだいいけど、ホブゴブリンはゴブリンの完全上位互換。ステータスも倍近く違うし、キングとクイーンに至ってはホブゴブリンの5倍、下手すりゃ10倍違うからな」


「そんなに……ちなみにさっきのアリとゴブリンじゃどっちが強い?」


「え……あー……うーん……多分蟻かな……ゴブリンだけなら同数ぶつけても蟻が勝つかな……」


「……蟻の倍がホブゴブリンとして……それが10体以上……ちょっと厳しげ?」


「だね〜、わたしたちだけじゃ〜厳しいかなぁ」


「ピートくんさんならどうなんですか?とっても強いですよね?」


「数の暴力に負けると思う。ホブゴブリン100匹には勝てるだろうけど、キングとクイーンが混じるなら五分五分だと思う」


 マユナさんと同じ意見か……うーん、どうしようか


「ワタシら6人にピートくん、ヴォルカくん、それとアンデット3体、数だけでいえば11か……あと5人いればなんとか……」


「それなんですけど……」


 マユナさん?


「おそらくキングとクイーンはあそこにはいないんですけど……多分異常発生(スタンピード)の可能性があるので……あそこを1度確保しても、またすぐゴブリンのたまり場になる可能性がありまして」


「まじか……うわー、そうなると、あと5人どころか倍くらい人数欲しいな……」


「とりあえず、1度ギルドに戻りましょう。ギルドから1度依頼として探索に長けた冒険者を派遣して状況を探らせます。そこから、規模なんかを測り、異常発生と認定されたら、正式に冒険者に招集をかけましょう」


 探索か……隠密系の能力と、数を把握出来る人が欲しいわけだ……


 ん?なんでみんなこっち見てるの?


「コカゲって確か、気配遮断と消音、それと生命感知持ってるよな」


「種族的に、そもそも呼吸音とかないよね〜」


「狼系mobは気配を隠すの得意だし、ピートくんは地面に潜れるよな」


「……え、あ、うん、そうだけど」


 がしっ


「ま、マユナさん?」


「報酬出すんで索敵行ってもらっていいですか……?」


 いや、その拒否権はないぞ的な腕はなんですか……?痛くないけどなんかすっごい重たいんですけど……!


「コカゲ1人じゃ不安だし、隠密持ってる私も行くか」


「2人が行ってくださるなら心強いです!ぜひお願いします!」


 そういうわけで、久々にねねとパーティを組んでの行動です。プレイヤーとパーティを組む機会がまだあるとは……


「とにかく、行くことは決定なんだね……拒否権は?」


 装備の耐久とかやばいです。自動修復付きのローブはまだいいけど。杖とかが結構危ないんだけど


「今からプレイヤーなりそ探してたら時間かかるしなぁ。私らなら連携取りやすいし、残りのメンバーで待機しておけば全滅することもないだろうしな」


「でもちょっと不安が残るから〜、知り合い呼ぶね〜」


「知り合い?」


 誰だろう?


「んとね〜……あ、返事かえってきてるのは、ビヨちゃんだけだね〜」


「ビヨちゃん?」


「「げっ」」


 ん?ねねの知り合い?でもなんでコーデリアもげっとか言ってるんだろ?


「いつの間にメールなんて送ってたん?」


「ここに待機する〜って話になってから〜」


「あの人ちょっと怖いんですけど……すっごく強かったですし、ありじゃないでしょうか?」


 え、ブレアさんたちも知ってるの?私が寝込んでるときに知りあったのかな?


 名前からして女の子だよね……ビヨちゃん……どんな子だろう?


「あー……まあ、じゃあとりあえず、ビヨが来るまで待機だな」


「は〜い〜」


「「了解!」」


「わかったでー」


「わかりました」

これからもgloをよろしくお願いします!

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