事後処理
捕まってた人たちを見つけてからはギルドのお仕事、なので一旦ログアウトした。もちろんいろんなことを考えて眠れない……
なんて考えたままベッドの上でもぞもぞしていたら、いつの間にか寝ていたらしく、気がつけばもう朝である。カーテンの隙間から入り込んでくる陽射しが辛い……
普段より遅めに起きたけど、朝食には間に合ったのでちょっとだらしない格好のまま台所に向かう
「あ、おはよう都子」
「おはよーうお母さーん」
「まったく、遅くまでゲームしてたんでしょ?顔洗ってきなさい」
「はーい」
顔を洗い終えて家族と朝食を食べる。うちは朝食はお米よりパン派なのでカリカリのトーストをかじっている。梢はジャムを塗るのが好きで、でも太っちゃうからと遠慮がち
私はトーストは何も付けないで食べる派である。代わりにパンの耳をカリカリに揚げて、そこに砂糖をまぶしたのを食べるのが大好き。小腹がすいた時に丁度いいんだよね
おかずはスクランブルエッグとベーコン、それとサラダにインスタントスープ。さらっと食べれてお腹も膨れて丁度いいんだよね
ふぅ、満足
「お姉ちゃんは今日はどうするの?私は午後から部活があるから今日はログインしないけど」
「うーん、テスト勉強を午前中して、午後からログインしようかなって。ちょっと、色々あってねー」
「色々?」
「んー……実はねー」
梢に昨日のことを話す。序盤の方では「何してるの……?」的な視線が突き刺さって、途中で出会った人攫いとの戦闘では「一人で危ないよ」と怒られ、さらにアジトに一人で行ったのを言えば「なぜ呼ばなかったの!」と怒られ、最後の階段下の状況を話せば「えぇ!?なんでそんな……えっと、大丈夫?」と心配してくれた
お礼にわしゃわしゃっと髪を撫でたら怒られました
流石に運営やりすぎ、と梢も思ったらしく、音子から教わった運営への抗議メールや、掲示板に情報をアップして反応を見てくれた
結果としては運営からは仕様です。的なメールが返ってきて、掲示板では審議判断が始まり、新たな欝展開の情報提供者が出てきて運営への文句へと切り替わって収拾がつかなくなって終了。時間になって梢は部活友達にドナドナされていくのでした
まあ予想通りである
「うーん、とりあえず……ギルドに報告とか、その後どうだったかの確認かな?あとは……」
お昼ご飯をもさもさ食べながら、そんなことを考えていくのであった
はい、ログインです。テストを控えてるけどそこはそれ、今はイベントですとも。まあテスト勉強は順調です
宿から出れば外は真っ暗。まあ、夜目があるので関係ないけど
とりあえずあの後どうなったのか確認にギルドへ。アイヴィーさんは受付にはいないみたいだけど……うーん、アイヴィーさん以外の人とはほとんど絡んだことがないから話しかけづらい……
「おや、こんばんは、また夜に来たんですか?」
「あ、アイヴィーさん、こんばんはです」
「はいこんばんは、もしかして先日の件のことでしょうか?」
「あ、はい」
「ふむ……こちらに来て頂けますか?ああ、お時間の都合が悪いようでしたらまた日を改めますが」
「あ、大丈夫ですよ。それに、その件以外にも用事ありますし」
木材の買取とかやってればいいんだけど。あとピートくんの轢き殺した魔物の素材とかヴォルカくんチームの成果とかも
「わかりましたよ、とりあえずは簡単にあのあとのお話をしましょうか」
別室に移ってから、簡単な顛末を聞く。まずは貴族やら国やらの動きだけど……
「あのあと、案の定この件で手柄を立てたいのか、それとも揉み消したいのか、とにかく、囮作戦を提案しに来た貴族がいたんですけど、『盗賊団は既に討伐されました』、と伝えたら顔を真っ赤にして怒ってましたよ。いやぁ、傑作でしたね」
「本当に来たんだ……」
「ええ、それをやった冒険者はどいつだ!とか言ってましたけど、守秘義務だーとか、色々言って誤魔化しました。まぁ、ギルドに必要以上に突っかかっても意味が無いとわかってるので、探りを入れる方向にシフトしたんじゃないでしょうか?」
……それって私がやばいのでは?
「討伐、捕縛、救出、これらに関連付けて依頼を複数にわけて、20名ほどの冒険者に受けてもらってますし、今回はランクBパーティ、『緑鬼殺し』も関わっていますから、ランクの低いコカゲさんが疑われることはなずないと思いますよ?ギルドとしても、これ以上迷惑をかけるのは本意でないですし、できるだけコカゲさんのことは隠しつつ動いていくつもりですよ」
それなら、安心……かな?
「次に救出された方々の身元ですね、まあまだ日も経っていませんので大半の方が身元がわかっていませんね。一部はちょっと厄介な人も混ざっていますが、こっちは完全にギルドが動きますから、心配はいりません」
「そっか……」
まあ、昨日の今日……だもんね
「保護された幻獣などに関してもギルド預かりですね。魔獣素材はそちらに贈与したりしましたが、収集品の7割をギルドが預かり返還、もしくは売買の予定で、ギルドとしても割かし悪くない臨時の収入になったので助かっていますよ。冒険者にも一部ボーナスが出せますし」
そう言えば魔獣素材チェックしてないや……いらない部位とかは売っちゃお
「盗賊団からの情報の聞取りはまだ続いておりますね。異界の旅人の方々は一時的な措置で、世界から定期的に消える方にも対応出来ていますし、こちらは騎士団の仕事ですので、気にするだけ無駄ですね」
ログアウトの事だね。というか、そういうのに制限をかける手段を持ってるんだやっぱり……悪いことは出来ませんな
「他に知りたいこととかありますか?」
んー……特にないかな……?ギルドへの報告もないし、確認することもほとんどないっぽいし、いいかな?
「大丈夫だと思います」
「そうですか、わかりました。何かほかに気になることや、こちらからわかったことなどがありましたら改めてお話の機会などを設けますので、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそお願いします」
「では、他の用件についても聞きましょうか」
あ、そうだったそうだった
「えーっと、待ってくださいね」
まずは報酬でもらったもののチェックから……
【宝石】類はまあ、今は関係ない……ん?
ええっと、【宝石:ダイヤモンド(召喚刻印付与)】?なんだこれ……?まあ、後でいいか
【魔石】はクズ魔石がほとんどだね。後で錬金で合成しておこう
捕まってた魔獣は確かレアな魔獣ってことだったし、ちょっと期待出来るかな?
【大魔蜘蛛の前肢】【大魔蜘蛛の十瞳】【大魔蜘蛛の牙】×3【大魔蜘蛛の爪】×6【大魔蜘蛛の糸袋】【魔樹の枝】×11【魔樹の根】×2【レッサーオーガの角】【レッサーオーガの牙】【レッサーオーガの爪】【鬼種の骨】×5【鬼種の頭骨】【死霊の思念結晶】【怨霊結晶】【影蝙蝠の飛膜】【影蝙蝠の薄牙】【影蝙蝠の出血毒】
「確か、捕獲されてた魔獣は、えーっと、《ビッグサイズ・スパイダー》が7体で、こっちはそんなにすごいモンスターじゃないんでしたっけ?」
「そうですね、オリドシヘトス大森林の表層から中層にかけて存在しますね、群れで行動する蜘蛛で、危険度はそこまで高くはないんですが、特徴として際限なく大きくなるので、定期的に間引きが必要な魔獣ですね。ただ、駆け出し冒険者の装備ではかなりいい方の装備に使える素材にもなる、危険度以上に重要度の高い魔蟲ですね。他には《トレント》《レッサーオーガ》《ポルターガイスト》《ファントム》《シャドー・ブラッドファング・バット》が居ましたね」
ぶっちゃけポルターガイストとファントムは眷属にしたかった。まあ、ちょっとメンタルの問題であれだったからすぐに処理してもらって素材だけ受け取った。まあ、私の眷属化だとMPがいくらあっても足りなさそうだけど……
「トレントとポルターガイストはどうやって捕獲したか気になるんですよね……捕まえられるような魔物ではありませんし。レッサーオーガに関しては、ギルドで依頼を出して捜索しなければならない可能性が出て、割と面倒です……レッサー種のくせに、大人の男性を拳ひとつで殺せるくらいには危険ですからね……まあ、素材としての価値はそこまで高くないせいで、以来の受理率が低いので、今回の件を利用して、最近増えた鬼種の数を減らせると思えば安いものですかね?」
「鬼種?が増えてるんですか?」
「はい、そうなんですよ。この辺はゴブリンやレッサーゴブリンなどばかりですが、希に上位のゴブリンファイターも確認されていますね。もしかしたら、《異常繁殖》の可能性もありますね」
「《異常繁殖》……」
なんでも、魔獣なんかが数年に一度、異常な勢いで繁殖し、人里に向かって溢れる現象らしい。実にゲームだね
……ていうか明らかにイベントが絡んでそうな気が……
「オリドシヘトス大森林でもたまに確認されるそうですので、ご注意くださいね。旅人さんなら大丈夫だとは思いますが、鬼種は、異種族の雌に反応することが多いので」
「うわぁ」
未成年だから大丈夫だろうけど……そういうのもあるのか……胸糞悪い展開はもう勘弁だなぁ
「それで、用件というのは、それら素材の買取などですか?」
うーん、正直なんとも言えない……けど、蜘蛛とか、オーガとか、強そうだしとりあえずアンデット創れるか確認してからかな
「ええっと、そっちじゃなくて、木材とか、他の魔物の素材とかの買取をお願いしたいんですよね」
ぶっちゃけ木材はヤバい量がある。数個ずつ残して、あとは全部売っちゃうかな?
魔獣の素材も、一部の魔獣の肉とか骨以外は売っちゃっていいかな?使わないし。魂の粉は全部キープだけど
「こ、こんなにですか……」
素材の量を告げたらアイヴィーさんの顔が引きつったので、三分の一にして、残る三分の二を最初のギルドに売ることにしよう
「しかし凄まじい量ですね……土地の確保のためにこんなに木を切ってきますか……」
「八割以上、ピートくんのお陰ですけどね」
「……あの大ムカデ、そんなこと出来るんですか……」
「ただ体当りしてもらったりして倒しただけですけどね」
とりあえず売ったお金は17万ほどになった。流石に量が多すぎて安くなっちゃったっぽい。その分、常設の依頼を一気にいくつかクリア出来たからまたランクの評価が上がったし、悪くは無いかな
やることもやったしで、一度オリドシヘトス大森林の購入予定の土地を確認しておく。万が一あのロープを壊されたりしたら困るしね
「ま、結果は杞憂だったけどね」
特に何事もないまま第三の街の神殿から第一の街の神殿へ。ちょっと久々かな?
「こんにちは!おや……?あ、コカゲさんじゃないですか!お久しぶりですよ!」
元気いっぱいに挨拶してくれたのは受付にいたマユナさん。相変わらず元気いっぱいで大変可愛らしい
「お久しぶりです。今回は、前の時の、土地の件と、素材の買取のお願いですね」
そう言って大量の素材と、土地の件を伝える。なんかすっごく顔が引きつってるけど、このギルド自体は許してないので頑張って働いておくれ。あ、マユナさんは土地管理の件担当してもらいます。そっちの方が楽らしいし
「しかしすごい量でしたね……それにあの大量の木材に原木……何があったらああなるのか……」
「あはは……」
流石に私も苦笑する。想像以上に熱中した私と、想像以上の破壊力を持つピートくんのお陰である
「で、私とマユナさんのふたりで行くんですか?」
「あ、いえ、不動産屋さんと、家を組む建築ギルドや商人ギルド、錬金ギルド、鍛冶ギルドから数人ずつ人を呼んで、視察、設計、予算を組んで、と言った流れですね。ギルド側としてはあまりに高い予算は組めませんから……幸いなことに木材類は今こうして手に入ったので、材料の一部は現物支給できそうですのでどうにかできそうですけど」
ふむ、結果オーライって感じかな?
「それじゃあ、マユナさん以外に10人くらい人が来る感じですか?」
「そうですね、今日はもう遅いので明日のお昼頃ですけど……んっと、この街からは3人、サルドの街から8人ほど人を呼ぶ予定ですね。実際の建築に入る時はもっと人を呼ぶことになりますけど」
ふむ、マユナさんだけならピートくんで簡単に移動出来たけど、流石に10人は乗せられないな……
「連絡をしておきますね。コカゲさんはこのあとはどうされる予定ですか?」
「そうですね……」
レベル上げ、かな……?あ、でも、いっぱい素材あるし、戦闘の方の経験値じゃなくて、それ以外のスキルのレベルをあげようかな
「あ、土地の件は案内以降は特にコカゲさん達がいる必要は無いので、そのへんも自由にしていただいて大丈夫ですからね。宿屋連絡先さえ教えていただければ私が連絡しますので」
あ、やることないんだ……ん、じゃあスキルのレベリング頑張ろう。幸い寝なくてもバッドステータスになることもないし、ちょっと頑張ろう
そう決めた私はさっさと第三の街に戻って生産設備施設を目指すのであった