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蹂躙、そして、悪意

唐突なシリアス展開がありますが、別に路線を変えたりした訳では無いのでご安心ください



【said捕まった(生き残った)盗賊】


 なんでだ


 犠牲も出たし、ボスが捕まったって話も聞いてた


 だから警戒してたし、逃げる準備もしてた


 残ったメンバーは15人、それに、異界のなんちゃらってガキ多めの連中


 人数はそこそこ居やがる。捕まったやつが一人出たらしいが、残ってるのは12人、30人近い人数が居た


 なのに、なんだ、この状況は


 確かに、俺なんかは雑魚だ。しょうがない。死んでねぇだけまだましさ


 でも、異界の連中は強ぇはずだし、俺たちの中にも腕っ節が強いのも何人かいた


 最初は……そう、最初はホーンマウスと、ラージスネークが入り込んできやがったんだ


 何人かは食扶持が増えるなんて言って喜んで捕まえようとした。実際、蛇は掴んだ


 そして()()()()。蛇とはいえ、やばい動きで、思いっきり


 ただ噛まれたってだけなら、ちょっとばかし痛てぇってだけの話だ。だが、そうじゃなかった


 噛まれたやつは顔色を次第に悪くし、膝をついた


 最初はよく似た別の毒蛇かと思ったが、異界の連中がアンデットだと叫んだ。じっと観察してやれば、確かに死骸だと分かる傷が見て取れた


 俺は訳が分からず、惚けてた。そして、ケモノに襲われた


 狼だ。この辺じゃ珍しいが、出ねぇわけでもねぇから、とっさに武器を抜いて攻撃した。しようとした


 気づいたのは、また異界のなんちゃら連中だった


 その狼は、腐った体で、臓物を零しながら突っ込んできていた


 反射的にのけぞった俺を突き飛ばすようにぶつかり、立ってる別のヤツに向かって吠えた


 仲間の一人がゾンビ狼を切り殺した。でも、そのあとから腐ったうさぎと、骨だけの猪が突っ込んできた


 少し間を置いて、別の腐った狼が突っ込んできた


 そして、その後ろから、ゾンビ狼よりもひと回り大きい、また別種の狼が来た。魔獣の、確かヒートウルフ。雑魚だが、大の大人一人殺すくらいなら、不意を付けばできなくもない奴らだ


 異界の連中が魔術なんぞで攻撃をするも、経験があせぇのか、焦ってるのか、当たらない


 いや、この魔獣が速いんだ。俺の知ってるヒートウルフよりも、少しだが速い


 それに、なんか、違和感を感じる……()()()()……?


 そんなものを感じてるのがほかにもいるようだ


 と、思ったら、一人、急にぶっ倒れた


 回復ポーションを飲ませるが、気を失ったまま起きねぇ


 鑑定持ちが、呪いと麻痺を受けてるという


 誰かから攻撃を受けてる?


 そう考えたのか、はたまた逃げようとしたのか、入口のそばに居た3人が外へ走り出す


 そして、()()にぶっ倒された


 一人は槍かなにかに頭を突かれて


 一人は、最初に突かれた奴が倒れかかってきたせいでたたらを踏み、槍で突いてきた、ローブを着た敵に腕を捕まれ、次第に力を失った


 最後の一人は、よく分からなかった


 一瞬で()()なくなってた


 ただ、光になって消えてったから、異界の連中なんだと思う


 そこからは、地獄だった


 俺達も、異界の連中も、あまりの事態に固まった。何人かが動き始めた頃には、化け物と、ローブのやつがゆっくり歩いてきていた


 化け物。そう、化け物


 この辺で出るはずもない、()()()()()()


 センチピード種の、かなり危険な種類で、危険度はD、下手すりゃCになるとか、冒険者が言っていたのを思い出した


 危険度ってのは、そいつの存在でどれほどの犠牲が出るかを図る目安だ。Dは、村や、小規模な街程度なら、単騎で滅ぼせる可能性を持ってるって話だ


 そんな化け物を引き連れて、ローブのやつは俺たちを襲った


 槍と思ったのは杖で、なのに何故かやられた奴には、切られた様な、刺された様な、変な跡が残っていた


 何を思ってか手近のやつの腕を掴んでいた。その掴まれたやつも、最初に掴まれたヤツと同じで、次第に力が抜けていった


 それから、急にどこからか死霊が湧いてきた。怨念を持って生まれた死霊どもは物理が効きにくかったり、そもそも効かない奴が多い


 見た限りじゃ、ワイトと、レイスのようだった


 ワイトは物理が多少は効くから良かったが、レイスはやばい


 レイスは物理は効かない。低級の死霊魔物ではあるし、実際、簡単な魔術でもぶっ倒せる


 だが、そんなことを抜きにしてもまずい問題がある


 それは憑依だ。心や、精神力が弱いやつに取り憑き、乗っ取る可能性があるのだ。取り憑かれたやつは廃人になる可能性すらあり、ぱっと見では判断も難しい


 実際、既に1人、取り憑かれたのか、ヤバい表情で座り込みやがった


 異界の連中は魔法を撃とうにも、狭い空間での乱戦のせいで味方を巻き込むのを恐れてか、まごついて、結局武器を構えて斬りかかってた


 ワイトはよくよく見ればレッサー種で、すぐにやられていた。と言っても、あたりには黒い霧が立ちこみ始め、視界も悪くなてきている


 減ったと思ったそばから、ローブのやつが死霊魔術のようなものを唱え、新しくレッサーワイトを呼び出しているのが見えた


 あいつが親玉だ


 俺以外にもそれに気づいた。気づいて、走り出すやつもいた


 そして、やっぱり、一瞬で殺された


 ムカデの化け物、とにかくこいつがヤバい


 異界の連中はなんとか戦っていたが、一人、また一人と倒されていく


 ムカデの吐き出す液体が強力な毒や酸らしく、顔色が悪くなったり、頭からかぶって酷い火傷を負っちまう。武器や防具は腐食して使いもんにならなくなる


 そんな状態の仲間に向かって、でけぇムカデが突進する。それだけで殆どのやつがぶっ飛んで、死ぬか、気を失っちまう


 異界の連中のボスらしいでけぇ男が勇んで切りかかるが、堅い甲殻に弾かれ、馬車に撥ねられたようにぶっ飛ばされる。起き上がろうとすると、死霊やゾンビ共に集られる


 地獄絵図だ


 異界の連中は殆ど殺されていく。確実に殺すように指示でも受けてるのか、光になるまで執拗に攻撃を仕掛けるゾンビども


 逆に俺たちは気を失ったり、戦意をなくして武器を手放したものは放置される


 もっとも、逃げようとしたやつはぶっ倒されて、気を失わされるが


 時間にして1時間どころか、30分くらいだろうか


 俺たち盗賊団は、壊滅した


 ---------------------------------

【said倒された(喰われた)プレイヤー】


 俺は所謂、PK、プレイヤーを殺して経験値を稼ぐ職業をしている


 そんな連中が集まって、現実じゃできない犯罪を、こっちの世界で犯していた


 最初はプレイヤーをキルして、満足していた


 次は盗賊っぽいこともやった。通りがかったカモを脅して金を奪った


 次第に脅すより先に剣を突き立てる方がはやくなった


 楽しかった


 男も女も怖がって、助けてくれという声が心地よかった


 所詮はNPCだし、ゲームだし、と割り切っていた


 どんどん悪いことをしていくと、気が大きくなって、大きめの集団にすらちょっかいをかけ始めた


 最初は、脅して、金目のものを根こそぎ奪った


 次は、見せしめに殺し、人も攫った


 途中から、NPCの盗賊団と合流し、攫ったNPCを売り払った


 これが、いい金になる


 集まった資金でいい装備を揃え、レベルも上がって、攻略組にも追いついた


 だからだろう


 ウチらのボスが殺られて、復讐だなんだと言い合って。腹いせにNPCに手を出した


 このゲームは、年齢によっては、性的な行為などの制限をとっぱらう事が出来る。まあ、未成年にはそういうことが起きているって見えなくなるらしいし、最初は気恥ずかしかったが、いつからか抵抗がなくなってきた


 そんな楽しみを覚え始めて、そう経っていない、この日


 PKしようとして負けた仲間の愚痴を聞いて、そいつら探し出してキルしようと相談していた。何故か二人だけヤバい魔物が出たとか喚いていたけど、ボスがそんなのほっといてキルするぞと怒鳴っていた


 NPCの盗賊団の連中は、ボスと仲間の一人が捕まったのを聞いて焦っていた。警戒もして、いつもなら武器も置いて飯を食っている時間に、武器を手元に置いて手早く食事をしていた


 まあ、売り払うつもりだった人質何人かも逃がしてしまって懐が寂しいのも理由だろうけど


 そして、誰かがネズミを追いかけて迷い込んできたヘビを見つけた


 1人が、食扶持が増える、なんて言って喜んで捕まえ始めた


 ヘビを食うとか正気かよ……


 すぐにヘビを捕まえ、ドヤ顔で胸なんか張ってる


 そして、その蛇が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 痛みから手を振り回すそいつは、次第に顔色を悪くして座り込んだ


 流石にこれには俺達も驚き、大丈夫かと声をかけた


 仲間が鑑定して見れば、アンデットだと言う。警戒し、アンデットだ!と叫び声をあげる


 とっさに何人かは武器を構えて、警戒をしだした


 そういえば、ネズミは……?


 そう思っていたら、今度はこっちの仲間が呻いた。角で刺されたらしい


 そっちに気を取られていたら、そこそこ大きなものが転がり込んできた


 少しばかり距離があるところにいたから、すぐに気づいた


 狼だ。()()()()()()()()()()()()()


 肉がところどころ溶けたようになっていて、腹のあたりから内蔵を溢れさせ、それを気にする様子もなく、牙を向いて走り込んできた


 びびった盗賊を無視したゾンビは、近くにいた盗賊に斬り殺されていた


 だが、それの続くように、またも腐ったうさぎと、骨だけの、イノシシっぽいやつが突っ込んできた


 訳が分からないが、どっかでアンデット化した魔獣なんかが、仲間を増やして、近場にいた俺たちを襲ってるって言うのか?


 とにかく、応戦しないと。急で驚いたけど、敵は雑魚だ


 でも、すばしっこいから魔法は外れる。くそっ!


 ひと回り大きい、ヒートウルフっぽい狼まで来て、一気に場が混乱する。しかも、なんか動きが速い。剣もほとんど当たらない


 なんて事をやっていたら、急に仲間が倒れた


 鑑定したら、呪いと麻痺になっている。訳が分からない。毒でも持っていたのか?


 流石におかしい。そう思い合図を送れば1人が入口に走っていく。入口の近かった盗賊2人も一気に走り出した


 そして、入ってきた()()に倒された


 1人は杖で顔を突かれて


 1人は、よくわからない。腕を掴まれて、気づけば倒れてた


 最後の一人……俺たちの仲間は……一瞬で死んだ


 角度的に良く見えなかった。でも、死んだのはすぐにわかった。光になったから


 ゆっくりと入ってきた、ローブを着た誰か


 そして、見たこともない大きな()()()


 鑑定の結果は、不明。つまり、格上


 そのムカデは見かけと違う素早い動きで蹂躙を始める


 ローブを着たやつも、杖を振って戦っている


 気づけばアンデットが増えていた。今度は死霊だ


 物理が効かない、厄介なmobだが、魔法を当てれば一発だ


 だけど、乱戦になったせいで迂闊に魔法が使えない。仕方なく、剣で切りかかる


 強さはやはり大したことは無かったが、ローブを着たやつが新たにワイトを呼び出そているのが見えた


 ネクロマンサーとか冗談じゃない!


 あたりがどんどん黒く塗りつぶされる。多分、闇魔法のダークミストだ


 視界が悪くなって、下手に動けない。そうこうしてる間にもあの化け物ムカデが大きな体にものを言わせ体当たりをし、強烈な酸液を吹き出し、装備をダメにしていく


 うちのボスが切れて突っ込むが、攻撃はほとんど通った様子もなく、車に撥ねられたように弾かれ、アンデットに集られる。あれは、無理だ


 気づけば、知らない内に武器を落としてしまった


 無理だ。どうして、こんな


 そんなことを考えていたら


 バジュンッ


 くらいなにか筒の中にいた――


 ---------------------------------

無自覚な主人公(蹂躙する災害)


 いやぁ……仲間が捕まってるっていうのに気が抜けすぎじゃないかな?見張りの1人も立てないなんて


 まあ有難いのでいいんだけど


 ……お、騒がしくなってきた


「よし、ヴォルカくん、ゴー!」


「gurala!」


 おー、嬉しそうだねー


 サクッとゾンビウルフがやられて焦ったけど、ヴォルカくん相手じゃそうはいかないっぽいね。なんだかんだ魔獣って強いね


 ……そろそろいいかな?じゃあ……


「行くよ。ピートくん」


「ギュイ!」


 こっちに向かってくる足音が聞こえる。ふむ


「えいっ」


「がっ!?」


 お、当たった。幸先がいいね。いい具合に顔に当たったっぽいし。あ、丁度いいところに魔力タンクが


 うんうん、やっぱり、吸収回復便利だねー。あ、最後の一人はピートくんどうぞ


「うぉぉお」


 バジュッゴリッ


「うわぁ……それ美味しいの……?」


 ブンブン


 あ……美味しくないのね……


 ま、まあ、一旦置いておいて……お、ミストたちがいい仕事してるね。鼠と蛇も……あ、蛇死んでるし。元々死体だけど


 む、気を失っちゃった……っと、丁度いいところに。あれ、なんか吸いにくい……?あぁ、レベルが上なのかも?まあいいでしょ。さて……


「暴れていいよ」


「ギュアァ!」


 ピートくんはすかさず突っ込んだ。かと思えば、体を起こし、いつかの時のように、大きく反らし、そして


「ピッギィィイイイ」


 酸を吐いた


 ……いやいや、ヴォルカくんダメージ受けちゃうからね?あっ、兎と鼠が溶けた……


 ま、まあ、うん、防具とか、邪魔だし、いい選択だよ!実際、ほとんど使い物にならなくなった人もいるし。あ、待って毒も吐くの?あ、ちょ、あ……ふぅ……攫われた人は居ないみたい……良かった……


 これは後でお説教だね


 むっ……ワイトがやられちゃった……まあしょうがない


 幸い最低限の働きはしてくれたらしく、あたりには黒い霧が立ち込めてる


 ちょうど回復もしたし、もう1体創造しておこう


 あ、また1人食べられた


 うーん、スプラッタ


 あ、近寄らないでくださいねー


「まあ、こんな感じかな?」


 なんか途中何をとち狂ったかピートくんに斬りかかってた人が居たけど、まあ返り討ちだよね。あ、アンデットに集られてる……プレイヤーでよかった……


 まあ、住人の盗賊も何人かは取り返しがつかなさそうだけど


 人攫いとかしてたししょうがないよね


 さてと……


 お、あそこが怪しいね


「ピートくん、ヴォルカくん、逃げようとしたり、変な行動したら、殺さない程度に攻撃していいからね」


「vau!」


「ギュアァ!」


 私はレッサーワイトとレイスを引き連れて奥の部屋に向かう。生命感知に結構な数が引っかかるも、動く気配はない


「当たりだといいなぁ」


 簡単な作りのドアを開け中に入る。意外と広い部屋だった


「……な、なんだ……お前は……」


「む?」


 声のした方を向けば、ロープで縛られ転がされている男性が5人、ボロボロの布だけを身につけてぐったりした女の人が2人、そして、手枷をされた冒険者風の人が3人居た


「一応、冒険者で、皆さんの救助に来ました」


「ほ、本当か!」「助かったのか……?」「……う、うぅ……」


 ……男性と冒険者風の人達は大丈夫だけど、女の人二人がちょっとまずそう……


「ちょっと待ってくださいね、ギルドの人を呼んでくるので」


「わ、わかった」


 まだロープも拘束も外さない。逃げ出そうとして、ピートくんたちに襲われる可能性があるから


 1度連れているレッサーワイトとレイス以外のアンデットを素材に戻して、ヴォルカくんとピートくんに監視を続けてもらいながらアジトの外へ


「みなさーん!終わりましたー!」


 …………


 …………


「……ほ、本当に終わりましたか……?」


「はい、ちょっと、危なそうな人がいるので一緒に来てもらえますか?あ、アイロスさんは入口で待っててください。ちょっと男性には……」


「あ、分かりました。見張っておきます」


「お願いします」


 マユナさん、カリヤさん、そして、アイヴィーさんにお願いして女性の介抱をお願いする。その間に部屋にあったロープや手枷で倒れていたり、戦意喪失したり、死にかけてる人を拘束する


 ついでに、盗賊団が溜め込んだ戦利品なんかも物色。もちろん元の持ち主がいるなら返すけどね。とりあえずは回収しておく


「gawha」


「ん?どうしたのヴォルカくん」


「gurulu」


「え、なになに……?え、着いて来いって?」


 こくこく頷くヴォルカくん


 ちょっと戸惑いつつヴォルカくんのあとに続けば、何の変哲もない壁をガリガリ引っ掻き始めた


「……ここに何かあるの?」


「vau!」


「ふむ……まあ、一応【ホール】」


 ちょっと疑いつつホールで壁を掘ってみる。するとそこには、地下への階段が


「おぉ!こんなところに階段が……なんで……?」


「gurala?」


 まあ、ヴォルカくんにわかるわけないよね


 1度階段は置いておいて、拘束が終わったことと、女性を介抱している2人に確認をとる。かなり衰弱してるけど、命には別状がないらしい。精神面に関しては、難しいかもとのことだけど……


 護衛にピートくんを残し、アイロスさんに声をかけて一緒に階段に付いてきてもらう。念の為ヴォルカくんも伴って


「どう思います?」


「そうですね……土魔法で隠蔽していたと仮定して……より重要な人物を隠している。もっと価値のあるものを隠している、とにかく色々考えられますね」


「ですよね。でも、生命感知には何も引っかからないんですよね」


 正確には、私が探知できる範囲には、と、攫われた人物が地上と地下とで重なって表示されない、である


 まあ、いない可能性もある。どっちみち行くしかない


 中はかなり暗いが、夜目を持っている私には関係ない。アイロスさんは見えないっぽいけど、光を出して足元を照らしている


 さらに安全のため、レッサーワイトを先行させ、ヴォルカくんをそばに置いておく。ヴォルカくんは鼻が利くので頼りになるのである


 20分ほど降りたら、ようやくそこについたらしく、上と同じくらいの広さの空間に出る


 その空間の半分以上が、いわゆる牢屋、の様になっていた


 その牢屋の中には、エルフ、ドワーフ、人間、とにかくいろんな人種亜人種がほとんど裸に近い格好で雑魚寝をしていた。いくつかの牢屋にはまだ幼い子供も多数いて、さらにはアイロスさんも驚くような、珍しい魔物や、保護対象の珍獣などもそこそこ居た


 魔獣珍獣含め、全員がかなり弱っていて、何人かは既に亡くなっていた。食事も満足に与えられてない様子で、こちらを酷く怯えた目で見ている


「ちょっと、これは……きついですね」


 さすがに、驚きと困惑と、不快感と怒りと……とにかく、いろんな感情が渦巻く


 空間には出口のような箇所が二箇所あり、かなり長い通路になっている、整備された空洞と、整備されていない洞窟が続いていた


 アイロスさんにアイヴィーさんへ連絡を頼み、とりあえずの監視と、事情の説明を行っておく


「………………………………あな、ぁわ……?」


「冒険者です。助けに来ました」


「…………!」


 僅かに頬が持ち上がる、()()()()()()()()()()()()()()に声をかけ、事情を説明する


 とにかく衰弱がひどい子供たちや、体の弱い女性に水を渡すが、全然足りず歯噛みする


 もともと水も食事もほとんど必要ないせいで失念してた……まあ、流石に全員は助けられないし、助けれるとも思ってないから、しょうがないんだけど


 しかし……とにかく、リアルだ。ここまでリアルにしなくていいじゃん。運営さん


 3時間ほどして、アイヴィーさんたちが、治癒術師や神官といった回復を得意とする冒険者やギルド関係者を連れてきてくれて、大半の人は助かる


 ……一部の人は、衰弱が酷すぎて、回復できない人や、劣悪な環境で病気になって死んでしまった人もいた


 魔獣はその場で殺され、幻獣は保護された


 報酬として、魔獣の死体をもらい、魔石や、盗賊が集めていた装備品の一部、宝石なんかももらって、その上でギルドからの報酬も出て、かなり懐は潤った


 ……でも、あまりのリアルなこの出来事に、ひどく動揺してしまい、頭がうまく働かなかった


 見かねたアイヴィーさんとマユナさんにフォローされ、気づけばギルドに戻り、依頼完了の印をもらい、一度休んだ方がいいと言われ、大人しく宿に戻り、ログアウトした


 その日は、あんまり眠れなかった

誤字脱字等ございましたらご報告ください


また、感想も随時受け付けていますのでどしどしお書き下さい

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