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闘技大会終了

少し遅くなりました。

 午前の部は残念でしたが、気持ちを切り替えて、残ったメンバーの午後の部の試合を応援したいと思います。


 今日は先輩方ふたりの試合の予定です。しかし、いくつか問題があります。


「やっぱ直らんかったわ……」


「こっちもだ……」


 そう、先輩方の武器防具が破損してしまったのです。


 試合相手のネメア・ザ・アックスさんたちの攻撃力が高すぎて防御に使った装備が軒並み壊れてしまったようなのです。


 修理するにしても、耐久度が完全破損状態で修理できないらしく、予備武器であるホーネットさんに至っては試合に出ることすらできないかもしれないとのこと。


 幸い私は耐久値も高く防御力が高かったのでなんとか修理ができました。ただ、メイン防具の盾が壊れてしまったので調達の必要がありますが……


 こい先輩、ブレアさんは防御力が高くないので完全に破損ですが、布装備のためディレスさんが格安でレンタルしてくれるとのことです。


 レンタルなところはさすが商売人、なんでしょうか?


「流石に今回はリタイアかね……」


「うちはせやなぁ……金は貯めとかなやし……」


「うーん……みんながやめるならわたしも今回はリタイアしちゃおうかな〜」


 思った以上に傷跡が深いですね。出られない訳では無いんですけど、流石に厳しすぎます。


「ただリタイアしてもログアウトはできないから残りの時間で狩りとかして少しお金なり素材なりを稼がにゃならんわけだが……」


「レンタル武器借りないとウチは装備ほぼ全滅やで」


「だよなぁ……MASAMUNEもカーティスも試合だろうし……しょうがないか……素材の宝庫にでも行くかー」


「素材の宝庫?」


「もしかして大森林のことかな?」


「そうそれ、オリドシヘトス大森林。表層だけならレンタルでも十分だろうし、レベルは上がりにくいけどドロップは通常だし、小銭稼ぎにはもってこいだろ」


「あーあの森か。せやね……じゃあ今日は一旦解散で、明日明後日、でもって最終日までの3日間で稼ぎまくる感じか?」


「そうだな。あ、ついでにコカゲに伐採してもらう範囲とか決めとくか」


「そう言えばギルドホームの建設予定地でもありましたね」


「まあ土地はあるし、深層はかなり難易度も高いし、何より拡張しても怒られないのがいい。素材もmobも大量だし」


「あ、じゃあ、目印になりそうなのが必要だね。ペンキとか?」


「その辺は案内人とかギルドの人間も連れて行こう。せっかくギルド側が動いてくれるんだから積極的に使おう。第一の街のギルドはあんまりこっちには関係ないだろうし」


「それじゃあ、とりあえずは、棄権するって言わないとだね〜」


「ていうかこひも棄権するのか?防具さえどうにかすれば試合出れるだろ?」


「んー、みんなと一緒にいたいからいいや〜。それに、わたしも装備を新調したいしね〜」


「ん、わかった。じゃあ行くか。ふたりは自由に行動してくれていいから」


「わかりました」「わかったよ!」


 しかし、自由時間、と言われるとどうすれば……ジオさんのところに行って武器見てきますかね?盾もありましたっけ?お金が足りそうなら槍も欲しいです。


「コーデリアちゃんはどうするのかな?」


「私は盾が耐久値破損してるので新しいのを見ておきたいなと。それと、カーティスさんの時間があるようなら鎧の修理もしてもらいたいなと」


「そっか、じゃあ一旦はお別れだね」


「ブレアさんはディレスさんのところに?」


「うん、こいさんを待って、一緒に行こうかなって」


「わかりました。ではまた明日」


「うん、また明日!」


 こうして、私たちの闘技大会はまさかの棄権で終わるのでした。


 まあログアウトできませんので、この期間中に稼げるだけ稼ぎますけど!




 はい、四日目の朝です。


 結局昨日はジオさんのお店で鍜治の勉強をさせてもらい、カーティスさんを捕まえて防具類の修理も行い、残りは食べ歩いて終わりました。


 アイテムボックスは素晴らしいです。熱い冷たいも入れたままの状態で保存してくれるのでいつでも美味しく食べることができます。


 ここでは太らないのも素晴らしいです。


「ここに来てコーデリアの食に対する抑制が消えたか……」


「むぐむぐ……んぐ、先輩も食べますか?」


「お、おう……んじゃ一個いただくわ」


 先輩にドーナツを渡し一緒に食べて他の三人を待ちます。


 む……いちごも美味しい……むぐむぐ


「あー、おいしそー」


 むぐ?


「む……ええっとなんだっけ?昨日のハンマーっ子か」


「とーるだよ。ちっちゃいおねーちゃん」


「ちっちゃいは余計だ。それにお前さんとそう変わらんだろう」


「あはは、そうだねー」


「おはよう、トールちゃん」


「ん、おはようコーデリアおねーちゃん。ボクにもちょーだい?」


「むぐむぐ……いいですよ、はい」


「わーい」


 もきゅもきゅとドーナツを頬張るトールちゃん。


 ああ、癒されます。


「しかしこんなところで何してるんだ?団体戦あるんじゃないのか?」


「あるけど、お腹すいたから、なにかないかなーって。そしたらおねーちゃんたち見つけたから。ドーナツ美味しそうだったし」


「なるほどね。しかし、お前さんたち火力おかしすぎ、コーデリアが一撃で溶けるとか」


「まあ、そういうキャラメイクしてるからね。単純な一撃の威力なら現在のトップだと思うよ。チームメイトの中でもダントツだしね」


「そりゃまたすごいな……ま、今度リベンジしてやるって、そっちのリーダーに言っといてくれ」


「わかったよー」


 最後の一欠片をぱくっと咥えれば、にへっと頬を緩め、身の丈以上のハンマーを抱えて


「それじゃあごちそーさま、またねー」


 とひょこひょこ歩いていきました。


 それと入れ違いにこい先輩、ブレアさんが来て、そこから少ししてホーネットさんが来て、全員集合しました。


「さて、闘技大会は残念だけど、時間はあと三日分もある。レベルこそ上がりにくい仕様だけど、今のうちにできるだけ資金が欲しい。装備ぶっ壊れたし」


「ウチなんか予備も壊れてるしなぁ。はやいとこ直さなキツいで」


「ん、というわけで、昨日言ってた通りに素材やクエスト受けて金を稼ごうと思う。ついでにギルドメンバーでも探せればいいんだがな」


「せやなぁ。せめてあと2人は欲しくない?コカゲ入れて6人やろ?ちょっとばかし少なすぎやで」


「理想は10人で2パーティに分けられる、だけど、まあとにかく1人は欲しいな。生産系でもいいけど、その辺はまあ生産連中に頼めばいいし」


「火力担当が欲しいよね!こう、ズバーンって敵を倒しちゃうような!」


「そうだな……回復も欲しいところだけど、ブレアとこひがいれば結構どうにかなるし、前衛はたしかに薄いかもな。よし、この3日間で前衛のスカウトもするか!」


「じゃあ、第一の街から周回しながら大森林目指す感じかな〜?」


「そうだな。それで行こう」


「わかりました」「わかったよ!」「りょーかいや!」



 ---------------------------


「流石に第一の街周辺はレンタル装備でも十分ですね」


「だなぁ。これで大森林も行けるかって言われると微妙だろうけど、まあ死にはしないだろ」


「回復なら任せてよ!」


「わたしも補助頑張るよ〜」


「ぬぅ……平原なら上からの偵察できるけど、森林やと木が邪魔で偵察もままならん……完璧足でまといになってまう……」


「ドンマイドンマイ、気にしすぎるな。少なくとも今はありがたい。なんだかんだ言ってコカゲがいない探索って結構きついんだよ」


「ん、そうなん?コカゲちゃんて後衛で、サモナー系なんやろ?」


「ああ、そうだけど、あいつのスキルと、使役アンデッドが便利でな」


「お姉ちゃんは後衛と言っていいのか悩んでしまいますけどね。誰よりも早く相手に殴り掛かる後衛って……」


「そう言えばなんのかんの言うてもまだコカゲちゃんとパーティ組んでないなぁ。風邪はよう治ればええな」


「はい、でも、わりと元気な様でしたし、二日もすれば治ると思いますよ」


「何にせよ、あと三日、資金集めと素材集め、頑張るぞ!」


「「はい!」」「は〜い」「おう!」





 さて、いよいよ今日が闘技大会最終日です。


 参加者である私達も最後の閉会式に顔を出さないといけません。


 閉会式は滞りなく進んでいき、いよいよ結果発表です。


 がっつり素材、資金を集めるために狩り、採取、そしてクエストを受けまくりました。


 結果上がりにくくなっているはずの特別サーバーで全員が2以上レベルアップするくらいには頑張ったのでそれはもう大量の素材と大金が全員の懐にあります。


「足りん……足りん……あと……あと30万……」


 ……若干一名死にかけてますけど。


 なんでもレア素材があと少し足りず、結局お金で解決しなければいけないらしいです。


 残ったメンバーは予定より多い素材と資金を手に入れたので1部をギルドの運営資金に回すことが決定しました。


 と、そんなこんなで表彰式です。


 上位三チーム、上位三名の名が呼ばれ、それぞれ特別なメダルが渡されています。なんでも団体戦のメダルはパーティ単位から五十人規模のギルドメンバー全員のステータスを若干あげるもので、個人戦は武具防具どれか一つを強化できる専用アイテムらしいです。


 ちなみに参加賞はパーティメンバーのHP+5のメダル、本戦出場チームにはHP、MPが+3のメダルが配られました。個人戦は参加賞のみで、最下級の回復アイテムが各3つずつの結構ありがたいものでした。


 そして、今回の上位三チーム、三名は以下の通り


 チーム戦


 ・第三位『ネメア・ザ・アックス』


 ・第二位『フロントファイターズ』


 ・第一位『ブレイブ』


 個人戦


 ・第三位『飛翔する蟹』


 ・第二位『ドラッカン』


 ・第一位『ネメア』


 チームで言えば私たちの本戦最初で最後の相手、ネメア・ザ・アックスさんたちが3位でした。優勝チームであるブレイブの皆さんの硬い守りと安定した攻めに1人、また1人と倒されて言ったと聞きました。


 ちなみに、優勝したブレイブはドラッカンさん率いるチームで、β時代を知るプレイヤーから早速ギルド加入の申し込みが来ているそうです。もちろん上位三チームすべてに言えることですけど。


 次に個人戦ですが、ドラッカンさん以外のおふたりは知らない人です。と思ったらネメアさんはネメア・ザ・アックスの猫耳さんでした。


 個性的な名前の人は容姿も個性的で、言われてみればたしかにカニっぽい髪型の男性プレイヤーでした。


 そう言えばカニ食べてないですね最近……明日はカニのお味噌汁をお願いしましょうかね。


 そんな訳で表彰式も終わり、無事に閉会式が終わり、あとは元のサーバーに戻り、ログアウトするだけです。


「いや……最後の三日は暴れたなぁ!」


 清々しい笑とともにそう言うねね先輩。


「せやなぁ。ちぃと暴れ足りんかったけどなウチは……」


 装備がないせいで若干不完全燃焼気味のホーネットさん。


「わたしは目標の数素材が集まったからね〜。闘技大会に出ないで六日間素材集めしてればよかったかも〜」


 どこまでもマイペースなこい先輩。


「わ、わたしは疲れたよ……しばらく狩りしなくていいくらいお金も素材も集まったし……」


 疲労が溜まっているのか顔が少し暗いブレアさん。


 そして私は、終わったことに対するやり遂げきった感と、少しの悔しさと。そして


「ふふっ」


「おー、またやってるのか……」


「好きやねぇ……」


「嬉しそうだね〜」


「コーデリアちゃんがちょっと変だよ……」


 3日間で集めた資金のほぼ全てをつぎ込み制作を依頼した槍の完成を妄想し、顔を緩めるのでした。 

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