ピートくんのお披露目 破
三月までに間に合わせきれませんでした……
エイプリルフール?ああ、移動で潰れました。
そういった時事ネタというか、そのあたりはもう少し話数が増えてからということで……
さーて、このギルマスさん、なんか最強だなんだとか言ってたけど、実際どれ位強いんだろうか?ピートくんには負けたって話だけど。
なんかの魔道具で結界が張られる。なんでも外に衝撃やら音やらを漏らさず、それでいて人の出入りも制限するとても高性能な結界装置だそうだ。ホームを手に入れたとき用に欲しいな。
「さ、もう確認はいいだろう?それじゃあ、始めよう。」
いくつか確認しているとギルマスがそんなことを言う。
あれって大剣?結構強そう。売り忘れてたなんとかの大剣よりよっぽどいい武器なんだろう。なんか黒い刀身ですごく硬そう。
そうやって武器を観察していれば突っ込んでくるギルマス。もうか、もうちょっと観察しておきたかった。というか今度《鑑定》スキルでもとろうかな?
「さ、やっちゃっていいよ。あ、でも殺さない程度でお願いね?《眷属召喚》!」
ギィィイュゥイィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!
私が従える【災害】が牙を剥き、大剣を構える人間に襲いかかった。
「ば、馬鹿なっ!?」
「ギュアギュアギュアアアアア!!!」
「う、うぉおおおおおおおお!!!」
おー、ピートくんの突進を辛うじてだけどいなしてる。言うだけのことはあるのかな?と言うか今更だけど普通に私勝てないよね?機嫌が悪かったからってちょっと大見得切りすぎたなぁ……。
ま、ピートくんがいればどうにかなるでしょう!
あ、追加で【レッサーワイト】3体を創造、【レッサーゾンビ・ラビット】1体、【レッサースケリトル・ブル】2体を立て続けに創造する。MPが一気に空になるけど劣化mpポーションで3割ほど回復する。
「ぐぅっ、アンデット使い……ネクロマンサーだったか!」
「いや、違いますけど。」
正しくは縛霊術師。アンデットの中でも死霊系に特化したネクロマンサー系というか。実際、屍体、屍人系はMPの消費が激しい。ブルなんかレッサーレイスの十倍の消費だ。素材も多いからしょうがないかもだけど。
「ギュゥォォオオオオッ!!」
ピートくんが大きく旋回した勢いのままに突進を行う。と見せかけて大きく跳ぶ。《跳躍》スキルの補正も相まってその飛距離はかなりのもの。
「と、飛んだだと!?」
傍目からはそう見えても仕方ないほどの勢いで飛びかかるピートくん。器用に足をたたみまるで矢のように飛んでいる。
「くっ!《ロック・ウォール》!」
「ギュィア!?」
ガゴンッ、と岩の壁を砕きながらも進むピートくん。というか、実際に飛んでるわけじゃないから仕方ないけど。まあ、あれくらいじゃダメージってほどじゃない。
ただ、ギルマスはその一瞬に転がるように回避していた、流石だ。
「まあ、狙い撃ちですけど!」
「何……ぐぉっ!?」
レッサーワイトたちと魔法を放つ。《シャドーナイフ》、命中に補正があるのかかなり命中精度が高い。ただ、若干威力には欠けるけど。ただ、そこは闇の魔法。斬撃と魔法攻撃の両方の属性ダメージに加え、若干の速度低下や筋力低下などの弱体化の効果がある。一撃じゃわからないほどの。
「くそ、卑怯だぞ!」
「あんたがそれ言う?」
格下恐喝しといて何を今更。
「ギュウウウッ!」
「く、くそっ、《ロック・ボム》!」
ボンッ、と大きく響く破裂音。それをまったく意に介さず突っ込むピートくん。今度は避けるのが遅れたのか広がった脚の先に引っかかり血を吹き出すギルマス。
「ぬぅぅっ!これならどうだ!《ファイアー・ボール》!」
「ギュイアッ!??」
む、火が弱点のピートくんには結構効いたかな?だけど、近距離で魔法はまずいよ?特にボール系は手を前に突き出さないとだし。
ぞぶり……
「な、ぐ、ぐぁあっ!?」
右手首に噛み付くゾンビ兎、ブレードラビットの名は伊達じゃなく、鋭い前歯は鎧の隙間に突き刺さり、死体ゆえの無茶な動きで首を捻って抉るように動かす。
うん、えぐいね。やらせておいて何だけど。
流石にあれで大剣を振るのは無理だろう、なんて思っていたらどういう訳か目に見えて回復していってる。何かのスキルかな?
「く、このムカデがいなければ……!」
「ギュイァアア!」
カサカサ、キチキチと足音を立て牙を鳴らすピートくん。うん、改めて見ると怖いね。
でも、ピートくんがいなかったら私に勝てるみたいに言われてちょっと腹が立つな……ちょっと、アレ試してみるかな?でも、素材足りないし……うん、今回はピートくんと一緒に頑張ろう。
「さあピートくん、せっかくのお披露目なんだから、殺さない範囲でならどんどんやっちゃっていいからね。」
「ギュオォォオ!!」
ピートくんが嬉しそう(?)に叫び、鎌首をもたげるように上体を起こせば、その巨体に見合うサイズの魔法陣が。
「馬鹿な!センチピートが中級魔法だと!」
「《サンド・ダスト》」
すかさず補助魔法で補正をかける。微々たるものでも一緒に頑張ると決めたなら、徹底して援護していこう。
「ギュ、ギュッギュイギュアアアアア!」
中級土魔法、アースバースト、ロックボムよりも範囲が広く、威力も高い。だけどそんな単純なものが中級魔法になるわけがない。
アースバーストの恐ろしいところは対象の地面を起点として発動する点だ。
立っている地面が爆ぜ、爆風と共に大質量の土や砂、石や岩が吹き荒れ、広範囲にわたり魔法と物理の併用ダメージを与える。何よりこの魔法は命中せずとも環境に大きく干渉し、地形を小規模ながら変えてしまうことが出来る。
まして、ピートくんが半分もの魔力を込めればかなりの威力になる。まあ、ピートくんは魔法型じゃないから決して高いとは言い難いけど、それは魔法ダメージの方であり、それに追随する土塊たちは正直どれほどのダメージが出るかわからない。
ボゴオオオオオンッッ!!
とっさに飛び出したギルマスの少し左側の地面が爆ぜ、爆風と共に大量の土塊が飛び散る。
「ぐぅぅぅ!おおおおお!」
大剣の陰に体を隠し大部分を防ぐが、はみ出した部分に細かな土や石を受け、それなりのダメージを受ける。って、私の方にも結構飛んできた!
「ピートくん加減、もうちょっと加減して!」
ブルの陰に隠れて土塊をやり過ごす。ちょっと当たったけど、これくらいならまあ許容範囲かな?
「ギュアァ……」
ああ、ピートくんが落ち込んでしまった……
「大丈夫、ごめんね、私がやっていいって言ったのにね。ん、ピートくんは悪くないよ。」
慰めながら1体のブルの陰から出る
「くそ、ダメージを貰いすぎた……!」
おお、まだまだ健在だ。まあ、これくらいじゃ倒せないってわかってはいたけどさ、でも、気を抜くには早いよ?
「ごふっ!?」
不意に大きくバランスを崩すギルマス。その背後に骨の塊。
レッサースケリトル・ブルの突進だ。体に肉がない分威力は落ちるけど、その分スピードはかなり出る。
「この……骨風情が……!」
崩れる体勢の中、剣を振るってブルを斬りつける。その一撃で耐久値が無くなったのか一撃の元にバラける骨。
「ああ、素材が!」
まったく、ブル一体作るのにどれだけ猪の骨を消費すると思ってるんだ!ああ、また今度猪狩りだな……
さて、ここで状況を整理したい。
ギルマスは体勢を崩され、その意趣返しとばかりに原因である骨猪を斬り捨てた。私は依然距離をとったままで、骨猪もあと一体そばに控えさせてる。
兎は気づいたら爆発に巻き込まれて死んでた。うさぎの素材はまあ、うん……
レッサーワイト達は若干ダメージを受けてたけど、物理が効きにくいからまあ放置で。
で、肝心のピートくんだけど。
「しまった!気を取られ……何?」
見える範囲にはどこにも居ない。
「ば、馬鹿な、どこへ……?ま、魔力切れか……?」
もちろん魔力切れなんかじゃない。《眷属召喚》は召喚時にしかMPを消費しないし。
じゃあどこか。
答えは簡単。
私たちの最初の出会いと同じだ。
-----ィィ-
「!い、一体どこから……」
ーーーーーーーィィィァァーーーーー
「っ!しまっ……」
ギュゥゥィィィィイイイイアアアアアアアアア!!!
ボガアアンッ!!
ギルマスを《振動感知》でロックオンし続け、《土魔法》で穴を掘り、《登攀》、《突進》、《跳躍》を使い、とてつもない勢いで地面から突き上げ、その勢いのまま結界が張ってある天井ギリギリまでギルマスを吹っ飛ばした。
「ギュッギュイ!」
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「……今までの、ひ、非礼を、詫びよう……」
「はい?なんですって?非礼を、詫びよう……?何を言ってるのかしら?ワイフェ……どう考えても今回の件、あなたが悪いでしょう?なのに詫びよう?ちょーっと、何を言っているのか私わからないわ。」
えーっと?
「そ、それは……だ、だいたい、新人冒険者が適当なことを言っている場合もあるし、何より、あのギガス・センチピートは仲間の……」
「それは2年も前の話でしょう?前回は情報不足と実力不足でダメだったんだったかしら?しかも今回もしっかりと確認しないままに嘘だと決めつけて挑発。前回も今回も私の居ない時を狙ってだし……もしかして私、嫌われてるのかしら?」
「そ、そんなことは無い!」
「なら一言相談くらいしてほしいものだわ……悲しいわ……」
ハンカチで目元を拭う仕草をする女性。でも私はハンカチの影に隠れる口元が弧を描いているのを見逃さなかった。
「す、済まない、その、少々、冷静でなかったのだ、最近の新人たちがあまりにもひどい連中で……」
「だからこそ、代理である私としっかり話し合いをして方針を定めよう、って話でしたのに……それなのにまるで邪魔だと言わんばかりに情報を集めに外に出したくせに……」
「それはお前がそういうことに長けているからであって……」
そろそろ、帰っていいのかな?
そう目でマユナさんに尋ねるもただただ首を横に振るだけ。正直ギルドにいいイメージもうないからとっとと出たいんだけど……約束もあるし……約束?うわ、フレンドコールが何回か来てる……げ、ねねからもだ、後で怒られそう……
「あ、ごめんなさいね、当事者のあなたをほっぽり出しちゃって。」
「え、あ、いえ。もう帰ってもいいんですか?」
「んー、そうしてあげたいんだけどね、色々とお話を聞かなければいけなくなったし……本来ならこの人が詳しい話をしっかり聞いて事実確認をするべきなのに、調子に乗って新人冒険者をいじめてるんですもの。」
「はあ、しかし話ですか。正直こっちは無駄な足止めくらってる上に買取すらできず迷惑してるんですけど?」
もういい時間だしはっきり言ってイライラしてる。ピートくんはしまってるけどその気になればすぐ出せる。暴れちゃうよ?
「でもねぇ……そうは言っても、流石にはいそうですかと解放できる案件でもないのよねぇ……」
こちらを値踏みするように見てくる女性。とりあえず、この人がギルマスの代理だってのはわかったけど
「ちなみに話をしないで出ていった場合どうなります?代理さん。」
「ああ、自己紹介がまだだったわね。私はこのギルドのマスター代理で、主に裏方をしてるベス・ルイドスよ。で、質問の答えだけど、そうね……あなたを捕縛する依頼でも出す、なんてどうかしら?」
「それは脅しですか?」
「どう取ってもらっても構いませんよ?」
うわぁ、うぜぇ
「私はあなたがお話さえしてくれればちゃんと解放する気よ?もちろん買取もするしランクもあげる。それにこの人がやったことに対するお詫びもするわよ?」
「それどれも嬉しくないですしして欲しくないですね。はっきり言って今回の件でギルド使うのやめようかなーくらいに思ってますし。」
あ、マユナさんが驚いてる。
いやでもゲームでことある事にギルマスとかの偉い人に睨まれ続けるとか嫌じゃん。
「……まあ、確かに、この人がいればやりにくいわよね……でも、それはギルドを抜けるってこと?ギルドを抜けるとあなた達アンデットは生きていくのは厳しいわよ?」
「アンデット、ね。」
あ、しまったって顔だ。そんな顔するなら言わないでよ。
「はぁ……マジで気分悪い……これもイベントなのかな?だったらやった方がいいかもだけど……正直こんな事で足止め食いたくないんだよなぁ。連絡いっぱい来てるし、わりかし私頭に来てますからね?」
勝てないなら勝てないなりにやれることはあるし、いっそピートくんと暴れたっていい。やったら確実に捕まるか指名手配とかされそうだけど。あ、でもマユナさんまきこむのはだめだな、うん。
「……うーん……」
代理さんが腕くんで考えてるけど、正直早く出ていきたい。生きていくのが厳しいって言われても、現状ですら結構生きづらいしなるようになるだろう。
「とにかく、そうやって脅しかけてくるくらいだしどうせ碌でもないでしょうし、何かされる前にとっとと出ていきますね。それじゃ。」
「待ちなさい。」
「……なんですか?そろそろ本気で怒りますよ?」
「犯罪者かもしれない人物を逃がすわけには行かないからね。ここでお話してくれるまではあなたは容疑者、違ったならお詫びにいうことなんでもひとつ聞いてあげる、これでどう?」
「話にならないですね。私が容疑者なのは百歩譲っていいとして、話した結果解放される保証も、犯罪者でないという証明もできないこの状況でとどまるメリットがないじゃないですか。第一私は最初にパーティでの狩りをした結果ギガス・センチピートを狩ったと言いましたし。それにこっちは死に戻ってステータスも落ちてるし、これ以上アイテムの消費もしたくないんですけど?」
「ならそのパーティメンバーを呼び出せばいいじゃない。」
「今連絡取れないんですよ、結界のせいかな?着信はあるけど出ることは出来ないみたいですし。」
もちろんかけることが出来ない。通信というか、そういったものも制限する結界なんだろう。
「なら結界を解くから連絡つけて来てもらうよう呼びかけて欲しいわね。」
「呼ぶのは決定事項ですかそうですか。」
「じゃないとあなたを捕まえなきゃならないから。」
結局そこのギルマスとおんなじタイプの人かぁ。
「もうどうでもいいや……さっき言ったこと忘れないでね?あと」
「何かしら?」
「命の保証はできないですからね?」
みんな結構過激だから。
「これでも代理を務める実力者なんだけど?」
「私パーティじゃ最弱なんで。」
ブレアさんにですら勝てそうにない。主に回復魔法のせいで。
「ま、とにかく呼びますね。あ、あと約束してる人にも連絡とるんで待っててくださいね。」
「あら、恋人と約束でもしてたの?」
「違いますよ、防具職人さんですよ。」
とりあえずディレスさんに連絡……ワンコール目で出てくれた。
『遅い!』
「あ、ご、ごめんなさい、その、実は厄介事に巻き込まれてる最中で、今ギルドにいまして……」
『む、大丈夫か?手がいるなら貸すぞ?』
「一応ねねたちにも連絡取るつもりですが……ちなみにディレスさん、ギルドランクとかは……」
『ギルドランクか?冒険者の方はDだな、商業の方は年ごとの審査だからまだ最低のFランクだが。』
Dって結構早くない?冒険者ギルドって確かGからだし。
「えーっと、それじゃ来てもらっていいですか?冒険者ギルドにいますんで。」
『わかった。』
通信が切れる。次はねねにコールする。こちらもワンコール目で繋がる。
『遅い!というか大丈夫か!?』
「ごめんね、ちょっと面倒事で」
『誰を斬る?』
「待って」
過激すぎるよ……
「そっちの用事は終わった?」
『ああ、色々あったが終わったよ。報酬も出たし、コカゲを殺ったやつに関しては装備所持品全部もらえたし。』
「あ、じゃあ、急にで悪いんだけど、最初の街の冒険者ギルドに来てくれない?みんなもできれば来て欲しいんだけど。」
『わかった。あと、ちょっと余計なのがついてくるけど、まあ気にしなくていい。とりあえずそっち行くわ。』
「?まあ、とにかくお願いね。」
『おう!』
プツッと切れる通信。
さて、あとしばらくはかかるかな?とりあえずその間に
「取り敢えず、呼びましたよ。まあ、ちょっと遠いんで少しかかるでしょうけど。」
「わかったわ、とりあえずは待ちましょうか。」
「じゃあその間に素材の買取とかいいですか?わりかし真面目にそこに転がってるギルマスのせいで消耗激しいんで。タダでさえ殺されたばっかりだったんで。」
「まあ、買取はいいけど……依頼達成は見送らせてもらうわよ?これで犯罪者ってわかったら即牢屋行きだからね?」
「違ったならなんでも聞いてもらいますからね。」
「一つだけ、よ。」
チッ、覚えてた。
はぁ、早く終わってー
誤字脱字等ございましたらご報告お願い致します。
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