ピートくんのお披露目 序
今回結構短めです、遅れたのに申し訳ありません。
それと今回結構難産です……話が思いつかない……予定していたストーリー通りに行かないものですね……
とりあえずは、とフレンド一覧を確認すればディレスさんの名前があった。
『もしもし?どうした?』
「あ、もしもし、コカゲです。ちょっと死に戻りしちゃって単独行動中でして。それで第一の街に戻ってきたんで、ちょっと装備の回復とかしてほしいんですけど。」
『む、ねねねね!たちと組んでて死に戻りか?まあ、序盤だしレベルも低いからそういう事もあるか。すぐ来れるのか?』
「はい、一応道が不安なんでちょっと遅くなるかもですけど、15分くらいで着くと思います。あ、あと、靴を頼むのを忘れてたり、買取を忘れてたりしてたのでお願いしたいんですけど……」
『んー、素材、毛皮とか繊維系なら買ってやれる。他は別で頼む。』
「あ、じゃあ、先にそれ以外売っちゃって来ますね。多分そんなにはかからないと思いますけど……」
『まあ、いつでも来い。そうだ、靴に効果はつけるか?と言っても、予算しだいだが。』
「あー、まだお金がどうなるかわからないので着いてから決めますね。」
『そうか、わかった。』
「では、また後で。」
連絡も終えたし、まずは満千香さんのお店に向かう。
あそこならいい値段で買ってくれそうだし、杖の予備も欲しいし。
そうしてしばらく歩いているとふと気になる建物が目に入る。
「……そういえば、冒険者ギルドの依頼、常設依頼しかやったことないな。」
私たちプレイヤー、特にアンデットなんかのモンスター系の種族を選んだプレイヤーは、ほぼ間違いなく冒険者として登録されている。それが身分を保証し、冒険者や街の憲兵や傭兵などからの誤爆を防いでくれるからだ。
で、私は一応冒険者なわけで。
ランクは最低のランクであるわけで。
「……あげた方が何かと便利かな?それに、金策もしなきゃだし……」
と思い、ちょっとギルドを覗くことに。
「うーん、人が多い。」
おそらくほとんどがNPCなんだろうけど、冒険者ギルドはとても賑わっている。利用したのは計3回、今回も含めて4回。うん、資格剥奪されててもおかしくない気がする。
とりあえず常設の兎狩りの依頼やら猪肉の納品やらの依頼を片付けよう。
「あ、これはコカゲさん、お久しぶりです!ん?なにか雰囲気が変わりましたか……?」
「お久しぶり、です?えっと……」
「……あはは、忘れられちゃってますかーそうですかー……」
「ご、ごめんなさい!あんまり利用しなかったものですから……で、でも、これからは積極的に依頼もこなしていくつもりですよ!」
「むぅ、忘れられたのは初めての経験かもです……まあ、いいでしょう。では改めて自己紹介を。私は冒険者ギルド、スタトル支部所属の受付嬢をしております、マユナと申します。以後、よろしくお願いします。」
「あ、はい!屍人、マミーのコカゲです。よろしくお願いします。」
慌ててこちらも名乗り頭を下げる。
「はい、お願いしますね。それで、これからは積極的に、との事でしたが、なにか依頼を受けに来られたのですか?」
「あ、はい、ああでも、その前に常設依頼とかを済ませたいなーと」
「ああ、持ち込みですね。では、ちょっと待ってくださいね……んー、今手隙の者がいないようですね。私で宜しければお受け取りしますが。」
「あ、じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「はい!では、こちらへどうぞ。」
マユナさんの後について一度ギルドの外へ。裏手にあった建物に入る。ここは倉庫かな?
「こちらでお出し頂けますか?査定は少々お時間を頂きまして、終了まで受付前でお待ちいただく事になりますが。」
ふむ、まあ、いつでもいいってディレスさん言ってたし大丈夫でしょ。
「はい、それでいいです。じゃあ出しますね。」
そう言って兎肉(一部干し肉みたいになってるのはご愛敬)、兎の刃歯、猪肉、猪の牙、狼肉、狼の爪、狼の牙、蛇肉、蛇の牙、毒腺、蝙蝠の牙、鼠の角に皮、鷹の爪、梟の爪、近森の主ことアースベアの熊肉、熊の爪にレアドロップぽい熊の掌、蜂の羽と針、それに《伐採》で集めた木材の端数、それと一定数を超えた骨たくさんを並べていく。
ピートくんの素材は……んー、なにかに使えるだろうしとっておこうかな?装備品は満千香さんのお店でいいかな。
あ、あと、ヒートウルフを眷属にしたはいいけど、正直使い道がないし、売っちゃってもいいのかな?まあ、そのへんはみんなと決めるかな。
「えっと、これで全部ですね。」
「……」
む、マユナさんが固まってる。少なすぎたかな?
「えっと、もしかして少なすぎでしたか?」
「え?はっ、いえ、そんなことはありませんよ!(しばらく来てないと思ったらずっと狩りをしていた……?一部はあの森の魔獣の素材だし……って、この木材この辺じゃ手に入らない木材じゃない!杖の素材にもそうだけど、何より弓に相性がいい素材がそこそこ……)」
んー、何やらブツブツ言ってるなぁ……やっぱり少なかったかな?それとも質が悪かった?ピートくんの素材は……足はいらないから出してもいいかな?
「あ、すいません。これも追加でお願いします。」
ピートくんの素材、【怪百足の節足】も出し、並べる。
「あ、はい、追加ですね、わかりま……んなぁっ!?」
え、なんかむっちゃ驚いてる。あ、虫苦手だったかな?
「こ、ここ、この足は一体何の……」
「え?えっと、ギガス・センチピートの……」
「……ちょ、こ、ここで待っていてください!」
「は、はい……」
怖いよマユナさん……
バタバタと走って行ってしまったマユナさん、うーん、なにかまずかったかな……?素材ならコーデリアたちも持ってるし別にいいかなって思ったんだけど……
少し待っているとバタバタと誰かが走ってくる音が聞こえる。もう一人誰かいるかな?
「お待たせしました!こちらがこのギルドのギルドマスターのワイフェさんです。」
ギルマス、だと……え、何かやらかした?
「お初にお目にかかる、私が紹介に与ったギルドマスター、ワイフェ・ルイドスだ。早速だが質問したい。ギガス・センチピートの節足だが、どのようにして手に入れた?」
この人ムチャクチャ怖いんだけど……しかもなんか圧が、圧が……
「ギルマス!コカゲさんが怯えてるじゃないですか!ただでさえ怖いんだからもう少しマイルドに!ごめんなさい、コカゲさん、別に悪いこととかではないんです。確認しないといけないことだったりなんで。」
「え、あ、えっと、倒したから、解体して剥ぎ取っただけですけど……」
「倒した……だと?」
ギロりと睨まれる。本当に、本当に怒ってないの?睨み殺されそうな程なんだけど!?
「ああもう、ギルマスじゃなくて代理を連れてくるべきでした……。えっと、ギガス・センチピートを倒したとのことですが、どこで、どのように倒したか、など詳細にお願いできますか?」
「あ、はい」
私は街の近くにある森でコーデリアとペアで狩りをしていたことから説明し、そこからピートくんと遭遇し戦闘したことを伝える。もちろん他にもメンバーがいたことを伝える。
「たったワンパーティで……」
「事実か?」
なんでさっきから疑われてるんだろう……だんだん面倒くさくなってきた……怖いのは変わらないけど。
「嘘言ってどうなるんですか……さっきから何を疑われてるのかわからないですけど、私はさっさと査定を終わらせて欲しいんですけど……」
「それはなにかやましいことがあるから焦っているのか?」
「……はぁ?」
「ちょ、ギルマス!」
なんかすごい言いがかりを言われてる気がするぞ?これはあれか、試されてるのか?それとも単純に疑われてるのか?
「はっきり言おう。私は君を信用していない。」
えー、なんかすっごい疑われてるんだけど……
「もっと言うならば君たち異界の旅人たちを、だな。」
いや知らないし
「そもそも近森の奥にいたギガス・センチピートは、ここ数年新人の冒険者どころか、それなりに経験を積んだ冒険者や傭兵にかなりの損害を出していた。それを新人冒険者がワンパーティで倒した?強い冒険者が倒した後に隙をつい手素材を奪った、もしくは……」
「ぎ、ギルマス!それは言い過ぎですし疑いすぎです!これでコカゲさんたちが実際に倒していた場合はどうするんですか!」
「その時は謝罪をするし、ギルドランクもあげよう。実際、ギガス・センチピートを倒す実力があるならランクも上がるだろう。」
なんか、うーん、私関係ないところで話が進んでいるんだけど……
「えっと、そろそろ、いいですかね?」
「なんだ?自白でもするつもりになったか?それともまだ自分が倒したと言い張るのか?」
「……はぁ。えーっと。」
「何を言い淀んでいるんだ?やはり横取りでも……「もういいや」……何?」
「えーっと、マユナさん、素材返してもらいますね。お金もいいです。」
「え、あ、は、はい……」
「あー、ワイフェさんでしたっけ?まあ名前はいいや。」
「……なんだ?」
「ギルドランクとか謝罪とかもうどうでもいいんですけど、ちょっと戦いません?」
「何を言って……」
「ちょ、コカゲさん!?な、何を言って……!」
「いやもうなんか面倒で。あ、マユナさんはだいじょうぶですから。」
疑うならまあ、実力でねじ伏せればいいでしょ。
「えーっと、どっか、人に見られない場所で戦いたいんですよね。あんたがさっきから疑うから、実力を見せつけようかなーって。」
「君一人の実力を見せられても意味が無い。君はパーティで戦った、ならばパーティ全員に疑いがかかる。当然だろう?」
「あー、私パーティ内じゃ一番レベルも低いし、弱いんで。私があんたに勝てたらまあ問題ないんじゃないの?」
「……ふん、身の程を知らないようだな……ギルドマスターになる者は戦闘にも長けていなければならない。この街の冒険者最強であるこの私に、戦いを挑むと。」
「最強とか知らんし。」
さて、実力を見せるならやっぱり今回はピートくんの出番、かな。
「さて、勝ったらどうしてくれようか?」
まったく、素材売りたいだけなのに……
------------------------------
【sideマユナ】
あんまりギルドを利用なさらない新人冒険者のコカゲさんが久々に来て下さり、大量の素材を持ってきたのにも驚いたが、それ以上に驚いたのが、長年このファステの街の冒険者の悩みの種だったギガス・センチピートの素材を持ってきたことだ。
ギガス・センチピートは高い防御力に耐久力、そして中級以上の魔法を操るだけの戦闘能力を持っている。何よりかなりの大きさを持ち、脅威度、危険度だけならC以上の魔獣だ。
そして恐らくだけど、近森の奥にいるギガス・センチピートは、称号を持っている。
称号は簡単に手に入らない分、一つあるだけで英雄譚に語られるような能力を得ることすら可能との噂だ。
そんな称号を持つ魔獣は、ランクAに限りなく近い実力を持つギルマスが3パーティを引き連れての討伐でも勝てないほどだ、私も流石に新人冒険者であるコカゲさんが、いくらフルパーティでも倒せるとは思えない。
だけどコカゲさんは倒したという。これでも受付嬢としてそれなりに長いこと働いている。嘘をついているかどうかの見分けは付く。
そう、嘘は一切言っていないのだ。
ギルマスもそれには気づいている。しかし討伐戦で仲間を二人失っているせいでか、少し理性的ではないように見える。何度か口を挟むも態度は変わらない。なんでこんな時に代理はいないのよ……
「もういいや」
コカゲさんがそう言うと雰囲気が一変する。
なんと言うか、近寄り難いというか、少し寒気がするような。レベルは決して高くはないはず。どうやってもコカゲさんは強そうに見えない。にもかかわらず、何故か、今は怖く感じる。
そして恐ろしい事にギルマスに対し勝負を申し込むという。
「さて、勝ったらどうしてくれようか?」
……この自信は一体どこから来るんだろうか……
コカゲさんの希望もあって、ギルド内部にある試験用に用意された訓練場へと向かう。結界の魔道具を使い、どんな攻撃でも建物の外に影響が出ないようにする。まあ、限度はありますが……
ついでに人払いも済ませる。これで準備はいい、のかな?
「本当に誰も来ないの?外に影響は?」
コカゲさんが念押ししてくる。それに煩わしそうに返事をするギルマス。傍目から見てもかなりイライラしているのが見て取れる。ただ、それ以上にコカゲさんの怒気がすごい。別に怖い顔とかではないのに怒ってるのがわかるのが逆に怖い……
「さ、もう確認はいいだろう?それじゃあ、始めよう。」
ギルマスが大剣を構えて、スタートを切る。一気に終わらせる気だ……!
「……--」
不意に、耳に何かを囁く声が聞こえたかと思えば
ギィィイュゥイィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!
目の前に【災害】が顕現した。
誤字脱字等ございましたらご報告お願いします。
また、感想、質問はいつでも受け付けていますのでどんどんどうぞです!