眷属を求めて《前編》
苦手な人もいるかもしれませんが、虫系が出ます。作者の描写不足でそこまで気持ち悪くはないかもですが……
《気配遮断》で兎の背後から掴みかかり《毒爪》《引っ掻き》《呪い》《瘴気》《乾燥》を発動、または効果範囲に入れる。
「ギュッ……」
短い悲鳴をあげ、一瞬で毒に侵され呪いにかかり、からっからになる兎。
「……やってることがえげつない……」
死体が残る、そして鑑定がなければ状態の把握が難しいgloにおいて、毒に侵された敵は顔色が悪くなったり、体毛や体色が変化する。乾燥すればそれこそよく見るミイラのようにカラカラになる。
何が言いたいかといえば、毒々しい色をした水分の飛んだ兎の死体を鷲掴みしているのである。精神衛生上たいへん宜しくない絵面である。
「でもこうやるといろんなスキルのレベルアップもするし、何よりうさぎとの戦闘がすっごい楽なんだよね……」
レベルが上がったおかげで《気配遮断》が兎たちに猛威を振るっていた。
ちなみに現在のコカゲのステータスはこんな感じだ。
Playername《Kokage》性別 ♀ 種族 マミー 職業《縛霊術師》種族Lv10 職業レベル6
HP (ヒットポイント) 224(+8) [232]
MP (マジックポイント) 190(+7) [197](+27)(+27)
SP (スタミナ) 98(+6) [104]
STR (筋力) 81(+6) [87]
VIT (生命力) 126(+2) [128]
SIZ (体格) 17 [17]
DEX (器用さ) 69(+3)(+2) [74]
AGI (速力) 65(+3) [68]
REA (反応速度) 55(+2) [57]
INT (知力) 99(+2)(+2) [103]
MND (精神力) 91(+2)(+1) [94]
CON (集中力) 68(+2)(+2) [72]
SEN (五感)
·視覚 46(+2) [48]
·聴覚 41(+1) [42]
·嗅覚 31(+1) [32]
·味覚 46(+2) [48]
·触覚 50(+3) [53]
APP (魅力値) 61 [61]
LUC (幸運) 13(+1) [14]
KAR (カルマ値) -78 (-4)(-3)[-85](MAX500〜-500)
ATK 9
DEF 15
MATK 10 (MP消費5の場合)
MDEF 17
CRI 9%
・職業スキル
《死霊使役》Lv3《死霊召喚》Lv2《死霊創造》Lv3
《死霊強化》Lv3《屍操作術》Lv2《杖適性》Lv4
·種族バッドスキル
《火属性弱点》Lv無《光属性弱点》Lv無《斬撃被ダメージ増加》Lv無
《回復魔法ダメージ化》Lv7
《神聖域内常時ステータス大低下》Lv無
《屍人》Lv7《死霊》Lv5《印象値低下》Lv無《飢餓状態》Lv無《渇水状態》Lv無
·種族グッドスキル
《乾燥ダメージ無効》Lv無《水属性耐性》Lv3《夜目》Lv7《乾燥域内ステータス微上昇》Lv2《日光下行動可能》Lv10(MAX)《呼吸不要》Lv無《睡眠不要》Lv無《精神攻撃耐性》Lv3《痛覚鈍化》Lv4《生命感知》Lv5
・初期選択スキル
《闇魔法適性》Lv2《土魔法適性》Lv2
《引っ掻き》Lv3《噛み付き》Lv1《吸収回復》Lv3《呪い》Lv3《杖術》Lv4《毒爪》Lv3
《布装備作成》Lv1《木工》Lv1《眷属化》Lv1《気配遮断》Lv2《瘴気》Lv2《乾燥》Lv2
・控えスキル
《研究》
所持スキルポイント12
・習得魔法
·最下級土魔法 《ストーンバレット》《サンドダスト》《ストーンボム》
《サンドウォール》
·最下級闇魔法 《ダークショット》《ブラックミスト》《ダークボール》
《ブラックウォール》
・装備
·weapon
・【暗石の魔術杖+4】magicrod耐久値90/90 重量5
ATK +12(+4)
MATK +10(+2)
装備制限 MND65以上
《闇属性補助·弱》《MP上限上昇·小》《魔法攻撃力上昇·微》
·protection
・【土染めの布+8】underwear耐久値60/60 重量1
DEF +6(+8)
装備制限 種族·マミー系
《火属性ダメージ軽減·極微》
・【灰の包帯+10】tops,bottoms耐久値60/60 重量1
DEF +6(+10)
MDEF +8(+8)
装備制限 種族·マミー系
《火属性ダメージ軽減·微》《MP上限上昇·小》
・【暗がりのローブ+8】outerwear耐久値100/100 重量2
DEF +8(+8)
MDEF +12(+6)
《闇属性魔法強化·小》《夜間隠蔽効果·中》
・習得アーツ、魔法
《死霊操作·攻》《死霊操作·防》《サモニング·レイス》《レッサー·アンデットクリエイト》《屍操作·動》《杖術·払い》《杖術·振り下ろし》《眷属化·極低》
・新取得 《杖術・構え》『物見』《杖術・構え》『門』
《棒術・弾き》
【サモニング(アンデット限定)】【レッサー・アンデットクリエイト(最下位から中位まで)】
・創造、召喚リスト
【レッサーレイス】【レッサーゴースト】【レッサーワイト】
【レッサーミスト】【レイス】
・創造可能数
3
・召喚可能数
2
耐久の高い魔法職、って感じの成長だ。スキルはちょっとおかしいけど。
《眷属化》は結局4回使ってみて一回も成功していない。全くどうなるのかわからないし、早いところ眷属が欲しい。
「……ちょっと、奥の敵で試してみるかな?」
かれこれ5時間近く兎を狩っているけれど、レベルも上がりにくくなってるし、何より戦闘じゃなくて作業になっちゃってるのがいけない。気分転換に一度街に戻って休憩して、その後森に行こう。
「よーし、そうと決まれば早速っと」
ドロップしたアイテムを確認したあと、そのへんに敵がいないかを確認し帰る。《生命感知》で確認しつつ、小走りに。
途中何匹かの兎に遭遇するも逃げられるのでスルーした以外は特に何事もなく帰還。冒険者ギルドの常設依頼やその場で依頼を受けてアイテムを渡し依頼達成の報酬を受け取る。
「またのご利用をお待ちしております!」
元気のいい声で送り出してくれる受付嬢の皆さん。改めて考えると、NPCだとは思えないほど感情豊かで、まるで生きているようだ。
……今度からもうちょっと愛想良くしよう。
溜まったお金でいくつかの消耗品を補充し、細々したことを終わらせ、一旦拠点がわりの宿に戻る。よくよく考えると朝帰りで迷惑かけたかも、などと思いつつ、そこで一旦ログアウトし、家族と食事をとる。
「お姉ちゃんは今何してるの?」
「今はスキルのレベルアップかな。スキルポイントも集めておきたいし、あと、眷属が欲しいんだよね。」
「眷属、ってなに?」
「うん、私のスキルで作れるんだけど、成功率低い上に、成功しないと熟練度貰えないっぽいんだよね。だから、この後は森で試そうかなーって。」
「そんなことも出来るんだね。あ、私もついて行ってもいい?」
「お、ほんとー?じゃあ、私草原入口で待ってるね。」
「わかった、草原入口ならすぐかな、ちょっと待っててね。」
「はーい」
そして、食事を終え、お風呂に入って、など身の回りのことを済ませ、再びログイン。
ログアウトした宿屋を出ようとすると、宿のおばちゃんが話しかけてくる。
「おや、出かけるのかい?」
「あ、はい、食後の運動ってやつですよ。ちょっと森で狩りをしてきます。」
「そうかい?無理はするんじゃないよ?」
「大丈夫ですよ、妹も一緒に行きますし。」
「ああ、二人でなら、大丈夫、かねぇ?とにかく、程々に、ね?」
「はーい、ありがとうね、おばちゃん」
宿のおばちゃんに挨拶を終えて早速森へと向かう。
「しっかし、おばちゃんも心配性だなぁ。私たちは死んでも神殿にリスポーンするだけなのに。」
このゲーム、gloでは、プレイヤーは死亡しても蘇り、NPCは死亡した時点で復活、蘇生は原則として基本的にできない仕様である。しかし、コカゲはゲームを始めたばかりの上、ここをゲームだと割り切ってプレイしている。その微妙な考えの違いがNPC達とのすれ違いに繋がっていた。
そして、NPCとプレイヤー間での不仲が増え、少しづつ険悪な関係、良くない雰囲気を作っていた。
まあもっとも、コカゲはそれに気づいていないが。
草原入口で待つこと5分、コーデリアが到着。
「お待たせ、お姉ちゃん」
「いいよいいよー、じゃ、森へ行こうか」
二人で草原を突っ切って行く。途中兎を見つけてもスルーする。40分ほどかけて目的の森へと到着する。
「さすが森……《生命感知》に引っかかりまくりだよ……」
「私の《感知》は攻撃する意思がないと反応しないから……お姉ちゃん索敵はお願い。」
「りょーかい、と言っても、片っ端から狩ってもいいくらいなんだけどね。」
森の中をゆっくりとしたペースで回っていく。というよりも出会った端から敵を狩っていく。
「コーデリアがいるとやっぱり安定するなぁ。」
「私としては魔法職のお姉ちゃんが素手で掴んでいくのが理解できないんだけど……何より掴んだ側から大体のモンスターが干からびてるのが怖い……」
「そういうスキル構成だしねぇ。お、右からくるよ。」
「わかった」
コーデリアが右側に盾を向ける。とほぼ同時に大きな蛇が襲いかかってくる。草原と森は出てくる的はほとんど同じのため、今襲ってきたのはラージスネーク。ラージスネークは80センチほどの大型の蛇で、そのくせ隠密のレベルが高めな奇襲型。序盤でもっとも苦戦する敵じゃないだろうか?
「まあ、関係ないけどね。」
コーデリアの盾に自慢の牙を阻まれた蛇は舌を出し鋭く啼いて威嚇してくる。
「キシャァァッ!」
「《シールドバッシュ》!」
コーデリアが盾で蛇の頭を殴る。怯んだ隙に杖を上段に構え振り下ろす。
「そいっ!」
ゴリッという硬質な音の反面、微妙なやわらかさというか、変な違和感を杖越しに感じる。
「アーツじゃなきゃ流石に一撃じゃ無理か」
体の中当たりが歪に潰れているが、まだ問題なく動ける蛇が私に飛びかかってくる。
「させない!《カウンターブッシュ》!」
「ジャァァァッ!?」
完璧なタイミングでカウンターをくらった蛇が動かなくなる。
「流石だねー、カウンターなんて、怖くてできないよ。」
「いや、今の蛇を掴む気満々のお姉ちゃんの方が怖いよ……」
だって掴むの楽だしスキルレベルも上がるしいいことだらけなんだもん。
そんなこともありつつ、《眷属化》を試しつつ進んでいく。進んでいくんだけど……
「成功、しないね……」
「しないねー……」
《眷属化》が一切成功しない。成功率10%とはなんだったのかという程に成功しない。ちなみに何度も《眷属化》が使えているのは《眷属化》のクールタイムが同一個体に対して、のクールタイムだったからだ。
普通スキルやアーツにはクールタイムという、使用出来ない時間が設けられている。しかし、《眷属化》は対象選択式のスキルで、多分裏技的な使い方なんだと思う。
で、何回も使っているのにも関わらず、スキルレベルが一切上がらない。成功しないといけないんだろう……
「時間も時間だし、最後に奥行って帰ろっか?」
「ん、お姉ちゃんがそれでいいならいいよ」
「じゃあ、それで」
まだ行ったことのない森の奥……深層?へ二人で向かう。なんでも、森の中層までは草原のモンスターと同じらしく、深層からはそれに追加で蜘蛛、などの虫系モンスターが出るらしい。また、夜になるとアンデット系のモンスターが出てくるらしい。
「早速反応あり!ええっと……真下?」
「え、真下?」
「なんか、そう表示さr」
「ピギャァァァッッ!!」
「きゃあああ!?」
「ぎゃあああ!!」
ででで、でっかいムカデぇ!?
え、やばい、キモイキモイ!リアリティある造形で3メートル越えのムカデとかありえないんだけど!?
「お姉ちゃん!《鑑定》が効かない!」
「えっ!てことは格上!?」
《鑑定》は自分のレベルと同じかそれ以下のレベル、グレード、強さのものしか鑑定できない。つまり、鑑定が失敗した場合、それは……
【????????】LV?? 種族·怪蟲 フィールドボス
コーデリアの情報ではレベルは2桁、コーデリアのレベルが合計19なのを考えれば、目の前のムカデはレベルが25以上ってことになる。
そして何より……
「フィールドボスって何よー!」
「エリアボスより弱いけど通常mobの何倍も強いレアモンスターだよ!」
「それは知ってる!なんでそれがこんな所に!」
フィールドボスは特定の条件をクリアした場合のみ現れる特殊なmobで、私たちのような一般のプレイヤーが遭遇するようなmobじゃないのに……
「とにかく、お姉ちゃんは魔法で援護を!私が守るから!」
「わ、わかった!《ブラックミスト》!からの《ダークショット》!」
「ギュイィィィッ!」
「お、な、なんか結構効いてるよ!」
「コーデリア、前、前!」
「えっ」
「キィィィィッ!!」
「きゃあっ!?」
「コーデリア!」
こっちに振り返った隙を疲れ、吹っ飛ばされるコーデリア。あ、気絶か麻痺か、とにかく動けなくなってるっぽい。
「……ピンチじゃん……」
私は杖を握り直し、しっかりとムカデを見る。
……き、気持ち悪い……
ムカデは魔法を警戒してるのか、カサカサと微かな足音を立てながらゆっくりと私の周りを動いている。体がうねる度にキチキチと甲高い音が響き、枝や木がバキバキと折られていく。
「ギ、ギ、ギュィイイイイ!!!」
「ぎゃああくるなぁっ!」
突っ込んでくる巨大ムカデを反射的に杖で殴る。が
「ぐ、っふぁあっ!?」
か、かったぁ……!?いや、硬すぎ!そしてめっちゃ……でもないけど、痛い。麻痺とかにはならなかったからいいけど……
うっわ、HP半分以上持ってかれてるし。
コーデリアはまだ起きてないし……覚悟を決めるか。
「虫は嫌いだけど……」
一撃離脱を貫く巨大ムカデに牽制の魔法を放つ。
「《ブラックウォール》!」
「ギュッ!?」
ムカデの前に黒い壁を作る。物理的な防御能力はほとんどないが、完全に視界を奪う意味ではうってつけだ。《気配遮断》を意識しつつ、音を立てないようにゆっくりとムカデに近寄る。そして
「よっと、ふむ、大きいから十分乗れるね」
ムカデの背中にしがみつく。
「ピギャァァァッッ!!」
あ、まずい。こいつコーデリアの方向いた。
「こっちだよ!《杖術・振り下ろし》!」
がぃぃんと金属を叩いたような鈍い音が響く。ダメージを与えられた気がしないんだけど……
でもムカデの意識は背中の私に向いたっぽい。
「もう一回 《ブラックミスト》!ついでに《サンドミスト》!」
これで命中率がそこそこ下がるはず。後、触ったそばから《呪い》《毒爪》《瘴気》《吸収回復》《引っ掻き》を発動させる。
回復量すごいんだけど!?10秒くらいでHP満タンになった。あ、でもムカデ全然ダメージ受けてる感じがしない。
「魔法が効いてたよね……《ダークボール》!」
「ピ、ピッギィィアアアアア!!?」
「うわ、すっごい効いてる……ってきゃああっ!」
痛みからのたうったムカデに振り落とされる。
「あいっててて……でも、魔法が効くならどうとでもなる!」
「ご、ごめんお姉ちゃん、今起きた!」
「大丈夫!?動ける?」
「うん、行ける!不意打ちでもろに受けたから気絶したけど、次はやられないよ!」
「それじゃあ守りはお願い!」
「任された!」
ずるり、と這いながらかなりの速度で突っ込んでくる。牙がガチガチなっていてキモイし怖い。でも
「《ディフェンシブ・シールド》!」
コーデリアの盾の周りに一回り大きな半透明の膜のようなものが広がり、巨大ムカデの突進を受け止める。
「ぐぅぅぅッ!」
「ギュアァァアアアアア!!」
そして、その間に私は《死霊創造》を発動させ、憑依させていく。憑依は創造可能数と同じ数まで。つまり3体の死霊を憑依させることが出来る。【レッサーレイス】【レッサーゴースト】2体を憑依し、さらに【レッサーワイト】2体【レッサーレイス】を創造し魔法の準備をしておく。
そして
「ギュィァア!?」
「今だよ!」
「《死霊操作・攻》!からの《ダークボール》!」
私と死霊たちと同時に闇魔法を放つ。
「ギュィィィイ!?」
「いいよお姉ちゃん!もう一回行ける?」
「MPきついからあいつの吸ってくる!」
「え、お姉ちゃん!?」
駆け出し、ひるんでいるムカデの背中にまた掴まる。
お、毒ったっぽい。呪いも効いてるみたい。
「《吸収回復》のおかげでMPはたんまり、ね!《死霊操作・攻》!《ダークボール》!」
「全くお姉ちゃんったら!《ファイヤーボール》!」
死霊たちの闇魔法、私の闇魔法、、そしてコーデリアの火魔法が命中する。
「ギュイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
「うわ、ちょ、きゃあああっ!?」
またも振り落とされる。というかムカデが尋常じゃないくらい暴れてる。
「ま、まだなの?いい加減にして欲しいんだけど……」
「ようやく3分の1削れただけだよ……魔法が良く効くけど、下級だけだとね……」
全くどうすればいいのよ……誰かに応援を呼ぶにしても知り合いはねねねね!かこひこひぐらいだし……
《後編へ続く》
誤字脱字等あったらご報告お願い致します。後編は明日投稿できるように頑張りたいと思います。