ギルドを作……りたかった
少し短いです。ギルドについての説明は活動報告に記載している部分がありますので読んでいただけると幸いです。
ログインした瞬間、猛烈な空腹と喉が引き攣るような渇きを覚えた。
「うぐ、お腹いっぱいだと理解してるのに何故か空腹感も感じる……違和感すごいなぁ……」
スキルの効果によって矛盾した感覚に少しげんなりする。
現在、現実では十三時、こっちでは既に十九時時を回っており、街の中は明かりが灯ってこそいるが、すぐ外の草原は真っ暗になっていた。
「ふむ、こず……コーデリアはすぐ来るし、2人もすぐにくるだろうけど……これからどうするかな?」
流石にこの暗い中、ゲームに慣れきってないのに狩りに行くのも少し怖い。
「ドロップの整理なんかも終わらせてるし……することあるかな?」
少しの間そうやって考えるとねねねね!からメールが届いていたことに気がつく。
「あれ、何だろう?えっとー……」
『空腹度がやばかったから飯買ってくる。みんなはそこに居てていいから。』
「あ、そっか、みんなはちゃんとご飯食べないとなんだよね。」
私はアンデットな上スキルの関係で空腹度はあってないようなものだ。スキルをとったりすれば改善されるのかもだけど。
それからすぐにねねねね!とコーデリアと合流し、数分後にこひこひも集合し、これからどうするかを話し合う。
「わたしはホームとか、みんなで使えるマイホームを買ったり、土地が欲しいな〜」
「なんでまた土地?」
「《調薬》のスキルのあるし、みんなそれぞれ生産スキルもあるから、工房みたいなのが欲しいな〜、って。薬草なんかを自分の畑で育てるのとか楽しそうだし〜」
「あー、そうだなぁ……何気に私以外は生産系とってるんだよなぁ。」
「ねねは生産取らなかったのはなんで?」
「不器用だから、あとは、戦闘メインでやるつもりだったから、かな。あとこひこひ、お前畑やりたいっていうけど金どうするの?《農業》スキルも必要だし?」
「あ、そういえばそうだったね……うー、でも、スキルポイントで《農業》取れば!」
「まあ、本人がそれでいいならいいけどね。しかしホームはたしかに欲しいね。宿屋は質で値段全然違うし……でもマイホームや個人工房、商店はバカ高いし、土地だけだと設計、建設は個人でやらないとだぞ?」
「うっ……お金、たしかに……」
「最低ランクのマイホームで100万、一番いいヤツは5千万だったな、払えないでしょ?それに最低ランクは一パーティ以上は入れない上工房なんかは設置できないじゃん。」
「……う〜」
マイホームってそんな値段するんだ、あれ?じゃあ寝る場所とかどうするんだろう?
「寝るなら宿かテント、特定のセーフティエリアだね。自分の出身領には簡易マイホームがあるけど、一人しか入れない上に狭いんだよ。」
簡易ホームだと……?私はすぐ砂漠だったけど?
「あ、アンデットは基本出身した土地がホーム扱いだからホームはない代わりに出身領の最初の街だったらどこでも寝るだけならできるよ。」
ホームレスじゃん
ホームレスじゃん!
「アンデットの不遇さが辛い……」
「まあ、金さえあればホームは買えるし、宿にも泊まれるから。ゾンビみたいに匂いがやばいやつは拒否られるけど。」
「なるほど、私が最初にいたあの部屋が簡易ホームですか。たしかに一人部屋って感じでしたね。」
「しかしこれは本格的にホームが欲しいな。コカゲが倒れる度に野宿になっちゃう。」
「いや、この街をリスポーンポイントにすればいいからそれはないけど……」
でもたしかに、みんなで一緒に過ごせるホームがあると楽しいかもしれない。これから先仲のいい人ができたら招待したりされたりっていうのも楽しそうだ。
「私もほしいな、あ、そういえばギルド建てたりってどうなの?そういうのって専用のホームが貰えたりするじゃん。」
別のゲームだけど、ギルドを作れば無条件で家がもらえ、アップグレードを繰り返して行けば居住できる人数も増えていっていた。
「ギルド、ギルドか、ふーむ。なるほど悪くないかも……」
お、ねねねね!は意外と乗り気っぽい。
「ギルド、いいね〜!私も賛成だよ〜」
こひこひも賛成らしく、すでにギルドについて考えているようだ。
「ギルド……人が沢山なのはちょっと大変そうですけど、面白いかもですね。」
コーデリアも賛成、全員ギルドを作るということで決まっていた。
「よーし、それじゃあギルド作成に必要な情報やお金についてなんか調べようか。目処が立ったりしたらそのまま行動開始で。私とコカゲ、コーデリアとこひこひの二手に別れようか。」
「「「はーい」」」
ねねねね!と連れ立って情報収集を始める。と言ってもこっちはねねねね!の知り合いを当たりつつ掲示板やらをチェックしていくだけである。こひこひとコーデリアはギルドなどの面から情報を集めている。
情報通の知り合いがいるらしく、その人を尋ねるそうだ。
「その人ってどんな人なの?」
「んー、あー……うざい奴?めんどくさいやつ……メガネ?」
「とりあえずなんか面倒くさそうってことは伝わった。」
メガネってなんだメガネって
「現実とこっちでも変わらない容姿でプレイしてるだけでもまあ変わってるけど、本当に一切いじってない珍しいタイプ。情報収集能力は高いし行動力もある。けどそれ以上にうざい。あれは本当にうざい。」
ねねがここまでウザイって言うってことはよっぽどなのかな?
「特徴っていうか見た目は金髪黒目でかなりの美形。そしてそれを台無しにする瓶底丸眼鏡をかけてる。しかも伊達だ。あといっつもスーツだ。現実でもそうだった。ワイシャツは第一ボタンまできっちりしめてた。」
かっこいいんだ、ちょっと興味あるかも
「性格は明るく人当たりがいい……といえば聞こえはいいけど、含みのある言い回しが嫌味ったらしく聞こえるししつこいし仕草は芝居がかっていて鬱陶しい。まあ、自己紹介でわかると思うわ。」
芝居がかってる……ロールプレイとか?
「ちなみに現実でも変わんない。あれはもう習慣づいてるか素かどっちかだと思う。」
現実でも同じって……実際に見てないからなんとも言えないけど、面倒くさそう。
「さて、約束の場所だけど、どこにいるかな?」
「金髪は目立たないけどスーツなら目立ちそうだね。」
というかこっちでスーツって、なんか雰囲気がなぁ……
「大陸によってはスーツが装備としてある場所もあるらしいよ。そいつが言うにはレアドロップだったって。」
「へぇー、そういうドロップもあるんだー」
「ええ、防御力も然ることながら速度、器用さ、精神力、集中力が3%上昇、さらにいくつかの特別なスキルが付与されています!私の職業との相性もよくβテストで入手することが出来てとても運がいいと思います。」
「えっ?」
「あー、久しぶりっす、よどさん」
「イヤー、お久しぶりでございます!ねねねね!さん。あと、よどではなく淀屋橋でございます。おや?そちらの女性は初めましてでございましたね。私の淀屋橋、と申します!以後お見知りおきを!」
声の方を向けば、ねねに対し軽く会釈をし、その後こちらに向き直ればニコリと笑みを浮かべ、アニメに出てくるような執事のように腕を前にし、ゆっくりと腰を折り深々と礼をした。
「え、えっと……」
……正直予想してた以上の美形だが……それがあいまってよけいに、こう、うざい。
「こちら名刺でございます、なにか知りたい情報や噂がお知りになりたかったらいつでもご連絡を」
「は、はぁ……あ、ありがとうございます……?」
視界の端で苦笑してるねねに助けを求める。
「よどさん、とりあえず落ち着け、色々お前は面倒なんだから。とりあえず、この子は私のリア友のコカゲだ。情報料はエールでいいか?」
「淀屋橋ですよ。コカゲさんですね。よろしくお願い致します。情報料は、そうですねぇ……そちらのパーティメンバーの種族や職業、スキルの情報が欲しいところですが……今回はギルド設立に必要な条件などでしたよね、ふーむ……」
何やら思案顔の淀屋橋さん、って、あれ?なんかこっち見てる?
「ふむ、そちらのコカゲさんの職業とねねねね!さんの職業を教えてもらいましょうか。あなた方のパーティは色々噂になってますし、コカゲさんはアンデットを選んだプレイヤーから応援されているある意味人気プレイヤーですから。」
応援?なんのことだろう?
「あー、まあ、たしかに私らはもう有名だな。PKもあったし。何よりレア種族だしな。」
あー、あのテスターさんに襲われた時か。そりゃ有名というか噂にもなるか
「んー、まあ、だったら私のはOKだ。コカゲもそれでいいか?」
「別にいいよ?と言うかこういうのが情報料でいいの?」
「はい、私はジャーナリストで、それでいて情報屋もしていますから。もちろん言いふらす訳ではありません。正当な情報料や同等の情報をいただけば情報は売りますし、情報を売っていただければお代を支払いますからね。」
つまり私たちの情報が売り買いされるわけか……なんか怖いけど……まあ、職業ぐらい全然いいか
私とねねねね!の職業、それとねねが自分の持つスキルの一つを教えた。これくらいなら痛くも痒くないらしいが、PVPなんかではこういうところで崩されるかもだからあまりやりたくは無いとのことだ。
「それじゃ今度はそっちの番、ギルド作成のために必要なのは何?」
「いくつか有りますので順を追ってから説明しましょう。」
オープンテラスのカフェで飲み物を注文した淀屋橋さんはテーブルの上でなにかをすると席についてと促してくる。
「さて、ギルドの情報ですね。まずはですね、ギルド作成のためにはまず最低でも6名は必要です。」
む、この時点で今のままじゃ私たちには無理だ、勧誘でもしてメンバーを増やさないと。
「次の情報ですが、こちらは未確定、ということを先に言っておきます。最初のイベントとして二週間後、ギルド設立イベントが企画されているらしいです。二週間あったらまあ次の街や早ければさらに進んでいるプレイヤーもいるでしょうからそういうの込みの時間調整でしょうかね?」
早速イベントが予定されてるんだ。ギルドを作るためのイベントってどんなイベントだろう?
「イベント内容は不明ですが、個人で収集した情報ではギルドを強化するアイテムなどが報酬として用意されているらしいです。で、三つ目の条件ですがホームもしくは土地を購入しておくことです。土地ならば広さに応じたグレードの建物が与えられるそうです。まあ、これも未確定ですが。」
「お前さんの未確定は『確定』と同義だろうに。しかしそれが本当なら大体のプレイヤーはギルド作れないんじゃないか?」
「そうでもないんですよね。このゲーム、意外と土地は入手しやすいんですよ。なんせ大陸が沢山ありますからね。逆にホームの方が金額が高くて手が出ないプレイヤーが多いと思いますよ。あと、専用のアイテムを入手できればフィールドの一部を拠点に出来るアイテムもあります。まあ最低ランクのホームからのスタートですが。」
「あー、あのアイテムか……あれって第三の街に行かなきゃ手に入んないじゃん。間に合いそうにないんだけど。」
「それこそ、そんなことはない、と思いますね。少なくとも街に行くだけならその気になれば余裕でしょうに。」
「残念ながら条件満たしてない。β時代のままならね。それよりもまずはメンバーの募集だな……伝手がないぞ……あいつらどうせソロだし生産で組むだろうし……テスター連中はもう徒党組んでるだろうし…」
私に至ってはこっちにいる知り合いなんて把握してない。メンバーどうしようか……
「メンバー探し、ですか?だったら10日後の一般公開を待つか掲示板で勧誘をかけるか、でしょうね。まあ、幾人か候補はいますから、紹介しましょうか?紹介料はいただきますが。」
「お前の紹介とか怖いんだけど……」
「失礼ですね……現実での明後日でよければ紹介できますが。どうしましょうか?」
「……んー、まあ、紹介は受けるよ。何人紹介できるの?」
「確実に、と約束できるのは2人ですね。1人はゲーム経験者でそれなり、と言ったところでしょうか?もうひとりは完全初心者ですね。始めたはいいが知り合いとかいなくて困っていましたね。どちらもリアルの知人ですが、まあ、前者はそれなりに仲がいいですが女性におすすめはしませんねぇ。もうひとりは女性ですが、競争率が高そうです。」
ふむ、私ここにいらないんじゃ……
「後者の方を紹介して。男性は作ろうとしてるギルド的に敬遠したい。」
「女性限定ギルドですか?」
「そうなる可能性が高いからね。とりあえず今は女性のみ応募かな。そういえば、抽選公開での参加プレイヤーってなんにんだっけ?」
「抽選では千人、一般公開は5千本の販売が予定されていましたね。第二販売は三ヶ月後のはずです。」
「ふむ、テスト時より少なめ、かな?まあ、千人いればあぶれた初心者とかいてもおかしくないか……」
適当にお茶を飲むけど、飲んだそばから喉が渇いていく……結構きついなぁ。
「後、土地だけどおすすめとかある?どうせもう各大陸の第二の街の情報くらい集めてるんでしょ?」
「おすすめ、となりますと……ふーむ。」
スーツの胸ポケットからノートを取り出しパラパラとめくっている。ある程度進めたところでめくるのをやめる。
「そうですねぇ。街ならやっぱりこの大陸でしょうか。第三の街に置くことをおすすめします。フィールドを含む場合は正直どこでも、としか。というのも、この大陸は基本プレイヤーが集まりますし、第三の街はまず目指す場所ですからね。」
スキル欄をチェックしたり、アイテムを見て暇を潰す。そうだ、新しいスキルとかどうしようかな……魂の粉って、序盤じゃいいお金だけど第三の街以降ではもっと換金率の高いドロップが増えるらしいし。やっぱりアンデット強化のスキルがいいかな?生産補助のスキルをとってサブに回して、戦闘ではもっと強気な構成でもいいかも
「フーム、それじゃあとりあえずは新規プレイヤーも視野に入れつつだと……第二の街でかな……まあ、このへんは話し合ってからだね。」
あ、《研究》なんてスキルがある。なになに……所有するスキル、アイテム、使役mobなどの対象を各種最大一つ(レベルにより上限解放)選択して、そのスキルについて研究を行うことが出来る……?研究した結果でどうなるんだろう?なにか変わるのかな?ちょっと曖昧で地雷臭するけど……スキルポイントで取れなくはない……
「まあ、そこら辺の話し合いが終わったらご連絡ください。私はこれで失礼します。紹介料は当日にいただきますね。」
「おう、サンキューです。まぁ、なんかあったら頼るわ。」
「あ、ありがとうございました。」
そのまま一礼して帰っていく淀屋橋さん。ふーむ、言うほどうざくなかったような
「仕事が絡んでたから大人しかったけど……普通は今の百倍うざい。」
「そ、そうなんだ……あ」
「ん、どうした?」
急いで挨拶をしたせいか、誤ってスキル《研究》を取得してしまっていた。
……スキルポイント半分以上を消費して
「ぬぁぁぁ……」
「え、ほんとどうした?何かあったのか?ハッ!もしかして淀屋橋になにかされたのか!」
隣でねねがなにか言ってるが聞こえない。スキルポイントで取得できるスキルでの最低必要ポイントは5であり、今回取得した《研究》はポイントを15も消費する。……手持ちのポイントがあと3に……
私はしばらくショックでうなだれていたのだった。
誤字脱字等ありましたらご報告ください。ちなみに一日が長く書かれてる理由は初日だからです。もうしばらく初日が続きますが、それ以降は結構バッサリ行くのでご了承ください。