後悔
もしかして、もう、メールが届くことはないのか?
最後のメールが届いてから十日が経った。
『どうしたの? メール、待ってる』
僕は自分からメールを送った。
思えば、二度続けてこちらからメールを送るのは初めてのことだった。
いつも、返信を送ればまた次のメールが送られてきていた。
それはまるでキャッチボールのように、きちんと返ってくる。
僕は送られてくるメールに返信するだけでよかった。
見知らぬアドレスから送られてくる空の画像つきメールは、いつしか届いて当たり前の存在になっていたのだ。
それなのに、今回はいくら待っても返信はなかった。
何故?
僕には理由がわからなかった。相手の機嫌を損ねるようなことをしたのだろうか。
送信済みのメールを確認する。
最後のメールが送られてくる二日前に、僕はメールを送っていた。
が、そこには僕が料理に失敗したことについて書いてあるだけで、これが原因だとは到底思えない。
それ以前のメールも確認したけれど、どれもこれも些細なことばかりしか書いてない。メールの内容は関係ないのか。
だとしたら、いったい何故?
僕は焦った。
知っているのはメールのアドレスだけ。
写真に添えられる言葉から、相手は女性だろうと思われた。
けれど、わかるのはそれだけだ。
どこの誰なのか、なにをしているのか、どんな人なのか、それらのことはまったくわからなかった。
どうして前もって名前なり住んでいる場所なりを訊いておかなかったのか。せめて電話番号だけでも聞いておけば良かったのに。
――こんなことになる前に。
しかし後悔は先に立たず、僕は携帯を握りしめて呆然とするしかなかった。
やがて僕は我に返り、決意とともに携帯のフリップを開いた。
今、自分にできることはひとつしかなかった。
僕は、更にメールを送った。何度も、何度も。
相手に迷惑だろうとは思った。
思ったけれど、だからといってここで引き下がるわけにはいかなかった。
僕が送るこのメールはきっと届いているはずだ。
一言でもいい、言葉を返して欲しい。
僕は必死だった。




