表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空メール  作者: 凪市有李
10/11

空と彼女

 駅へと歩きながら、僕は携帯を開いた。


 何枚も、何枚も保存されている空の写真。

 季節とともに変わりゆくいくつもの空が、次々と現れる。


 笹倉……。


 携帯の画面に映った空の上で、雫がはねた。


 それは僕の涙だった。


 立ち止まり、袖で涙をこする。


 ふと空を見上げると、そこには雲ひとつない空がどこまでも広がっている。

 その空は、僕の悲しみまで吸い込んでしまいそうに見えた。

 啓太も、同じ空を見ているのだろうか。


 空を背に、窓辺に座るひとりの少女の姿が浮かぶ。

 窓から吹き込む風に揺れる髪、白い横顔と首筋、細い肩。


 ゆっくりとこちらを振り返る。風に吹かれる髪を片手で押さえ、驚いた顔で僕を見る。


 ――別れ際、彼女は僕に向かって微笑んだ。


 まるで可憐な花がほころぶような笑顔だった。


『ありがとう』


 耳に彼女の声が甦る。 


 僕は携帯を空にかざした。

 シャッター音がして、今見ていた空が携帯の画面の中におさまる。


 彼女の姿は写らない。

 けれどここには彼女がいつも見上げていた空がある。


 いつも僕の頭上にあった空と、ひと続きの空。


 僕はこの空を忘れない。そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ