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おまけ②【ランプの中】



 ランプの中は、退屈だ。

 それゆえ、シェルはお香を焚いたり紅茶を飲んだり、優雅に時間を過ごしていた。

 しかし、犬並みの嗅覚を持った、同室ならぬ同ランプの男が、邪魔をしてくる。

 ランプの中に風呂場を設置し、毎日入れるようにもした。

 魔人はあまり食欲がないのだが、あの男は良く食べる。

 その為、食糧を保管しようものなら、一夜にして貯蓄ゼロにもなれる。

 「シェル、腹減らねえぇ?」

 「減らない」

 「っかしーな」

 首を傾げ、ぎゅるるるる鳴っているお腹を摩る男、ギ―ル。

 どこかの国の城で護衛として働いていたようだが、そんな面影はない。

 汗臭いのも平気で、とにかくジッとしていられないようだ。

 出会った頃は、絶対に関わりたくないと思っていた。

 しかし、ギ―ルが口にしたある唄に、心奪われてしまったのも確かだ。

 誰の唄かは知らない。

 ただ、暇な時や、主人が見つからないときなど、ギ―ルは口にしていた。

 いつものガサツなギ―ルからは想像も出来ないほど、繊細で儚い旋律だ。

 興味があったかと問われれば、五分五分。

 「お前の国の唄か?」

 「あ?」

 「いつもお前が唄ってる、その唄だ」

 無意識に口ずさんでいたのか、ギ―ルはしばらく考え込んでいた。

 そして、気付いたように、ああ、と言うと、困ったように笑った。

 その言葉は、シェルにとっても驚くものだったからだ。

 ―この唄唄ってて俺、魔人になっちまったんだ。

 最初、意味がわからなかった。

 どうして唄を唄っただけで罪とされ、魔人にまでされてしまったのか。

 「俺もよくわかんねーけど、この唄、唄っちゃいけねーんだってよ」

 いつものように笑っていたギ―ルだが、その表情はどこか悲しげでもあった。

 よくわからないが、悪い奴ではないようだ。

 毎日のように聞いているうちに、シェルもその唄を覚えてしまった。

 だが、唄う事はなかった。

 なぜかと聞かれれば、単に唄うことに慣れていないということもあった。

 騎士としてずっと戦ってきたシェル。

 もちろん、国を称える唄だって存在していたが、単に力を誇示するための内容で、あまり好きではなかった。

 「その旅人、死刑にされたのか?」

 「ああ。死ぬまでずっと唄ってたよ。そいつが書いた詩も、ぜーんぶ燃やされちまった。そこまでする必要なんて、ないように俺は思うけどな」

 「・・・そうか」

 何かに見つめられている感じがし、シェルはギ―ルを見やる。

 そこには、じーっと、シェルの身体に穴が開くほど見ているギ―ルがいた。

 「なんだ」

 「いや、そこまでお前が他人に興味持つなんて珍しーからよ」

 「・・・・・・」

 この男、本当に食えない奴だ。

 「国や時代は、何に怯えてるのかと思ってな」

 「怯えてる?」

 シェルの方に近づいてくると、ギ―ルはシェルの座ってるテーブルにある飴を凝視する。

 一つ手に取りギ―ルに渡せば、「サンキュ」と言って口に含み、いきなりボリボリ噛み始めた。

 「時代の節目には、幾つもの犠牲が伴う。それが、俺達みたいな存在なのかもしれないと思っただけだ」

 「犠牲ねー。俺は犠牲なんて思っちゃいねーけど」

 ふああ、と大きな欠伸をしながら、ギ―ルは笑った。

 「ま、その旅人の受け売りだけどな」

 「?」

 なんとも言えない、楽しそうな表情で、ギ―ルは笑った。



 『俺は、俺を英雄と思う事にした』


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