表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

おまけ①【お菓子】



 ある日のこと。

 ギ―ルはまた蔵之介のお菓子箱を漁っていた。

 ごそごそごそごそと、傍からみれば泥棒のようにも見えるその身のこなし。

 覆面をしていれば完璧といえよう。

 だが、そんなギ―ルには、一つの疑問があった。

 そう。蔵之介のお菓子は、食べても食べてもゼロになることがない。

 「なー、武蔵」

 「なんだ、また勝手にお菓子食いやがって」

 「仕事帰りにお菓子買ってくるのか?大量に買い込んで、変な目で見られないのか?」

 「大量に消費してる奴に言われたくはねーけど」

 ほぼ、消費担当といっても良いくらい、ギ―ルはお菓子を食べている。

 食費が魔人で減るなんて、それこそ可笑しな話だが。

 「あれ?これなんて、手作りっぽくね?もしかして武蔵ってお菓子作りとか趣味なわけ?」

 「んなわけあるか」

 「じゃーなに?女の子にでも貰ったとか?いやいや、武蔵がそんなにモテるわけねーもんな。悪いこと聞いたな」

 「・・・・・・」

 急に黙ってしまった蔵之介に、ギ―ルは顔を向ける。

 しばしの沈黙。

 いかにも手作りです、という風な小袋に包装されたクッキーやチョコ、パウンドケーキを頬張りながら、ギ―ルは目をぱちくりさせる。

 「え?まじ?」

 「・・・・・・」

 人が貰ってきたと知った今でさえ、ギ―ルは気にせず貪っているが。

 「職場でそういうの作るの好きな奴がいて、作る度にくれるんだよ」

 「ふーん。味はまあまあだな」

 「上から言うな」

 と、何を思ったか、ギ―ルはランプをガタンガタンと乱暴に揺らした。

 頭が変になったかと思っていた蔵之介。

 だが、しばらくして、ランプから顔をタオルで拭きながらシェルが出てきた。

 「顔でも洗ってたのか?」

 悪びれのないギ―ルの言葉に、シェルは洋風のポットから注がれる熱いお湯をぶっかけた。

 「あちちちちちちちちち!!!!!」

 「おい。俺のベッドがびしょ濡れだぞ」

 本当に、自分家かと聞きたくなるくらい、遠慮がない奴ら。

 そしてギ―ルはお湯をかけられた上着を脱ぎ、丁寧にハンガーにかけて干し始めた。

 「ティータイム中になんだ」

 「あーあー、お洒落タイムに悪うござんしたね。で、コレ、食ってみ」

 「・・・毒か」

 失礼な奴らだとまた思った蔵之介だったが、まあ、放っておくことにした。

 目を細めて、ギ―ルに渡されたクッキーをマジマジと観察中のシェル。

 そういえば、最近は貰ってもすぐにギ―ルが食べるため、味の感想を聞かれても困っていた。

 適当に美味しかったとは言っているが。

 「・・・無難な味だな。俺の趣味ではない。紅茶に合わせて口にするなら、もっと強い味でも良いな」

 「だとさ」

 「ああ、なんか余計なお世話ありがとな」

 それにしても、文句を言いながらも良く食う奴らだと、いつも以上に思った。

 翌日、その女性から味の感想を聞かれた。

 「えと、ああ」

 昨日シェルの言っていたことを正直に言ってしまった方が良いのか。

 お菓子を貰うと言う事は、食糧を貰うと言う事。

 それはそれで有り難かった蔵之介にとっては、これで機嫌を損ねてお菓子を貰えなくなっても困るのだった。

 悩んでいると、思いもよらない来客者が現れた。

 「げっ」

 蔵之介が書類を忘れたらしく、なぜかギ―ルがコソコソもせずに会社に乗りこんできていた。

 部屋で大人しくしてくれていれば良かったのだが。

 その異形も異形な赤い髪の毛は、嫌でも目立ってしまう。

 蔵之介は隠れるように移動し始めると、大声で名前を呼ばれてしまった。

 「お前なんでここがわかったんだよ」

 「なんだよ、忘れモン持ってきただけだろ」

 タイミングが悪いことに、その場にはまだあの女性もいた。

 女性から甘い匂いを感じたのか、ギ―ルは無遠慮に女性に尋ねる。

 「もしかして、お菓子の人?」

 「え?」

 お菓子の人ってなんだとか。

 そもそもここは会社だぞとか。

 言いたいことはあったが、今は一秒でも早くギ―ルを帰すことが先決だった。

 クンクン、と犬のように女性の匂いを確認すると、ギ―ルはケロッとこう言った。

 「美味いか不味いかはおいといて、俺はとりあえず腹に入れば同じだ精神だから、気にすんな」

 「は、はぁ・・・」

 女性の肩に手をポンッとおき、なぜか慰める様な言葉までラッピングしていった。

 女性も突然のことに目をぱちくりさせ、とりあえずの返事をする。

 「じゃーなー」

 ひらひらと手を動かしながら帰って行ったギ―ルは、その日、懐に隠していたお菓子を、全て蔵之介に没収されてしまうのであった。

 ギ―ル曰く、食べ物を選択するようなシェルよりはマシだと思う、とか。

 「頼むから、お前等、ランプに入ってろ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ