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憑きモノ王子とダークな騎士団  作者: 漆之黒褐
第1章 『憑きモノ王子の旅立ち』
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第10話 白銀のダークエルフ

 邪な心は捨てる。

 あらゆる雑念を捨て去る。

 でなければ冷静を保てない。


 目の前で繰り広げられている光景は、非常に淫猥だった。


「……はぁ……はぁ」


 褐色美人のお姉さんが、スライムで遊んでいる。

 壁から伸びている鎖に手を拘束して、逃れられない状況でスライムと楽しく遊んでいる。


 豊満な胸を申し訳程度に隠している布服。

 太腿はほとんど露出。

 膝の付け根で切れたショートパンツ。

 ブーツは片方が脱げ、右足が爪先まですらりと伸びていた。


 肩先まで伸びている髪は白く艶やかで。

 尖った瞳が美貌に拍車をかけて美しい。

 そして最も特徴的なのが、長い耳。

 褐色に長い耳ときて、更に言葉を失うほどの美人とくれば、あれしかないだろう。


 スライムと仲良く夜伽を楽しんでいたのは、ダークエルフだった。


「誰だ! くっ……」


 物凄い美人が俺の存在に気付き、睨め付けてくる。

 それだけでもう俺は満足。


 女優やアイドルでもなかなかいない絶世の美人お姉さんからそんな目で見られると、それだけで至福を感じてしまった。

 本当に凄い。

 嬉しすぎて背中に汗が。


「こど、も……? なんで此処に……」


 お姉さんは、はぁはぁ言っていた。

 その身に纏わり付くスライムがいなければ、ただの怪しい人。

 スライムの玩具にされて、何度喜びに達したのか。


 艶やかな肌には汗の玉が浮かび、ただでさえ淫猥な肢体を魅力的にしている。

 華麗な瞳に、魅惑的でゾクゾクする琥珀色の瞳。

 肩先まで伸びる髪は白と言うより銀に近く。

 メッシュで混じる茜色。

 額には赤い小さな宝石が特徴的な、黄金色のティアラ。


 それらは全て、ダークエルフという名に恥じない美を体現していた。


『こんなところで何を?』


 そう問わずにはいられなかった。

 いや、分かっている。

 何故そんな事になっているのか、3割ぐらいは分かっていた。


「見て分からないのか? 捕まっている」


 訝しむような切れ長の瞳。

 何というか、この世界に来て初めての新鮮な瞳だった。

 リースの美を見て全く動じない相手。

 流石は世界最高峰の美の持ち主。


『そのスライムは、趣味か』


「そんな訳がないだろう!」


 怒られた。

 実は確信犯。

 美人のお姉さんに怒られるってイイ。


 しかし……本当に淫猥な光景だ。

 スライムに全身をプルプルされているお姉さん。

 わざと巫山戯ていないと、あっと言う間に欲望に流されてしまいそうになる。

 見えそうで見えないライン。

 スライムは溶かすモンスターだと思っていたのだが。

 お姉さんの服は全く溶けていなかった。

 中途半端に溶けているよりも、むしろ淫猥。


「子供、貴様はいったい何者だ? いったい何故、此処にいる」


 言葉と一緒にお姉さんの胸が揺れる。

 現在進行形でスライムにネチネチ攻められているためか、お姉さんは身体を何度もよじる。

 そのたびに、プルンプルン揺れる。

 スライムと一緒にプルンプルン揺れる。

 その揺れをじっくりと観測したい。

 しかし俺は男を見せた。

 煩悩退散。


『ただの通りがかりだ。助けが必要か?』


「《混沌の民(ヒューム)》の助けなど、誰が!」


 断られた。

 エルフは人が嫌い。

 お姉さんの魅力にプラス5ポイント。


『そう毛嫌いするな。俺は俺、ヒュームはヒュームだ』


 俺は異世界人なので、その枠には当て嵌まらないが。

 しかも幽霊。


『待っていろ。今、鎖を斬る』


「くっ、屈辱だ」


 このままスライムとエッチな事をし続けるよりはマシだと思うが。

 それにしても、山賊達は何でスライムを?

 まさか特殊な趣味が……。

 いや、まずは体力を奪ってからという事か。


『む』


 鎖を外そうと近づいたら、スライムが襲い掛かってきた。

 ヤバイ。

 思い切り油断していた。


『おおお……』


 リースがスライムの虜となった。

 スライムとプルプル。

 身体全身をスライムが這い、くすぐったいような気持ち良いような感覚が。

 凄い。

 あまりの気持ちよさに昇天してしまいそうだった。

 人生初のスライム遊び。


「お、おい……大丈夫か?」


 一度は俺を突き放したお姉さんが心配してくれた。

 スライムの恐ろしさを良く知っているからだろう。

 実体験に基づく心配。。

 というか、これは本当にヤバイ。


『問題無い。耐えられる』


 正直、触覚7割カットで良かった。


「そ、そうなのか?」

 

 スライムを全身に纏わり付かせたまま、鎖を断ち斬る。

 リースの持つ剣は本当に斬れ味が良い。

 錆びてボロいとはいえ、鉄も一太刀。


「ふん、誰も助けてくれとは言っていない。余計な事を」


『好きでやった事だ。気にするな。〝好き〟だからやった事だ』


 コソッと告白。

 俺でなくとも一目惚れするだろう。


「そうか」


 告白は通じなかった。

 しかしきっと好感度はプラス1入っている筈。

 これからコツコツ溜めよう。


『自己紹介がまだだったな。リースだ』


「……ディーネだ」


 ちなみに、こちらが鑑定結果。




★ディアナ・ディネルース




 ディアナだからディーネなのか、ディネルースだからディーネなのか。

 愛称の由来にちょっと悩んでみる。


『良い名前だな。似合っている』


「ヒュームにお世辞を言われても嬉しくない」


 ディーネはクールだった。


「それより……大丈夫なのか?」


『ん? 何がだ?』


「鏡を見ろ。凄い格好だぞ、貴様。私の事を心配するよりまず自分の身を心配したらどうだ」


 そう言えば、リースはボロボロだった。

 傷だけは治っている。

 しかしそれ以外はそのまま。

 フォレストクロウリーダーの攻撃で服はズタズタ。

 流れ出た血もほったらかし。


 せめて水があれば身体を拭いたのだが。

 ディーネに負けず劣らずの綺麗な肌を持っているリースの身体を余す所無く拭きに拭きしまくったのに。

 全てリースが男の子なのが悪い。


「なんだ。酷いのは見てくれだけか。傷は無いようだな」


 おや?

 見られただけで看破された。

 控えめに見ても重傷クラスの見た目だったと思うが。

 本当に重傷だったし。


 それより、スライムよ。

 好い加減にしてほしい。

 俺の代わりにリースの身体を余す所無く触れてくれるな。

 ぬ。

 そんな所にまで。

 もうお婿にいけない。

 責任を取ってくれるんだろうな?


「変わったヤツだな。スライムにそこまでされて平気なヤツに出会うのは初めてだ」


 別に平気ではなかった。

 リースの身体は何度もビクビクしている。

 たぶん達している。

 下の方は俺が留めているが、上半身の反応は凄く良い。

 3割の感覚でこれなら、フルだと本当にヤバイ。


『(リース、起きてるか?)』


 返事がなかった。

 痛みは駄目なのに、快楽は大丈夫らしい。

 これで寝ていられるリースは凄いの一言に尽きる。


『これから村に帰るんだが、ディーネも一緒に来るか?』


「行く訳がないだろう。私は人の多い所は嫌いだ」


 お持ち帰りは出来なかった。


「だが、借りは返す。何か私にして欲しい事は無いか?」


『ディーネの全てが欲しい』


 つい本音が。


「却下だ」


 即答された。


『それ以外だと、すぐには思い付かないな』


 嫁になって欲しいとか、奴隷になって欲しいとか。

 似たような願いならある。

 全て却下確定案件。


「そうか。なら、暫く貴様の近くにいるから、して欲しい事が出来たら呼んでくれ」


『一緒に行動してくれるのか?』


「あくまで近くにいるだけだ。村や町には入らない。近くの森にいる。用がある時は、夜になったら森に来て呼んでくれればいい」


『随分と気長なんだな。暇なのか』


「基本的に暇だな。10年ぐらいなら待ってやろう」


 流石、長寿種族。

 年齢を聞くのが怖い。


『ディーネはいくつなんだ?』


 聞いてしまった。


「見ての通り、永遠の二十歳だ。もう年を数えるのは止めた」


 美人のエルフが言うと洒落にならないからやめて欲しい。

 世の中の奥様方の大半を敵に回したぞ。

 ここから始まるエルフ虐待運動。

 老いない美人種族に嫉妬の炎は燃え盛る。


「すっかり綺麗になったな。そのスライムはどうするんだ?」


『綺麗になった? 何がだ?』


「何って……まさか気付いていないのか?」


 指を指された。

 指された場所を見てみると、おや不思議。

 血塗れだった肌が、美肌効果のある温泉に入った後のように綺麗になっていた。

 どうやらスライムが汚れを落としてくれたらしい。

 クリーニング。


「意外と可愛い顔をしてるんだな。私にはまるで敵わないが」


 毒発言。

 リースの美貌に対抗心を燃やすダークエルフ。

 可愛いと美人では別カテゴリーな気もするが。

 怖いくらいに美人なディーネを可愛いと称するのはちょっと難しい気が。

 その美貌の下にある胸は凶器の域。


『斬れないな』


「ただの剣でスライムが斬れる訳がないだろう」


 お役御免のスライムを斬ってみた。

 斬れなかった。

 ただの剣じゃないのに。

 この場合は、属性付きかどうかという意味か。


「法術は使えないのか?」


『使えるが、攻撃系はない』


「仕方ない。なら、これで借りを……」


『それは断る。こんな事で貴重な借りをチャラにしたくない』


「ちっ」


 舌打ちされた。

 意外と策士。


「なら、適当な場所でそのスライムを捨てる事だな」


『そうさせてもらう』


 スライムのポイ捨て。

 でもちょっと勿体ない気がする。

 四次元ポケットに入らないだろうか。


「じゃあな」


『ああ。また縁があったら会おう、ディーネ』


「その時は借りを返す時だ」


 後ろを振り返る事無く、ディーネは夜の森へ消えていく。

 無駄に格好良い。

 ディーネは最後まで名前で呼んでくれなかった。

 少し寂しい。


 さて。

 良い出会いがあった。

 色々あったが、今日はとても良い日だ。

 だが、そろそろ今日という日は終わりにしなければ。


 そろそろ帰るとしよう。

 脳内地図を広げて、現在位置を確認。

 すると、地図に青い点が。

 ディーネだ。


『いや、いくらなんでもそれは近すぎるだろう』


 いつの間にか後ろへ回り込んでいたディーネ。

 振り返り、すぐ後ろにある木の上に向けて手を振る。

 余程自信があったのか、ディーネは驚いていた。


「この再会はノーカウントだ!」


 ディーネはちょっと涙目で去っていった。

 思わず可愛いと思ってしまった。


 可愛いは正義。

 ディーネの可愛い部分は、外側ではなく内側に詰まっていた。

 実はまだ二十歳になっていないのかも。


 リースと同じく背伸びしたいお年頃。







リ「カズキはエイミーさんとディーネさん、どっちが好みですか?」

カ「んー……栗鼠耳モフモフのエイミーも捨てがたいが、やっぱお姉様タイプのディーネかな」

リ「エイミーさんもアリなんですね。僕はエイミーさんはちょっと」

カ「ペットは別腹」

リ「え、そういう分け方!?」


※エイミー:第2話参照

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