始まり
『今日も寒い』
少年は本に探しながら、そう言った。すると「あの女の人」が来た。
『また、意味のない勉強ばっかりして早くでていきな。』
『ごめんなさいケイトさん、けど本を読みたかった...』
少年が言い終える前に、女は言った
『本当に邪魔ね、メイドに言ってこの部屋に鍵をつけてもらった方がよさそうね。』
そういうと、腕を引っ張って連れ出された。
外には、メイドが居て自分の部屋に連れて行かれ外から鍵をかけられた。しかし、少年からするといつも通りのことだ。かくしていた本「旧約聖書」を服の中から出した。
『あれ、何章だったっけな?』
少年の名は、「キャンベラ・ライラック」この家の当主である「キャンベラ・オウルド」と農民の娘との子供だ。いわゆる妾の子である。少年の言う「あの女の人」と言うのは養母である「キャンベラ・ケイト」だ。養母と言っても優しくしてくれるわけでは無い。ケイトは夫であるオウルドと不倫相手である娘に対しての怒りをライラックにぶつけているのだ。それに便乗してケイトの実子である長男「アルト」と次男「ハンジ」もライラックを虐めるのである。ライラックが8歳ながらにして文字の読み書きや学問において、兄達よりも優秀なことが拍車をかけたのであろう。実父であるオウルドもそんな行為を見て見ぬふりをしていた。そんな家の中にも、一人だけ少年が信頼している人がいるそれは、2年前に家にきたメイドで名前は「エリアーヌ」だ。エリアーヌの歳は14歳でメイドのなかでは一番若いライラックにとってはお姉さんの様な存在なのだろう。
ライラックが本を読んでると、誰かが部屋をノックしてきた。
『ライラックお坊ちゃん、エリアーヌです。入ってもよろしいでしょうか?』
『いいけど、また鍵がかかってるよ。』
『でわ、あけますね。』
そう言うと、鍵を開けて入ってきた。
『坊ちゃん、机にに置いときますね。』
『うん、ありがとう』
それだけ言うと、鍵を開けて出て行った。
エリアーヌは、夜になるとライラックの好きそうな本を探してライラックの部屋に届けるのが日課になっている。ライラックはエリアーヌが部屋を出ると。机に駆け寄るとどの本を読もうか表紙をまじまじと見ている。「旧約聖書」の内容は8歳のライラックにとっては難しいのだろう。3の本の中で目を惹かれたのは「使命の断片」というおとぎ話だった。内容はおとぎ話にしては悲しい話だった。「親に恨みを持って死んだ子供が神の情けにより神の使いとして自分の親を裁きに行く、けれども親の元にいくと沢山の子供に囲まれて幸せそうにしている。その光景をみて自分は本当に恨みを持ったのかと考える...」といった所で記憶が無い。
ライラックの朝は早い。日が上がり切る前に起きるメイド達の少し後にいつもおきる。昨日読んでいた、本のことは忘れているのだろうか広間に行くと執事の「ダルク」がいた
『ライラックお坊ちゃま、すいません。まだ朝食がで来ていません。』
『また、ケイトさんや兄さん達のあとでたべるからいいよ』
『失礼ながら、お坊ちゃまたまには家族で朝食を取るのもいいことかと...』
『ダルクもわかってるくせに、一緒に食べない理由くらい』
そう言って、広間を出ようとするライラックを止めてこういった。
『今日は旦那様と奥様はパーティーに参加するので、あと2時間程でお出かけになりますので、何か言伝などはありませんか?』
『うーん、無いかな。あと教えてくれてありがとうね。』
ライラックは内心とても、嬉しかった。二人が家を出る時は、家を抜け出して遊びに行く絶好のチャンスだからだ。前は家を抜け出して教会の神父さんと話しにいった。ライラックは部屋に戻って適当に2時間程適当に過ごすと、玄関の方から声が聞こえてきた。
『旦那様、奥様行ってらしゃいませ。』
『アルトとハンジが起きたら買ってきた服に着替えさせておいて』
『承知いたしました。』
玄関の扉がしまった音がした。二人は出かけたのだろう。すると執事とメイドの声がしてきた。
『今日の朝食は坊ちゃん達の分だけで、昼食と夕食はライラックぼっちゃまの分だけでいい。』
『わかりました。』
『あと私は旦那様達について行くので、後の事は頼みましたよ。では』
扉を開けて音がしたので、ライラックは着替え始めた。外に出ようとした執事は一つの手紙をエリアーヌに渡した。その手紙にはこう書いてあった。