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夜の海で美少女ギャルをナンパしたら、お持ち帰りできちゃった理由。  作者: あざね
第1章

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2.買い出しにて。






「んー……ちょっと、足りないなぁ」

「ん? 足りないって、なにが」




 朝食を摂り終えて、俺は余暇をスマホのネットサーフィンで潰そうとしていた。するとトーコが冷蔵庫を覗き込みながら、そんなことを言う。

 こちらが訊き返すと彼女は、こちらに振り返りながら答えた。



「見ればわかるっしょ? 冷蔵庫の食材、だよ」

「あー、基本的に自炊しないから」

「もったいないなぁ……」



 こちらの言葉に対して、トーコは「こんなに立派なキッチンあるのに……」とボヤキながら、近くにあった紙とペンを手に取って、何かを走り書く。そして、



「ん、これお願いね!」

「これって、買い物リスト?」



 それを俺に突き付けてきた。

 手に取ってみると、そこにあったのは人参やジャガイモ、といった必要食材の名前と個数。俺が首を傾げながら言うと、少女は腕を組んで頷くのだった。

 やや自慢げなその表情に、思わず苦笑してしまう。

 このように感情の起伏がハッキリしていると、どうしても霊体であるという事実を疑ってしまうのだった。



「さて、ソータくんが出ている間にアタシも色々やるから! それそれ、急いで行ってらっしゃいだよ!」

「お、おおう……?」



 そうしていると、考えるより行動しろ、と言わんばかりに。

 トーコは俺に財布を握らせると、背中を押してきた。ゆっくりと午前中の暇を過ごしたかったが、こうなっては仕方ない。

 それに食材が増えれば、彼女の美味しい料理がまた食べられる。この点についてはこちらとしても、悪くないと思える利点だった。



「それじゃ、行ってきます」

「いってらっしゃい!」



 そう考えて、俺は炎天下の外へと繰り出す。

 ただ思ったことは一つ。



「……トーコって、意外と家庭的なんだな」



 彼女が外見に反し、ずいぶんと親しみやすい、ということだった。







「それにしたって『幽霊の家政婦』ってのも、面白いよな」



 俺はひとまず自転車を走らせ、アパートから少し離れた市街地に出てきた。

 ここには居住地付近にはないスーパーや雑貨店、さらにはカラオケだったり、娯楽施設がある程度は揃っている。もっとも都心のような充実感はなく、されども不足感は最小限。いわゆる、ちょうど良い田舎、というものだった。



「えっと、まずは――」



 そこの一番大きなスーパーに足を運び、俺はひとまずリストに書かれているものを探す。量にして数日分と思うのだが、消費期限などと見比べても程よい数の指定がされていた。どうやら、そういったあたりにもトーコは気が回るらしい。

 そのことに感心し、俺はジャガイモを手に思わず呟いた。



「すごいな。まさに、理想的なお嫁さん――」

「……え、夏海くん。誰かと結婚したんです?」

「ん……?」



 すると思わぬ方向から、何やら会話に混ざる人がいる。

 そちらを振り返ると、そこには――。



「誰かと思えば、雛森か……」

「『雛森か……』って、なに残念がってるんですか! 大学以外で珍しく、可愛くて人気者の先輩に会えたってのに! ――というか、呼び捨てするな!」



 ちんちくりんな、中学生くらいの女の子が立っていた。

 彼女の名前は雛森暁美。同じ大学に通っている二学年先輩、つまるところ三年生だった。肩ほどまでの栗色の髪に、幼さの抜けない顔立ち。くりくりとした円らな瞳が、その童顔具合に拍車をかけていた。

 服装も小学生くらいの女児が着用しそうなもので、人気者というのも、とある特殊な一部の方々にという注釈が付いてくる。



「すみません、って。……先輩はどうしたんすか、こんな休みに」

「アタシ? アタシはここが地元だからね。普通に頼まれた買い出しだよ」



 そんな先輩を適当にいなしながら、俺は必要なものをカゴに入れていった。

 雛森先輩もいつの間にか、一緒に歩く形になっていく。そして、



「しかし意外だね。面倒くさがりの夏海くんが、自炊だなんて」



 世間話の延長としてそんなことを言った。

 俺は色々と考えた後、適当に応える。



「あー、ちょっとばかり入り用でして」

「なに? もしかして、同期でパーティーとか?」

「俺のアパート知ってるでしょう? 騒いだら追い出されますよ」



 すると思いの外、先輩は興味を持ってきた。

 面倒だな、と思いながら、俺は嘘も方便と考えて言う。



「実は親戚が来てるんです。それで、買い出し」

「あー、なるほど……?」



 するとようやく、ロリ先輩も納得したらしい。

 しばし、動きを止めて――。




「――女?」




 なんとも意地悪い表情を浮かべ、そう訊いてくるのだった。

 こうなったら、もう下手に誤魔化すのもおかしい。

 俺は会計をしながら頷いた。



「そうですよ」

「えええええええええええええええええええええ!?」

「……うっせぇ」



 すると何故か、先輩は大声をあげる。

 たしかに意外かもしれないが、親戚だと前置きしているのに何なのだ。俺が耳を塞いでいると、先輩はそれでも聞こえるくらいの声量で詰問してくる。



「誰!? 歳は、身長は、体重は!? 可愛い系!? キレイ系!?」

「………………」



 俺は眉をひそめながら、買った品を袋に詰め込み答えた。



「先輩には、関係ないでしょう?」

「――か、関係ありますぅ!!」



 すると今度は見た目通り子供らしく頬を膨らす。

 そしてそんなことを言うので、いよいよ面倒くさくなってきた。俺はそそくさと自転車のカゴに荷物を乗せ、先輩に言う。



「気になるなら、見にくればいいっすよ。それじゃ」

「ちょ、ちょっと待てええええええい!?」



 自転車をこぎ出し、出発進行。

 雛森先輩の悲鳴のような声を背中に受けながら、俺は足を止めずに帰宅の途に就くのだった。



 

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