2.これから、ずーっといっしょ!
ここまででオープニングです(*'▽')
「気付いてなかったん? アタシ、知ってるものかと思ったよ」
「ゆ、幽霊……ってマジですか!? いや、でも足ある……」
「幽霊の考え方古すぎっしょ、ウケる」
あまりの事態に俺が壁際に逃げると、燈子さんはそれを見て笑う。
彼シャツ状態の女の子がいるという状況以上に、幽霊であると自己紹介されたことへの混乱が強かった。いいや、そもそも幽霊というのも冗談ではないのか。
それこそ、これだけハッキリ見えるのもおかしな話だった。
俺にはお世辞にも、霊感的なものはないのに。
――と、考えていたその時だ。
「もしもーし? 夏海ちゃーん、いま何時だと思ってるのー?」
「あ、あ……上木、さん……?」
ノックの一つもなく、四十代ほどの男性が無遠慮に入ってきたのは。
顎には無精ひげ、ややこけた頬に黒縁の眼鏡。顔立ちは整っているのだが、ボサボサの白髪交じりの髪などを見て分かる通り、自分のことにはとんと無頓着な彼の名前は上木という。
このアパートの管理人、すなわち大家さんだった。ポロシャツにダメージ入りすぎのジーンズを履いた彼は、掛け時計を指さしながら言う。
「もう十一時よ、十一時。まったく、一人でなにやってんの」
「え、あ……いや、なにも。え――」
それに対して、俺は弁明しようとして。
しかし、そこで気付くのだった。
「もしかして上木さん、見えないんですか?」――と。
俺はボンヤリとしている燈子さんを見ながら、そう訊ねた。
すると上木さんは、ポリポリと頬を掻きながら答える。
「ん……だから、なに言ってんの?」
「……ひぇ」
思わず短い悲鳴が出た。
そしてまた燈子さんの方を見ると、そこには何故かピースをしている彼女が俺のシャツを着ながらピースをしている。
その状況からようやく、
「マ、マジかよ……」
俺はナンパした美少女が、幽霊であることを認めざるを得なくなったのだ。
◆
「だから、最初から言ってるっしょ? アタシ、幽霊って」
「……いや、普通は信じないよ。こんなにフレンドリーな幽霊」
上木さんを適当な弁明で返してから。
俺は改めて、状況をしっかり判断するために燈子さんと話し合っていた。そして分かったのは、彼女は本物の幽霊であること。何故か俺以外に見えないのは、
「まさかそっちから、アタシに居場所をくれるとは思わなかったよ!」
「おおう……」
彼女が憑いているのはこの部屋と、俺自身であるからとのこと。
曰く幽霊にはいくつか種類があるらしく、燈子さんはもともと海岸周辺の地域を移動している浮遊霊だった。それに対して俺は声をかけた上、自分のところにこないか、と誘ったのだ。
それによって、晴れて燈子さんは居場所を得たのだ、という。
俗にいう地縛霊とも少し違うと思うが、そもそも幽霊のことに詳しくないから何とも言い難かった。
「それで、燈子さん――」
「あ、そういや! ソータくん、その他人行儀な言い方やめてね!」
「…………え?」
その他にも、色々と確かめたいことはある。
だから俺はさらに追及しようと名前を呼んだのだが、そこで彼女はこう言った。
「アタシのことは、これからトーコ、でいいから!」
「ト、トーコ……?」
「そそ。だってアタシら、これから――」
まるで新婚夫婦がするような、初々しい雰囲気で。
「キミがここ離れるまで、ずーっといっしょ、なんだからさ」――と。
俺の鼻っ面をツンと突いて、トーコはそう笑うのだった。
◆
「ん、あ……朝、か?」
翌朝、俺はいつもより早めに目が覚めた。
どうやら昨夜は、日付が変わる前に眠ってしまったらしい。日差しが俺の瞼をくすぐったことで、今までにない清々しい朝を迎えていた。
それでも、今日もバイトのシフトはない。
だったらもう少し、寝ていても――。
「すぅ、すぅ……」
「…………」
問題ないだろう、そう考えて身体の向きを変えた時だった。
何やら俺の腕を枕にしている女の子が、水着姿のまま寝息を立てているのに気付いたのは。恐る恐る視線を下方へ向けると、そこにいたのは――。
「ふにゅ……あ、おはよ。ソータくん」
――夢じゃなかった。
いまさっきまで、考えないようにしていた。
だが目の前にいるほぼ裸体の美少女の名前を俺は、しっかりと憶えている。
「お、おはよ……トーコ」
「……ん!」
こちらが名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうに首に腕を絡めてきた。
すると、発育のよろしい身体が急接近して……。
「あれ……ソータくん?」
俺の意識はまた、そこで眠りにつくのだった。
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