表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冷めたポテトが好きなんだ。

作者: LEN

ぜひ、一読くださった皆さまのご感想をお待ちしております!

違う違う。


ポテトは冷めても美味しいってことじゃなくて、冷めたポテトが好きなんだ。

揚げたての方が美味いって? いいや、冷めたポテトと揚げたてのポテトは、もはや別の食べ物だよ。

ピザもステーキも、温度と美味さはイコールだって? 当然だ、それはそうだよ。君は僕のことをバカ舌だって思っているね。


分かったよ。そこまで言うなら、僕がなぜ冷めたポテトが好きなのかを具体的に説明する。

別に聞いてない? まぁそう言うなよ。

皆まで話そうとするとあまりに長くなるから、3つの理由に厳選して話すね。


まずは出会いから。


あれは確か……なんて、ごめんごめん。そんな語り口調はやめるよ。

兄貴が余ったポテトを冷蔵庫に入れていたことがあって、小腹が空いたから拝借したんだ。その時、冷めたポテトを初めて食べた。

冷蔵庫に入っていた時間は5分程度だったから、冷えているというより冷めた感覚だった。

あぁ全く分かってない。冷えているポテトと冷めたポテトは別物なんだ。かき氷とアイスくらい違うよ。

話を戻すけど、冷めたポテトには何とも言えない美味しさがあったんだ。それこそ、ピザのコルニチョーネの美味しさを知った感覚だよ。あ、耳のことね。


だからそれは、ポテトは冷めても美味しいって話だって? 

まぁ落ち着いてよ。まだ出会ったばかりなんだから。


出会いの次は、何だと思う? ポテトを女の子だと思って想像してみて。

そう、デートだよ。意味がわからない? 大丈夫、安心して。僕も手探りで話しているから。

君はさ、デートをする目的って何だと思う? 

相手のことを知るため。そうだね。

より親密になるため。それもそうだ。

ワンナイト? まぁそれも、目的と言えばそうだね。

それで? だから僕も冷めたポテトのことを知るために、より親密になるために、ワンナイトするために、あらゆるファストフード店へ足を運んでポテトをテイクアウトしたんだよ。つまりデートさ。


うん、一旦聞いてほしい。ありがとう。


それと、ワンナイトとテイクアウトをかけたんだけど……くだらないとか言うなよ。ごめん、本題に戻そう。


買い揃えたポテトを冷まして食べ比べをしたんだ。

カリカリっとしたポテト。

細いポテト。

太いポテト。

皮付きのポテト。

半月型のポテト。

でこぼこに形成したポテト。

どれも、見せてくれる表情は違った。ひとつ確かだったのは、細さが重要ということ。

冷めたポテトのポテンシャルを最大限に引き出してくれるのは、その細さにあったんだ。

それこそ君が主張するように、細くないポテトはボサボサしていて、冷めていることに価値はなかった。

そうだな、これを女の子に例えると……それはいい? いや、言わせてほしい。

そう、細いポテトは微乳なんだよ。貧乳なんて言い方は下劣だ。やめてくれ。

つまりだ、微乳を引き立ててくれるのは、クールな印象だったり、知的な雰囲気だろ?

逆を言えば、爆乳にクールな印象は必要ある? 知的な必要はある? いいや、無い。爆乳に求めているのは、愛嬌、あざとさ、笑顔だ。


そうだろ? うん、そこは共感してくれるんだね。


まとめるとだ。細くて(微乳で)冷めた(知的な)ポテトって(女の子って)美味しいだろ? (そそられるだろ?)という話。


さて、それを踏まえた上で3つ目の理由なんだけど、ちょっと耳貸して。いいから、ここではあまり大きな声で言えない。


ほら……


ちょ、やめろ! 声がでかい! 絶対誰にも言うなよ。君だから話したんだ。

そう、僕は隣のクラスの芦屋乃彩あしやのあが好きなんだ。

関係ないだろって、いや彼女も、冷めたポテトが好きなんだ。

どこの情報? たまたま聞こえたんだ。いつも一緒にいる、藤田香里ふじたかおりさんと彼女が、好きな異性のタイプについて話していた。

違う! 誓って盗み聞きなどしていない! ただ、たまたま僕の前を二人が歩いていて、聞こえたただけだ。

そう、彼女は確かに断言していた。


私のタイプは、冷めたポテトが好きな人。


それだけは譲れないという口調だった。 

そうだよ、分かってる。彼女はモテる。それに、僕は関東から転校してきた身で、彼女の関西弁に壁を感じている。

冷めたポテトが好きという条件はクリアしている。

次は、関西弁だ。

なぜこんなことを君に話しているか、もう察しがついているだろ? そうだよ、僕に関西弁を教えて欲しい。頼むよ。冷めたポテトを好きになることはできても、方言は無理だ。むり、ムリヤネン。

イントネーションだろ。自覚しているよ。


とにかく、僕は絶対に、芦屋乃彩あしやのあを振り向かせる。


マクドナルドの略称? ふっ。マクド、だろ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ