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ライトブルーファンド~億り人がVTuberでやり過ぎる  作者: 桐谷アキラ
仮面の向こう、託された真実
38/82

第37話 フェス本番!女帝様、スポンサー枠で登壇

イベント本番当日――。

 バーチャル会場は朝からまるで初詣のような大賑わい。

 主催運営の公式配信はもちろん、

 各出演VTuberのチャンネル、SNS、リアルタイム掲示板まで、

「今年はどんな伝説が生まれるのか!?」と祭りムード一色だった。


 大型ホールのメインステージに、

「スポンサーPRタイム」のロゴがきらびやかに映し出される。

 運営スタッフの合図で、女帝様アバターがゆっくりとスポットライトの中央に現れると、チャット欄が一気に沸いた。


――「女帝様、スポンサー枠で降臨!?」「都市伝説ほんとだった!」

――「スポンサーの女帝様、何するの!?」「衣装きらっきら!」

 

 結衣は、ライトブルーファンド公式アバターで、

 いつもよりフォーマル寄りの白の軍服ワンピース姿。

 堂々とした微笑みで画面を見つめ、


「本日は素晴らしいイベントにご招待いただき、

 また、スポンサーとして参加できることを本当に光栄に思います」と、穏やかに挨拶する。


「夢と挑戦が集まるこの舞台で、皆さんと一緒に“新しいバーチャルの未来”を作っていけたら嬉しいです。今日一日、たくさんの出会いと発見を――楽しみましょう!」


 その言葉に、ファンや視聴者のコメントが次々と流れた。


――「スポンサーなのにフレンドリーすぎ!」「女帝様、声のトーン好き」

――「推しにお金出してくれる神スポンサー」「感謝しかない」

――「去年の夢コラボまたやってほしい!」


 続いて司会MCのVTuberが登場し、


「本日のスペシャルゲスト――女帝様!スポンサー代表のご登壇、本当にありがとうございます。今日はどんな一日にしたいですか?」


「今日は出演されているVTuberさん、運営スタッフの皆さん、そして視聴者の皆さん……全員が主役です!

スポンサーって本来“裏方”なんですが、こんなに楽しい舞台に出していただいて、実は一番ワクワクしているのは私かもしれません」

 結衣は軽やかに受ける。


 MCが「さすがスポンサー枠、コメントがすごい勢いです!」と笑い、場がぐっと和む。


 ここで、「続いては夢のコラボステージ!」と画面が切り替わる。

 みやび、ノア、るりが華やかに登場し、女帝様と一緒に“スポンサーとVTuber”という肩書を超えた掛け合いが始まる。


「女帝様、今年も呼んでくれてありがとう!」

「スポンサーでありながら、一番配信楽しんでますよね?」

「女帝様がいると、うちらも肩の力抜けて最高!」


 ステージは冗談と拍手、拍手と冗談。

 みやびが「スポンサーPRなのに、宣伝ぽくなくていいの?」と小声で茶化すと、

 女帝様は「推しを支えるのが本職ですから」と涼しい顔で返す。


 ファンのコメントも爆発。


――「スポンサーって名乗る推し、かっこよすぎ!」

――「みやびちゃんと女帝様の並び尊い……」

――「まさかのスポンサー枠でネタ合戦w」


 トークが終わると、

 公式からの協賛企画や抽選コーナー、SNSキャンペーンの発表もあり、

「女帝様スポンサーグッズ」や「限定ステッカー」も用意されていた。


「もしかして今日だけの限定グッズ……お金積むやつや!」


 ノアが笑い、盛り上がりの絶頂で女帝様が再びマイクを持つ。


「みなさん、ここまで支えてくれてありがとう。

 バーチャルの世界には夢も悩みもたくさんあるけれど、“好き”と“応援”がある限り、未来はきっともっと面白くなる。

これからも一緒に――夢を見ていきましょう!」


 最後の言葉に、ステージもコメントも一体となって沸き立った。


***

 ステージでのコラボコーナーが無事終わると、女帝様はスタッフの案内で舞台裏の楽屋スペースへ戻った。

 みやび、ノア、るりもすぐ合流し、緊張が解けた分、さっきまでの公式スマイルとはちょっと違う、気の抜けた笑顔がこぼれる。


「ねぇ、結衣さん。こんな大きなイベントのスポンサーって、やっぱりすごい持ち出しあるんじゃないの?」


 みやびが、冗談めかしつつも少し本気の眼差しで尋ねる。

 ノアも興味を持って問いかける。


「うんうん、単純に見てると“太っ腹!”って思うけど、正直、儲かってるのかなーって気になってて」


 るりは「運営の人たちもすごい人数だったし……設営とかも全部スポンサー負担って、すごくない?」ときらきらした目で言う。


 結衣は、ほんの少し肩をすくめて苦笑いした。


「たしかに“スポンサー”って、単純に見ればお金だけ出して終わり――みたいに見えるよね。

でも実はこれ、結構利益も出てるんだよ」


 みやびが目を丸くする。


「え、そうなの?だってイベントのグッズやチケット収入って主催事務所のものじゃないの?」


 結衣はコーヒーを一口飲みながら、“いかにも裏方慣れしたプロの顔”でやさしく解説する。


「うちはライトブルーファンド本体だけじゃなくて、グループ企業もいろいろあって――

イベント設営や配信技術、グッズ製造からチケット発券、EC運営まで全部“グループ企業”で受託してるの」


「たとえば、他の事務所さんが主催するイベントでも、設営や配信の仕事はうちの系列が受け持ってるんだよ。

 今日も他の事務所さんの分、うちが受託してるから――

 スポンサーで広告を打ちつつ、同時に“業者側”としてちゃんと利益も出してるんだ」


 ノアが感心して、

「まさか、主催側にも裏側にもいるとは……」


「じゃあ、私たちが今回の分で作ったグッズも?今日の限定グッズとか、制作と販売まで女帝様サイドの関連会社さんなの?」


 るりはびっくりしたように声を上げるが、結衣は明るく笑う。


「うん、イベント用のグッズやノベルティも、自社ECで受託制作してるよ。

 そちらの事務所としてイベント開けば、チケットやグッズの売上が直接自分たちに入るし――

 さらに設営や運営側で他社の案件も受けてるから、全体で見ると意外とバランスよく収益になる。

 ファンド本体にまるごと戻ってくるわけじゃないけど、“手広くやるメリット”は大きいんだよ」


「なにより――」


 結衣は少しだけ真面目な表情に戻る。


「こういう大型イベントって、実は“広告”としての価値がすごく大きいの。

SNSで名前が拡散されるだけでもリターンになるし、グループ企業の取引先もどんどん増える。

“大きくやる”ことで“次”の仕事やコラボに繋がるから、

単純な“持ち出し”以上の意味があるんだよね」


「大人の世界、奥が深い……!」


 みやびがと小声でうなり、


「なんかもう、普通のスポンサーとはスケール違うんだな~」


ノアがしみじみとつぶやく。


「じゃあ次もいっぱい呼んでくださいね!」


るりは明るく笑い、結衣はさりげなく手を差し出した。


「もちろん、次もその次も。みんなの夢が続く限り――全力で支えるから」


楽屋の空気はいつしか明るい笑いに包まれて、

“スポンサー”という肩書きの向こうに、

“仲間を守り、夢を広げる”本当の結衣の顔が、

そっと垣間見えていた。


――この祭りは、まだまだ続く。

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