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ライトブルーファンド~億り人がVTuberでやり過ぎる  作者: 桐谷アキラ
仮面の向こう、託された真実
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第35話 東都リアルティにおける日常風景

昼休み、東都リアルティ本社ビル12階――。

営業企画部のランチタイムは、どこかのんびりした空気に包まれていた。


芽衣が持参したお弁当のふたを開け、「今日も地味に頑張りました弁当!」と、周囲の笑いを誘う。

「また自作? 最近インスタに上げてたやつ?」

野田がからかうと、

「違うよ~、あれは見栄え用。こっちはリアル生活用!」

と芽衣が笑い返す。


結衣は今日も社食の彩りサラダとパン、そしてお気に入りのハーブティー。

「芽衣ちゃん、卵焼き美味しそうだね。ちょっとだけ交換しない?」

「やった!結衣さんのパン、ほんとに美味しそうだもん」


ランチテーブルの一角、女子社員も男子社員も混ざって、わいわいと食事とおしゃべりが続く。


「週末、みんなでお花見どうですか?」

「え、行きたい!会社の近くの川沿い、今年すごく桜きれいだって」

「南野さん、来てくれます? 絶対場が和みますから」

みんなが気さくに誘い、結衣も「行けたら絶対行きます」と柔らかく答える。


「結衣さん、最近おすすめのカフェとかある?」

「うん、この前できた駅前の新しいベーカリー、すごく美味しかったよ」

「そういう情報、もっとシェアしてくださいよ!」

会話はカフェ情報やおしゃれランチ、最近読んだ本やドラマの話題まで尽きない。


「ねえ、芽衣ちゃんって最近元気だよね?」

「それはたぶん、結衣さんが隣にいるからでしょ」

「えー、それ言う? でもたしかに、ここにいると落ち着くっていうか、癒される感じ」


みんなの中心にいるのに、結衣は決して主張しすぎず、

自然体で場の空気をふんわりまとめてしまう不思議な存在感だった。



食事が終わると、芽衣がそっと結衣に声をかける。

「ねぇ結衣さん、今度また悩み相談してもいい?」

「もちろん、何でもどうぞ」

「やった!野田くんも来る?」

「え、俺も?……まあ、暇なら!」


そんな他愛ない会話に、

隣の席の女子社員も「私も混ぜて~」とにこにこ手を振る。

 

春の風と窓から差し込む柔らかな光の中、

東都リアルティの昼休みは、今日も静かで、どこか幸せな気配に包まれていた――。


***

その日の午後、仕事がひと段落した企画営業部では、

「今夜、女子だけでカフェ行こうよ!」という芽衣の一言がきっかけで、

結衣・芽衣・後輩の沙耶香・そして事務の若菜の四人が駅前のカフェに集まっていた。


「この時間帯、空いてていいね。ここ、パンケーキがふわふわでおすすめなんですよ」

芽衣がうれしそうにメニューを広げる。


「結衣さん、甘いものも食べるんだ?」

「うん、実は仕事終わりはすごく甘党かも。今日は好きなだけ頼んでいいよ」

「えー、いいんですか!じゃあ私は苺のミニパフェにしようっと」

若菜がはしゃいで注文ボタンを押す。


「この前、芽衣さんに連れてきてもらった焼き菓子屋さんも美味しかったです」

沙耶香が思い出し笑い。


飲み物が運ばれてきて、おしゃべりが弾む。


春の夜、駅前のカフェ。

仕事帰りの女子たちの輪は、ほんのり甘いパンケーキの香りと、ライトな笑い声に包まれていた。


テーブルには、芽衣、若菜、沙耶香、そして結衣。


芽衣がふと、お財布を取り出してスマホアプリをチラッと覗く。


「……そういえばさ、私、こないだ東都リアルティの株、1000株も買っちゃったんだよね」


突然の告白に、若菜と沙耶香が同時に「えっ、株?」と声をそろえる。


芽衣は照れくさそうに笑った。


「ほら、この前の“お祭り”ノリで買っちゃったんだよ。なんか会社にいると愛着湧いてきて……でも、正直これからどうしようかなって。売り時とか全然分からなくて」


沙耶香が不安げに尋ねる。


「株って、そんな簡単に持ってて大丈夫なの?ニュースとかで“暴落”とか“上がった下がった”って見ると、怖くなっちゃう」


若菜も心配そうにうなずく。


「でも芽衣さん、ちゃんと配当ももらえるし偉いよ。私なんて資産運用とか手を出す勇気ないし」


芽衣は手のひらを頬に当ててため息をついた。


「正直、何が正解かわかんなくて……でも、なんかこの会社で頑張ってるからこそ応援したいって気持ちも強くなっちゃって。

だから“記念グッズ”って気分なんだよね」


結衣は、芽衣の横顔を見つめながら、ふっと小さく微笑んだ。


(芽衣ちゃんは、あの時本当に勢いで東都の株を買った。

でもそれは、この会社で毎日汗を流して、自分なりの誇りを持って働いているからこそ出てきた“応援の気持ち”なんだと思う)


結衣はカップをテーブルに戻し、

優しい声で語りかける。


「応援したいって気持ち、大事だと思う。

自分が“好き”だとか“信じたい”って思えるのは、とても素敵なことだよ」


芽衣は少し安心したように笑う。


「でも実際、上がったり下がったりで気が気じゃないよ……。このまま持ち続けていいのかな、って毎日アプリ開いてドキドキしてる」


沙耶香が口を挟む。


「ねえ結衣さん、どうしてるんですか?そういう時。

結衣さんは“絶対ブレないメンタル”ってイメージあるけど、やっぱり心配になったりしません?」


結衣はしばらく考え、少しだけ自分の内面を言葉にしてみる。


「……実は私も、最初は小さな金額でもすごく緊張してたよ。

“減ったらどうしよう”って、何度もアプリを開いて、ちょっと下がるたびに心臓バクバクしてた。

でもね――どんなに勉強しても、未来の値動きは誰にも分からないものなんだ」


若菜がうなずく。


「やっぱりそうなんだ……安心したかも」


結衣は、みんながほんの少しでも前向きになれるように、言葉を選びながら続ける。


「“応援する”って感覚、とってもいいと思う。

でも、お金は生活の安心が最優先だから、“困ったらいつでも売っても大丈夫”って思っておくのが一番。

“ずっと持ち続ける”って自分を縛りすぎなくていいし、逆に“絶対にすぐ売らなきゃ”って焦る必要もない。

大事なのは、“自分のペース”で楽しむこと。

芽衣ちゃんの株も、“今は応援”でいいし、本当に困った時は、無理せず手放してもいい。

どちらでも、芽衣ちゃんが選んだことなら大丈夫だよ」


芽衣は、目をぱちぱちさせて少し照れた。


「……結衣さんの言葉、なんかほっとするなぁ。」


結衣は、内心でこう思う。

(本当は、どんなに資産が増えても、不安や迷いはゼロにならない。

私自身だって“責任”とか“守りたいもの”が増えるほど、小さな悩みも大きな決断も増えていく。

だからこそ、みんなが自分の幸せを一番大切にできるよう、そっと背中を押してあげたい)


若菜も、自分の悩み事を続ける。


「その手の話で言えば私は、親が住宅ローンのことで悩んでて……。

“もっと家にお金入れて”って言われるけど、自分のことも不安で、どうしたらいいのか迷ってる」


沙耶香は「私も一人暮らし資金どうしようか悩んでるんです」と打ち明ける。


結衣は二人の話にしっかり耳を傾けてから、

「生活や家計のことは、みんなそれぞれ事情が違うから、“こうしなきゃ”って決めつけなくていいと思うよ。

誰かと比べなくていいし、困ったら小さなことでも相談してほしい」

とやさしく言葉をかける。


そのあとは推し活やグルメ、旅行資金の話題でまたみんなの笑いがはじける。


カフェを出る頃には、

それぞれの胸の中に小さな安心と、

”また困ったときは頼っていいんだ”という気持ちが残っていた。


夜風がふわりと吹き抜ける。

みんなで歩く帰り道――結衣は少しだけうれしそうに微笑み、

“これからも、誰も困らないように支えていきたい”と、自分にそっと誓うのだった。

会社員としての日常回です。

もし差し支えなければ方向性などの参考にしたいのでブックマークや評価、感想など頂けると大変励みになりますので、お手数ですがよろしくお願いします。


別の作品も始めてみました。

ファンタジー要素が強くて方向性がだいぶ違いますがもしお時間があれば

「ダンジョン時代の竜娘ライフ ~ヒーラー系スキルと秘密の力~}

https://ncode.syosetu.com/n4035kt/

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