表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

離島警察署。

0445時。


駐在所の木村巡査部長は、非常用無線機を何度も確認していた。通常の警察無線は完全に使用不能。携帯電話の通信も著しく不安定になっている。


「木村さん!」


背後から声がかかり、振り返る。漁協組合長の古谷だった。


「港に不審な動きが」


木村は瞬時に判断する。通信が遮断された今、情報収集と住民の安全確保が最優先だった。


「古谷さん、漁協の無線は?」


「だめだ。あちらも妨害されている」古谷の声に焦りが混じる。「でも、漁師たちが目撃している。小型ボートが接近してきているって」


木村はため息をつく。27年の離島勤務で、こんな事態は初めてだった。


「避難の準備を」


***


陸上自衛隊第15旅団指令室。

0450時。


「第一波、輸送機に搭乗完了」


指令室には、緊張が満ちていた。離島への展開命令が下されてから、わずか15分。部隊は驚異的な速さで対応を開始していた。


「気象条件は?」旅団長の織田が問う。


「風速8メートル、視界良好」参謀が報告。「航空運用に支障なし」


しかし、問題は別にあった。


「離島の現状は?」


「通信が遮断されています」参謀が続ける。「警察署との直接連絡は取れず。最後の通信では、港付近に不審な動きが報告されました」


織田は地図を見つめる。港から警察署、そして戦略的に重要な高台まで。相手の動きを予測しようとしているかのように。


「第一波の主目標は?」


「警察署との合流、および高台の確保です」


織田は黙って頷いた。


***


技術研究本部、第三実験室。

0455時。


「新たな通信パターンを検出」田村美咲の声が響く。「海底装置が...待って、これは...」


画面上のデータが急激に変化する。


「不審船との通信が活発化」システムエンジニアが報告。「まるで...何かの開始を告げるシグナルのような...」


佐々木課長が前に進み出る。「解読は?」


「断片的ですが」田村の指がキーボードを叩く。「"開始"という意味の暗号と、時刻らしき数値を検出。それと...」


彼女の声が途切れる。


「何か?」


「小型ボートの位置情報。そして...」彼女は息を呑む。「目標地点の座標」


***


離島警察署。

0500時。


木村は双眼鏡を下ろした。港の周辺で、確かに人影が動いていた。全員が黒い作業服のような服装。そして、何かの機材を運んでいる。


「木村さん」古谷が懸念を込めた声で言う。「あいつら、漁協の倉庫に向かっているみたいだ」


その時、遠くでエンジン音が響いた。


木村は空を見上げる。輸送機の轟音。自衛隊の到着を告げる音だ。


しかし同時に、港の方からも新たな音が聞こえ始めていた。


小型船舶のエンジン音。そして、複数の人間の声。彼らも、また、何かの開始を告げているかのようだった。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ