初めての雨の夜
日中、空は灰色の不吉な空模様となり、春樹と東雲がギャラリーで別れを告げた直後、雨は激しく降り始めた。 慌ただしく通りを行き交う人々の姿が徐々になくなり、水滴が舗道を叩いた。 春樹は、もう少しここに残って散策しようと思ったが、土砂降りの雨は散策には不向きな時間帯であることがわかった。
天候が悪化しているのを見て、シノンは春樹を車で家まで送ると申し出た。 思いがけない誘いだったが、大歓迎だった。 雨のおかげで緊張がほぐれ、二人の絆が深まったのか、車に向かう途中、二人の会話はよりリラックスしたものになった。
シノンの車は、革張りの内装の洗練された黒のセダンだった。 春樹が助手席に座ると、東雲はソフトな音楽をかけ、ワイパーを回し、雨音とともに心地よいリズムを刻んだ。
-近くに住んでるから、よかったらうちで飲まない?
春樹は、東雲との時間を早く終わらせてはいけないと思い、笑顔で同意した。
東雲の家は、モダンでありながら居心地の良い優雅な邸宅だった。 中に入ると、外の天気とは対照的な暖かさが感じられた。 シノンはハルキをリビングルームに案内した。センスよく飾られた大きな窓からは、心地よく守られた場所から嵐を眺めることができた。
何か飲み物を用意しながら、会話はスムーズに続いた。 シノンは自然な優雅さでキッチンを動き回り、春樹は彼の存在が静かだが強烈なエネルギーで空間を満たしている様子に感嘆せずにはいられなかった。
-ワインはお好きですか? -上品な棚からボトルを取り出して、東雲が訊ねた。
-はい、大好きです」と春樹は答えた。
シノンは繊細なグラスにワインを注ぎ、二人は窓際のソファに座った。 新しい出会いとこれからの友情の約束に乾杯しながら、二人の視線は言葉を超えた激しさで交わった。
会話はより個人的な話題に移り、春樹は自分の人生や芸術への情熱について詳しく語った。 シノンは感嘆と好奇心の入り混じった眼差しで春樹を見つめ、熱心に耳を傾けた。
-アートは、言葉にできないものを表現する方法だと思ってきたんだ」と春樹は言った。
-そして、言葉では伝えきれないこともあると思うんだ」シノンはそう答えながら、春樹に少し近づいた。
一瞬の沈黙の後、東雲は身を乗り出し、春樹と唇を重ねた。 窓から落ちる雨が二人の情熱のリズムを刻んだ。
夜も同じように激しく更けていき、ついに別れるとき、二人の関係がより深いものへと大きく前進したことを実感した。 シノンは単なる友情以上のものを約束するような目つきでハルキをドアまで見送った。 別れは暗黙の約束で結ばれ、春樹は嵐の中で何か特別なものを見つけたような気がした。