表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

対異世界武器戦闘術

ミリタリーチート能力者と戦った冒険者の顛末

作者: 山田 勝

「ヒドイ・・グスン、グスン、お父様は、見た目は悪人顔です・・・私も演劇の悪役令嬢にそっくりと言われています・・・でも、殺される謂れはありません」



 お父様は貴族です。領民に、頼られております。領主ですから、自領を富ますために、悪いこともしてきたでしょう。


 しかし、今回は、全く非はございませんわ。

 この領で、悪い商売をしている輩を懲らしめていたら、

 突然、殺されました。


 ええ、相手は異世界人です。


 しかも、悪びれることもなく、


『君、悪役令嬢だよね。お父さんに虐められていた?大丈夫?』

 と聞いてきたのですわ。


「そこは、訳わからないな。異世界人の思考か?」


「奴は、王家の保護を受けております。不服を申し立てたら、決闘で、ケリをつけろ。決闘裁判をしろと言われました」


「ほお、それで、俺に依頼をしたのだな」


「はい、異世界人殺しと高名な貴方様に」


「おい、おい、俺を物騒な名で呼ばないでおくれ、俺は、ガッシムと言う名があるのさ。アカデミー崩れの平民だ。

 ところで、異世界人のタイプは?勇者三職だったら、お角違いだぜ」


「何でも、鉄の杖を持ち。礫を放つそうです」


 ・・・ヨッシャ、当たりだ。


「俺の専門だ。依頼を引き受けよう」

「有難うございます」


 俺はガッシム、30歳の冒険者だ。変わっているのは、アカデミー出身で、ミリタリーチートと呼ばれる対異世界人専門なのだ。


 異世界は魔法がないが、文明が進んでいる。騎士団は強力だ。全貌が分からない。

 異世界の戦術や武器を専門に研究していた。

 しかし、いくら、アカデミーで、論文を書いても、平民出身の俺には、日の目を見ない。


 アカデミーにあった。対異世界武器戦闘術の本を拝借して、市井に出た。

 困っている人を助ける目的と、研究のためだ。


 まず。ミリタリーチートと呼ばれる者は、少数派だ。

 時々、現れる。

 大まかに言って、二種類に分かれる。


 この世界に溶け込み。長い冒険者の生活を送る者と、

 序盤に消えるタイプだ。

 長い冒険者生活を送る者は、常識がある奴だ。だから、こんなことはしないよな。


 さあ、奴と対面だ。どっちだ?常識がないから序盤に消えるタイプだろう。


「初めまして、冒険者のガッシムと申します」


「あれ、こんなおっさんが、決闘の相手?!」


「はい、冒険者ギルドでは、主に、コンサルタントをしております。それと、魔道士とC級冒険者の7名です。名前は・・」


「あ、いいよ。どうせ。すぐに終わるから、あれさ。明らかに、か弱い商人を虐めていたから、僕が仲裁に入ったんだよ。その商人たちも、戦闘補助で参加するね」


「どうも、ムカデ商会のムカデとその家族になります」


 ほお、旅の経験が長そうだ。こいつは手強そうだ。

 こいつらが、釣り目の令嬢の領で、ネズミ講をしていたのだな。

 それを、領主の親父がやめろと恫喝をして、懲らしめていたところをこいつが殺したと。


「エへへへ、田舎のお貴族様には、金融が分からないようで、不幸な事故になってしまいました」

「それでは、決闘の方法ですが・・・」


 と言えば、相手はこの世界を舐めきっている子供だから、


「そっちが決めていいよ。どうせ魔法とか剣でしょう」


 ってな事を言う。


「では、そちらの得意なルールで、市街戦ですか?それとも、野戦をご希望ですか?市街地でしたら、人払いをすることになりますが・・・」


「野戦だな。僕は、森林の方が得意なんだ」


 と、かくして、近くのルーンの森で、決闘と相成った。


 あいつ、名乗りもしない。

 おそらく、すぐに消えるタイプのミリタリーチートとみた。




 ☆☆☆決闘当日


「ええ、森で、先に、大将を倒した方が勝ちです。大将のガッシムさんが、死んだら、スズキ殿の勝ち。逆もしかりです」


 ・・・スズキって名か。


「双方、森の中での戦闘になります。これで、良ければ、契約魔法を掛けますが・・」


「問題ありません」

「何だ。人をフラッグにして戦うのか。余裕だよ。僕は何回もやっていたから」



「契約の精霊の名において・・・」


 ピカッ!


 これで、もし、先に森から逃げ出したら、首が飛ぶ魔法だ。


「物資の補給も含めて、森をでたら、即負けですからご注意を」

【はじめ!】



 両陣営は森に入った。

 物資が尽きるまでには、決着をつけなければいけない。



 ザワザワザワ~~~~


「お義姉様、ガッシム殿は、細身で、頼りなさげです。大丈夫でしょうか?」

「メルル、ガッシム殿は、ミリタリーチート3人、倒しておりますわ」

「まあ、人は見かけによらない。お義父様と同じですわ」

「ええ、お父様の仇を取って頂けるでしょう」


 私たち義姉妹の仲は良く。お義母様は、お父様の戦死した戦友の奥様、生きるために再婚したわ。

 それを、それを、スズキは、義妹と義母に虐げられているのでしょう?とか抜かす。

 許せないわ!




 ☆☆☆二日目


 転移者陣営に衝撃が走る。

 一人殺され、食料が無くなった。昨晩、誰かがキャンプに侵入したのだ。


「何故だ!食料が入った魔法袋を奪われた!ポーター役のハンスが、殺された!聞いてないよ。

 見張りは何をしていたの!」


「ちゃんと、木の上で見張りをしていました。夜もです!」


「そんな。馬鹿な。これじゃ戦えないよ!」



 ・・・・・



「ガッシムさん・・・まさか。こんな方法で、簡単に奴らの陣地に侵入できたなんて」


「ああ、さすがに、大将を殺せなかったけどな。天幕の前に見張りがいたから、「じゅう」を撃たれたら危なかった。これで、勝ちだ」


 この方法で、一人のミリタリーチートを殺した。


 ・・・フフフ、何をしたかって、ただ、夜、草原を中腰で歩いて、奴の陣地に入ったんだ。




 ☆☆☆昨晩


『あの木の上に、見張りがいます』

『シィ、この発言の後は、無言だ。付いてこい。いや、俺のやり方を見て、大丈夫そうだったら、付いてこい』


 コクッ


 ・・・・教本曰く。夜の見張りは、低い位置に置くべし。

 夜、高い場所から、低い位置は見えにくい。


 過去の戦訓で、夜、高台の見張りの下を、一個大隊(約800人)が素通りした事例があった。

 それから、かの世界では、二つの見張り場所が出来た。

 昼は高い位置。

 夜は低い位置。


 文明が進んで、大規模な夜戦が出来るようになってから、分かった事例だそうだ。


 そうだ。この世界では夜戦はリスクが高い。あまり行わない。

 松明をたいて襲う。夜に戦う戦法はあるがな。

 それか、少人数のカゲが忍び込むぐらいだ。


 奴らも、松明か、魔獣の足音を予想して見張っていたのだろう。

 ゆっくり草に隠れて侵入するのは想定外だったハズだぜ。


 ・・・・・・



 バン!バン!バン!


「お、撃ってきたな。最低300は取れ。奴に対面して、横に動け。これは訓練通りだ。まっすぐに後ろに逃げたらやられるぜ!」


「「「了解!」」」


「伏せたり。座って撃つようになったら、要注意だ」


「了解!」


 望遠魔法で、奴の撃ち方を確認する。

 しかし、奴は、座ったり、伏せたりはしなかった。

 いや、座ったりしているが、教本に載っている撃ち方とは違う。

 ただ、座って撃っているだけだ。


 こちらは、交代で24時間見張りを置く。

 昼は高台。夜は低い位置だ。


 夜、奴がやってきた。


 ガサガサガサ!


「(皆、起きろ。奴が来たぞ)」

「(よし、逃げろ)」


 バン!バン!バン!


 奴は俺たちを見失っている。

 でも、まだ、撃っている。流れ弾に当たったら、ヤバいな。

 夜だから、礫の軌道が、光って見える。


「見とけ。鉄礫の軌道を・・」

「思ったよりも、まっすぐに飛ばないな」

「ああ、弾の質量が軽い。風にも影響されるぜ」


 この森は、動けるところが限られている。

 林と草原が混じっている感じだ。


 奴らに後はない。狩りや魚を捕らなければならないが・・・だいたい予想が出来る。


 ドサッ!


「うわ、落とし穴が!木のヤリがびっちり、しかも、クソがぬってある!」

「ポーションはないよ!」

「皆、僕の足を引っ張らないでよ!」


 お、声がここまで聞こえてきた。


 過去の、これで、ミリタリーチートを一人殺した。


 ここで、大将が、死ねば簡単だが、そうはいかない。


 奴は仲間の後ろを歩いている。


 パラパラ!


「雨が降ってきたな。そろそろ、もう少し待つか」


 3日もたつと、奴の『じゅう』の不具合がここからでも分かるようになる。



 バン!・・・・カチャ、カチャ


「また、故障!銃って錆びないんじゃなかったのかよ!」


 もう、10人いたムカデ一家が、5名ほどになっている。ワナで死んだのか。動けないのか。


 教本曰く。

 映画では、戦闘シーンばかりが描かれるが、兵士が長い時間、銃と靴の整備に時間を費やすのは省かれる。

 銃は錆びにくいだけで錆び。整備しやすい銃は整備しやすいだけだ。


 日本の場合、ほとんどの者が軍役に付いていない。

 これは、経験しなければ分からないことだ。


「おそらく、大将は軍務の経験はなく、一端、「じゅう」を召喚したら、勝敗が決するまで、召喚を解けないタイプだな。そろそろ一週間か。頃合いかな。逃げるのはやめ。陣地を作るぜ!」



「「「おう」」」


 森の開豁地に

 小麦袋に土を詰め。土嚢にし、口の字型の陣地を作る。1.5メートルの高さで、二段の厚さ。


 ここで、適当な木を案山子にして、挑発する。


 だいたい来る方向は分かっているが、油断できない。

 360度に見張りを置くぜ。


 ピカッ!


「ガッシム、光あり。奴さん。草原に隠れて、進んでいるよ。3時の方向」


「ほお、光るタイプの照準魔道具か、案山子を三回回せ」


 クルクル~~~


 バン!・・・バン!


 やはり、『じゅう』の動きが悪いようだ。

 整備は・・教育をしないと、多くの者が、分解できないと書かれていたな。

『じゅう』の煙は目立たない。音も小さい。


 しかし、遠めがねのような『すこーぷ』は反射するものもあると書かれている。


「だいたい100メートル先、ここまで接近させたか。中々だな。案山子を一回お辞儀させろ。これで、3時の方向、陣地から100メートル先の合図になる」


 これで、エンドだ。


 過去、これで一人殺した。その時は、この陣地の後方に、騎士団を隠しておいて、弓で、面制圧をした。今日は別の方法を試そう。


「はあ、はあ、はあ、皆、役に立たない。見張りは任せておいて下さいとか言っていたのに、もう、三日も食べてないじゃないか・・・クソ、弾は召喚できるけど、銃は戦闘が終わるまで召喚を解けないなんて、女神の奴、欠陥のスキルを寄越しやがって・・・弾が切れたか。

 マガジン交換・・・・ウワワワーーー、人が出てきた!」



 突然、10メートル左右から、人が出てきたように見えた。

 ガッシムの仲間が、隠蔽魔法で隠れていた。

 この魔法も10メートルまで近づくと、相手に悟られる類いのレベルである。


 しかし、これで十分である。


 ズボ!ズボ!


「はあ、はあ、もう、いい。ガッシムの所に帰ろうぜ」

「ああ、首を取ろうか。しかし、この箱を外すまで待てという命令の意味が分かったぜ」



 その時、別の銃声が聞こえた。


 バン!バン!


 銃弾は、ガッシムのいる陣地に着弾する。


「何だ。第三勢力か?助太刀がいたのか?」


「見張り、敵は!」

「発光なし!・・・方向は、同じく3時!」


「鑑定士!音と着弾音の鑑定!」

「まさか、一秒の半分!」


 ・・・1秒間に音は約1000メートル進むとある。

 ということは、400から500の距離から撃っているのか!


「安心しろ。この土嚢は鉄礫を通さない。全員頭を引っ込めろ!」


 ・・・そうだ。教本曰く。

 小銃弾は、土嚢で止められると、


 しかし、きちんと、下記の図のように、積まないと、まれに、土嚢の隙間から、銃弾が通ることがある。


 この本を書いた者は、マメだ。戦闘中にこんな綺麗に積むことは難しいな・・・


 バシュ!


「ギャア!」

「ヒィ、鉄礫が、土嚢を突き抜けて来た」

「何だと!まさか!」


「うわ!」


 ・・・俺は脇腹を撃たれた。

 陣地を逃げた者は撃たれた。

 暗殺で出ていた者は、確認が取れない。

 逃げることに成功したのだろうか?


 やがて、草をかき分ける音が聞こえてきた。


 シュン!ガシ


 土嚢の壁にかぎ爪がかかる。ロープがついていて、引っ張って、壁を崩すのだろう。


 ドタドタドタ~~~


 いたのは、全身マダラ模様の衣装を身につけた小柄な・・・女の声だ。


「ヒドイ土嚢の積み方だ。お前が、ガッシムか?」


「そうだ・・・」


「アカデミーから、本を盗んだのはお前か?」


 ・・・もしかして、本を取り返しに、まさか。


「この本は私のお父様が書いた」

「アサカ一族か・・・」


 アサカ一族、数十年前に転移してきた異世界の騎士団の末裔か・・・・

 召喚する術が子に受け継がれているか?

 目が薄い青、髪は、鉄兜で見えないな。混血したか。


「なあ、教えてくれ、この本は、基本編1となっている。まだ、兵器があるのか?危険な兵器がこの世界に来るのか?・・・グフ」


「あるが、心配することはない。この本は聖王国の依頼により。作成したものだ。あちらの世界はほとんど軍役がない。

 素人が使えるのは、銃だけと思って良い」


 武装ゲリラの装備は、基本、小銃と使い捨ての対戦車ロケットRPG7と車だ。

 最新式の戦車が武装ゲリラに鹵獲されても、運用される例はないと聞く。

 せいぜい。骨董品の戦車だ。

 誘導弾も使えまい。



「訳分からないが、そうか。『じゅう』だけを考えれば良いのだな。俺はどうだった」


「うん。スゴイ。この世界の住人は侮れない」


「そう言ってくれるか・・・」



「本は返してもらう」


「後、ポーションを使うかは自由だ。依頼は本の回収だけだ」



 バタバタバタ!


 ・・・あれは、空を飛ぶ魔道具か?滞空している。

 縄ハシゴが出てくる。

 人がいる。


 会話がここまで聞こえてくる。


「お嬢!無反動で撃っちゃえば早かったのでは?」

「殺したくなかった・・」

「本音は?」

「試したかっただけ」


 そうか。あの女は意地で、土嚢の隙間を撃ったのか?

 次は、気をつけよう。



 その後、ポーションで全員助かった。


「ガッシム!すまない。俺たちは逃げた。不気味だったんだよ!どこにも姿が見えなかった」


「かまわないよ。戦争だったら、そうなる。俺もお前達の立場だったら、逃げて、その首を持って、雇い主に報告していたさ。でないと勝ったことが分からないぜ」


「いや、まだ、俺たちは報告していない。噂話で持ちきりだから知っていると思うけどよ

 ガッシムが首を持って、報告しなよ」


「え、令嬢に首を見せろと」


 王国の転使者名簿から、一名、スズキの名が消えた。

 特に、騒ぎもなく、対策会議も開かれなかった。

 序盤で消える転移者が多いせいかもしれない。






最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ