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Specters

Specters2

作者: 橋元 宏平
掲載日:2022/11/17

「Specters」のその後の小話。

 特殊精鋭部隊「Specters(スペクターズ=バケモノども)」

 アメリカ軍に所属する特殊部隊員から結成された「Specters」は、最も過酷な戦場の最前線へ派遣される。

 かつて五十名いた部隊は、いつしか、少尉と曹長のふたりだけになっていた。

 そして「Specters」は、少尉と曹長のバディを指す言葉となった。

 少尉と曹長は、同郷の誼(どうきょうのよしみ=同じ故郷を持つ、親しい関係)であり、親友である。

 同じ二八歳であるにも関わらず、階級に差が付いたのは、それぞれ理由がある。

 少尉は、生まれつき身体能力が高かった。

 特攻隊長として戦場を駆ける姿は、飢えた獣のように獰猛(どうもう=凶悪で乱暴的)な戦闘狂。

 殺人衝動が激しく、敵、味方、民間人、手に掛けた人数は数知れず。

 軍人としては最強だが、人として守るべき倫理観が欠けていた。

 曹長は、生まれつき体が弱かった。

 走り回ることが出来ず、近接戦闘は不得手という欠点を持っていた。

 その分、誰よりも狙撃手として訓練を積み、精密射撃においては右を出る者はいない。

 しかし、狙撃手なれども忍ばない。

 大声で陽気に唄い、豪快に笑う。

 どこからともなく能天気な歌が聞こえてきたら、命はないという噂すら流れている。


 アメリカ某所に設置された駐屯地(ちゅうとんち=陸軍が平時に駐在する軍事基地)に、ひとりの男がいた。

 男は、陸軍中将である。

 中将は、もともとは律令制における官職のひとつ。

 転じて、軍隊の階級で将官に区分され、大将の下、少将の上に位置する。

 英呼称は、lieutenant generalルーテネントジェネラル

 陸軍では、主に軍司令官、軍団長等(准将がない陸軍では、師団長)を務める。

 もっとも将軍、提督らしい地位で、超エリート軍人の行き着く階級と、言われている。

 軍組織での重要な要職につき、多数の幕僚、参謀を引き連れる。  

 その中将が、最近、くさくさ(面白くなくて、気分が晴れない)している。

 有能な「Specters」は、便利に使われすぎている。

 たったふたりの部隊であるから、機動力(きどうりょく=状況に応じて、素早く活動出来る能力)が高い。

 精鋭部隊(戦闘技術が高い者しか入れない部隊)なので、敵地への潜入や偵察や破壊工作、人質救出、対テロ作戦など、使い勝手が良い。

 傷が癒えないうちに、また次の任務へ駆り出される。

 それが、中将は面白くない。

 立場こそ違えど、中将は少尉や曹長と同い年で、三人は親友同士であった。

 親友達に手を伸べたいが、中将という地位がそれを阻む。

 何故、一緒に戦うことが出来ないのだろう。

 そんな自分が、歯痒くて仕方がない。 


「拠点占領作戦」から、数日後。

 敵さんの方から、「一時的休戦」を願い出てきた。

 お偉方(おえらがた=ここでは、首脳陣を指す)が合意し、「休戦協定」を調印(ちょういん=条約の文書に、お互いの代表が署名して、印を押すこと)。

「休戦協定」は、読んで字の通り、「戦争をお休みましょ」という約束。

 あくまで「一時休戦」で、「終結」じゃない。

 悲しいけど、これ戦争なのよね。

 戦争ってヤツは、一番上の人間の判断ひとつで、決まる。

「もう戦争、や~めたっ」っつってくれりゃ、今すぐにでも終わる。

 でも、戦争を止める訳にはいかない、「大人の事情」ってのがある。

 単純に意地の張り合い、思想の違い、領地や資源の奪い合いってこともあるけど。

 戦争が終わると、大勢の人間が、路頭に迷う(ろとうにまよう=生きていけなくなる)。

 多くの職業軍人は、自分の為に、命を掛けて戦っている。

 戦う以外能がない、脳筋野郎だからな。

 それに戦争は、経済発展の活性化と、軍需産業が潤うから、なくしたくても、なくせない。

 インターネットも保存食も、戦争の産物。

 みんな知らずに、戦争の恩恵に、あやかっている。

 皮肉なことに、戦争は人類にとって、必要不可欠なものなんだ。 

 だから、戦争は終わらない。

 戦争を止めた国が、あったとしたら。

 戦争で負けて、自分の弱さを認めて、戦わなくなった国だ。

 強い国に屈して、強い国を用心棒として、金で雇った。

 代わりに、高度経済成長と平和を、手に入れた。

 それも、ひとつの戦争の手だ。

 今回の「拠点占領作戦」は、いわば「兵糧攻め(ひょうろうぜめ=敵の補給路を断ち、欠乏させることによって、打ち負かす攻め方)」 

「兵糧攻め」は、歴史的にも古く、戦国時代から行われていた。

 有効的、かつ残酷で、非道な戦術のひとつとされている。

 敵は「国家総力戦(こっかそうりょくせん=国力を総動員した戦争)」を挑んできた。

 ところが、こっちが圧倒的大勝利を、納めちまった。

 向こうさんも、大事な補給拠点と、大勢の兵を奪われたのは、相当な痛手だったようだ。

 だが、こっちも「Specters」壊滅寸前の損害を負った。

「Specters」を失ったら、軍の士気(しき=兵達のやる気)が、ガクンと落ちちまう。

 そもそも、敵さんは、曹長を狙ったのが、大きな間違いだった。

 少尉を狙っても、おんなし(同じ)結果だったろうけど。

 ふたりのどちらかが倒れても、「Specters支援部隊」が黙っちゃいない。

「Specters支援部隊」は、「Spectersファンクラブ」みてぇなもんだから。

 ガチファンをブチギレさせたら、超絶怖ぇぞ。

「Specters陸上後方支援部隊」

「Specters海上支援部隊」

「Specters航空支援部隊」

「Specters潜入部隊」

「Specters衛生部隊」

 得意分野に分かれてるけど、どいつもこいつも「Specters」に忠誠を誓ったヤツらなのよ。

 俺の指示の元、「Specters」を主軸に、兵が一丸となって戦う(いちがんとなる=みんなで、力を合わせる)。

 でも、「Specters」本隊に、入隊志願者はいない。

 近距離戦闘の戦闘狂、少尉。

 遠距離狙撃の専門家、曹長。

 コイツらに、付いていけるヤツなんざ、誰もいねぇのさ。

 我が軍最強の特殊作戦部隊。

 噂によると、「死神」と「地獄の番犬」とかなんとか呼ばれて、敵さんに恐れられてんだと。

 ずいぶん、ご大層たいそうな二つ名(ふたつな=別名)じゃねぇか。

「Specters」は、戦場においては最強なのだが。

 ふたり揃って、頭のネジがぶっ飛んだアホな上に、天然ときている……要ツッコミ。

 敵さんに、教えてやりてぇわ。

「てめぇらが恐れてる『Spectersバケモノども』は、こんなマヌケ野郎共なんだぞ」ってな。

少しでもお楽しみ頂ければ、幸いに存じます。

もし、不快な気持ちになられましたら、申し訳ございません。

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