バイト終わりの夕方な男
それにしても何だったんだ。
お昼にしっかりとlineの中身は確認したけれど、何で彼女達はそんなに俺の作った曲に......。まぁ、これであのバカが彼女達に俺の連絡先を漏らしたことは確定したが。
やっぱり正解だったな。あれを俺が作ったとは言わなくて。知り合いが作った設定にしておいて助かった。
とりあえず、その知り合いはもうどこにいるかわからない。名前すらも覚えていないと答えておいたが、何故か彼女達が引き下がらないのでもうブロックした。なんせこれ以上色々と聞かれても、そもそもそんな知り合いはこの世に存在しないからな。どうしようもない。
でも、何だ? もしかしてあの曲を狙っているのか? まぁ、過程や結果はどうであれ出来としては自分でも中々のものだとは思っている。だからこそyoutubeで金にしたいと思っていたのに、あのバカと来たら中身も確認せずにライブハウスであの曲を垂れ流しやがったみたいだからな。だれが渡すか。少なくても今は生活の為にあれは誰にも渡すつもりはない。特に、ほとんど喋ったことのない様な得たいのしれない彼女達みたいな奴らには絶対に。
本当に何の意味があって彼女達はあの曲にあんなに執着してきたのだろうか。意味がわからない。
ただ、ついさっきようやくあのバカからlineに返事が来たと思ったら柄にもなくかなりの謝罪をされてしまった......。一体どうした、あいつらしくない。
これではいつもの様なストレス発散の為の全殺しができない。まぁ半殺しはするが。
「大室さん、今日はありがとうございました」
「え? いやいや、こちらこそ......」
そして、本当に礼儀正しい子だな、彼女。あと、また何だその可愛らしいお辞儀の仕方。
まぁ、騙されん。俺はそんなわかりやすい動きに騙されるような男ではないからな。そんな爽やかな笑顔で微笑まれても絶対にな。
それにしても、気が付いたらバイトも終わってもう夕方か。
腹減ったな.......。どうするか。晩御飯。
もう、本格的にもやしぐらいしか買えない。飢えるぞ。これ。
って、またlineの着信音? 今度は誰だ.......って、あのバカか。
えーっと、なになに?
って、マジか......。
あのバカはお詫びに俺に飯を奢る!? し、しかも、焼肉!?
嘘だ。どういう風の吹き回しだ。
今回ばかりは本当に迷惑をかけた? 反省している?
本当に頭でも打ったか? 打って気絶でもしていたからずっと返事もなかったのか?
らしくなさすぎる。なさすぎるけども焼肉......。
「ふふ、どうしました? そんなに熱心にスマホをのぞき込んで? あ、もしかして......彼女さんですか?」
「ん? 彼女、いやいやそんなのいるわけない。バカな男友達。バカなね」
やばい。本当にあのバカが何を考えているのかは全くわからないけれども、肉のことを想像すると口から涎が.......。
「へぇー、意外。いないんですね。こんなに優しいのに。へぇー、そうですか」
で、意外? どこがだ。ここまでくると嫌味だぞ。優しくて彼女ができるのであれば皆できている。そして俺は別にそこまで優しくない。
だから、その上目遣いと天使の様な微笑みはやめろ。別に勘違いすることはないけれどもやめろ......。下手をすればやっぱりこの娘、結衣ちゃん以上の天然な男キラーじゃないのか?
いや、だから騙されるな俺。天然じゃない。女は全て計算だ。いい加減にしないと本当に全て搾り取られるぞ。俺。
まぁ、今は搾り取られるものなんて何一つないんだけどな......。
にしても、焼き肉か。
まぁ、あいつにはCDも返してもらわないと駄目だしな。
あのバカがどうしてもっていうのであれば奢られてやらんでもないな......。
もしかしてあの曲があいつを大人にでもしたか?
とりあえず、カルビ、ロース、塩タン、イチボ、ザブトン、シビレ.......
とにかく今回は俺があのバカから何から何まで搾り取ってやろう。
やばい。本当に涎が止まらない。
まぁ、仕方がない。場合によっては不問にしてやってもいいな。
あぁ焼肉か。いつぶりだろう。