タイプはそうそう変わらない
「はい。ありがとうございます。こういうの初めてですごーく緊張していたんですけど、教育係が大室さんみたいな優しい人で本当に安心です」
バイトの新人の女の子、楓ちゃん。
蓋を開ければ、まさかのラーメン屋で以前に出会った女の子......。
まぁ、まだ数時間しか一緒に働いていないけれど。とりあえず何だろう。
ものすごく良い娘だな.......。それにかなりの清楚。
まだこれも初日で一概には言えないのかもしれないけれど、頑張り屋さんですごく素直。何か行動の一つ一つを助けてあげたくなってしまう自分がいてしまう。
新入生みたいだが、大学も同じみたいで要は後輩。
「このISBNコードって何ですか?」
「これは本を特定する為のコードでお客さんが欲しい本を探したりする時に使います」
「へぇー、そうなんですね。勉強になります。ありがとうございます」
動きもいちいち可愛いな。何だその本の持ち方......。
それに天然なんだろうけど距離感も近い。ものすごく。
そして話すたびに俺の目をしっかりと見てくるところや、彼女の身長的な部分も大きいのだろうが。そのおかげか、自然と彼女に上目遣いを連発されている様な錯覚に俺は陥ってしまう。声も何でそんなに可愛いんだ......。
何だろうか。彼女のこの結衣ちゃんよりも結衣ちゃんな感じ。
あざとい......。あざといんだけど、あの夏乃とかいう悪女とは全く違う。この娘の場合は狙った感じが全くしない。健気で完全なる天然のあざとさ。
「あ、もし宜しかったら後で休憩の時にlineとか教えてもらえたりできませんか?」
「え、あ、はい」
「ふふ、やった。ありがとうございます」
やった? やばいな。女性からこんな風にlineを聞かれたのって地味に初めてかもしれない、俺。しかも何でそんな嬉しそうに笑顔で.......。
って、バカか俺。本当にバカか。
今度こそ学習しろよ.......。さすがに。
女は全て計算で動いている。そう。例外はない。
こんなに健気で真面目な子も結局、俺に見せているのは表の顔でしかない。
要は人間関係を円滑にしていく為の処世術。結局、彼女は俺だけにではなく他の皆にもこんな感じに違いないだろう。いや、イケメンにはもっと可愛い顔を見せているのかもしれない。
危ない。また騙されかけた。
こんな天使みたいな娘。本来いるわけがないからな。
逆に言えば超一級品の詐欺師。本当に恐ろしい。
そして、彼女からlineを聞かれて思い出したけど。朝に彼女達からきていたline。まだ見てないな。俺。
今スマホは休憩室だから見れないけれど、何か嫌な予感がする.......。
と言うか、嫌な予感しかしない......。