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6/28(火) 小鳥遊知実④

「いいかげんにしなさい穂積!!」


「お気を確かに、会長!!」



 凛々姉と鈴見が叱責し、めいめいを取り押さえた。



「会長……。さすがに見苦しいです」

「だってえ……」


「話をややこしくするな穂積」

「これは許せない悪事!」



 やっと解き放たれた俺はその場にへたり込む。叫んで何回か意識飛びそうだった……。



いの(・・)もだ。チュン太は体調不良でここにいるのよ、わきまえなさい」


「そんなの、あなたに言われたくないわね。聞いた話だと、あなたがチュン子ちゃんを張り倒したんでしょう?」


「そ、それは……」


「!? 真の敵はかいちょー!?」



 音和の眼光がするどく光るが、凛々姉が発したオーラにより戦闘意欲はすぐに消滅した。



「やれやれ、もう気はお済みですか?」



 鈴見はため息をつきながら抱えていた吉崎を離した。やっと正気に戻ったらしく、吉崎いのはしゃんと背中を伸ばした。



「あたしとしたことが……新衣裳到着の興奮のあまり、我を忘れてしまっていたわ……。チュン……小鳥遊くん、大きなケガなどではなくてよかった。体調不良のところ悪かったわね」


「はあ……」



 なんだか調子狂うな。



「葛西詩織さんも。あまり無理はしないでね」


「えっ?」



 いきなり話をふられた葛西先輩の身体が小さく跳ねた。



「学校一の秀才と聞いていたからどんな子かと思ってたけど、わりと普通の子なのね。もちろんいい意味でよ。あなたとはまたゆっくりとお話ししたいわ」


「あ……。はい、ぜひ」


「ありがと。じゃあ行きましょう鈴見」


「会長、もう少しおしとやかにお見舞い遊ばされてください」


「別に遊んでないけど?」



 吉崎と鈴見が出て行った。


 やっと騒がしいのがいなくなり、力が抜けて元いたソファにどかっと腰掛けた。



「あいつ本当に嫌いっ!」



 音和が地団駄を踏むのを横目に、凛々姉に問う。



「凛々姉ってなんで吉崎と犬猿チックなの?」



 凛々姉は頭を振って隣に座った。



「虎蛇で大量に人を辞めさせた事件から嫌みを言われているの。あたしもいのも引かなくて、こうなのよ」


「ふーん」



 出会い方が違っていれば、気が合いそうにも見えるんだけどなあ。



「お待たせー! 葛西さん、おじいさんが迎えに来てるわよ」



 と、ドアから顔だけのぞかせて、保健室の先生が声を張った。



「さあ小鳥遊くん、支えてあげて!」



 あの人、俺も体調不良ってこと忘れてるな。まあ支えるけど。



「いえ、ひとりで大丈夫です」



 先輩はそう言うと、のろのろとベッドから降りた。カバンくらいはと手を伸ばしたが、それも遮られる。



「みなさんご迷惑をおかけしました。それでは……」



 頭を軽く下げ、ふらふらと保健室を出て行く先輩に、保健室の先生が付き添って行った。


 ひとり、またひとりいなくなる保健室。あとは俺たち3人だけになった。



「俺も帰るよ」



 あんだけ動いても意識しっかりしてるし、もう大丈夫そうだ。



「アンタたちだけで大丈夫?」



 帰りのことを凛々姉は言っているのだろう。音和が俺を支えて帰れるわけがないのは章々たる事実なわけだし。



「うん、普通に歩けそう。万が一立ちくらみでもしたら、音和に家に連絡してもらうよ」


「そう。じゃあ穂積、チュン太をよろしくね。校門まで一緒に出よう」


「おまかせ!」



 胸を張る音和を微笑ましく眺めながら、俺たちも保健室を出た。


 まだ外は明るく、日が落ちるまで余裕で時間がある。ゆっくり帰って、学科の復習をして。さすがに今日は早めに寝よう……。


 試験はもう明後日だ。

次はテストの結果が出る7/11(月)更新です。

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