表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/301

6/28(火) 小鳥遊知実②

 夏の暑さは夕方でも容赦なく体力を奪いにくる。校門前に立っていると、見知った顔が歩いてきた。



「あら?」


「凛々姉ー。よお」



 彼女は俺の前で足を止めた。



「勉強がんばってるそうじゃないの。今日も詩織待ち?」



 凛々姉はきょろきょろと周りを見ているが、残念ながら、俺ひとり。



「音和、かな。今日は勉強会やめてもらったんだ……」


「なによさっそくサボリ? 情けないなーチュン太」



 そしていつものように、バンバンと背中を叩かれる。

 たったそれだけのことなのに俺にとってはもうダメだった。


 眉間がギリギリときしみ、目の前が白くなる。足から崩れてうずくまった。



「ど、どうしたの!? そんなに強く叩いてないわよ!? 大丈夫なの、ちょっと!!」


「うー……」



 めまいがひどい。言葉がうまく出ない。



「体調悪いの? どこがつらい!?」



 凛々姉が隣にしゃがみ込み、背中をさすってくれた。下校中の学生は俺たちを横目で見ながら通り過ぎていく。校門前で恥ずかしいけど、動けない……。どうしよ……。



「小鳥遊くん! 小鳥遊くんっ!!」



 どこか遠くから名前を呼ばれた。そして誰かが走ってくる足音が聞こえる。



「えっ、ちょっと詩織っ!?」



 凛々姉の言葉を疑うわけではなかったけど、その目で確かめたくてゆっくりと顔を上げた。


 おーー、なんだと。上履きのままこの炎天下を、走ってくる葛西先輩が見える。これは幻覚?



「っはあ、はあ、はあ……」



 いや、幻覚じゃない。俺たちの側で彼女は立ち止まった。



「と、と、部田さん。っはあ、はあ、はあ……。ほ、けんっしつに……たかな…っし、はあ、くんを!」



 って、呼吸の乱れ方が尋常じゃない!? どんだけ走ってきたんだよ。


 頭が痛くて割れそうだしまぶたが重いはずなのに、どうしても心配で、様子を見ていないとって思って目を開いてしまう。



「わかってる。でも詩織、あんたもよ」



 凛々姉は葛西先輩がふらつくのを支えた。逆の手で俺の腕を引いて立たせてくれる。



「あんたも歩ける?」


「うん、なんとか……」



 ちょっと座っていたら落ち着いたので、俺もゆっくりと立ち上がった。


 音和来なかったな。あとでメッセージしとくか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ