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6/17(金) 野中貴臣③

――READY

      TO

        FIGHT!!



「……」


「……」



 まさかの俺も、入ったとたんにガンの飛ばしあいが始まるとは思わなかったよ、おい!!


 虎蛇では会長と葛西先輩の二人が仲良く弁当を広げていたが、会長と野中の視線がぶつかったきり動かない。


 誤算だった! この人ら知り合いだったのか!!



「……会長、野中と一体なんの因縁が」


「初対面だが」


「いや、この状態でそれはねーよ!!」



 普通につっこんでしまい、慌てて口を押さえる。


 しかし会長は俺の存在など見えないものとするように、対象物から目を外さない。


 あー良かった☆

 ……じゃないっ!



「じゃあどうして睨んでるの」


「勘」



 この会長様は〜〜〜っ!


 ああそうだこの人、気に入らない人間は少しのお慈悲もなく辞めさせるような人だったわ。


 んじゃあ野中は!? 過去に一方的になにかされたとか? 超ありえる——。



「野中、会長にひどいことされたり?」


「ない」


「じゃあなんで!」


「第9勘」


「3つ増えてるしそれどこ!?」



 ああもう! 意外と二人はお似合いなんじゃないですかね!!(前向き)



「知ちゃんおなか空いたんだけど」



 音和がぐずり始めた。マイペースかお前は。



「まあまあ。とりあえずどうぞおかけください」



 こんなときでも動じない、まるでアンドロイドな葛西先輩にすすめられて、俺たちは先輩の向かい側の窓際に並んで座った。


 なぜかふたりも、葛西先輩の言うことは聞けるようで、バチバチの視線がほどけた。


 とりあえず会長の席と野中の席は離しておこう。



「3人ともお茶でいいですか?」


「はい、ありがとうございます」


「えっ、お茶出るの? すげーなここ!」



 初めて虎蛇に入る野中は、興味深そうに室内を見回す。

 俺は席を立った先輩の背中に声をかけた。



「先輩のおかげで助かりました。いつも落ち着いていてさすがっすね」



 缶から直接、急須にお茶の葉をぱらぱらといれながら先輩は答えた。



「ロボですから♡」



 振り向いたその顔に、満面の笑みを携えて。


 ギクリ。心の声が読まれていた!?


 コホンとひとつ咳をして、隣の野中のほうを向く。



「つーわけで、なんだか誤解があったようだけどこの人がうちの会長」



 初見らしいので紹介してやることにした。



「どうも。部田凛々子よ」


「とりた、ねえ。どういう字書くの?」



 野中のタメ口に少しむっとした会長だが、頑張って抑えてくれたようだ。口の端をぴくぴくと震わしつつも、律儀に質問に答える。



「部活動の部に、田んぼの田。凛々しいに子で凛々子」


「ああ、ぶ、た、ね。ぶた。ふうん」



 ガタン。

 無言で会長が立ち上がった。



「……」



 あああああ。どす黒いオーラをまとっていらっしゃる!!!

 野中ぁっ!?



「ふふん」



 笑ってる!? こいつわざとかーーー!?



「お前、ケンカ売る相手はちゃんと選べよ頼むからあああああ!!」



 顔面蒼白半泣きで野中のシャツの襟元を掴むが、遅かった。



「チュン太、そいつ押えてて。今なら手から妖刀が出るやも――!!」


「やもじゃねー!! 落ち着いて会長っ!! つか野中も謝れバカッ、カメハメハは出ませんっ!! メシここで食わせてもらうんだろーがあ!!」


「そうだ、メシ食いに来たんだったよ!」



 ぱっとホールドアップしてカメハメハを解くと、何事もなかったかのようにビニール袋をかさかさと鳴らして野中はパンを2つ取り出した。



「ねーさん俺お茶渋めでーっ」


「切り替え早いわっ!」


「あたしもおなかすいたー。知ちゃん弁当よこせ」


「そっちの子、要求は穏やかになさい!?」



 呼吸をする間もなくツッコミに神経を尖らせる。


 つかもう、本当に、てめえらいい加減にしてください。



「はいみなさん、お茶が入りましたよー」



 氷入りのお茶がみんなの前に配られる。



「どーもっ」



 おお、珍しいな野中。女子を必ず悩殺させるともっぱらのウワサの王子スマイルを見せているではないか。


 先輩もにっこりと微笑んで、自分の弁当に向かった。


 震えるこぶしを握っていた会長も、諦めた様子で席につく。



「……で、珍しいわねチュン太に穂積。お昼にここに来るって」



 食べ終わった弁当の包みを結びながら会長が言う。

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