表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第1部 自慢のおじいちゃん
47/301

6/5(日) 芦屋七瀬①

 本部のテントに戻ると、葛西先輩が駆け寄ってきて祝福してくれた。



「お疲れさまですみなさん!! これで晴れて虎蛇会も公認ですねっ!」



 座っていた音和が手をバタバタ振って俺を呼びつける。



「あ。ほれ、お前の」



 そばに行って首にメダルをかけてやった。



「ありがとっ!!」



 そのまま腕に抱きついてくるのはいいが、全体重をかけてきやがった!



「いで! 腕伸びる! ちょっと落ち着けって。……で、こっちもどーぞ」



 俺の分のメダルを首から取り、優しい眼差しで音和を見ていた葛西先輩の首にかけた。



「……えっ」



 先輩はきょとんとして、メダルと俺を何度も見比べる。



「あの、私はなにも……」


「先輩。男からの贈り物は黙って受け取ればいいんですよ」



 平手を差し出してカッコつけた。



「でも……小鳥遊くんの分が……」


「俺なら音和が持っているから大丈夫~」



 俺はしがみついたままの音和の頭をぽんぽんと叩いた。その仕草を見て、やっと先輩も微笑む。



「……うれしいです。こんなの一度も手にしたことがなかったから。それに、お友だちと体育祭を過ごせるなんて夢みたいで……本当にみなさん、ありがとうございます、おつかれさまでした」



 丁寧にお辞儀する。その流れるような美しい所作に、ほんわかとなごんでいると。



ポンポンポンポーン↑



 校内放送のチャイムが流れた。



「ん? 今日はチャイムも放送室も使わないはずだよな??」



 テント内の放送委員たちが不思議そうに顔を見合わせている。



……ポンポンポンポーン↓



 締めの音が鳴った。なんなんだ一体?



ザッ…『あーーあーー。どれだー、これ? あーテステス聞こえまーすかー? あーー』ザザッ…



 終わったと思った放送スピーカーから、雑音とともに女子の声が流れてくる。



ガガガ…『えー校内に残っている人はソッコーでグラウンドに避難してください。裏山が爆発しますよー』


「……」



 ぱっと虎蛇の全員を見る。

 会長、いちご、音和、葛西先輩……。



ザザー…『もう一度言うよ~! 裏山 爆発 危険 グラウンド安全 避難! OK? 以上!』キーーーーン『あーなにこれうっさい!』ゴキッ ブツッ!!



「……なあ、七瀬どこ」


「あれ? 七瀬ちゃん、怪我の処置で先にテントに戻ってきたはずなんですけど……」



 きょろきょろしながらいちごが尋ねると、葛西先輩は驚いた表情で首を横に振る。



「こちらには来てませんよ?」



 テント一帯にも七瀬の姿はない。



「んー保健室かなあ?」



 校舎を振り返っていちごはつぶやくが、俺は裏山を見上げる。

 あいつなにするつもりだ……!?



『えー放送席です、先ほど不審な放送が入りました。事実確認を行いますので念のため、皆様、グラウンドにお集まりください。繰り返します……』



 放送部がテント放送で呼びかけを始めた。生徒たちはざわつき、混乱し始めている。



「会長、俺、七瀬を探してくるよ」


「いや、チュン太もグラウンドに行こう。校内には教師が向かったから」


「七瀬の行き先に心当たりがあるんで。そっち見てくる。こいつよろしく」



 しがみつく音和の手を優しくほどいて、俺は虎蛇の輪を離れた。


 全速力で校門を出て、裏山に向かう。

 あのバカ、早まるなよ……!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ