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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第1部 自慢のおじいちゃん
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6/2(木) 芦屋七瀬 ①

 七瀬が学校を休んで2日になる。


 火曜のリレー練習の帰りがけに、「腿上げばっかりで脚が痛くて、当日走れないかもね」って静かにキレてたから、きっとそれが原因だろう。


 未読のまま返って来ないメッセにいらつきながら、スマホを机に置いた。



「ため息多いな」



 前の席に座っている野中に頭をぐしゃぐしゃとなでられた。



「あー七瀬が来ないなあと思って。なにしてんだろあいつ」


「なっ……!!」



 斜め右前の席のいちごが真っ赤な顔で口元を押さえた。

 またなにか勘違いをしているらしいけど面倒だからスルー。



「……2日も無断欠席だよ。やる気なくね」



 頬杖をついてスマホのトップページをスライドさせてもてあそぶ。


 無性にイラつくのは、何も聞いてないからだ。


 少しは心を開いてくれていたと思っていた。あつかましいけど、少しは七瀬の役に立ってたと思ってた。


 それでこれかよ。マジで意味がわかんねえ。



「あっ……そうだよね。七瀬ちゃん家にいるのかな? 心配だね」


「いや、それはないだろ」



 野中が即否定する。



「野中、七瀬と同中だったよな」


「あいつんち親が家にいるから無断欠席はしないだろ。どっかで遊んでんじゃね?」



……!?



「えー、七瀬ちゃんそんなことするような子じゃないよ」


「どう見てもチャラついてんじゃん。お前の目って見えてんの、コレ? つくりもの?」



 野中がいちごの頬を両手で包み、おもちゃを観察するように瞳を覗き込む。いちごは涙目になってジタバタしていた。


 そんなことより俺の頭の中は別のことでいっぱいで、いてもいられなくなって机を立ち上がる。



「お?」


「俺早退するわ」


「サボり? 教師来るぞもう」


「頭が悪いとでもいっといて」


「どしたの! なっちゃんが自虐っ!?」



 机に引っ掛けてたかばんを乱暴に外す。



「……え、ガチで惚れてんの?」


「そんなんじゃねーよ。じゃあな」



 そのまま振り返らずに教室を出た。

 廊下を反響する授業のチャイムから逃げるように、走って学校を飛び出す。


 バカ七瀬……!!

 あいつがこんなときに、ふらふら遊びに行くわけがない。だったらどこか決まってる!


 悔しさをかみ殺してただただ走った。シャツが汗で肌にべったりとはりつく。それでも俺は足を止めなかった。

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