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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第5部 疾走するアオハル
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11/4(金) 日野 苺⑧

 目の前が真っ暗になる。


 あ。ごめんなさい。ごめんなさい……。


 やっぱりいくら嘘をつき通そうとしても、好きになってしまった時点でだめだったんだ。友だちと同じ人が好きだなんて、気分がいいはずないもの。


 足が震える。


 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……。


 自業自得だ……。


 あたしなんかが人を好きになったから。

 そもそも音和ちゃんが知実くんのことを好きな時点で、好きになるべきじゃない人だって知ってたのに。


 手も唇も動かない。


 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……


 すぐにでもあやまりたいのに、声帯を取られたかのように喉が動かない。

 みんなで一緒にいられなくなるのは怖い。


 なによりも、初めての親友を傷つけたくない……っ!?


 気づくと、いつの間にか七瀬ちゃんに抱きつかれていた。



「よろこんじゃうんだよ! 友だちだからっ!!」


「!?」



 叫ぶと七瀬ちゃんは一度離れて、あたしの両肩に手を乗せた。



「いっちーがあたしのこと思って言ってくれてたんだなって、めっちゃうれしかった! でもね、逆に悲しいなとも思ったの!」



 彼女の大きな瞳から、今日何度目かわからない大きな涙の雫が零れ落ちた。



「いっちー、自分を大切にして? それで、あたしたちにも大切に思わせてよ!!」


「七瀬……ちゃん……っ」


「そんな悲しい顔、させたくないよ! 友だちなら好きな人も取り合って、けんかとかしようよ! そんで、仲直りしたらいーじゃんっ?」



 七瀬ちゃんも辛いはずなのに、ずっとあたしのことばかり気にかけてくれていて。本当にあたしは、人に恵まれた。



「ね、友だちとけんかするのも青春でしょっ?」


「……だけど、できればしたくないよっ」


「そだけどー! するならあたしとがいいよ! ガチだけどさっぱりしてるからさ!」


「もう、七瀬ちゃん大好きだよぉ……!」



 たまらなくなって、あたしから抱きついた。


 それを拒絶することなくしっかりと抱きとめてくれたのが、うれしかった。



「うう……ごめんね、ごめんね七瀬ちゃん。あたしも……知実くんが好きだあー」



 嗚咽とともに、抑えていた気持ちが溢れてくる。


 ついに言っちゃった。誰にも言うつもりなかったのに。特に七瀬ちゃんには絶対に言えるはずなかったのに!



「あはは〜、だよねえ。うん、うんっ。わかるよぉーなっちゃんカッコいいもんね!」


「でもあたし七瀬ちゃんも好きだから、二人がくっつくならいいかなって思ったのは本気だったの」


「いっちぃ優しいかよーーー!! でもいっちー、いっそ告白っていう青春もしといたほうがよくない?」


「っ!」


「だって誰かを好きになることも幸せだけど、誰かに好かれるのも気持ちいいことじゃん」



 しみじみと七瀬ちゃんがつぶやいた。


 誰かに好かれること。


 あたしが今日、みんなにもらったあたたかい気持ち。


 こんなあたしでも、好きな気持ちを……伝えてもいいんだ。



「……そっかぁ。だったら、初めて伝えるなら……」


「えっ?」



 涙を拭って七瀬ちゃんの体から離れた。戸惑うような表情の七瀬ちゃんと顔を合わせる。七瀬ちゃんと出会えて、あたしは少し自分のことが好きになれたよ。


 入り口に走り、置いていたカバンを拾ってドアのカギを開ける。



「七瀬ちゃんありがと。あとで、いっぱいけんかしようね!」



 そう伝えると、そのまま校舎へと飛び込んだ。



「えーー! ちょっと、まじで行っちゃうのーーーー!? ……ぷっ、あっははははははははは!!!」



 七瀬ちゃんの笑い声が後ろから聞こえた気がする。だけどあたしはそれよりも、まっすぐに知実くんの姿だけを追い求めた。

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